もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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その遺志、託されて

 ミミック娘にまたもや捕まったヴィクトリーを助け、山道を進んでいく道中でモンスターの襲撃もあったが、今のルカ達は簡単に凌いでいった。

 

 そして……

 

「これだな……」

 

 巨大なミスリル鉱石が、そこにあった。

 

「これをサン・イリアの鍛冶屋に持っていけばいいんだね」

「だな……」

 

 ヴィクトリーが率先して、ミスリル鉱石の一部を抱える。

 

「いいのか?」

「またミミック娘でかっこ悪い所見せちまったしな。修行だと思ってやらせてもらうぜ」

 

 そういう訳で、今回も彼がミスリルを運んでくれるらしい。これで、ミスリル製の武具を作れるだろう。

 

「さて……」

「ああ……」

 

 忘れてはならない、頂上の異様な気。かなり高位の天使の気が、今でもビリビリと感じられる。

 

 その気のする方へ、登っていく。かなり標高が高い事も相まって、息苦しくなってきて、それが一層と緊張を煽った。

 

 

 進んでいると、見覚えのある姿が見えた。

 

「はぁ……はぁ……」

「ここを登れば、ようやく山頂ですよ……」

 

 お供を連れた、ちっちゃいイリアスの姿があった。彼女達も、この山を登るのに息を切らしている。

 

「イリアス様」

 

 ヴィクトリーが声をかけて、イリアスが向く。

 

「おや、こんな場所に……あなた達も気付いたようですが……山頂から、異様な力を感じます。そこで、あなた達に先を譲りましょう。何か良い事が起きるかもしれませんよ……」

「ふん……我々を先に行かせて、安全確認をさせる気だろう。貴様のずる賢い魂胆など、お見通しだ」

 

 アリスが出てきて、イリアスに言った。

 

「否定はしません……が、気になりませんか?」

 

 言われたイリアスは、いつになく真剣な顔だ。天使絡みなのもあり、他人事ではないと感じるらしい。

 

「確かに……山頂に、何があるんだろう……」

「ああ……イリアス様、これ預かってくれ」

「ん?」

 

 ヴィクトリーは、イリアスにミスリル鉱石を渡した。

 

「って、おもっ!?」

 

 渡されたイリアスは、ズシンっとミスリル鉱石を取り落としそうになる。しかし、どうにか踏ん張って見せた。

 

「舐めないでください! 私は女神で……」

「行くか……」

「ああ……」

 

 ルカとヴィクトリーは、先へ進む。

 

「お────い!」

「ちょっと、もう……! すみません、イリアス様……」

 

 スルーされたイリアスに、頭を下げながら二人についてくソニア。

 

「ふん、()()()()()()という訳だな。愉快なものよ」

「アリスさん、そんなギャグ言うタイプの人でしたっけ……」

「きゅっきゅっ」

 

 アリスとプロメスティンとヌルコも、ソニアの後を追う。

 

 とにかく、一行は先へと進んだのだった。

 

 

 このまま進んで、山頂に来たその時だった。

 

 急に、辺りが暗くなった。

 

「なんだ……!? 急に暗くなるなんて……!」

「強力な魔力が、気候や天候にさえ影響を与えているのだ……いったい、山頂に何がいるというのだ?」

 

 ルカとアリスの横で、プロメスティンが震えていた。

 

「これ、熾天使級じゃないんですか……? 地上に降臨するクラスじゃないですよ……!」

「……!」

 

 プロメスティンの横にいたヴィクトリーが、何かを察知する。

 

「どうしたヴィクトリー!?」

「あっちに、死にかけの気がある!」

 

 そう言って、走り出した。

 

「ちょっ……一人で行くなって!」

 

 ルカ達も、ヴィクトリーを追って走る。

 

「はぁ……はぁ……」

「ヴィクトリー……これは……!?」

 

 ルカとヴィクトリーが並び、それを見る。そこには、瀕死の重傷を負った天使が呻いていた。

 

「う……ううっ……」

「そ、そんな……この人は……!!」

「……ぐっ!」

 

 二人に、頭痛と幻覚が走る。

 

 見えたのは、イリアスに似たような大人の女……そして、命運をかけた戦いの最中に時空を突き破った白翼。

 

「ミカエラさん!?」

「ミカエラさんっ!」

 

 ミカエラ……この死にかけの天使が、それだと確信した。

 

「ミカエラだと!? それはルカの伯母の……いったい、何があった! 生命力が今にも消えそうだぞ!?」

「ルカ、なのですか……」

 

 ミカエラは、ルカの顔を見た。

 

「まさか、最期の時に会おうとは……」

「最高位の天使と見たが……いったい誰が、これほどの事を……」

「油断してはいけません……奴は、まだここに……」

「……っ!!」

 

 ヴィクトリーは、上空に目を向けた。それに釣られ、ルカ達も彼と同じ所を向く。

 

 そこには、異形の天使が浮遊していた。辛気臭い表情をした、体の組織の半分近くが機械で出来たような天使だ。周囲に立ち込めた強大な魔力は、この天使のものに違いない。

 

「お、お前はいったい……!!」

「我は、熾天使グノーシス……罪人に天罰を下すのが、我が使命……」

「熾天使……って事は、シオンと同格か……」

「ミカエラさんをこんなにしたのは、お前か!!」

 

 ルカはそう言って、グノーシスに剣を向ける……が、彼女は無表情を崩さない。

 

「半分は私だが……もう半分は、彼女がこの地上で暮らした日々。汚れた大地で、自ら力を断っての長い暮らし……その日々が、強大であったはずの力を大幅に弱めたのだ。全盛期の力であれば、私に勝ち目などなかったろう……なんとも惨めで、哀れなものだ」

「なるほど……地上暮らしで弱った天使を倒して得意顔か!」

 

 アリスがそう言った横で、ヴィクトリーが舞空術で飛ぶ。そして、グノーシスと同じ目線に来た。

 

「……俺は、ミカエラさんにはこれっぽっちの義理はねぇ。だけど、おめぇはぶっ壊さねぇと気がすまねぇ……!!」

「待て、少し試算する……」

 

 グノーシスの頭から、カチャカチャと音がする。

 

「現在のルカおよび魔王の断界乖離(だんかいかいり)26%……平均に比べて大きいものの、決定的段階には至らない。全員を処刑した場合、第三種断界接触に該当……カオス化の進行率125%、侵食範囲67%増……また一人はマルケルスの血統。この世界において、かの男の周辺が最も時空偏差が大きい……」

「マルケルス……!?」

「お前、父さんを知っているのか……!?」

 

 グノーシスの頭から音が止み、ルカの方へ向き直した。

 

「……リスクが多すぎる。お前達は処刑できない。まだお前達は、歴史に沿って動いているのだから」

「なんだと、どういう事だ!?」

 

 そう言い放つアリスに、グノーシスの目線は向く。

 

「神の導きに従い、慎ましく生きるがいい。歴史の流れから逸れた時、我々が裁きに現れよう……」

 

 グノーシスは、次にヴィクトリーの顔を見た。

 

「なるほど、お前がこの世界の特異点……本来なら三種断界接触に該当する筈だが、カオス化の進行率は0%……処刑しても変動は無し……か」

「何言ってやがる!!」

 

 ヴィクトリーは界王拳を使い、グノーシスに殴りかかった。しかし、魔力の防御壁が拳を阻んだ。

 

「焦るな……シオンは反対したが、私はお前を生かすべきだと考えている」

「なにを……!!」

「お前は、龍球世界の英雄(ヒーロー)表象(アバター)……借り物の力で何処までこの世界で足掻けるか見物(みもの)だな」

 

 グノーシスはそう言うと、煙のようにふっと消えてしまった。それと同時に、周囲に張り詰めていた魔力も消え失せてしまう。

 

「ちっ……逃げやがった!」

 

 ヴィクトリーは、皆の所に降りる

 

「あいつは! 訳の分からない事を並べて、結局逃げるとは……!」

「奴は去りましたか……」

 

 ミカエラが、ボロボロの体をルカに向けた。

 

「よかった……今のあなた達では、勝ち目など……」

「ミカエラさん、しっかり……! ソニア、回復をお願い!」

「既に回復魔法を使ってるんだけど……全然効かなくて……」

「ヴィクトリー、ミカエラさんに仙豆を!」

「だ、ダメだ……食道が焼かれてる……ひでぇ事を……!!」

「何をしようと無駄です……既にこの体は、生命力の殆どを失っていますから……」

「そ、そんな……何もできないなんて……!!」

「く……くそったれ……!!」

 

 絶望するソニア、悔しがるヴィクトリー……そんな二人を横目に、ミカエラはルカと話し続ける。

 

「ひとつ、心残りがあります……ルカ、あなたに何もしてやれなかったこと……」

「……」

「せめて、残された最期の力で……あなたに、勇者としての力を……」

 

 ミカエラは手を差し伸べ、ルカの手に重ねた。その瞬間、暖かな力がルカの体に流れ込んでくる……

 

「……!!」

 

 ルカの潜在能力が、グンと引き上げられた。

 

「こ、これは……この力は……!!」

「……」

 

 ナメック星の最長老が、似たような事をやっていたのを思い出す。今のルカは眠った力を呼び覚まされ、勇者としてのきっかけを得たのだ。

 

「まさか、これは洗礼か……? 女神イリアスにしか使えないはずの、聖素循環の力……!」

「み、ミカエラさん……!」

「ぐふっ……」

 

 ミカエラは、ヴィクトリーに目を向けた。

 

「今の洗礼……使う力はもう残されていません……ごめんなさい……あなたに、真実を伝えられずに……あなたを巻き込んでしまった事を、詫びる事も出来ず……」

 

 ミカエラはそこまで言って、大量に吐血した。

 

「も、もういい! 喋んじゃねぇ! マジで死んじまうぞ!」

「ミカエラさん……!」

「私に出来ることは、ここまでです……ルカ、ヴィクトリー……どうか、世界を…………」

 

 ミカエラの気が、完全に消えた。その体は、光の粒子となって消えていく……

 

「ミカエラさん……」

「……」

「……」

 

 目の前で、ミカエラが死んだ……二人にその悲しみと無力感が、胸に広がっていく。

 

「……ルカ」

「……ああ」

 

 だが、この胸にあるのは悲しみだけじゃない。

 

「二人共、大丈夫? ここでしばらく休んでいく……?」

「きゅ……きゅきゅ……」

 

 ソニアとヌルコも、二人の背中を見て心配していた。

 

「……俺は平気さ。だけど……」

「いや、僕も大丈夫だよ。ミカエラさんから、大切なものを受け取ったから」

「……」

 

 ルカは、ずっと勇者に憧れていたようだった。無邪気に、ただ童心のままに勇者になりたいと願っていた。しかし、今となってはその勇者の力の重みが違う。ミカエラが、命を捨ててまで託してくれた力なのだ。

 

「……報いねぇとな。ミカエラさんの為にも」

 

 力だけではない。世界を守る、その意志が受け継がれているのだ。

 

「ミカエラさん、安らかに眠って下さい。僕達は、その想いに恥じない勇者になります!」

 

 受け継がれた力と、そして想い。

 

「また一つ強くなったな、ルカ……貴様は、人の想いを抱えて強くなるのかもしれん」

「辛い時は私に頼ってよね、ルカ。いくらでも力になるから……」

「ああ……ありがとう、みんな……」

 

 ルカには、またひとつ倒れられない理由が出来たのだった。

 

「……」

 

 ヴィクトリーは、ミカエラの倒れた所を見ていた。

 

「あなたが誰かは存じませんが……その想い、無駄にするわけにはいきません。だから……あなたの想いを、少しだけ俺に分けてください」

 

 そして、拳をグッと握って祈ったのだった。

 

「しかし、なぜ同じ天使のはずのグノーシスがミカエラを……」

 

 アリスはそう言いながら、今度はルカとヴィクトリーに向く。

 

「それに、二人共……貴様らはミカエラと面識が無かったはず。なぜ、一目で分かったのだ?」

「……知ってる感じがしたんだ。一瞬、目の前に色々な光景が浮かんで……」

「俺も、あの頭痛と一緒に色々なもんが見えたんだ……多分、ルカのと同じだ」

「なにか、精神的な繋がりがあったのか……それとも、平行世界を行き来する力が絡んで……」

 

 色々言うアリスだが……ルカは、ヴィクトリーに向いた。彼も頷き、笑顔を返す。

 

「とにかく、行こう! まだまだやる事が山積みなんだからね!」

 

 ミカエラから受け継いだ想い。それは、この世界を救うこと。

 

 僕達はその信念と、そのための力を託された。悲しみも胸に、前に歩き出さないといけない。

 

 冒険は、まだまだ続く。勇者達は、その一歩を踏み出した……

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