もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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聖山アモスにて

 サン・イリアを少し東に行って、北上した先……そこには、凄く高い山がそびえていた。

 

「ここが……」

「ひええ、なんて(たけ)ぇ山なんだ……」

「また、登るのに骨が折れそうね……」

 

 そう、ここが目的の『聖山アモス』。聖山と呼ばれるだけあり、山そのものが信仰の対象となっており、ここでミスリル鉱石が採れるという。

 

「この山に、ミスリル鉱石があるのだったな。さぁ、さっさと登るぞ!」

 

 アリスはそう言って、踏み込んだ。

 

 しかし、立ち止まって山頂付近を見詰めた。

 

「……? 山頂の方から、大きな力を感じるな……」

「む……?」

 

 アリスの言葉を聞いたヴィクトリーは、山頂辺りの気を探ってみる……すると確かに、大きな気がそこにあった。しかも、その気は聖素の感じがする。

 

「ああ……すげぇ気だ……」

「この嫌な感じ、もしかして天使か……? だとすると、かなり高位の天使だぞ……」

「ええ……若輩天使の私でさえ感じ取れます。羽根がビリビリしていますよ……」

 

 プロメスティンもアリスも、高位天使の気をビンビンに感じているようだ。恐らく、普通では無いのだろう。

 

「山頂に、高位の天使が……?」

「おい、面白そうだぜ。ミスリルを取ったあと、行ってみようぜ」

「うん、そうだね」

 

 ルカ達は、早速山を登り始めた。険しい道が続くが、山登りなら何度もしてきたので慣れたものである。

 

「それにしても本当に高いわねこの山……」

 

 ソニアは、山頂に目を向ける。まだまだ山はそびえており、道中の長さを察してウンザリしそうになる。

 

「この地域で、一番天国に近い山って呼ばれているそうだよ」

「だから、聖山アモスか……」

 

 ヴィクトリーとルカを先頭に、一行は進むのだった。

 

 

 拓けた所に来れたと思ったら、当然のように魔物は強襲してきた。

 

「やっぱし危険な山には違いねぇか」

「油断するなよ……!」

 

 現れたのは、ただのグリズリー娘と、シスターの格好をしたラミアと、これまたシスターの格好をしたサキュバスと、アリクイ娘。四体とも、相当の強さを誇るらしい。

 

 シスターの格好をした魔物娘が多いのは、ここが信仰の集まる地だからだ。

 

「みんな、俺にやらせてくれ。地下図書館じゃいい所無しだったから、汚名返上といきてぇ」

「ヴィクトリー」

「ふむ、ミミック娘天丼の件もあったしな」

 

 アリスから痛い話をされ、ヴィクトリーは苦い顔。それでもとにかく、いい所を見せようと三体の前へ歩み出た。

 

「あら、あなた一人でやるつもりなの?」

「ああ」

 

 先頭のシスターの格好のサキュバスと話している最中の事だった。急にアリクイ娘の舌がヴィクトリーの腕に巻き付き、思いっきり引っ張った

 

「うおっ!?」

「あはっ!」

 

 アリクイ娘はそのまま引っ張り、ヴィクトリーを山から投げ出そうとする。しかし彼は山から投げ出される寸前に、地面に踏ん張る。そして、その舌を引っ張って手繰り寄せた。

 

「うっ!?」

「だりゃあっ!!」

 

 そしてその場を蹴って、アリクイ娘の顔に拳を叩き込む。その一撃で舌が腕から解け、拳が振り抜かれてぶっ飛ばされた。

 

「あぐぅっ……!?」

 

 圧倒的なスピードの一撃に悶えるアリクイ娘だったが、キッと正面を睨め直す。そんな彼女の背後から、グリズリー娘が飛び出してきた。

 

「ガオーッ!」

 

 野獣のように獰猛に急襲し、猛烈なラッシュを放ってくる。しかしヴィクトリーはそれらを避け続け、反撃の拳を顔に一閃した。

 

「きゃあっ……!?」

 

 グリズリー娘をぶっ飛ばしたヴィクトリーだが、すかさず背中の剣を抜く。そして、背後から迫ってきたシスターサキュバスを切り払った。

 

「ぐ……!」

「今度はこっち!」

 

 ヴィクトリーはその場で跳び、後ろ蹴りを放つ。すると、それが迫っていたシスターラミアの顔に命中したのだった。

 

「うぐっ!?」

 

 命中を確認してから、着地して腰を落とすヴィクトリー。そのまま腕をクロスしてから、息を吸う。

 

「ばっ!!!」

 

 吼えながら、勢いよく腕を左右に突き出す。すると、爆発のような気合いが衝撃波を巻き起こし、シスターラミアとシスターサキュバスをぶっ飛ばしたのだった。

 

「!!?」

「ぐぁあ……!!?」

 

 何が起きたかも分からない様子の二体に、遠目から見るしか出来ないもう二体。ヴィクトリーはそんな四体の魔物を相手に、不敵に笑う。

 

「騎士団長さんが言うから身構えてたけど、どうやらそこまで大した事は無さそうだな」

「なにっ……!?」

「落ち着け、この聖山を荒らす気はねぇさ。俺達はただミスリルを取りに来たんだからよ。だから、ここは見逃してくれるとありがてぇな」

 

 交渉しようと、会話するヴィクトリー。しかし、シスター魔物娘二人が回復魔法を使って再び立ちはだかった。

 

「あなたのような逞しい男、逃がす訳ありません……」

「シスターというのは、実は飢えているものなのですよ……」

「やっぱ見逃しちゃくれねぇか」

 

 シスター系の魔物なだけあり、白魔法である回復魔法が得意なようだ。ヴィクトリーは無傷で、相手は全員全快……状況は、ゼロへと仕切り直しだ。

 

「……ふふ」

 

 アリクイ娘の、不敵な笑み。いつの間にかヴィクトリーの四方を、それぞれの魔物娘が取り囲んでいる。だがそれに対しても、冷静な表情のヴィクトリー。

 

「しゃあっ!」

 

 ヴィクトリーの右横に居たグリズリー娘が、襲ってくる。その一撃を右腕で受け、すかさず左へ向く。既にシスターラミアの尾が迫っていたが、それを首を傾げただけで避けてみせる。

 

 しかし背後から、前から……絶え間ない攻撃が、次々にヴィクトリーを囲んで襲いかかってくる。

 

 アリクイ娘の、舌での連続突き。グリズリー娘の剛腕から放たれる獣の爪。シスターラミアの尾による連撃。シスターサキュバスの風魔法……それらを、ヴィクトリーは最適な踏み場にステップしながら次々といなしていく。

 

 舌での連続突きは舌先を捉えながら次々に避け、獣の爪は半身にして躱し、尾の連撃は剣と拳で凌ぎ、風魔法は見てから軌道を予測して回避する。

 

 赤い道着を、青い帯を、黒い髪を靡かせながら猛攻を軽々しくいなし続けるヴィクトリー。

 

「なんて奴だ……あんな四方からの同時猛攻なのに、かすっても無い……!」

 

 ルカは、ヴィクトリーの戦いを凝視する。

 

 メイアとの戦いで、限界以上の力を使って死にかけた状態から復活したのが効いているのだろう。あの時より、遥かに強くなっている。

 

「っだああぁあ──っ!!」

 

 激しい猛攻を凌ぎつつも、ヴィクトリーは唐突に吼える。その体から赤いオーラが迸り、それに当てられた四体は思わず怯んで止まってしまった。

 

「しまっ」

 

 シスターサキュバスの顎を蹴り上げでかち上げ、シスターラミアのこめかみを肘打ちして、グリズリー娘の腹を膝蹴りで打ち据え、アリクイ娘の顔に拳の一撃を叩きつける。

 

「あっぐ、そんな……!」

「きゃ……!」

「う、うが……魔獣系の……あたし達を……」

「い……いち、げき……!!?」

 

 一撃で、バタバタと倒れてく魔物娘達。ヴィクトリーを円で囲むように四体は倒れ、動かなくなった。

 

「っふぅ! 終わったぞー!」

 

 ヴィクトリーは、ルカの所へ戻る。

 

「これでイイトコ見せれたか?」

「相変わらず凄い奴だな君は……サイヤ人の戦闘力には、底がないのか?」

「まぁな……」

 

 にひひと笑う、ヴィクトリー。

 

「もっともっと強くなって、誰にも負けねぇように頑張るぞ!」

「僕だって負けないぞ! あの宝箱まで競走だ!」

 

 ルカが指したのは、何故かある宝箱。走ってすぐの所にあり、あれぐらいならパーティが離れても大丈夫だろう。

 

 走る男二人を、アリス達は見つめる。

 

「むぅ、脳みそ筋肉どもめ……ミスリルと上の気の事を忘れてないか……?」

「あははは……昔は私も、ああやって裏山でルカと走ってたなぁ」

「サイヤ人の底知れぬ戦闘力……どうにか研究出来れば……」

「きゅーっきゅーっ」

 

 思い思いに女達が話しているのを横目に、楽しそうに競争する男二人。どうやら競走は、ヴィクトリーが勝ったらしい。

 

「短距離なら体格に分がある俺の有利だな!」

「くそぅ……スピードは僕の方がある筈なのに……!」

 

 どうやら、競走はヴィクトリーが勝った模様。

 

 勝者である彼が、宝箱を開け──その宝箱は口を開けて、彼の上半身を咥えてしまった。

 

「……」

「……」

 

 思わず、固まってしまう二人。見ていた女達も、白眼を剥いて固まっている。標高の高い場所特有の風が、木の葉と共に吹き抜ける。

 

「ぎぇええええ!!?」

 

 彼は、情けなく足をバタつかせて絶叫した。

 

「ヴィクトリーっ!!?」

「またか、このドアホ脳みそ筋肉!!」

「何となく嫌な予感はしてたけども!!?」

「予定調和というものでしょうか」

「きゅーっきゅきゅーっ!?」

 

 圧倒的な戦闘力を示したハズのヴィクトリーだったが、何とも締まらない感じに救出されるのだった。

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