もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
コーネリアを倒したルカ達は、改めて図書館を探索する。
激しい戦闘で周りはめちゃくちゃだが……一つ、無事な本棚があった。
「見っけた、これだ!」
ヴィクトリーが一冊の本を手に取り、その辺にあった机を拝借してそれを置く。すると、皆も集まって題名を確認した。
それは、確かに『四精霊信仰とその源流』だった。話にあったものと、同じものだ。
「これが、父さんの置いていった本……いったい、この本に何が……」
「見てみようぜ、精霊信仰ってどんな奴なのかをよ」
ヴィクトリーは、本をルカに任せる。ルカも頷きながら、本を開いたのだった。
すると、いきなり最初のページに直筆で何か書かれていた。
「これ、父さんの字だ……!」
「なにっ!?」
それは、マルケルスからの直筆のメッセージだった。
『ルカよ、四精霊と契約を結べ。歴史を正しく辿る事で、時流の乱れを抑えられる』との事だ。
「四精霊と契約……? 歴史を正しく……あっ」
ルカ、一本の苗木の話を思い出す。
ある地に、一つ苗木が無いだけで人が居つかなくなる不毛の地になる。そんなボタンの掛け違いを直しに行くのが、ヴィクトリーの所属していた組織であるタイムパトロールだったとか。そして、そういう時は専門家の彼曰く『無理矢理にでも正史に沿うように書き換えちまう』らしい。
「……ヴィクトリー……」
「ああ、そういう事だ……」
名前を呼ばれて、察したヴィクトリー。どうやら、同じ事を思っていたらしい。
「何か分かるのですか? しかし、『時流の乱れを抑えられる』とは……?」
「四精霊とは、このセントラ大陸の四箇所に存在する精霊。彼女達と契約すれば、強大な力を得られるというが……」
プロメスティンとアリス……このパーティの中の知恵の者二人が、珍しく置いてけぼりである。
「この世界の正しい歴史とやらで、ルカが四精霊の力を得て何かしたんだろ」
ヴィクトリーが、そう言う。というか、順当に考えてそれしか浮かばない。
「何をしたのかは具体的には分からねぇ……ただ、その『時流の乱れ』ってのは『世界線の分岐』っていう風にも言い換えられそうだぜ」
「なるほど……それを収束させるために、ルカに四精霊の力を……」
アリスはそう言い考えてから、手を叩いた。
「四精霊との契約、余は賛成しよう。力を得られるというだけでも、悪い話ではないはずだ」
「そうだね……僕は、四精霊と契約するよ。それが多分、世界の異変を何とかする手段の一つなんだ。それに、更なる力も必要だよ。これから先、ますます強い敵と戦うことになるんだから」
「ああ……ワクワクしてくるなぁ」
四精霊の住処などは、この本に記してある。ここから最も近いのは、シルフのいる『精霊の森』だ。
「あれ……? この本、まだ何か挟まってるよ?」
ソニアはそう言いながら、それを取り出す。それは、『召喚師の盟約書』だった。新たな職業につくのに必要なアイテムらしい。
「召喚師になるためのアイテムだな。もっとも、魔力が極まっていなければなれはせんが」
「父さん、こんなものまで用意してくれたんだ……」
新たな職業の事は興味深いが、今は目の前の目的だ。
「でも、これでまた目的が増えちゃったわよね」
「ああ……白兎にタルタロスにルカの父ちゃんに、そして黒のヴィクトリーとドミグラに……そんでもって、この四精霊か」
「各地を巡り、順々にこなすしかあるまい。その旅路で、白兎とマルケルスの情報を集めるとしよう。ここから近いのは、シルフのいる精霊の森だな。契約すれば、風の力が手に入るはずだ。だが、今の実力では……」
「分かってるよ」
ヴィクトリーはアリスの言葉を遮り、笑った。
「だったら、もっと強くなってから行けばいいさ。カンタンだろ?」
「あ、ああ……」
ソニアが、いきなり思い出したような顔をした。
「そう言えば、法王様も何かお話があるみたいじゃない。こっちの用は済んだし、伺ってみようよ」
「うん、そうだね」
「よっしゃ、法王様の頼みとやらも聞いてみっか!」
本を手に入れたので、この地下図書館にもう用はない。
新たな目的が出来たルカ達は、まずは法王様の話を聞きに図書館を後にした。
※
「道を見出した顔をしているな……例の本、とても役に立ったようだ」
戻るなり、サン・イリア法王はそう言って出迎えてくれた。
「さて、以前にも言っていた通り……君達に、ぜひ頼みたい事があるのだが」
「おっしゃ! 何でも来い!」
ヴィクトリーがそう言って、ソニアに無言でしばかれる。
その目の前で、騎士団長がサン・イリア王の横に来た。
「猊下、差し出がましいようですが……彼等を供にするのは、危険です!」
次に騎士団長は、こちらを向いて頭を下げた。
「お気を悪くされたなら、謝罪します。しかしこれは、非常に危険な任務なのです。本来なら、小隊規模で行われるべき護衛任務。それを、10人にも満たない数で行うなど……」
そして、またサン・イリア王の方を向いた。
「猊下にも彼等にも、あまりにも危険過ぎます! どうか、お考え直しを……」
「……では騎士団長よ、意見を聞こう」
サン・イリア王は、騎士団長の方を向いた。その目には、僅かながら威圧的なものがある。
「君なら、例の任務にどの程度の力量が必要だと考える?」
「あくまで目安ですが……ミスリル製の装備品を扱えるレベルでなければ、話になりません」
「ふむ……」
サン・イリア王は頷き、戦士達に向いた。
「ルカよ、そういう事だ。騎士団長は、ミスリルの品が扱えるレベルが前提だという。すまないが、任務の詳細な内容は話せないのだ……受けてもらえると君達が確約するまではな」
「随分と勿体ぶるじゃねぇか……何か、やましい事でもあんのか?」
「こら、失礼でしょ!」
ヴィクトリーは、またソニアにしばかれてしまった……
「決断は、君に任せよう。準備と覚悟が出来たら、再度私に声をかけてもらいたい。なお、ミスリルの装備品に関しては、騎士団長に聞くといい。あれは鍛冶屋の特注品、素材を持ち込まねばならんものでな」
「分かりました、少し考えさせて……」
ルカはサン・イリア王に頭を下げる……
「なぁ騎士団長さん! ミスリル取りに行きてぇから、許可が出せる所教えてくんねぇか?」
もう早速、ヴィクトリーが騎士団長に声をかけていた。
「ぐ……なんと遠慮なしな……」
「おめぇだって、俺達が話してる所に横槍入れてきたじゃねぇかよ」
「それは、お詫びします……しかし、極めて危険な任務なのです。あなた方の命を守るためにも、なにとぞご理解下さい」
「命を落とすかも知れねぇぐれぇ危険な任務か……ますますワクワクしてきたぜ!」
騎士団長は、ヴィクトリーを変な目で見た。
「……命が惜しくないのか?」
「そりゃ命は惜しいさ。だけど、それ以上に俺は戦うのが好きなんだ。まずは死なねぇようにしねぇとな。だからミスリルを取る許可が欲しいんだけど……」
「……」
騎士団長は、ヴィクトリーの目を見る。その目は、言葉通りの色を放ちながら光っていた。ただの狂人かと思えば、少年的な純情がそこにあるのだ。
「ミスリルが、アモス山って所にあるのは分かってんだ。だから、許可だけ……」
「いや、許可は私の方で手続きをしておこう」
「本当か!? サンキュー!」
ヴィクトリーはそう言って、ルカ達の所に駆けた。
「よっしゃあ! みんな、アモス山に行こうぜ!」
「あ、ああ……」
早々に許可を取り付け、早々に行こうとするヴィクトリー。よほど、危ないと言われている護衛任務が楽しみで仕方ないらしい。
「すみません、私の連れがこんな無礼な奴で……」
ソニアがそう言いながら、騎士団長に頭を下げる。
「あ、ああ……」
困惑する騎士団長を横目にルカ達は、アモス山へと向かう。
「……本当に、平気なのでしょうか……」
「まぁ、信用に足りるだろう……ここ最近の冒険者と比べても、かなり戦闘力は高いからな」
サン・イリア王は、そう言いながらルカ達の背を見送ったのだった。