もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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憂うつな幕切れ

「ふん、こんな所で睨み合っていても始まらん……」

 

 黒のヴィクトリーはそう言い、目を瞑る。次第に身体の傷が再生し、元通りになったのだった。

 

「私は、一足先に帰らせてもらう。既に目的は達成したのでね……」

 

 そう言いながら、ネロに背中を見せる黒のヴィクトリー。しかし、その肩は掴まれる。

 

「いいえ、正体が分かるまでみすみす逃すわけにはいきません」

「ほう? 正体、か……」

「何故貴方がヴィクトリーさんの姿をして、その名を騙っているのか……そして、なぜその体から魔王の力を感じるのか……」

 

 ネロは、黒のヴィクトリーから放たれる力に魔王の力が混じっていた事に気付いていた。恐らくは再生能力も、魔王の力によるものと予想できる。

 

「なにより、何を企んでいるのか……全て、教えてくれますか?」

 

 ネロの掴み手に、力が入る。「ミシ……」と軋む音が鳴るが、黒のヴィクトリーは余裕の様子でニヤリと笑った。

 

 その時だった。ネロの背後から、暗黒の魔力を纏った杖が無数に飛んできた。

 

「……っ!!?」

 

 ネロは身を翻し、それらを避ける。そして、すぐさま黒のヴィクトリーの方へ向いた。

 

「ふははは……!」

「シーズニングアロー……」

 

 見れば、黒のヴィクトリーの横に、赤い髪の青い貴族服に身を包んだ魔神……ドミグラが居た。二人で並んでおり、黒のヴィクトリーは笑っていてその隣でドミグラが手を向けている。

 

 そして、二人の背後には次元の穴が空いていた。

 

「なっ!?」

「それでは御機嫌よう……ふはははは!」

 

 黒のヴィクトリーはドミグラを連れて、次元の穴に入る。その穴も二人が入ったら、すぐに閉じて消え失せてしまった。

 

「……逃がしましたか……」

 

 ネロはそう言いながら、一人で精霊の森に佇む。どうにか狂戦士を追い払ってルカ達を守れたというのに、何やら憂鬱な幕切れになってしまったこだから仕方がない。

 

「ネリスの奴……ルカさん以外の仲間はそこらに捨ててないだろうな……?」

 

 そう言いながら、ネロもその場を後にするのだった。

 

 

 ヴィクトリーは、夢を見ていた。

 

 イリアスベルクにて、グランベリアが街に強襲してきた事でルカが心折れてしまい、イリアスヴィルに逃げ帰ってしまった。

 

 心折れたルカはソニアが面倒を見てくれていた。その代わりに自分一人で修行して……三ヶ月後に、再びイリアスベルクへ向かってグランベリアと対峙する。

 

 そこで戦ったのだが……やはり、グランベリアは強すぎた。圧倒に次ぐ圧倒……一度逃げ帰ったことにより戦士失格の烙印を押されており、恥も省みず挑んだ事によって攻撃は苛烈になっていた。

 

 吹っ飛ばされて建物に叩きつけられ、炎を纏った剣で斬られ……ボロボロになっても、意地と根性で立ち上がるヴィクトリー。

 

 イリアスベルクの街人は、「もうやめてくれ」「分かったから、もう立つな」「死んじまうよ」なんて情けない声で言ってるが……ヴィクトリーは、闘志を燃やし続けていた。

 

 血塗れでボロボロのヴィクトリーが、何度でも立ち上がり続ける様子を見たグランベリアは次第に冷や汗を垂らしながら後ずさる。実力で圧倒してるはずの彼女が、どういう訳か余裕を無くしている。

 

 その際の、会話が耳に響く。

 

「貴様……何故そうまでしてこの街を守ろうとする!? 英雄になりたいと言う願望か!? 敗走の屈辱を(すす)ごうというのか!?」

「そんな事考えてる余裕ねぇよ」

「ならば、何故だ!!」

 

 グランベリアの炎を纏った剣が、迫ってくる。狙いは、こめかみ……峰打ちで、あくまで不殺のまま勝利するつもりだろう。

 

 だが、ヴィクトリーはその剣を止めて見せた。

 

「命懸けで戦ってる時に、()()()以外考えてるバカがいるか?」

 

 

「……」

 

 ヴィクトリー、目を覚ます。ここは、ポケット魔王城のベッドルームのようだった。

 

 あの夢は、何だったのだろう。どうして、顔も知らない奴とあんなに命懸けで戦っていたのだろう。

 

 もしかしたら、一個目のタルタロスを探索した後の作戦会議でアリスが言ってた、「あの世界の貴様(ヴィクトリー)」なのだろうか……

 

「ようやく起きたね」

 

 ルカが、声をかけてくれた。目が覚めるまで、傍に居てくれたようだ。

 

「変な夢を見ていたみてぇだ……」

「夢か……僕も……いや、アレは……」

 

 何やら妙な体験をしたらしいルカ……その体から、聖なる力を僅かに感じた。

 

「ルカ、おめぇ……」

「ああ、うん……僕の母さんは天使だったんだ……だから、僕も……」

「そうか……不思議な力は残ってんのか……」

 

 ヴィクトリーは起き上がり、所持品を確認する。無くしたものはないし、全て揃っているようだ。

 

「……」

 

 ヴィクトリーは、自分の両手を見る。自らの奥に眠るパワーが、また一際大きくなってるのを感じたのだ。それは、どういう訳かルカにも感じる事が出来た。

 

「サイヤ人の特性か……死にかけてから復活すると、パワーアップするって……」

「ああ……パワーアップしたのは、おめぇだけじゃねぇってな」

 

 今のヴィクトリーなら、3倍以上の界王拳も使えるだろう。

 

「それにしても……いったい、何がどうなってるんだ……?」

「ああ……俺達は精霊の森で鎧の狂戦士にぶっ殺されそうになった……だけど、あの黒い俺に助けられた……まではいい」

「うん……何で、無事にここに居るんだろうね。それに、傷も全快してるみたいだし……」

 

 そうこう話していると、扉が開かれた。来たのは、アリスだった。

 

「アリス」

「……気が付いたか。どうやら我々は、あの自称17世に救われたようだぞ。ネロもいたようだが、余も気を失ってしまってな。あんな連中に助けられるとは、なんたる不覚……」

「そうなのか……あの人達には、助けられてばかりだね」

「だけど、一番に気になる奴が居るぜ……」

「ああ……あの黒い貴様か……奴が、例の『黒のヴィクトリー』とやらで間違い無さそうだ」

 

 ネロとアリスフィーズ17世……そして、黒のヴィクトリー。三人とも何を考えているか分からないが、俺たちを助けてくれた。

 

「それに、あの鎧の狂戦士はいったい……」

「何だったんだろうね、普通じゃなかったよ……」

「俺達の世界にも、あんなんは居なかったぜ……」

 

 三人は、頭を傾げる……しばらくして、ルカが頭を振って二人に向いた。

 

「でも、一応目的は果たせたんだ。シルフとも、ちゃんと契約できたしね」

「わ〜い! いっしょだよ〜!」

 

 ルカの中に、変な気を感じる……これが、精霊と契約を結ぶということか。

 

「とにかく、ここでやれる事は終わったと思うぜ。次は何処に行きゃいい?」

「そうだな……ここから南西にあるサバサ地方が順当だと思うぞ。あそこには四精霊の一人であるノームがいる。確か、サファル砂漠に棲んでいるのだったか……」

「わ〜い! ノームちゃんと遊べるよ〜!」

 

 四精霊が居るとなると、そこに行くのは欠かせないだろう。

 

「それに……サバサ地域の北には、タルタロスがある。ここも捜索せねばなるまい」

「熱砂の地、サバサか……暑さ対策も、万全にしないとね」

「よっしゃあ! 早速向かおうぜ!」

 

 ヴィクトリーは、パンっと拳を叩いて気合を入れる。どうやら、既にやる気まんまんのようだ。

 

「サバサ地方への旅路は、なかなか大変だぞ……西へと進み、荒野や山脈地帯を抜けなければな。サン・イリア西に見える道に沿って、西進すれば……荒野の手前で、モンテカルロという町が見える筈だ」

「じゃあ、一旦そこで落ち着くべきだね」

「そうしたら、サバサ地方に向かうのか……次は、どんな強敵が待ってんだろうな……わくわくすっぞ!」

 

 次の目的地は、西の砂漠地帯サバサだ。

 

 ノームと契約を結び、そしてタルタロスを探索する。もしかしたらタルタロスに、マルケルスが居るかも知れない。白兎も絶対に関わってくるだろう。

 

 熱砂の地では、どんな冒険が待っているのだろうか。そして、どんな強敵がルカ達を襲うのか……

 

 パワーアップしたルカとヴィクトリーを先頭に、冒険は続くのだった。

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