もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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地■■書■に■

 数分前……ルカは、ソニアとヌルコを連れて探索していた。

 

「……」

「ルカ、どうしたの? 浮かない顔してるけど……」

 

 他の皆は本やら何やらを物色して有益な情報が無いか探りを入れているのに、ルカは険しい顔をして道を行くだけだった。

 

「……もし、次に敵が凶悪化したら……その時は、僕にやらせて欲しい」

「え……」

 

 凶悪化現象……ヴィクトリーが言うには、「自分の世界が由来」の現象。ドミグラとかいう魔神が何やら裏で糸を引いているという説明だったが……その効果は、まさに凶悪と言うのに相応しいものだった。

 

 子供ばかりだった魔物盗賊団が凶悪化する事によって凄まじい力を得たり……最近では、あの物腰柔らかなメイアが限界以上のパワーでこちらを攻めてきた。

 

「メイアさんとの戦いの時、あいつは界王拳を4倍にまで跳ね上げて……一歩間違えたら、身体がバラバラになる所だったんだ」

「え……」

 

 間近で見ていたルカは、理解していた。界王拳は大幅な戦闘力の増強と引き換えに体力をゴッソリと削る大技……言わば、諸刃の刃だ。その倍率の限度は元々の肉体の強さに依存している。今のヴィクトリーは、せいぜい2倍が限界だ。

 

 そんなものを、惜しむことも無く4倍……身体への負担は、半端なものでは無い。

 

「そうまでして僕達の助けになってくれたのは有難いんだけど……それを許し続けていると、いつしか僕達の為に犠牲になる事も(いと)わなくなる気がするんだ」

 

 ヴィクトリーは、仲間の為なら何処までも奮闘するタイプだ。そして救う命というものに、自分を勘定に入れてない。例え、僕達全員が倒れても死ぬまで倒れないだろうし、腕が無くなろうと最後まで戦い続けるだろう。

 

「ルカ……」

「僕は、そんなの嫌だ。犠牲ありきの勝利なんて、そんなの初めから負けてるも同然だ。だから……アイツが無茶しなくていいように、僕も強くなってる事を見せつけてやるんだ」

 

 

「……そういう事なの」

「ルカが、そんな事を」

 

 ソニアからルカの思いを知らされたヴィクトリーは、戦っている最中の彼に視線を戻す。

 

「犠牲だとかなんだとか、そう言うのは考えてねぇ……けど、おめぇがそうしてぇなら俺はギリギリまでおめぇの顔を立たせてやる! 頑張れルカ!!」

 

 ヴィクトリーの応援を背に受けたルカは、ニッと口角を吊り上げる。

 

「嬉しそうだな、ルカ」

「仲間の前なんだ、カッコつけさせてもらうよ」

 

 二人の目の前には、凶悪化したコーネリア。彼女は、既に攻撃の準備を始めていた。

 

 両手を合わせ、そこに暗黒の気を凝縮する。凝縮されたそのエネルギーは、やがて溢れ出して爆ぜた。

 

「ベイクドスフィアッ!!」

 

 暗黒の爆発波が、コーネリアを中心に巻き起こる。壁のようなエネルギーが猛スピードで迫ってくるも、ルカとアリスはそれよりも速く後方にステップして範囲外に逃れたのだった。

 

 凄まじい爆発波が辺りを暗黒で包み、消し飛ばしたのだ。

 

「くっ……なんて爆発……ほ、本が……!!」

「いいえ、目的の本だけは上手いこと避けているようですね」

 

 狼狽えるソニアに、冷静に言うプロメスティン。視線の先には、無事な本棚が一つだけある。

 

 そういえばコーネリアは、本の守護が目的だったか。凶悪化しても目的を忘れないのは、流石は魔王直々に指名された者である。

 

 そう思っていると、ルカの足元に電撃が走ってくる。

 

「ちっ!」

 

 それを跳び避けるも、既に背後にはコーネリアが迫っている。

 

「はっ!?」

 

 跳んでる最中の無防備な身体が触手で巻き上げられ、そのままぶん投げられる。ぶん投げた先には、やはりアリスが居た。

 

「うっ!?」

 

 受け止めようとしたものの、凶悪化前とはその力は段違い。アリスもルカも、本棚を何個も突き破りながら吹っ飛んで行った。

 

「ぐあぁあぁあ……!!」

「ぐ、ぐぬ……なんて馬鹿力だ……!!」

 

 ダメージに悶えている暇もなく、コーネリアが目の前に迫ってくる。

 

 振り下ろされた触手の一撃。ルカは左に、アリスは右に避ける。コーネリアは、右を追った。

 

「余か……!!」

 

 猛攻してくる触手に対して、尖剣技で対抗するアリス。しかし、触手の方が手数が圧倒的に上で、次第に防戦を強いられる事になる。

 

「どうしました、当代の魔王の実力はその程度ですか?」

「白兎に妙な事をされなければ……いや、言い訳はすまい!」

 

 アリスはそう言いながら、左手に火の魔力を充実させる。それを警戒して距離を取り、魔導書の一ページを破くコーネリア。

 

 すかさず放つは、『氷の8ページ』。それを利用して氷の防壁を作った。

 

「そらっ!!」

 

 アリスは構わずに、火の玉をぶん投げる。それが氷の防壁に阻まれるも、熱量によって着弾した所の氷は溶ける。

 

「血裂雷鳴突き!!」

「!!?」

 

 すかさずルカが放つは、雷鳴を伴った疾風のような突き。それが溶かした氷の壁の穴から飛び出して、コーネリアに直撃した。

 

「ちぃっ!」

 

 コーネリアは後退するも、両手に暗黒の気を溜める。その手の気を指に集中させ、ルカに狙いを定めた。

 

「ブラッディソース!!」

 

 五本指から、暗黒の気のレーザーが迸る。真っ直ぐに伸びるそれを、ルカは見据え、剣を持つ手に力を込める。

 

「だぁあっ!!」

 

 全力で横一文字に切り払う。それで、五本同時に弾き飛ばしてしまった。

 

「なにっ!?」

 

 動揺も束の間。既にアリスがコーネリアの懐に飛び込んでおり、両手に火の魔力を滾らせている。

 

「しまっ──」

「怒れる炎よ、力を示せ……!!」

 

 詠唱により、最大出力。そんなものを両手で、至近距離で、全エネルギーを惜しみなくコーネリアに放った。直撃して大爆発を巻き起こし、彼女は炎に巻かれる。

 

「きゃあぁああああ!」

「凶悪化しても弱点は変わらんか!」

 

 アリスはそう言って、ダメ押しにまた火魔法を放とうとする。しかし、手から出たのは豆のような火だった。

 

「っ、魔力切れ……!!」

 

 次の瞬間、伸びてきた触手がアリスをなぎ払った。それに直撃してしまったアリスは本棚に叩きつけられ、床に倒れてしまう。

 

「っぐぬ……!! まだ反撃する余力があったか……!!」

「貴方は魔力切れでしょう……!!」

 

 コーネリアは身体の炎を振り払い、アリスに暗黒の気を込めた五本指を向ける。

 

「……!?」

 

 しかし、直ぐに手を引っこめる。遅れて、車輪のように回転する気の刃がさっきまで腕を伸ばしていた場所を走っていった。

 

「これは……戦士技の、払車剣!?」

 

 コーネリアは、ルカの方を向き直す。彼は剣を振った後のようなポーズを取っていた。

 

「はぁああああ!!」

 

 ルカは、剣を振るう。するとその剣から車輪のように回転する斬撃が飛び、コーネリアに向かっていく。そんなものを、何発も連射したのだった。

 

「ち……!」

 

 コーネリアは次々に飛んでくるそれを避け、最後の一個を黒の衝撃を放って相殺する。しかし、その後ろにはルカが居て、剣を振りかぶっていた。

 

「やぁああっ!!」

「!!」

 

 剣の一撃が、触手で受け止められる。二人は鍔迫り合いになって睨み合ってから、超高速の攻防戦を繰り広げた。

 

 複数本の触手を相手取り、ルカは全く互角に切り結ぶ。

 

「だぁああああああ!!」

「なにっ……!!?」

 

 攻防のさなか、ルカは隙を見てコーネリアの懐へ踏み込む。そのまま剣を寝かせ、切っ先を顔に向けて突き上げ──

 

「それはもう食らいません!!」

 

 ルカが放った魔剣・首刈りを、コーネリアは半身になって避ける。しかし、それはルカの想定の範囲内。

 

 ルカは突き上げの勢いを利用して跳び、両足を振るってコーネリアの肉器を踏み蹴り、駆け上がって顎に膝蹴りを叩き込んで更に跳び上がった。

 

「っぐぁあっ!?」

「そこだ……!!」

 

 畳み掛けるように、アリスが刺突剣を構えながら突撃してくる。しゅるしゅると地を這い走り、その地を跳んで急加速して剣技を一閃した。

 

「ぐぁ……!!?」

「クロスアンブル……!!」

 

 アリスが疾走しながら、言う。遅れて、コーネリアの身体に二つの刺突撃が炸裂した。

 

「これで終わりだ!!!」

 

 ルカが、吼える。剣を振りかぶって放つは、かなり高い位置からの渾身の兜割り。

 

「天魔頭蓋斬ッッッ!!!」

 

 落下の勢いを利用した切り下ろしは、今度こそコーネリアに直撃する。そして、ルカの着地と同時に物凄い衝撃波を伴った旋風が巻き起こり、辺りのものを吹っ飛ばしてしまった。

 

「はぁっ、はぁっ……!!」

「この私が、こんな屈辱を……」

 

 コーネリアは余力を無くして、がくんと肩を落とす。そしてあの凶悪な気も煙のように消え失せていった。

 

「くっ、無念……まさか、これほどの力とは……」

 

 そう言って、倒れ伏したのだった。

 

「やったぁ! 流石はあたしのルカ!!」

「きゅーっ! きゅーっ!」

「見事ですね……ふむ、観察のしがいがあります」

 

 観戦していたソニア、ヌルコ、プロメスティンは思い思いに言う。

 

「……は、ははは、なんて奴だ! 凶悪化した奴を、倒しちまった! すげぇ、すげぇぞ!」

 

 ヴィクトリーは、ルカの活躍を見届けてそう言う。その表情は、ワクワクと鳥肌が止まらないといった様子だった。

 

「まぁ、余の助力があっての事だ。せいぜい慢心するなよ……なんて、野暮な事を言う必要は無いようだな」

 

 アリスがそう言っている前で、ルカは剣を納めて仲間の方へ向く。

 

「……やった!」

 

 そして、笑顔でそう言って親指を上げたのだった。

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