もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
アモス山でミスリルを手に入れた戦士達は、サン・イリアへと戻った。
そして鍛冶屋でミスリルの装備を手にして、サン・イリア王のもとへ向かったのだった。
※
「どうやら、心は決まったようだな。私の頼み……とある護衛任務を受けてくれるかな?」
「はい、頑張ります!」
ルカが意気揚々と答えると、応じるようにサン・イリア王も微笑んだ。
「おお、ありがたい! それでは、細かい話を始めよう……」
サン・イリア王はそう言って、咳をついた。
「近いうちに、とある儀式を行う必要がある。古代神殿跡の再奥にて、イリアス様に祈りを捧げる儀式だ。もちろん、祈りを捧げるのは私なのだが……その古代神殿跡は、魔物が出没し非常に危険なのだ」
「なるほど……それで、護衛任務ですか」
「知っての通り、現在の戦争で我が軍は遠征軍を出している。それゆえ、精鋭の騎士も全て出払っているのだ。この儀式は秘するべきものゆえ、護衛は選ばねばならん。祝福なき勇者達ならば、信頼に足るだろう」
「期待されてんだな……へへへ、簡単じゃねぇか。法王様に傷一つ付けることなく神殿のモンスターを叩きのめしゃいいんだろ。簡単じゃねぇか」
ヴィクトリーは早速気合を入れてるようで、拳をパンッと叩く。
「古代神殿の内部では、強い魔物が出現する。往復の道のり、よろしく頼むぞ……」
「分かりました、お任せ下さい! それで、儀式はいつになるんですか?」
「今すぐ、古代神殿のあるラダイト村に行ってもらいたい。私も準備を終え、すぐに向かうとしよう……ラダイト村に着いたら、現地の神父に話し掛けてくれ。合流の手筈は、こちらで整えておこうぞ」
「もしかして、内部でも極秘なんですか……?」
ソニアがそう言うと、サン・イリア王はそこに目を向けた。
「いえいえ、詮索したつもりではないですけれど……」
「色々と、デリケートな儀式なのだよ。場所がラダイト村というのもあり、万全を期したいのだ」
「……」
ヴィクトリーは、腕を組んだ。
デリケートな儀式……そうなのは分かるけど、何やらきな臭すぎる。強いヤツと戦えればそれでいいが、裏がある気がしてならないのだ。
「それでは、先に行きたまえ。くれぐれも、任務に関して他言は慎むようにな……」
「分かりました……では、お先に」
ルカはそう言って、サン・イリア王に頭を下げた。
なんだか、どう考えても奇妙な任務だ……とはいえ、疑念を挟むような立場でもない。
目的地は、ここから北東にあるラダイト村。そこの神父に会い、現地で再び法王と合流しなければ。
そういう訳で、まずはラダイト村へと向かったのだった。
※
ラダイト村……嫌な感じがする、質素な村だ。
ここはイリアスの教えを、ただ純粋に信じている者の村である。そして、機械類……もといマキナを否定する、反マキナ派というものが発達している。何より寂しいのは、ここの村は完全に自給自足で暮らしているため、凄く質素な事だ。
「……自給自足、ねぇ」
「自給自足でやっていた時代、人間の寿命は今の半分ほど。医療技術の差よりも、栄養状態の偏りが大きいんです」
ヴィクトリーの言葉に、プロメスティンがそう返す。
「遠方と取り引きが行われ、様々な食事を口に出来るようになると、各集落で見られた栄養の偏りは根本的に改善されました。それを逆行させれば、平均寿命がまた縮んでしまうでしょう。文明の退行とは、そういうものですよ」
「新しいものを受け入れなきゃ、強くなれねぇ……むしろ、退化していく一方なのによ」
そんな会話をしていたら、村中の男からすごい顔で睨まれた。
「……何も言わねぇんか? プロメスティン。いつもなら嫌な事言って、相手を黙らせてんのに」
「論破というのは、される側にもある程度の知識が必要です。ここの方達は、その水準に達していません」
「そ、そっか……あはは……」
「ヴィクトリー、ここだ」
ルカはそう言って、ヴィクトリーを民家へ連れていく。
その民家で、神父が待っていた。
「猊下の護衛とは、あなた達の事ですね。お話は既に聞いております……法王猊下もじきにいらっしゃいます。我等も合流地点に向かいましょう」
「よっしゃあ、行こうぜ」
ヴィクトリーは、先に行こうとする。
「いえ……私達がここを出ては、村人に怪しまれます。あなた方は、先に西外れに行ってもらえますでしょうか」
「あの……そこまでして秘密にしておきたい儀式なんですか? 古代遺跡で祈りを捧げるって、別に大した事じゃ……」
「これは、教会の最高機密」
ソニアの言葉を遮り、神父はそう言って準備を進めていた。
「じきにあなた達も、目にする事になるでしょう……」
「宗教には
プロメスティンは、そう呟いた。
「そういう訳で、村の西外れにお願いします。くれぐれも、村人には悟られぬよう……」
「はい、分かりました……」
なんとも不可解だが……言われた通りにするしかない。
戦士達は民家を出て、西外れへと向かった。そこには言われた通り、さっきの神父が待っていた。
「おめぇ、どうやって先回りしたんだ……?」
「軽い転移魔法です」
ヴィクトリーの質問に答えてから、神父は周囲を見る。
「尾行もいないようですね。それでは……この森の奥に、古代神殿跡のある洞窟があります。さぁ、行きましょう」
そう言い、先頭に立った。
「きゅー!」
先を歩きながら、神父はヌルコに目を付けた。
「おや、この生き物は……」
「ヌルコってんだ。やけに元気だな……」
「きゅ、きゅー!」
「不思議な生き物ですね……」
そして、案内される事数分……それらしき洞窟の、入口が見えてきた。その横に、サン・イリアの衛兵が立っている。
「法王猊下が中でお待ちです。どうか、護衛をよろしくお願い致します。この洞窟の奥に、古代神殿跡があります。洞窟内ではまだ魔物が出ませんので、ご安心を……」
そう言って、ルカ達を洞窟へと通した。
引き続き神父を先頭に、洞窟を進んでいく。
「少々、ここのお話でもしておきましょう。これより立ち入る、古代神殿跡についてです」
神父は、唐突に話し始めた。興味深い話なので、皆黙って聞くことにする。
「教会派と反マキナ派が分裂する前……まだラダイト村が出来る以前まで話は遡ります。この洞窟に踏み込んだ地元の者が、偶然に古代遺跡を発見。報を聞いて駆けつけた我等は、その信じがたい姿に驚愕しました。それ以来、我々はこの一件に
「つまり……本当は、神殿ではなかったのですか?」
「……さて、先に進みましょう」
言葉を濁す、神父。濁しているというか、言葉を選んでいるような……何やら、相当に事情は複雑らしい。
「……話を続けましょう。発見された遺跡は、外部には古代神殿として伝えられました。後にサン・イリアは分裂し、反マキナ派はこの地に村を作ります。古代神殿のある地として、信仰回帰の意味合いがあったのですが……彼らは、この遺跡が本当は何なのか知らなかったのでしょう。そうでなければ、絶対にこの地に村など築きません」
「その遺跡って、いったい……」
「……後は、実際に目にして下さい。いかなる言葉よりも、実物が全てを語ります」
神父はそう言って、再び言葉を濁した。
神殿に近づくごとに確信に迫りそうな事は言うが、それでもまだ決定的な事は言わない……やはり、何か裏があるに違いない。
「……百聞は一見に
「そして百見は一触に
ヴィクトリーとプロメスティンが、進みながら話す。
そして、サン・イリア王の姿が見えてきた。
「猊下、一行をお連れしました」
「うむ、大義だった。お主は教会に戻るがいい」
「はっ……猊下、くれぐれもお気をつけを」
神父はサン・イリア王に頭を下げ、ルカ達に向いた。
「皆さんも、猊下の御身をよろしくお願い致します」
神父はそう言い、村に戻っていった。
「それでは、ここから先は私が同行しよう。よろしく頼むぞ……」
サン・イリア王はそう言うと、神父と入れ替わりでパーティに入った。
「分かっているだろうが、私は全く戦えん。そういう訳で、遺跡最奥までの護衛は頼んだぞ」
「はい、私にお任せ下さい!」
ソニアが元気よく出てきて、サン・イリア王の前でアピールする。
「猊下を害する者は、この棍棒でボコボコですよ!」
「あはは、見ろルカ! いつに増してソニアが頼もしいや!」
「あはは……」
ソニアのお陰で、リラックスするルカ達だが……サン・イリア王当人は、渋い顔をしていた。
「その言葉が本当なら……育ての親のラザロを、真っ先に叩きのめす羽目になるな」
「えっ!?」
驚くソニア。それを見たサン・イリア王は表情を崩し、いつもの物腰穏やかな顔に戻った。
「これは失礼、ちょっとした冗談だよ……」
「猊下のブラックジョークなんて、心臓に悪いですよ!」
「ラザロには、爆弾で派手に吹き飛ばされたからな……私も聖人ではないから、そう簡単に恨みは忘れられんよ」
「聖人じゃないって……法王猊下、世界でいちばん聖人デスヨネー!?」
「君の反応はいちいち面白いな」
「ああ、法王猊下にノリツッコミなんて……私、地獄行きになっちゃうかな……」
「いやいや、少しからかっただけだよ……」
ここでサン・イリア王はソニアに微笑んでから、遺跡の入口へと向いた。
「さあ、それでは行くとしようか」
「はい……!」
「へへへ、面白そうじゃねぇか……!」
ルカ達は気合を入れて、遺跡へと踏み込むのだった。