もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
屋敷の、3階……その廊下の突き当たりにある扉の前で、ヴィクトリー達は立ち止まる。
「……この先から、気を感じる……」
「ふむ、例のネクロマンサーだろう」
ヴィクトリーもサン・イリア王も身構え、その扉を開け放つ。
「な、なんじゃ貴様らは!?」
驚いた少女の声が、聞こえる。その声の主は、大きな気の主……黒い服装の、少女だった。
そいつはヴィクトリー達を見るなり、走って逃げてしまった。
「あっ! 待てっ!」
「追うぞ!」
少女が逃げた後を、走って追跡する。しかし、逃げた先はベッドルーム。なのに、その姿が無かった。
「逃げられたか……?」
「気も感じねぇ……どこ行きやがった……!?」
ヴィクトリーが、ベッドルームの中心に立って辺りを見回す。しかし、やはり少女の姿は見当たらない。
「ねぇ、これ……」
ここで、ヒルデが声を上げる。彼女が指してるのは、壁の貼り紙だった。一旦、ヴィクトリーもサン・イリア王もアリスもそれに注目する。
『たみぎがたわのかたべにたわかくたしつたうろ。かくたしべやにたは、たからたばこがあたるた。たぬきのクロムちゃん』
「うーん、うーん、ヒルデ、分からない……」
「……初歩的なたぬき暗号……」
「文章の『た』を除外する奴だよな……からばこ……?」
ヴィクトリーは、そこで引っかかって首を傾げていた。それに対して、アリスが呆れる。
「原文に「た」が含まれているから、全ての「た」を抜くと意味が通らん……これを書いた奴は、ドアホだな」
「あっ、そっかぁ……」
それを踏まえて解読すると……みぎがわのかべにかくしつうろ。かくしべやにはたからばこがある……とのことだった。
「……任務了解。右側の壁を捜索するよ」
「いや、その必要もねぇぞ」
既にヴィクトリーが、隠し通路を見つけていた。そして、その中へと入っていった。アリス達も、それに続く。
そうして入った、隠し部屋……そこは人骨や棺桶が散乱した、気味の悪い部屋だった。
そして、そこには例の少女が仁王立ちしていた。
「ええい、もう逃げ場は無いぞ! 貴様が、この下らんお化け屋敷の主だな!?」
アリスが出てきて、少女にそう言い放った。
「くくく、逃げ惑うつもりなどないわ……我が禁断の術、見せてくれる!」
少女は気を解放し、手をバッと広げた。
「さぁ、我が僕よ! 長き眠りより蘇れ!」
少女の魔力が、棺桶に宿る。すると、ゾンビが棺桶を開いて立ち上がり、彼女の横についた。
「やはり、ネクロマンサーか! 気をつけろ、そこらの小物とは違うぞ!」
ヴィクトリー達は武器を抜き、構えた。
「さあ、ゾンビどもよ! ここからつまみ出せ!」
「くるぞっ!!」
「ああっ!」
アリスが言い、ヴィクトリーも応える。そして気を解放した。
臨戦態勢を取ったヴィクトリー達だったが……少女が呼び出したゾンビの様子が、何やら変だった。
「わっ? な、なんじゃ……?」
ゾンビ二体は、少女を持ち上げる。そのまま、部屋からつまみ出してしまった。
「……」
「帰りたくなってきたぞ……」
これには、アリスも呆れていた。ゾンビ達はというと、棺桶に戻ってしまった。
「……」
ヴィクトリーは、そこら辺にあった紙片を拾ってみる。
『ゾンビに命令する際は、主語・述語・目的語をしっかりと』
「あ、あはは……」
まぁ、あの言い方だと、そうなっても仕方ない。そんな事より、奴を探さねば。
「ヴィクトリー、奴の気は?」
「ああ、今のが相当キたのか、気を隠すのを忘れてら……こっちだ」
ヴィクトリーは隠し部屋を出て、来た道を戻ってく。割と近く、廊下の隅に先程の少女が居た。
「逃がさねぇぞ!」
「に、逃げているわけではないわ! それに、ここは儂の屋敷……あらゆるトラップは、儂の意のままに動くのじゃ! まんまとその位置に誘導されおって! さあ、落とし穴に落ちるがいい!」
「ぐっ、しまった……!」
「は、はなれ……」
ヴィクトリー達が動くより早く、少女が指を鳴らす。落とし穴は、確かに作動した。
「うわ〜!」
少女の、足元に。
「えぇ……」
「ここの真下は……一階のメインホールだな。この屋敷に入った、入口のところだ」
アリスは冷静に、落とし穴を見ながらそう言う。
「い、行くぞ!」
「うーむ……卑劣な者かと思っていたが……」
ヴィクトリー達は再び走り出し、来た道を引き返す。そして、メインホールにまで戻ってきたのだった。
「サン・イリア王様! あれ!」
「なんと……」
あった筈の本棚が消え失せており、先への通路がある。その奥に、確かに少女の気を感じた。
「こんな場所に隠し通路か……地下への道が見当たらん訳だ」
「よーし、この奥か……!」
ヴィクトリーが先頭に立って、走り出す。そこは、地下室だった。しかも、これみよがしに牢屋まである。
「た、助けてくれー!」
その牢の中から、声が響いてくる。鉄格子の中に居たのは、サン・イリアの兵士達だった。それも、強者揃いの面子だが……
「おめぇら、まさか……行方不明になってた討伐隊の人達か!?」
「そ、そうです! ゾンビやゴーストにやられて、ここに監禁されて……戦死者や怪我人はいないけど……お婿さんに行けないような事をされて……ううっ」
「待っていろ、皆の者」
サン・イリア王が出てきて、兵士達を見る。
「げ、猊下! ま、まさかあなた様が直々に助けに来るとは、夢にも思いませんでした……!」
「ここの魔導師を倒したら、助ける。だから、あと少しだけ、待っていてくれ」
「は、はいっ! お待ちしております!」
とりあえず、行方不明になった人達を見つける事は出来た。後は、先程のネクロマンサーを倒すだけである。
そうして進んだ、地下室の最奥……やけに広い場所で、床に巨大な魔法陣が描かれた場所。その奥の大きな墓の前で、先程の少女が待ち構えていた。
「今度こそ、追い詰めたぞ!」
「なんなのだ、お前達は。なぜ、儂の研究所で暴れておるのじゃ」
「おめぇこそ、何モンだ? それに研究所って、どういう事だ?」
ヴィクトリーに対して、少女はふふんと笑う。
「儂の名はクロム、偉大なるネクロマンサーじゃ。この場所は、かつては処刑場……その後は、墓場として使われた場所なのじゃ。死体がゴロゴロしておるから、儂の研究には最適でのう……」
「研究だと?」
「儂はネクロマンサーなのじゃから、アンデッドの研究に決まっておる!」
「アンデッド……なんと忌わしい研究を……」
サン・イリア王はそう言い、表情を険しくする。先程までのゾンビラッシュに、相当心を痛めているようだった。
「特に、この屋敷で病死したフレデリカは良い素材でのう。それを材料に、究極のゾンビを作るのが儂の野望じゃ!」
「処刑場、墓場、病死した少女、悪い魔導師……聞いた噂は、全て本当だったって訳か……ここにうろついてるゾンビも、おめぇが生み出したんか?」
「ゴーストは勝手に湧いてきたものじゃが……確かに、ゾンビは全て儂の作品じゃぞ」
「死者の冒涜など、感心せんな……そのような振る舞い、見過ごすわけにはいかん」
アリスは武器を抜き、構えた。
「ふん、まだまだ儂は研究せねばならん事があるのじゃ。貴様のような邪魔者も、儂の実験体にしてくれるわ!」
クロムはそう言って、指を鳴らす。
「出てこいフレデリカ! 儂とお前の強さを思い知らせてやるのじゃ!」
次の瞬間、巨大な体躯をした女のゾンビが天井を突き破ってヴィクトリー達の背後に降りてきた。
「私は、クロムの僕……クロムの敵には、容赦しない……」
「とんでもねぇ奴が現れたな……コイツは俺が引き受ける!」
「余とサン・イリア王でクロムを叩く! ヒルデ、ヴィクトリーの援護に回れ!」
「我が兵達を陵辱した挙句、死者を冒涜するその行いは看過できん……容赦なく行くぞ」
「ターゲット確認、戦闘行動開始……」
ヴィクトリーとヒルデは、フレデリカと。サン・イリア王とアリスは、クロムの方へ向く。そして、戦いの火蓋が切られたのだった。
「よーし、いっちょやってみっかぁ!」