もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

68 / 183
クロム登場

 屋敷の、3階……その廊下の突き当たりにある扉の前で、ヴィクトリー達は立ち止まる。

 

「……この先から、気を感じる……」

「ふむ、例のネクロマンサーだろう」

 

 ヴィクトリーもサン・イリア王も身構え、その扉を開け放つ。

 

「な、なんじゃ貴様らは!?」

 

 驚いた少女の声が、聞こえる。その声の主は、大きな気の主……黒い服装の、少女だった。

 

 そいつはヴィクトリー達を見るなり、走って逃げてしまった。

 

「あっ! 待てっ!」

「追うぞ!」

 

 少女が逃げた後を、走って追跡する。しかし、逃げた先はベッドルーム。なのに、その姿が無かった。

 

「逃げられたか……?」

「気も感じねぇ……どこ行きやがった……!?」

 

 ヴィクトリーが、ベッドルームの中心に立って辺りを見回す。しかし、やはり少女の姿は見当たらない。

 

「ねぇ、これ……」

 

 ここで、ヒルデが声を上げる。彼女が指してるのは、壁の貼り紙だった。一旦、ヴィクトリーもサン・イリア王もアリスもそれに注目する。

 

『たみぎがたわのかたべにたわかくたしつたうろ。かくたしべやにたは、たからたばこがあたるた。たぬきのクロムちゃん』

「うーん、うーん、ヒルデ、分からない……」

「……初歩的なたぬき暗号……」

「文章の『た』を除外する奴だよな……からばこ……?」

 

 ヴィクトリーは、そこで引っかかって首を傾げていた。それに対して、アリスが呆れる。

 

「原文に「た」が含まれているから、全ての「た」を抜くと意味が通らん……これを書いた奴は、ドアホだな」

「あっ、そっかぁ……」

 

 それを踏まえて解読すると……みぎがわのかべにかくしつうろ。かくしべやにはたからばこがある……とのことだった。

 

「……任務了解。右側の壁を捜索するよ」

「いや、その必要もねぇぞ」

 

 既にヴィクトリーが、隠し通路を見つけていた。そして、その中へと入っていった。アリス達も、それに続く。

 

 そうして入った、隠し部屋……そこは人骨や棺桶が散乱した、気味の悪い部屋だった。

 

 そして、そこには例の少女が仁王立ちしていた。

 

「ええい、もう逃げ場は無いぞ! 貴様が、この下らんお化け屋敷の主だな!?」

 

 アリスが出てきて、少女にそう言い放った。

 

「くくく、逃げ惑うつもりなどないわ……我が禁断の術、見せてくれる!」

 

 少女は気を解放し、手をバッと広げた。

 

「さぁ、我が僕よ! 長き眠りより蘇れ!」

 

 少女の魔力が、棺桶に宿る。すると、ゾンビが棺桶を開いて立ち上がり、彼女の横についた。

 

「やはり、ネクロマンサーか! 気をつけろ、そこらの小物とは違うぞ!」

 

 ヴィクトリー達は武器を抜き、構えた。

 

「さあ、ゾンビどもよ! ここからつまみ出せ!」

「くるぞっ!!」

「ああっ!」

 

 アリスが言い、ヴィクトリーも応える。そして気を解放した。

 

 臨戦態勢を取ったヴィクトリー達だったが……少女が呼び出したゾンビの様子が、何やら変だった。

 

「わっ? な、なんじゃ……?」

 

 ゾンビ二体は、少女を持ち上げる。そのまま、部屋からつまみ出してしまった。

 

「……」

「帰りたくなってきたぞ……」

 

 これには、アリスも呆れていた。ゾンビ達はというと、棺桶に戻ってしまった。

 

「……」

 

 ヴィクトリーは、そこら辺にあった紙片を拾ってみる。

 

『ゾンビに命令する際は、主語・述語・目的語をしっかりと』

「あ、あはは……」

 

 まぁ、あの言い方だと、そうなっても仕方ない。そんな事より、奴を探さねば。

 

「ヴィクトリー、奴の気は?」

「ああ、今のが相当キたのか、気を隠すのを忘れてら……こっちだ」

 

 ヴィクトリーは隠し部屋を出て、来た道を戻ってく。割と近く、廊下の隅に先程の少女が居た。

 

「逃がさねぇぞ!」

「に、逃げているわけではないわ! それに、ここは儂の屋敷……あらゆるトラップは、儂の意のままに動くのじゃ! まんまとその位置に誘導されおって! さあ、落とし穴に落ちるがいい!」

「ぐっ、しまった……!」

「は、はなれ……」

 

 ヴィクトリー達が動くより早く、少女が指を鳴らす。落とし穴は、確かに作動した。

 

「うわ〜!」

 

 少女の、足元に。

 

「えぇ……」

「ここの真下は……一階のメインホールだな。この屋敷に入った、入口のところだ」

 

 アリスは冷静に、落とし穴を見ながらそう言う。

 

「い、行くぞ!」

「うーむ……卑劣な者かと思っていたが……」

 

 ヴィクトリー達は再び走り出し、来た道を引き返す。そして、メインホールにまで戻ってきたのだった。

 

「サン・イリア王様! あれ!」

「なんと……」

 

 あった筈の本棚が消え失せており、先への通路がある。その奥に、確かに少女の気を感じた。

 

「こんな場所に隠し通路か……地下への道が見当たらん訳だ」

「よーし、この奥か……!」

 

 ヴィクトリーが先頭に立って、走り出す。そこは、地下室だった。しかも、これみよがしに牢屋まである。

 

「た、助けてくれー!」

 

 その牢の中から、声が響いてくる。鉄格子の中に居たのは、サン・イリアの兵士達だった。それも、強者揃いの面子だが……

 

「おめぇら、まさか……行方不明になってた討伐隊の人達か!?」

「そ、そうです! ゾンビやゴーストにやられて、ここに監禁されて……戦死者や怪我人はいないけど……お婿さんに行けないような事をされて……ううっ」

「待っていろ、皆の者」

 

 サン・イリア王が出てきて、兵士達を見る。

 

「げ、猊下! ま、まさかあなた様が直々に助けに来るとは、夢にも思いませんでした……!」

「ここの魔導師を倒したら、助ける。だから、あと少しだけ、待っていてくれ」

「は、はいっ! お待ちしております!」

 

 とりあえず、行方不明になった人達を見つける事は出来た。後は、先程のネクロマンサーを倒すだけである。

 

 そうして進んだ、地下室の最奥……やけに広い場所で、床に巨大な魔法陣が描かれた場所。その奥の大きな墓の前で、先程の少女が待ち構えていた。

 

「今度こそ、追い詰めたぞ!」

「なんなのだ、お前達は。なぜ、儂の研究所で暴れておるのじゃ」

「おめぇこそ、何モンだ? それに研究所って、どういう事だ?」

 

 ヴィクトリーに対して、少女はふふんと笑う。

 

「儂の名はクロム、偉大なるネクロマンサーじゃ。この場所は、かつては処刑場……その後は、墓場として使われた場所なのじゃ。死体がゴロゴロしておるから、儂の研究には最適でのう……」

「研究だと?」

「儂はネクロマンサーなのじゃから、アンデッドの研究に決まっておる!」

「アンデッド……なんと忌わしい研究を……」

 

 サン・イリア王はそう言い、表情を険しくする。先程までのゾンビラッシュに、相当心を痛めているようだった。

 

「特に、この屋敷で病死したフレデリカは良い素材でのう。それを材料に、究極のゾンビを作るのが儂の野望じゃ!」

「処刑場、墓場、病死した少女、悪い魔導師……聞いた噂は、全て本当だったって訳か……ここにうろついてるゾンビも、おめぇが生み出したんか?」

「ゴーストは勝手に湧いてきたものじゃが……確かに、ゾンビは全て儂の作品じゃぞ」

「死者の冒涜など、感心せんな……そのような振る舞い、見過ごすわけにはいかん」

 

 アリスは武器を抜き、構えた。

 

「ふん、まだまだ儂は研究せねばならん事があるのじゃ。貴様のような邪魔者も、儂の実験体にしてくれるわ!」

 

 クロムはそう言って、指を鳴らす。

 

「出てこいフレデリカ! 儂とお前の強さを思い知らせてやるのじゃ!」

 

 次の瞬間、巨大な体躯をした女のゾンビが天井を突き破ってヴィクトリー達の背後に降りてきた。

 

「私は、クロムの僕……クロムの敵には、容赦しない……」

「とんでもねぇ奴が現れたな……コイツは俺が引き受ける!」

「余とサン・イリア王でクロムを叩く! ヒルデ、ヴィクトリーの援護に回れ!」

「我が兵達を陵辱した挙句、死者を冒涜するその行いは看過できん……容赦なく行くぞ」

「ターゲット確認、戦闘行動開始……」

 

 ヴィクトリーとヒルデは、フレデリカと。サン・イリア王とアリスは、クロムの方へ向く。そして、戦いの火蓋が切られたのだった。

 

「よーし、いっちょやってみっかぁ!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。