もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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サン・イリア王の『儀式』

「ここを知っているのは、教会上層部のごく限られた人間のみ。それと専門の知識を持ち、かつ信頼できる人物だけ……」

 

 サン・イリア王は、ふとそんなことを口にした。それに反応するのは、アリスだった。

 

「それを、なぜ我等に開示したのだ? 教会のお偉方にとって、我々など馬の骨だろうに……」

「もちろんお主達も、たまたま選ばれたわけではない。反マキナ派でないのは(さや)かで、女神の加護もある……何よりの理由は、タルタロスに出入りしている事だ。あの奇怪な場所で、色々な情報や遺物を手に入れているとか……」

 

 なんと、サン・イリア王は自分達がタルタロスに行ってる事を知ってたらしい。

 

「まさか、タルタロスの更に奥の事まで……」

 

 ソニアの言葉に、サン・イリア王は首を振る。

 

「手の内を明かすが……タルタロスの奥で何をしているかまでは、掴めなかった。こちらも色々と秘密を明かした事だし、ぜひそちらの事情も教えてもらいたいところだが……今は、先に進むとしよう」

 

 ルカ達はサン・イリア王に頷き、先に進む……

 

「見てください、これ! ここまで小型の集積回路なんて、初めて見ました!」

 

 プロメスティンは、何だかよく分からない複雑な機構を持つ機械を持ってはしゃいでる。

 

「そっちは、マイペースよね……」

 

 緊張していたソニアが、そう言ってため息を吐いた。

 

 

 そんな調子で進み、大きめの階段を登った先……一際広いエリアが、そこにあった。

 

「ここが最終フロアだよ。最奥までは、もうすぐだ」

「でも、最奥で何をされるつもりなんですか? まさか、本気でお祈りをされるわけじゃないですよね……?」

 

 ソニアが聞き、サン・イリア王は頷いた。

 

「うむ、秘密の儀式というのも外部を欺く口実。本当は、もっと重要な用事があってな……先程、あえてラザロの話を出したが……実は、あの暗殺未遂事件が関わっているのだよ」

「ラザロおじさんが……?」

「あの爆発だが、表向きは軽傷で済んだという事になっている。しかし実際は、瀕死の重傷を負ってしまってな……従来の医術では、もはや絶望的だった……そこで瀕死の私は、この設備に運び込まれたのだ」

「そうか、ここで最先端の治療を……それが出来るまでに、技術の解析は進んでいたのだな」

 

 アリスの言葉に、サン・イリア王はまた頷く。

 

 というか、こんなサイバーパンクな所にも医療技術があったらしい。もしかしたらここを利用してた者は、ここにずっと引きこもっていたのだろう。ならば、今その彼らは何処へ行ったのだろうか。

 

「うむ、そういう訳だ。こうして私は、なんとか命を取り留めたのだが……特殊な治療を受けたおかげで、面倒な身になってな。年に一度、定期的に特殊な処置を受けねばならん」

「その処置を受けるために、ここまで……そんな事情じゃ、大々的には言えませんよね。でも、犯人はラザロおじさんじゃないですよ……あれは、濡れ衣だったんですから」

 

 ソニアがそう言うも、サン・イリア王の表情は暗くなる。その顔からは、自らを爆発させた犯人への深い憎悪が……ある訳ではなく、技術者としての見解を述べる時の真剣な顔だった。

 

「私が犯人を許せんのは、爆弾などを使用した事だ。大勢を巻き込む危険性があるのに、そんな手段を取るなど……だいたい時限式を使うなど、なんと愚かな……少しのスケジュールのズレで、失敗する可能性があるのだぞ。遠隔式なり感圧式なり、色々あったろうに。なぜ時限式などという芸の欠片もない爆弾を……椅子に感圧センサーを仕込めば、最小限の爆発で済むはず。にも関わらず、大雑把かつ幼稚な技術で……」

「ほ、法王猊下……!?」

「い、嫌に爆弾に詳しいんだな……というか、爆破された事は恨んじゃいねぇのか」

 

 ちょっと引き気味のソニアとヴィクトリーを見て、サン・イリア王は咳をつく。

 

「私が大事にするのは、自らの身より民の安全だ。王として、我が国の民を害するものは……んん、失礼、先に進むとしよう」

「害するものは……なんだよ!?」

「法王様も、意外と武闘派なんですね……!?」

「ソニアがそれ言う?」

 

 余計な事を言ったルカが、ソニアに棍棒でガツンとしばかれた。

 

「ふーむ、これは……」

 

 プロメスティンは変な機械をまじまじと見てから、それを調べる……

 

「タッチスクリーンですよ、これ! しかも静脈パターンを読み取ってます!」

「そっちは楽しそうよね……」

 

 プロメスティンは、相変わらず未知の機械に夢中のようだった。

 

 

 そして、最奥部……

 

「うむ、ここが研究所の最奥だ。ここの機材は、半分以上が生きているのだよ……」

 

 周囲に並んでいるのは、やはり高度な技術で作られた機械。手馴れた様子で操作するサン・イリア王だが、ルカ達は置いてけぼりになるばかりだ。

 

 そんな法王の操作している機械の前……大型カプセルに、液体が満たされている。

 

「……ヴィクトリー、この中、何かいるぞ……」

「どれどれ……」

 

 二人でカプセルを覗き込んでみると、その中には……機械を身に付けた女性が眠りながら、浮かんでいた。

 

 否、身に付けてる訳では無い。よく見ると、体の殆どが機械で出来ていて……気を、感じなかった。

 

「女の子……!?」

「いや、アンドロイドだ……!!」

 

 ルカとヴィクトリーは、驚愕するばかり……そんな二人を横目に、サン・イリア王は機械を操作していた。

 

「眠り姫……と我々は呼んでいるよ。今の教会の技術では、起動する事さえできない」

「そんな、これ……完全な機械生命体ですよ。見た限り、生体はおそらく用いられてません……」

 

 プロメスティンも、眠り姫と呼ばれたそれを見て驚いているようだ。どうやら彼女も、こんな傑物は生み出す事は叶わないらしい。

 

「この研究所を作った者達は、どれほどの技術を……そして、その者達はどこに行ってしまったのでしょう……」

「きゅきゅ! きゅー!」

 

 考えるプロメスティンに、その足元で眠り姫を見ながら興奮するヌルコ。

 

「まぁ今のところ、用があるのは眠り姫ではなく、ここの最新鋭の設備なのだがね……そういうわけで、用事を済ませようか。さぁ、メンテナンスを始めよう……」

 

 サン・イリア王はそう言って、一通り操作を終えた後に静かにキーを押した。すると、機械が起動する。

 

「法王様、エンターキーをッターンって押すタイプじゃねぇんだな」

「キーを痛めてしまう上に、煩くて周りの気を散らしてしまうからな……システム起動、接続開始……すまないが、終わるまで少し待っていてもらうよ」

「あの、特殊な医療処置なんですよね……? お一人で出来るんですか……?」

 

 心配するソニアに、サン・イリア王は微笑む。

 

「ここのシステムは直感的に操作できる。優れたインターフェイスを使っているのだ。私にもそれなりの心得があるから、心配はいらんよ。スキャン実行中……10%、20%……」

「私も見学してよろしいですか? これX線じゃないですよね……磁気共鳴でもないし……」

 

 プロメスティンは一人で、何かを色々と見ている。ドライバーまで取り出してて、何か変なところを分解しないか心配だ。

 

「爆弾によって、瀕死のダメージを受けたのだろう? いかに最先端の医学でも、そこまで治るものなのか?」

 

 アリスはふと、そんな事をサン・イリア王に聞いてみる。

 

「80%、90%……スキャン終了。あの爆発で私は、肉体の半分以上を失ったのだよ……」

「半分以上って、そんな……!」

 

 ルカは、驚いた拍子に機械の操作パネルに手を乗せた。すると、静電気のようなものが流れ込んできた。

 

「わっ!?」

 

 同時に、少女の入っていたカプセルが鳴動する。思い動作音を放ち、重低音が周囲を揺るがす。そして──眠り姫が、眠りから覚めた。

 

「むっ……?」

「えっ……?」

「は……?」

 

 今まで、カプセルの中で微動だにしなかった彼女……その目が、ぱっちりと見開いたのだ。

 

「馬鹿な……! 研究チームが何をしても、起動は不可能だったのに……!」

 

 これには、サン・イリア王も驚いた様子だ。

 

「ルカ! 貴様いったい、何をやった!?」

「お、落ち着けアリス! ルカはそこのパネルにちょっと触っただけだ!」

「う、うん! 僕、何もしてない! 何もしてないよ!」

「それ、何かやった人の典型的セリフですよ……」

 

 言い合うルカ達の前で、カプセルを満たしていた液体の水位が下がって、無くなる。そしてその入口がゆっくりと開く。

 

 機械の少女は機械音を発しながら歩き、そこから出てきたのだった。

 

「システム再起動……現在年、ヨハネス歴1543年……現在座標、不明……機体名、ブリュンヒルデ……状況不明……」

 

 突如として目覚めた眠り姫、ブリュンヒルデ……彼女は、光の無い眼で周りを見渡す。

 

「……ヒルデ、どうして目覚めたの? ヒルデが目覚めるときは、世界が終わるとき……」

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