もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
遂に、本格的な旅立ちをした一行達。しかし、準備に時間を食いすぎたのか夕暮れはあっという間に訪れた。次の目的地までは、距離があるというのに。
「そろそろ日が暮れてきたな……」
ヴィクトリーの声で、ルカは空を見上げる。彼の言うとおり、空は夕焼けによって赤くなっており、今にも夜が訪れそうだった。
「そうだね……野営の準備をしなきゃ」
「それじゃあ、テント建てるね。ルカは、料理の方をお願い」
「ソニア、手伝うぜ」
ルカは早速、手際よく料理の準備をする。ヴィクトリーとソニアは、テントの準備をした。
「それでは、余はメシを食う係をしよう。くくく、夕食が楽しみだな……」
アリスはそう言いながら、腕を組んで木に寄りかかっているだけだった。
「手伝う気はないんだね……」
ルカは呆れたように言い、メンバーの為に料理を始めたのだった……
「ご馳走さま〜!」
テントを張り、ルカが作った夕食を食ってからようやくメンバーはリラックスした。
「流石は宿屋の息子、実に美味い夕食だった。貴様を共に選んだ余の選択、正しかったようだな……」
「て、照れるなぁ……」
ルカはアリスに褒められ、頭を掻きながら笑った。
「……」
就寝するにはまだ早い時間である。ヴィクトリーはとりあえず、ルカとアリスが話しているのに聞き耳を立てた。
明日は、イリアスベルクとやらに向かうらしい。大きい街だから、情報も集まるかも知れない。何より、アリスをあんな姿にした『白いウサギ』とやらの消息も気になる所だ。
「ともかく、四天王からも連絡が無いのは妙だな。グランべリアあたり、馳せ参じてもおかしくはあるまい」
「グランべリアって、あの魔剣士グランべリアだよね……」
「……」
魔剣士グランベリア──後で聞いてみると、この世界では知らない者は居ないほどの剣士らしい。アリスがホントに魔王ならば、それすらも部下になるということだ。
「まさか連中も、子供に戻されたわけではあるまい……あのウサギは、アリスを導くための魔術と言っていたからな……『アリス』とは、すなわち魔王の異名だが……それを導くとは、どういう事だ? アリスを導く白ウサギ……そう言えば、そんな伝承をたまもから聞いた気も……」
「不思議の国のアリス」
呟くアリスに、ヴィクトリーは無意識にそれを口にしていた。
「……ほう?」
「なんだ、それ……?」
興味を惹かれる、アリスとルカ。彼女らに、ヴィクトリーは向く。
「アリスって少女が、白ウサギを追いかけて不思議の世界に迷い込んじまう昔話さ。俺の世界の童話だ」
「貴様の世界の……? どういう事だ?」
「あ、アリスにはまだ説明してなかったな……」
ヴィクトリーは、いままでここに至る経緯を説明した。
「前の世界で悪魔と相打ちになって死んで、イリアスにここに連れてこられただと!?」
「ああ……どうやら、俺の有り余る好奇心が異界入りってのをしちまったみてぇなんだ」
「にわかには信じられんな……」
信じられない様子のアリス……しかし、無理はない。未だにルカだって、半信半疑の様子なのだ。
「じゃあ、こいつを見れば嫌でも信じるさ」
ヴィクトリーはそう言いながら、ホイポイカプセルを投げる。すると、地面への接地と共に煙を巻き上げ、カプセルが冷蔵庫になった。
「なん……だと……!?」
「えっ……!?」
「何だこれ……!?」
アリスもソニアもルカも、食い気味になって冷蔵庫を見る。ヴィクトリーはそんな三人の前で冷蔵庫を開け、コーラを取り出した。
「ルカの村の感じとかを見てると、ここはまだそんなに技術が発達してねぇ時代みてぇなんだけど……俺の世界は違うんだ」
コーラを飲みながら、ヴィクトリーはそう言う。
「その黒い液体……コーラというやつか?美味しいのか……?」
「うめぇぞ。飲んでみるか?」
この世界にも、コーラ自体はあるのか……なんて思いながら、ヴィクトリーは興味津々になっているアリスにコーラを渡す。
「……ごくり」
アリスは息を飲みながら、コーラを口にした。魔王様の、はじめての庶民の味というものらしい。
「しゅわしゅわ……おいしい……」
どうやら、お気に召した模様。不味い、と言われなくてよかった。
「へへへ、話を戻すぜ」
ヴィクトリーはアリスからコーラを返してもらい、仕切り直した。
「不思議の国のアリス……今のおめぇと似たような状況だとは思わねぇか?」
「……白ウサギを追いかけて、不思議の世界に……か」
アリスは考え込んでから……顔を上げた。
「まぁ、後々分かってくると思うが……その童話の事は参考にさせて貰うぞ」
「そう言えば、あの天使はどうなの?」
アリスの話が纏まったと思いきや、ルカが唐突にそんな事を言ってきた。
「あの天使……?」
「ほら、裏山で倒れてた……」
「ああ……」
あの、ヤムチャみたいな倒れ方をしていた天使か。イリアスと名乗ってはいたが……あの後、どうなったのかは知る由もない。
「非常に笑える事に、あれは間違いなくイリアス本人だ。神殿に降臨したヴィジョンと、その姿はそっくりだっただろう?」
アリスは断言しながらそう言い、気味良さそうにほくそ笑んでいた……
「まさか、本当に……イリアス様が、あんなお姿に……」
「でも、どうしてだ? これも例のウサギの仕業か?」
「いや……あれはおそらく、
「
その言葉を聞いた瞬間、また頭痛が走った。
小さくなったアリス、謎の研究所、赤髪の白衣の女……それらのヴィジョンが、一気にヴィクトリーの頭に流れ込んできたのだ。
「ヴィクトリー……また頭痛か?」
「ああ……いや、前の世界に居た時は、こんなんじゃなかったんだけどな……偏頭痛持ちなんかな、俺……」
ヴィクトリーは痛む頭をブンブンと振りながら、アリスに向く。
「とにかく、その
「ああ……イリアスが封印されたのは、おそらく30年前だな」
「『大異変』の日か……」
ルカが、不穏な事を言う。
「大異変?」
大異変──聞いてみると、その日は天変地異が多発したらしい。そして、異変と連鎖するかのように各地に大きな穴が空いた。それも、30年前にイリアスが封じられたからか……?
「30年が経ち、あのような姿でようやく脱出できた……しかし力も記憶も欠損し、あのザマという訳だ。問題は、いったい誰がイリアスを封じたかという事だ。まさか、邪神様が復活されたわけでもなし……」
「邪神……?」
「それって、聖魔大戦の……?」
「邪神様が復活されたなら、高らかに宣言がなされるはず。魔王たる余が、全く知らないという事などありえん。分からん、いったい何がどうなっているのだ……?」
ヴィクトリーは考えてから……拳を握った。
「結局、そのウサギとやらに聞くのが一番早い気がするぜ」
「そうだよ」
ルカも、俺の意見に便乗してきた。
「そのウサギ、アリスを導くとか言ったんだろ? それなら、またコンタクトしてくる可能性も高いよ」
「確かにそうだが……大人しく、導かれてやるのも腹が立つな」
アリスはそう言ってから、二人に向かった。
「それより、貴様らはいいのか? 貴様らの旅の目的は、ルカの父親を探す事なのだろう?」
「もちろん、それが第一の目的だけどね。旅の途中で困ってる人や魔物は、ぜひ助けたいんだ。それに……父さんの旅の目的も、どこかで繋がってる。ただの予感だけど、そんな気がするんだ」
「俺は強くなりてぇし、戦いてぇ。それがありゃいい」
立派な事を言うルカとは対して、ヴィクトリーはまるで知能が欠けたような回答をする。そんな彼に、ジト目を向けるルカ達。
「戦闘狂か貴様は……」
「いや……もちろん困ってる人も助けてぇし、悪い奴が居たらぶっ飛ばしてやりてぇんだ!」
それに……この世界に着いてからの頭痛の正体が知りたい。突発的に来る、数秒の頭痛……それと共に浮かぶ、謎のヴィジョン……いったい、これが意味するものとは…?
「ならば、しばらくは付き合ってもらうぞ。道すがら、ルカの父の情報も集まるかもしれんな」
「ああ、宜しくね!」
ルカの父親探し、アリスのウサギ探し、そしてヴィクトリーの頭痛の謎探し……この三つは、確実に繋がる気がした。
「ねぇ、ルカ……」
「ん、ソニア?」
ソニアが、ルカに話しかけてきた。
ヴィクトリーは、二人の邪魔をしないように配慮しながら、その話に聞き耳を立ててみる。
ソニアは幼い頃に、裏山でスライムに囲われて困っていた事があった。それを、誰よりも早く助けに来たのがルカだった。ちなみに、何故裏山に入ったかと言うと、彼のあとをついて行ったら勝手に迷ってしまったとか……
「でもね……こうして二人で夜空を見てると、あの時の事を思い出しちゃった」
ソニアはそう呟き、夜空を見上げた……
「……二人!?」
明らかに二人以上いると言うのに、居ないもの扱いされてしまった……
とにかく、こんな感じで諸々の話は終わった。
「まだ寝るには早いな……剣の素振りでもするか」
ルカの方は修行に入るらしい。
「貴様の剣は、なかなかへっぽこだな。いったい、誰に教わったのだ?」
「誰にも教わってない我流だよ。ラザロおじさんも、剣を教えてくれなかったし……」
「私は、おじさんから棍術を教わったんだけどね」
ルカ達が話してる隙に、ヴィクトリーは自分の修行に入る。
「……」
手をグーパーし、自分の気を確認する。まずは、あの時のステータスや技を取り戻す必要がありそうだ。
「……はぁっ!!」
ヴィクトリーが力み、気を解放する。すると、オーラが体から滲み溢れ、爆発するかのように膨れ上がった。
「っ!?」
「きゃっ!?」
「なにっ……!?」
ヴィクトリーの巻き上げた気の旋風に当てられたルカ達は、驚いて彼の方に注目した。
「……なんだと?」
驚いているのは、ヴィクトリーもだった。
来て一日目までは、こんな事出来なかった。基礎的な体力は三日で取り戻したとはいえ、こうまで気の扱いを取り戻す事は難しい筈だ。よくよく考えたら、タラスの丘でやった、あのエネルギー弾連射もおかしい。
なぜ、気の流れがアッサリと掴めるのか……
「ヴィクトリー……お前、魔法使いでもあるのか……?」
「魔法使い……?」
ヴィクトリーは、ルカの話を思い出す。
大異変の日から大気中の聖素や魔素が濃くなって、一般人でも魔法が使えるようになったとか……どうやら、気の扱いの上達ぶりは、その影響らしい。元々体が覚えているから、使えても不思議じゃないということか。
「丁度いい……ヴィクトリー、余の魔法も教わってみないか?」
「いや、俺は自分で引き出しがあるからいいよ……」
「そうか……残念だ」
残念そうにするアリスは、ルカと共に剣技の修行に入った。
そして、ヴィクトリーも自分の修行に入った……
「よし、かめはめ波から初めてみっか!」
自分に都合のいい事が起きている以上は、活用しない手はない。まずは汎用性も威力も抜群の技を覚えることにした。
かめはめ波……ドラゴンボールを知っているならば、聞いたことぐらいはあるだろう。全身のエネルギーを一点に集中させ、それを撃ち放つ技だ。
ヴィクトリーは手を合わせて構え、全身のエネルギーを掌に集中させた。
「か……め……は……め……波っ!」
そして、手を突き出す。すると、ライターの火ほどのエネルギーがボッと吹き出た。
確かに、かめはめ波は出たが……
「これじゃあダメだ……」
当然、こんなんじゃ実戦に使えない。相手がそこをチラッと見て、それで終わりである。攻撃に使えるものでは無い。
「よーし……続けてみっか!」
しかし、諦めるわけにはいかない。気の扱いは覚えているので、もう少し頑張れば戦闘用に調整できるはずだ。
ヴィクトリーの修行は、遅くまで続いた……