もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
ミミック娘にまたもや捕まったヴィクトリーを助け、山道を進んでいく道中でモンスターの襲撃もあったが、今のルカ達は簡単に凌いでいった。
そして……
「これだな……」
巨大なミスリル鉱石が、そこにあった。
「これをサン・イリアの鍛冶屋に持っていけばいいんだね」
「だな……」
ヴィクトリーが率先して、ミスリル鉱石の一部を抱える。
「いいのか?」
「またミミック娘でかっこ悪い所見せちまったしな。修行だと思ってやらせてもらうぜ」
そういう訳で、今回も彼がミスリルを運んでくれるらしい。これで、ミスリル製の武具を作れるだろう。
「さて……」
「ああ……」
忘れてはならない、頂上の異様な気。かなり高位の天使の気が、今でもビリビリと感じられる。
その気のする方へ、登っていく。かなり標高が高い事も相まって、息苦しくなってきて、それが一層と緊張を煽った。
※
進んでいると、見覚えのある姿が見えた。
「はぁ……はぁ……」
「ここを登れば、ようやく山頂ですよ……」
お供を連れた、ちっちゃいイリアスの姿があった。彼女達も、この山を登るのに息を切らしている。
「イリアス様」
ヴィクトリーが声をかけて、イリアスが向く。
「おや、こんな場所に……あなた達も気付いたようですが……山頂から、異様な力を感じます。そこで、あなた達に先を譲りましょう。何か良い事が起きるかもしれませんよ……」
「ふん……我々を先に行かせて、安全確認をさせる気だろう。貴様のずる賢い魂胆など、お見通しだ」
アリスが出てきて、イリアスに言った。
「否定はしません……が、気になりませんか?」
言われたイリアスは、いつになく真剣な顔だ。天使絡みなのもあり、他人事ではないと感じるらしい。
「確かに……山頂に、何があるんだろう……」
「ああ……イリアス様、これ預かってくれ」
「ん?」
ヴィクトリーは、イリアスにミスリル鉱石を渡した。
「って、おもっ!?」
渡されたイリアスは、ズシンっとミスリル鉱石を取り落としそうになる。しかし、どうにか踏ん張って見せた。
「舐めないでください! 私は女神で……」
「行くか……」
「ああ……」
ルカとヴィクトリーは、先へ進む。
「お────い!」
「ちょっと、もう……! すみません、イリアス様……」
スルーされたイリアスに、頭を下げながら二人についてくソニア。
「ふん、
「アリスさん、そんなギャグ言うタイプの人でしたっけ……」
「きゅっきゅっ」
アリスとプロメスティンとヌルコも、ソニアの後を追う。
とにかく、一行は先へと進んだのだった。
※
このまま進んで、山頂に来たその時だった。
急に、辺りが暗くなった。
「なんだ……!? 急に暗くなるなんて……!」
「強力な魔力が、気候や天候にさえ影響を与えているのだ……いったい、山頂に何がいるというのだ?」
ルカとアリスの横で、プロメスティンが震えていた。
「これ、熾天使級じゃないんですか……? 地上に降臨するクラスじゃないですよ……!」
「……!」
プロメスティンの横にいたヴィクトリーが、何かを察知する。
「どうしたヴィクトリー!?」
「あっちに、死にかけの気がある!」
そう言って、走り出した。
「ちょっ……一人で行くなって!」
ルカ達も、ヴィクトリーを追って走る。
「はぁ……はぁ……」
「ヴィクトリー……これは……!?」
ルカとヴィクトリーが並び、それを見る。そこには、瀕死の重傷を負った天使が呻いていた。
「う……ううっ……」
「そ、そんな……この人は……!!」
「……ぐっ!」
二人に、頭痛と幻覚が走る。
見えたのは、イリアスに似たような大人の女……そして、命運をかけた戦いの最中に時空を突き破った白翼。
「ミカエラさん!?」
「ミカエラさんっ!」
ミカエラ……この死にかけの天使が、それだと確信した。
「ミカエラだと!? それはルカの伯母の……いったい、何があった! 生命力が今にも消えそうだぞ!?」
「ルカ、なのですか……」
ミカエラは、ルカの顔を見た。
「まさか、最期の時に会おうとは……」
「最高位の天使と見たが……いったい誰が、これほどの事を……」
「油断してはいけません……奴は、まだここに……」
「……っ!!」
ヴィクトリーは、上空に目を向けた。それに釣られ、ルカ達も彼と同じ所を向く。
そこには、異形の天使が浮遊していた。辛気臭い表情をした、体の組織の半分近くが機械で出来たような天使だ。周囲に立ち込めた強大な魔力は、この天使のものに違いない。
「お、お前はいったい……!!」
「我は、熾天使グノーシス……罪人に天罰を下すのが、我が使命……」
「熾天使……って事は、シオンと同格か……」
「ミカエラさんをこんなにしたのは、お前か!!」
ルカはそう言って、グノーシスに剣を向ける……が、彼女は無表情を崩さない。
「半分は私だが……もう半分は、彼女がこの地上で暮らした日々。汚れた大地で、自ら力を断っての長い暮らし……その日々が、強大であったはずの力を大幅に弱めたのだ。全盛期の力であれば、私に勝ち目などなかったろう……なんとも惨めで、哀れなものだ」
「なるほど……地上暮らしで弱った天使を倒して得意顔か!」
アリスがそう言った横で、ヴィクトリーが舞空術で飛ぶ。そして、グノーシスと同じ目線に来た。
「……俺は、ミカエラさんにはこれっぽっちの義理はねぇ。だけど、おめぇはぶっ壊さねぇと気がすまねぇ……!!」
「待て、少し試算する……」
グノーシスの頭から、カチャカチャと音がする。
「現在のルカおよび魔王の
「マルケルス……!?」
「お前、父さんを知っているのか……!?」
グノーシスの頭から音が止み、ルカの方へ向き直した。
「……リスクが多すぎる。お前達は処刑できない。まだお前達は、歴史に沿って動いているのだから」
「なんだと、どういう事だ!?」
そう言い放つアリスに、グノーシスの目線は向く。
「神の導きに従い、慎ましく生きるがいい。歴史の流れから逸れた時、我々が裁きに現れよう……」
グノーシスは、次にヴィクトリーの顔を見た。
「なるほど、お前がこの世界の特異点……本来なら三種断界接触に該当する筈だが、カオス化の進行率は0%……処刑しても変動は無し……か」
「何言ってやがる!!」
ヴィクトリーは界王拳を使い、グノーシスに殴りかかった。しかし、魔力の防御壁が拳を阻んだ。
「焦るな……シオンは反対したが、私はお前を生かすべきだと考えている」
「なにを……!!」
「お前は、龍球世界の
グノーシスはそう言うと、煙のようにふっと消えてしまった。それと同時に、周囲に張り詰めていた魔力も消え失せてしまう。
「ちっ……逃げやがった!」
ヴィクトリーは、皆の所に降りる
「あいつは! 訳の分からない事を並べて、結局逃げるとは……!」
「奴は去りましたか……」
ミカエラが、ボロボロの体をルカに向けた。
「よかった……今のあなた達では、勝ち目など……」
「ミカエラさん、しっかり……! ソニア、回復をお願い!」
「既に回復魔法を使ってるんだけど……全然効かなくて……」
「ヴィクトリー、ミカエラさんに仙豆を!」
「だ、ダメだ……食道が焼かれてる……ひでぇ事を……!!」
「何をしようと無駄です……既にこの体は、生命力の殆どを失っていますから……」
「そ、そんな……何もできないなんて……!!」
「く……くそったれ……!!」
絶望するソニア、悔しがるヴィクトリー……そんな二人を横目に、ミカエラはルカと話し続ける。
「ひとつ、心残りがあります……ルカ、あなたに何もしてやれなかったこと……」
「……」
「せめて、残された最期の力で……あなたに、勇者としての力を……」
ミカエラは手を差し伸べ、ルカの手に重ねた。その瞬間、暖かな力がルカの体に流れ込んでくる……
「……!!」
ルカの潜在能力が、グンと引き上げられた。
「こ、これは……この力は……!!」
「……」
ナメック星の最長老が、似たような事をやっていたのを思い出す。今のルカは眠った力を呼び覚まされ、勇者としてのきっかけを得たのだ。
「まさか、これは洗礼か……? 女神イリアスにしか使えないはずの、聖素循環の力……!」
「み、ミカエラさん……!」
「ぐふっ……」
ミカエラは、ヴィクトリーに目を向けた。
「今の洗礼……使う力はもう残されていません……ごめんなさい……あなたに、真実を伝えられずに……あなたを巻き込んでしまった事を、詫びる事も出来ず……」
ミカエラはそこまで言って、大量に吐血した。
「も、もういい! 喋んじゃねぇ! マジで死んじまうぞ!」
「ミカエラさん……!」
「私に出来ることは、ここまでです……ルカ、ヴィクトリー……どうか、世界を…………」
ミカエラの気が、完全に消えた。その体は、光の粒子となって消えていく……
「ミカエラさん……」
「……」
「……」
目の前で、ミカエラが死んだ……二人にその悲しみと無力感が、胸に広がっていく。
「……ルカ」
「……ああ」
だが、この胸にあるのは悲しみだけじゃない。
「二人共、大丈夫? ここでしばらく休んでいく……?」
「きゅ……きゅきゅ……」
ソニアとヌルコも、二人の背中を見て心配していた。
「……俺は平気さ。だけど……」
「いや、僕も大丈夫だよ。ミカエラさんから、大切なものを受け取ったから」
「……」
ルカは、ずっと勇者に憧れていたようだった。無邪気に、ただ童心のままに勇者になりたいと願っていた。しかし、今となってはその勇者の力の重みが違う。ミカエラが、命を捨ててまで託してくれた力なのだ。
「……報いねぇとな。ミカエラさんの為にも」
力だけではない。世界を守る、その意志が受け継がれているのだ。
「ミカエラさん、安らかに眠って下さい。僕達は、その想いに恥じない勇者になります!」
受け継がれた力と、そして想い。
「また一つ強くなったな、ルカ……貴様は、人の想いを抱えて強くなるのかもしれん」
「辛い時は私に頼ってよね、ルカ。いくらでも力になるから……」
「ああ……ありがとう、みんな……」
ルカには、またひとつ倒れられない理由が出来たのだった。
「……」
ヴィクトリーは、ミカエラの倒れた所を見ていた。
「あなたが誰かは存じませんが……その想い、無駄にするわけにはいきません。だから……あなたの想いを、少しだけ俺に分けてください」
そして、拳をグッと握って祈ったのだった。
「しかし、なぜ同じ天使のはずのグノーシスがミカエラを……」
アリスはそう言いながら、今度はルカとヴィクトリーに向く。
「それに、二人共……貴様らはミカエラと面識が無かったはず。なぜ、一目で分かったのだ?」
「……知ってる感じがしたんだ。一瞬、目の前に色々な光景が浮かんで……」
「俺も、あの頭痛と一緒に色々なもんが見えたんだ……多分、ルカのと同じだ」
「なにか、精神的な繋がりがあったのか……それとも、平行世界を行き来する力が絡んで……」
色々言うアリスだが……ルカは、ヴィクトリーに向いた。彼も頷き、笑顔を返す。
「とにかく、行こう! まだまだやる事が山積みなんだからね!」
ミカエラから受け継いだ想い。それは、この世界を救うこと。
僕達はその信念と、そのための力を託された。悲しみも胸に、前に歩き出さないといけない。
冒険は、まだまだ続く。勇者達は、その一歩を踏み出した……