もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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風の精霊・シルフ

 精霊の森を進む、ルカ達。黒のヴィクトリーや謎の化け物の噂で不安を胸にしながらも、とうとうその最奥へ辿り着いたのだった。

 

「……おい」

「うん……」

 

 最奥部には、小人のような精霊が瞑想していた。ただの精霊でも、ちぃぱっぱのような小物でもない。尋常ではない気を、その小さな体に秘めているのが感じられた。

 

「……オッス!」

 

 ヴィクトリーが、挨拶に出た。精霊はそれに応じて、目を開ける。

 

「あれれ……? 人間が、ここに何の用……?」

 

 どうやら、そこまで野蛮な奴では無さそうだ。

 

「ああいや、ちょっとコイツが用があるってここに来てな。俺はただの付き添いさ」

 

 ヴィクトリーはそう言って、ルカに向く。

 

 ルカは頷き、精霊の前に歩み出た。

 

「えっと……君が四精霊の一人、シルフかい?」

「そうだよ、あたしがシルフだよ。あたしに何の用?」

「君の力を借りるため、ここに来たんだけど……」

「なんで、あたしの力が欲しいの? その理由、聞かせてくれるよね……?」

「……」

 

 ルカは少しだけ考え……顔を上げた。

 

「ここに来るまでに、色々な人から色々なものを託されたんだ。中には、僕に力を託して死んだ人もいる……その想いを無駄にしないためにも、力が必要なんだよ。だから、君の力を貸してほしいんだ」

「俺達にはその想いに報いる義務がある……この通りだ。ルカに、力を貸してやってくれ!」

 

 ヴィクトリーもそう言って、シルフに頭を下げた。

 

「そうなんだ……あたしの力、悪いことには使わないみたいだね。でも……精霊の力は、弱い人間には貸せないの。というより、弱い人間には力を使いこなせないの。だから……」

 

 シルフは瞑想を解いて、ふわふわと浮かぶ。

 

「ここで、キミと勝負だよ! あたしの力を使いこなせるかどうか、確かめてあげる!」

「ああ……!」

 

 ルカは剣を抜き、構える。

 

「仮にも、余が認めた人間だぞ……試験まがいの戦いなど無用、とっとと終わらせてくれる!」

「あたしも、ガンガンいくよー!」

「きゅーっきゅーっ!」

「つねづね、妖精を解剖したいと思ってました……」

「オマエ、世界の敵……? じゃあ、ヒルデがやっつける……」

「待てよみんな」

 

 ヴィクトリーが、戦闘態勢に入る皆を抑えた。

 

「?」

「どうしたヴィクトリー?」

 

 アリス達は体勢を解き、ヴィクトリーに向いた。

 

「これは、ルカがシルフの力を借りるための試練だ……俺達が手を出す必要はねぇ。そうだろ?」

「……」

 

 ルカは頷いてから、シルフに向く。

 

 ヴィクトリー達は下がり、安全な所まで移動する。そして、ルカの戦いを見る事にした。

 

「えへへ、ちゃんと正々堂々と試練を受けるんだね! あたし、キミの事気に入っちゃった!」

「ああ……はぁあああっ!!」

 

 ルカは気を解放して、辺りに旋風を巻き起こした。

 

「っ!!」

「いきなり本気みたいね……!!」

「きゅっ……」

「マスター、凄いエナジー……!」

 

 気に当てられた皆は、ぶっ飛びそうになる所を踏ん張る。

 

「ルカの奴、更にパワーアップしてやがる……」

「研究所の探索の最中、何度も襲われたので……貴方の真似をするって、全員一人で相手にしてたんですよ」

 

 驚くヴィクトリーに、そう言うプロメスティン。

 

 どうやら、別れてる間に戦ってたのはこっちだけでは無かったようだ。

 

「……いくぞっ!!」

「うんっ!」

 

 ルカは剣を抜き、その場で思いっきり振り下ろした。そこから円盤状のエネルギーが回転しながら、シルフに迫る。

 

「あはっ!」

 

 シルフは高速移動でそれを避け、姿を消す。

 

「なっ!?」

「えーいっ!」

 

 驚くルカの背中を風魔法で撃ち抜き、ぶっ飛ばした。

 

「くっ!」

 

 ルカは体勢を整えながら着地し、腰を落として剣を寝かせながら構える。そして踏み込みと同時に加速し、疾風のような突きを放った。

 

「おっとぉ!」

 

 シルフはそれを胸を掠らせながら避け、ルカの背後に回る。そして、ありったけの魔力で風魔法を放ったのだった。

 

「っづぇえいっ!!」

 

 ルカは振り向きざまに全力で剣を振り、風魔法を弾き飛ばす。弾かれたそれは鋭く刺すような突風を巻き起こし、木々を薙ぎ倒した。

 

「い、いででで……!!?」

 

 剣を持ってる腕が、痺れる。相当の威力だったらしく、当たってたらヤバかっただろう。

 

 そんなルカに休む暇も与えず、シルフは手を向ける。

 

「いっくよー、それそれそれ!」

 

 放たれるは、真空波。突風を伴った風の刃が次々に飛んできて、ルカに迫ってきた。

 

 ルカは横に走り、その後を追うように草木が切り飛ばされる。マシンガンの掃射のようなそれを走って避けながらも、うずまきを描くようにシルフに接近する。

 

「ったぁあっ!!」

 

 ある程度近づいた所で踏み込み、正面から突撃するルカ。真空波を剣ではじきながら一点突破し、シルフの腹に蹴りを入れた。

 

「っぐ……!?」

 

 シルフはぶっ飛び、ルカは追う。吹っ飛んでる最中の彼女に追いつき、追い打ちをかけようと剣を振り下ろした。

 

 しかし、その剣は空振ってただ地面を叩き切るだけだった。シルフが、残像を残して消えていたのだ。

 

「なにっ……!?」

「い、いたたた……まずは、及第点って所だね」

 

 背後から、シルフの声。振り返って見れば、蹴られた所をパンパンと叩いてホコリを払っている。その口ぶりからして、まだまだ余裕と言った風だった。

 

「それじゃ、二次試験開始!」

 

 シルフは前方に手を突き出し、周りに緩やかな旋風を巻き起こす。そよ風のようなそれが、彼女の髪や服を靡かせていた。

 

「この状態のあたしに、攻撃を当てられるかなっ!? 当てられたら、力を認めてあげる!」

「やってやるさ!」

 

 ルカは、すかさず攻撃しようとする。剣がシルフに迫り、直撃しようとしたその時だった。

 

 風が急に吹き荒れ、防護壁となって剣を弾いてしまった。

 

「うわっ!?」

「えへへ、そんな攻撃じゃ意味ないよ!」

 

 得意気に言うシルフに、ルカは切り込む。しかし、疾風のような突きでも、剣を左右に往復して連続攻撃しても、踏み込みからの突き上げでも、風の防護壁は破れそうにない。

 

「っ、これならっ!!」

 

 ルカは、走ってその辺の木を忍者のように駆け上がる。そこから跳んで、剣を振り上げてから渾身の兜割り──天魔頭蓋斬を繰り出した。

 

「あまいっ!」

 

 しかし急に突風が吹き、技が形になる前に宙に浮いてる状態のルカを吹き飛ばしてしまった。

 

「うわぁっ……!!」

 

 ルカは投げ出され、尻もちをついて倒れる。しかし、すぐに立ち上がった。

 

「く、くそ……真正面からも下からも上からも無駄……死角がない……!!」

 

 風の防護壁……死角が無く、剣の攻撃がアレでは通らない。

 

「ふっふーん、もう終わりかな?」

「なんの、まだまだ……!」

 

 ルカは立ち上がりながら、考える。

 

 そう言えば、風の防護壁と言えば……モリガンが使っていたのと似ている。モリガンの方が風の壁が厚く、暴れているかのようなものだったが……それを、突き破った男を知っている。

 

 出来るはずだ。そいつが出来たんだ、僕に出来ない訳が無い。

 

「……はぁあっ……!!」

 

 ルカは剣を寝かせ、腰を落とす。また、突きの構えだ。

 

「ふふん、突きはさっき弾かれたでしょ? それとも、策があるのかな!?」

「疾風突き……!!」

 

 ルカは踏み込み、急加速して疾風のような突きを放つ。それが風の防護壁に触れ、その風に剣ごと吹き飛ばされそうになるが……剣を握る手に全力を込め、更に踏み込んだ。

 

「血裂雷鳴突きッ!!」

 

 そこから、更に急加速する。刃は雷鳴を伴って風を切り、一点突破の勢いで防護壁を突き破ったのだった。

 

「っはっ!!?」

 

 シルフに、血裂雷鳴突きが直撃する。剣から雷が迸り、凄まじい衝撃波と共に彼女を吹っ飛ばしてしまった。

 

「ふえ────っ!!?」

 

 シルフはそう叫びながら、木にべちゃりと叩きつけられた。

 

「る、ルカの攻撃が当たったぞ!」

「という事は……!!」

 

 ヴィクトリーとアリスが、盛り上がる。

 

「や、やった……! これで、僕の勝利だ!」

 

 ルカが行ったのは、二重加速による一点突破だった。

 

 イリアスポートからナタリアポートに行くまでの、あの最悪の修羅場……あそこでヴィクトリーは暴風壁に足先が触れた瞬間に界王拳を使って急加速、吹っ飛ばされるより先に蹴り足をモリガンに届かせ、それで蹴っ飛ばした。

 

 それを、参考にさせてもらったのだ。

 

「いったたたた……それじゃあ、合格だよね!」

 

 シルフは立ち上がり、ぽんぽんと服の汚れを払った。あれだけの攻撃を受けても元気な様子なのは、さすが精霊と言った所だろうか。

 

「約束通り、あたしが力を貸してあげる! まずは召喚契約だね……やー!」

 

 シルフはルカに手を向け、発光する。その光がルカに集まり、風の力がその身に宿された。

 

「え……!? なんだ、これ……?」

 

 ルカの全身に、不思議な感覚が広がっていく。自分の体が、周囲の風と混じってしまったかのような一体感。どこまでも早く走れそうな程に、身体が軽く感じる。

 

 ヴィクトリーはそれを見ながら、唾を飲んだ。

 

「ルカから、すっげぇ気を感じる……これが風の力か……」

「ルカに召喚の心得がなくても大丈夫な、専属契約! あたしの姿をイメージしながら気を解放すれば、あたしを呼び出せるからね。それに、あたしも他の四精霊の事とか気になるし、一緒についていくよ。よろしくねっ!」

 

 シルフはそう言って、ルカの体に入り込んだ。

 

「わっ……!」

「うむ、これで目的は済ませたな」

 

 アリスが出てきて、言う。他の皆も新たな力に目覚めたルカを囲んだ。

 

「凄いじゃない、ルカ! 一人で精霊の試練に合格しちゃうなんて!」

「きゅーっ! きゅきゅーっ!」

「マスター、すごい力……」

「精霊を飼えるとは、興味深い……あっ、こういう時のために鳥カゴを用意してきたので」

 

 プロメスティンが不穏な事を言いかけていた、その時だった。

 

「……な、なんだ、この気は!?」

 

 ヴィクトリーの気の察知に、異様な気が引っかかった。しかもそれは膨れ上がりながら、こちらに向かっている。

 

「ヴィクトリー、どうしたの!?」

「きゅーっ!」

「と、とんでもねぇ気がこっちに向かってきてる!!」

「なんだろう、これ……背中のあたりが、ぞわぞわするんだけど……」

「なんだ、この異常な魔力は……! 聖なる力に近いが、天使にしては禍々しすぎるぞ……!」

 

 アリスも、魔力察知に何か引っかかっている。おそらくヴィクトリーが感じているものと、同じだ。

 

「みんなーっ!! おっそろしい奴が来るぞーっ!!」

 

 ヴィクトリーの指示で、メンバー達は臨戦態勢を取る。その正面から、気の主が姿を現した。

 

「シ……ンシィ……天使……!!」

 

 天使が溶け込んだような禍々しい鎧、放たれる聖なる力と禍々しい気……

 鎧の狂戦士が、ルカ達の前に現れたのだった。

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