もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
ヴィクトリー達が向かった、北のお化け屋敷……埃が積もって蜘蛛の巣も張られ、カビの黒ずみが家の壁を冒している。かつては優雅な屋敷だったのだろうが、今は見る影もない。
「ここが、噂のお化け屋敷か……暗いしカビくせぇし、用が無けりゃ入る気にはならねぇな」
ヴィクトリーが気を感じてみると、確かに魔物の気が幾つかある。そして肉の腐った匂いが空気に混じっており、表情を僅かに歪めた。
同じくそれを察したアリス……
「腐敗臭……という事は、ゾンビ系のモンスターが居るかもな」
震えながらも、彼女はそう言う。やっぱりこういう場所は怖いんじゃないか……なんて突っ込んだら、雷が飛んできそうだ。
「とりあえず、屋敷の中を調べてみっか」
「そうだな、何が原因で兵士達が帰ってこなくなったのかを調べないとな……」
ヴィクトリーとサン・イリア王が先頭に出て、進む。
「何も出てくるな何も出てくるな何も出てくるな何も出てくるな何も出てくるな何も出てくるな何も出てくるな何も出てくるな……」
「大丈夫……? 光量補正、足りない……?」
その後ろでは、アリスとヒルデが着いてきてる……ヒルデは平気そうだが、アリスがガタガタ震えながら念仏のように呟いており、心配を誘った。
そうして進んでいると……何やら、不気味な人影が立っていた。
「オッス! おめぇここの住人か?」
ヴィクトリーが、相も変わらずそいつに元気よく挨拶する。不気味な人影はよく見ると美人なお姉さんと言った様相で、微笑みかけてきた。
「ふふふ、こっちよ……」
それだけ言い、扉をすり抜けて消えて行ってしまう。
「い、行かない方が……でも、おいしそうな匂いがする……ちょっとだけ、覗いてみないか……?」
アリスはクンクンと鼻を鳴らして、よだれを垂らして言う。
「アリス、おめぇああいうのは平気なんか……」
「アレはただのゴースト、魔物だ。余の敵では無い。それよりも、扉の先に……」
呆気に取られるヴィクトリーに、特に何事も無かったかのように言うアリス。しかも、美味しそうな匂いの方に釘付けのようだ。
「廃墟の屋敷ではなかったのか……?」
「気を感じるぞ……魔物の気だ」
ヴィクトリーとサン・イリア王はお互いを向き、頷く。そして、扉を開けて構えた。
そこはボロボロではあるが、かろうじて台所というのは分かった。そしてどういう訳か、ゴーストが三人で忙しそうに料理を作っている。
「夕食の準備よ……」
「今日も大忙しね……」
「いっぱい作らないと……」
ガチャガチャと、食器やら調理器具やらを使ったりして料理をしているのだ。こっちには気付いてはいるものの、料理の方が大事という様子だった。
「あ、ありゃ……?」
「襲ってはこないようだな……我が兵達は、ゴーストにやられたという訳では無いのか?」
呆気に取られる、ヴィクトリーとサン・イリア王。拍子抜けしそうになったが、警戒は怠らない。
ヴィクトリーがまた鼻を鳴らすと、アリスの言ういい匂いの発生源が分かった。
ゴースト達が作業しているその後ろのテーブルには、おいしそうなケーキがある。おそらく、これから発せられた匂いだろう。
「おいしそうなケーキがある……一口だけ、食べてみようか」
アリスは小声でそう言いながら、ゴースト達とケーキに目線をチラチラさせる。
「あっ、おいアリス!」
「ガマンできない……ちょっとだけ……」
アリスはヴィクトリーの注意を無視しながら、ケーキをつまみ食いした……その次の瞬間、ゴースト達が急にこちらに振り返った。
「つまみ食いをするのは……」
「だ 〜 れ 〜 だ 〜 ! ! ! ! !」
三人同時に、デカい声を出してこちらを驚かせてくる。
「余ではない!」
白眼を剥く、アリス。
「どう考えてもおめぇだ!!」
ヴィクトリーのツッコミが響き、それがゴング代わりになってゴースト達は襲いかかってきた。
「幽霊って奴か、面白ぇ!!」
「牽制する」
「任せて……」
ヴィクトリーが構える左右から、サン・イリア王とヒルデが飛び出す。
「デュエルカノン!」
「マシンバルカン、掃射だよ……」
サン・イリア王は腕を外し、切れ目から砲弾に見立てたエネルギー弾を発射してゴースト達の群れの中心を爆撃する。それで乱れた群れに、ヒルデのマシンバルカンが薙ぎ払われた。
「きゃっ……!!?」
「龍翔拳!!」
ヴィクトリーは打ち上がったゴーストの一体に、気を込めたアッパーカット──孫悟飯の必殺技である、龍翔拳──を食らわせて、ぶっ飛ばした。
「こ、こんな一瞬で……むきゅう……」
ゴーストの戦闘不能を確認した、ヴィクトリー。そんな彼に、残りのゴーストが襲いかかってきた……が、アリスが彼女らに尖剣技を一閃させる。
「スプラッシュフルーレ……」
アリスがそう言って華麗に剣を振り払ってから、鞘に納める。遅れて、ゴースト達は白眼を剥いて倒れたのだった。
「サンキュー、アリス!」
「礼には及ばん」
無事に、ゴースト達の奇襲を凌いだヴィクトリー達。やはり、サン・イリア王もヒルデも相当の実力者だ。
「それにしても、すんげぇな……これが、マキナの威力か……」
ヴィクトリーは、メカメカしい仲間二人を見る。
「言っただろう? 生身の人間には負けんと」
「ヒルデも、負けない……敵、倒す……」
どうやら、とんでもない二人を仲間にしてしまったらしい。
「どうやら、負けてらんねぇみてぇだな……!」
ヴィクトリーは拳を叩き、気合を入れ直す。ルカにもこのパーティを任せられてるので、尚更恥をかくことは出来ない。
「あ……ケーキが……」
そんなヴィクトリーの気合いなど知らんと言った様子で、アリスが声を漏らす。見てみると……先程までいい匂いで美味しそうだったケーキが、何故か腐りきっていた。
「あ、アリス……大丈夫なんか? ちょっと食ってた気がするけど……」
「余は魔王で、人間とは身体の作りが違う。腐ったものを食っても腹は壊さん……まぁ、流石に腐ったものを食う気にはならんがな……」
「ケーキ、腐っちゃった……ばっちい……」
「ゴーストの瘴気に当てられたのか、何かしらの魔術が働いたのか……」
思い思いにコメントしながら、屋敷の探索を続行するのだった。
※
台所を出て、向かいの扉……その前にも、誰か居た。
「あいつは?」
「奴は、呪いの人形娘だな。人形に魔素が宿り、それが魔物化したモンスターだ」
アリスは、顔色一つ変えずに説明した。
「……おめぇの怖い幽霊の基準って何処なんだ?」
「馬鹿者、アレはれっきとした魔物だ! 幽霊などではない! 幽霊なんて存在せんのだ、ドアホめ!」
なぜか、捲し立てられるヴィクトリー。
「わかった、わかった、俺が悪かったって!」
「……君は女性の尻に敷かれる素質があるな」
「意外と、押しに弱い……」
そうこう話していると、呪いの人形娘が無邪気に笑いかけてきた。
「おにいちゃん、あそぼう……?」
それだけ言い、扉へと入った。
「ここにも扉……お屋敷だから、行ける所が多いね……」
「行こうぜ、何だか面白そうだ」
「こ、こんなところに用事はあるまい。早くサン・イリアの兵を見つけなければ!」
「アリスの言う事には一理あるが……手がかりがあるかもしれない」
サン・イリア王はそう言って、今度は自分が先頭に立って扉に入る。
そこは、応接室だった。椅子と大きなテーブルがあり、その奥に先程の呪いの人形娘が居て、その両隣に大きい箱と小さい箱があった。
「おにいちゃん、あそぼう……?」
「あ、あそんではならん! すぐにここから出るのだ!」
「おおきなたからばこと、ちいさなたからばこ……どっちをあける……?」
「舌切り雀っちゅう奴か?」
「したきり、すずめ? ちゅん、ちゅん」
ヴィクトリーの言葉に、ヒルデは可愛らしくそんな事を言う。サン・イリア王は、興味深そうに彼の方を見た。
「君の世界にもあるのか」
「似たような昔話があるんだ。その時は小さな箱を開けた方が良い事があったんだぜ」
ヴィクトリーが、小さな宝箱を開ける。中には、小さなメダルがあった。
「まぁ、この宝箱ならこんなモンだな」
「よくばりなひとは、おおきいはこ……いいひとは、ちいさなはこをあけるんだよ……おにいちゃん、いいひとなんだ……またこんど、あそぼうね……」
呪いの人形娘はそう言って、姿を消した……
「満足したようだが、やはりサン・イリア兵の手掛かりは無しか……」
何処か、残念そうに言うサン・イリア王。
「きっと、あいつもこの屋敷で一人ぼっちで、寂しかったのかもな……」
「ヒルデも、分かるよ……一人ぼっちは、寂しい」
孤独の侘しさを理解出来る、ヒルデ。相手が人形とだけあって、何処か感慨に触れるものがあるのだろう。
「ほんじゃあ、大きい方も開けてみっか!」
「待てヴィクトリー……舌切り雀では、大きい箱を開けた者は不幸に陥っていたはずだ。警戒はすべきだろう」
大きな宝箱に向くヴィクトリーに、そう言って制止するサン・イリア王。
「そうだぞ、ヴィクトリー! 特に貴様が宝箱に触ったらロクな事にならん! なので、ここは余が……」
「大丈夫だって、舌切り雀と違って小さな宝箱から出てきたのは『莫大な富』じゃなくてこんなメダル一個ぽっちなんだからよ! それに、サン・イリア兵の手掛かりがあるかもしれ──」
ヴィクトリーがそう言いながら宝箱を開けると……その宝箱が大口を開け、彼の上半身に食らいついた。
「ぎええぇええええ!? 何だこりゃあぁあああ!!」
「のわぁあぁああ!? やっぱりーっ!!」
「だから警戒しろと言っただろう!!」
「びっくり箱……」
相も変わらず、ミミックには引っかかるヴィクトリーであった。