もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
サンイリアから西に進み続けると、モンテカルロにすぐ着いた。
「ここがモンテカルロか……」
「ああ……」
道には柄の悪そうな男達が往来し、立ち並ぶテントの群れ……雰囲気としては、あのドン・ダリアと戦ったスラム街に似ている。
「治安の悪そうな町ですね。私の興味を引くものは、一つとしてありません……」
「まぁ、道具屋ぐらいはあるから砂漠越えの準備は出来るんじゃねぇか?」
あまり乗り気でないプロメスティンに、ヴィクトリーは言う。
「それでは、情報を集めるとしよう。この周辺に関しても知りたいしな」
「こういう町には、情報屋が居るはずだよね。まず、そこからあたるのが常道かな?」
「正直、あまり長くは居たくない町だよね……特別な用事は無いし、話を聞いたらさっさと発とうよ」
ソニアは、不安顔でそう漏らした。
「よーし、また2チームに別れて調査しようぜ」
「ああ、広い町だしその方が効率いいかもね」
ルカとヴィクトリーは、またパーティを分割する。
ルカにはソニアとヌルコとアリスが着く。
ヴィクトリーにはプロメスティンとヒルデが着いてくれた。
「三人で平気か? ポケット魔王城から誰か呼ぼうか?」
「いや、情報集めるだけだし大丈夫さ。プロメスティンもヒルデも、心強いからよ」
そういう訳で、解散して情報を集めることにしたのだった。
※
「ジャスティスカイザー?」
村人から、そんな名前を聞かされたヴィクトリー。
「ああ、この辺の治安を守ってるヒーロー女さ……コスプレ女かと思ったら、腕が立つんでエルカ商会も太刀打ちできねぇって話さ」
村人は、そう言って「ははは」なんて笑ってる。
「……エルカ商会とは、ここを仕切っているマフィアの類のようですね」
「ヒーロー……ヴィクトリーと、同じだね」
「ああ……そのジャスティスカイザーって奴は何処にいるんだ?」
「さぁな……神出鬼没だから分からねぇ。ただ、サキュバスと戦ってる姿をよく見かけるよ」
どうやら、ここにはサキュバスと戦う神出鬼没のヒーローが居るらしい。ヴィクトリーも同じく「ヒーロー」という肩書きを背負ってるので、出来るならば会いたいと思ったのだ。
「それにしてもヴィクトリーさんがヒーローというのは初耳ですね」
「俺だけじゃねぇさ。
「誰もが、ヒーロー……ヒルデもヒーロー?」
「ああ、ヒルデだってなれるさ!」
ヴィクトリーがそう言うと、ヒルデは「えへへ」なんて笑って頭の兎の耳のようなパーツをピコピコと動かした。
そんな会話をしていた時だった。ヴィクトリーが、不穏な気を捉えたのだ。
「二人とも、サキュバスって奴が現れたらしいぞ!」
「ヒーローズ、出動! やー!」
「えっ、私も……?」
ヴィクトリーが、ヒルデとプロメスティンを連れて走る。入り組んだ裏道を縫うように走り、気を感じる所まで。
「ヴィクトリー、あれ!」
「おう!」
ヒルデに言われて、走る。
辿り着いたのは、井戸があるどん詰まり。そこで、青年がサキュバスに襲われていた。
「ふふっ、おいしそうな獲物ね。その精、じっくり吸ってあげるわ……」
黒髪で、前髪ぱっつんのサキュバス……その身なりは、みすぼらしく感じる。
「安心しなさい、命までは奪わないわ……ふふふっ、天国を味わわせてあげる……」
「うわー、誰かたすけてくれー」
青年は、棒読みと歓喜が混ざったような声でそう言う。
「……どうするんです、ヴィクトリーさん?」
「助けに行かなくても良いかも……」
「……」
幸せそうだから、まぁいいや……そう思いながら、その場を後にしようとした時だった。
「……!」
ここに、強い気が近づいてくる。そう感じて、踏みとどまる。
「ふふっ、こんなところに助けが来ると思う? さあ、観念して私に犯されなさい……」
黒髪のサキュバスがそう言って、青年に手を伸ばす。ここでヴィクトリーは、キッとそこら辺の民家の屋根を見た。
「はぁっ!」
そこには、珍奇な格好の女性が立っていた。赤を基調にした格好の、ヒーロー風の女だ。
「あ、あんたは……!?」
サキュバスはそれに気付き、そいつの方に注目した。
「正義の
ジャスティスカイザーと名乗る彼女は跳んで、サキュバスの前に立つ。
「あんた、いったい何なの!? どうして私の邪魔ばっかりするのよ!」
「弱者を脅かす悪党を、私の
ジャスティスカイザーは拳に気を纏い、サキュバスに攻撃する。
サキュバスの方もそれを受け止めてから、離れた。
「ああもう、お腹減ってるのに面倒くさい……いいわよ、別の男を狙うから!」
そう言い残し、そのまま逃走してしまった。
「くっ……また逃がしてしまったか……!」
ジャスティスカイザーはそう言いながら、青年に向く。
「もう大丈夫、
「ああ、うん……」
青年は、困惑のままに生返事をして頷く。ジャスティスカイザーはニコッと笑ってから、ヴィクトリーの方へと向いた。
「それに、そこのあなた!」
「……気づいてやがったか」
「その瞳に、正義の
「頼み?」
「ここじゃなんだから、
そう言って、ジャスティスカイザーは視線を西に向けた。その先には、ポツンと一軒家が建っている。
「私の視線の先……ほら、分かる? そこが
そう言って、ジャスティスカイザーは飛び去った……
「……家、すぐそこなのに飛び去んのかよ……」
「カッコイイ……」
「……どうするのです、あんなんですけど」
プロメスティンに聞かれたヴィクトリーは、少し悩むが……
「まぁ、行ってみようぜ! 何だか
「そうでしょうか……」
「こんな事、マスターなら放ってはおかない……行ってみようよ」
とりあえず、彼女の家に向かった……
※
「よく来てくれたわね……私はジャスティスカイザー、正義の
「ああ、俺はヴィクトリー。ドラゴンボールヒーローだ」
「なんと、同業だったのか! 確かにその赤と黒の
あの黒髪のみすぼらしいサキュバスは、どうやらエヴァという名前らしい。
「少し前から何度か戦ってるけど、取り逃してばかり……いつもカルロスの丘に逃げ込まれて、それ以上は追えないの」
「そんなに逃げ足速いの……? 身体能力を比較すると、十分追いつけるとみたよ……」
「それにおめぇも十分戦える程強ぇだろ。何でだ?」
「このスーツ、長いこと着てると汗で蒸れて……短い戦いならいいけど、持久戦には向いていないのよ」
「脱ぎゃいいんじゃねぇの?」
どうやら、そういう事で長期戦が出来ないらしい。
「そういう訳で、あなたにエヴァを倒してほしいのよ。もうこれ以上、追いかけっこを続ける訳にはいかないわ。エヴァは、カルロスの丘のどこかに住んでるみたい。私はこのスーツを着ている以上、外で長時間行動できないの」
「脱ぎゃいいだろ」
「脱げば良いのでは?」
「蒸れない格好、すればいいのに……」
とうとう、ヴィクトリーの後ろに居たプロメスティンとヒルデもツッコみ出す。
「あなた達は熱い正義の心と、確かな実力を持っているわ。きっと、エヴァを退治して町を平和にする事が出来るはずよ。そして新たなヒーローが誕生すれば……その時は、私も気兼ねなくスーツを脱ぐ事が出来るわ」
「家ぐらい脱ぎゃいいだろ」
「自宅ぐらい過ごしやすい格好になれば良いのでは?」
「冬とか、寒そう……」
彼女の目的は、エヴァの討伐だけではなく『ヒーロー』の継承らしい。そうなれば、この依頼はヴィクトリーにはもってこいという訳だ。
「どうかお願いよ。
「ああ、やってやるさ!」
「ありがとう、そう言ってくれると思ったわ。その目に燃える正義の
カルロスの丘は、ここより南東にある。このモンテカルロからも比較的近く、今すぐに殴り込みを掛けても良さそうだ。
「武運を祈ってるわ。そして、受け継がれる正義の
そう言いながらクールにキメてるジャスティスカイザーをよそに、プロメスティンは何やら不満そうな顔。
「いいんですか、こんな事安請け合いして。エヴァとやらもそこまで脅威度が高いように思えませんが……」
「ああ、頼まれちまった以上は仕方ねぇさ。俺もドラゴンボールヒーローだしな」
確かに下らない事かも知れないが……同じヒーローとして、頼みは断れない。エヴァの方も、今回こそはその気のある青年がターゲットだったが、無差別に男を襲い始めたら堪らないだろう。
「でも、その前にルカに言わねぇと」
「どうするのです、今からルカさん達を探しますか?」
「いや、必要無ぇ……ちょっと待ってろ、すぐに終わらせる」
ヴィクトリーは、額に指を当てて目を瞑る。
気を張り巡らせ、ルカの気を探し……そして、捉えた。
「見っけ!」
ヴィクトリーは、姿を消した。
「!?」
「えっ……!? 消えた……!?」
「なんだ、
ヒルデの動体センサーでも捉えきれない、ヴィクトリーの消失。驚いてる彼女らの前に、再び額に指を当てた彼が現れた。
「オッス、お待たせ! ルカも時間がかかりそうだってよ!」
「……ワープ、瞬間移動の類でしょうか……」
「移動の瞬間が見えなかった……」
「驚いた、次世代のヒーローは
ヴィクトリーは瞬間移動でルカの所に行き、ジャスティスカイザーの頼みを聞くという連絡を入れたのだった。これで、遠慮なくカルロスの丘に行くことが出来る。
「そんじゃ、行ってくる!」
「ヒーローズ、カルロスの丘に出動ー! やー!」
「やっぱりヒーローズって、私も入ってます……?」
とにかく、ヴィクトリー達はカルロスの丘に向かうのだった。