もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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スラム街のヒーロー!?

 サンイリアから西に進み続けると、モンテカルロにすぐ着いた。

 

「ここがモンテカルロか……」

「ああ……」

 

 道には柄の悪そうな男達が往来し、立ち並ぶテントの群れ……雰囲気としては、あのドン・ダリアと戦ったスラム街に似ている。

 

「治安の悪そうな町ですね。私の興味を引くものは、一つとしてありません……」

「まぁ、道具屋ぐらいはあるから砂漠越えの準備は出来るんじゃねぇか?」

 

 あまり乗り気でないプロメスティンに、ヴィクトリーは言う。

 

「それでは、情報を集めるとしよう。この周辺に関しても知りたいしな」

「こういう町には、情報屋が居るはずだよね。まず、そこからあたるのが常道かな?」

「正直、あまり長くは居たくない町だよね……特別な用事は無いし、話を聞いたらさっさと発とうよ」

 

 ソニアは、不安顔でそう漏らした。

 

「よーし、また2チームに別れて調査しようぜ」

「ああ、広い町だしその方が効率いいかもね」

 

 ルカとヴィクトリーは、またパーティを分割する。

 

 ルカにはソニアとヌルコとアリスが着く。

 

 ヴィクトリーにはプロメスティンとヒルデが着いてくれた。

 

「三人で平気か? ポケット魔王城から誰か呼ぼうか?」

「いや、情報集めるだけだし大丈夫さ。プロメスティンもヒルデも、心強いからよ」

 

 そういう訳で、解散して情報を集めることにしたのだった。

 

 

「ジャスティスカイザー?」

 

 村人から、そんな名前を聞かされたヴィクトリー。

 

「ああ、この辺の治安を守ってるヒーロー女さ……コスプレ女かと思ったら、腕が立つんでエルカ商会も太刀打ちできねぇって話さ」

 

 村人は、そう言って「ははは」なんて笑ってる。

 

「……エルカ商会とは、ここを仕切っているマフィアの類のようですね」

「ヒーロー……ヴィクトリーと、同じだね」

「ああ……そのジャスティスカイザーって奴は何処にいるんだ?」

「さぁな……神出鬼没だから分からねぇ。ただ、サキュバスと戦ってる姿をよく見かけるよ」

 

 どうやら、ここにはサキュバスと戦う神出鬼没のヒーローが居るらしい。ヴィクトリーも同じく「ヒーロー」という肩書きを背負ってるので、出来るならば会いたいと思ったのだ。

 

「それにしてもヴィクトリーさんがヒーローというのは初耳ですね」

「俺だけじゃねぇさ。()()()()()()()だったんだ」

「誰もが、ヒーロー……ヒルデもヒーロー?」

「ああ、ヒルデだってなれるさ!」

 

 ヴィクトリーがそう言うと、ヒルデは「えへへ」なんて笑って頭の兎の耳のようなパーツをピコピコと動かした。

 

 そんな会話をしていた時だった。ヴィクトリーが、不穏な気を捉えたのだ。

 

「二人とも、サキュバスって奴が現れたらしいぞ!」

「ヒーローズ、出動! やー!」

「えっ、私も……?」

 

 ヴィクトリーが、ヒルデとプロメスティンを連れて走る。入り組んだ裏道を縫うように走り、気を感じる所まで。

 

「ヴィクトリー、あれ!」

「おう!」

 

 ヒルデに言われて、走る。

 

 辿り着いたのは、井戸があるどん詰まり。そこで、青年がサキュバスに襲われていた。

 

「ふふっ、おいしそうな獲物ね。その精、じっくり吸ってあげるわ……」

 

 黒髪で、前髪ぱっつんのサキュバス……その身なりは、みすぼらしく感じる。

 

「安心しなさい、命までは奪わないわ……ふふふっ、天国を味わわせてあげる……」

「うわー、誰かたすけてくれー」

 

 青年は、棒読みと歓喜が混ざったような声でそう言う。

 

「……どうするんです、ヴィクトリーさん?」

「助けに行かなくても良いかも……」

「……」

 

 幸せそうだから、まぁいいや……そう思いながら、その場を後にしようとした時だった。

 

「……!」

 

 ここに、強い気が近づいてくる。そう感じて、踏みとどまる。

 

「ふふっ、こんなところに助けが来ると思う? さあ、観念して私に犯されなさい……」

 

 黒髪のサキュバスがそう言って、青年に手を伸ばす。ここでヴィクトリーは、キッとそこら辺の民家の屋根を見た。

 

「はぁっ!」

 

 そこには、珍奇な格好の女性が立っていた。赤を基調にした格好の、ヒーロー風の女だ。

 

「あ、あんたは……!?」

 

 サキュバスはそれに気付き、そいつの方に注目した。

 

「正義の味方(ヒーロー)、ジャスティスカイザー!! とぉっ!」

 

 ジャスティスカイザーと名乗る彼女は跳んで、サキュバスの前に立つ。

 

「あんた、いったい何なの!? どうして私の邪魔ばっかりするのよ!」

「弱者を脅かす悪党を、私の(ハート)が許しはしない! 受けなさい、正義の鉄拳(ジャスティス・ナックル)……!!」

 

 ジャスティスカイザーは拳に気を纏い、サキュバスに攻撃する。

 

 サキュバスの方もそれを受け止めてから、離れた。

 

「ああもう、お腹減ってるのに面倒くさい……いいわよ、別の男を狙うから!」

 

 そう言い残し、そのまま逃走してしまった。

 

「くっ……また逃がしてしまったか……!」

 

 ジャスティスカイザーはそう言いながら、青年に向く。

 

「もう大丈夫、(エビル)は去ったわ。怪我は無いかしら……?」

「ああ、うん……」

 

 青年は、困惑のままに生返事をして頷く。ジャスティスカイザーはニコッと笑ってから、ヴィクトリーの方へと向いた。

 

「それに、そこのあなた!」

「……気づいてやがったか」

「その瞳に、正義の(スピリッツ)を見たわ。あなたを見込んで頼みがあるのだけれど……」

「頼み?」

「ここじゃなんだから、私の家(マイハウス)で話を聞いて」

 

 そう言って、ジャスティスカイザーは視線を西に向けた。その先には、ポツンと一軒家が建っている。

 

「私の視線の先……ほら、分かる? そこが私の家(マイハウス)だから……それでは、さらば……とうっ!」

 

 そう言って、ジャスティスカイザーは飛び去った……

 

「……家、すぐそこなのに飛び去んのかよ……」

「カッコイイ……」

「……どうするのです、あんなんですけど」

 

 プロメスティンに聞かれたヴィクトリーは、少し悩むが……

 

「まぁ、行ってみようぜ! 何だか()()()()だ!」

「そうでしょうか……」

「こんな事、マスターなら放ってはおかない……行ってみようよ」

 

 とりあえず、彼女の家に向かった……

 

 

「よく来てくれたわね……私はジャスティスカイザー、正義の味方(ヒーロー)よ」

「ああ、俺はヴィクトリー。ドラゴンボールヒーローだ」

「なんと、同業だったのか! 確かにその赤と黒の道着(コスチューム)……まさにヒーロー! ならば、話は早い! 先程の淫魔……エヴァという名前なのだけれど、どうにか倒して貰えないかしら?」

 

 あの黒髪のみすぼらしいサキュバスは、どうやらエヴァという名前らしい。

 

「少し前から何度か戦ってるけど、取り逃してばかり……いつもカルロスの丘に逃げ込まれて、それ以上は追えないの」

「そんなに逃げ足速いの……? 身体能力を比較すると、十分追いつけるとみたよ……」

「それにおめぇも十分戦える程強ぇだろ。何でだ?」

「このスーツ、長いこと着てると汗で蒸れて……短い戦いならいいけど、持久戦には向いていないのよ」

「脱ぎゃいいんじゃねぇの?」

 

 どうやら、そういう事で長期戦が出来ないらしい。

 

「そういう訳で、あなたにエヴァを倒してほしいのよ。もうこれ以上、追いかけっこを続ける訳にはいかないわ。エヴァは、カルロスの丘のどこかに住んでるみたい。私はこのスーツを着ている以上、外で長時間行動できないの」

「脱ぎゃいいだろ」

「脱げば良いのでは?」

「蒸れない格好、すればいいのに……」

 

 とうとう、ヴィクトリーの後ろに居たプロメスティンとヒルデもツッコみ出す。

 

「あなた達は熱い正義の心と、確かな実力を持っているわ。きっと、エヴァを退治して町を平和にする事が出来るはずよ。そして新たなヒーローが誕生すれば……その時は、私も気兼ねなくスーツを脱ぐ事が出来るわ」

「家ぐらい脱ぎゃいいだろ」

「自宅ぐらい過ごしやすい格好になれば良いのでは?」

「冬とか、寒そう……」

 

 彼女の目的は、エヴァの討伐だけではなく『ヒーロー』の継承らしい。そうなれば、この依頼はヴィクトリーにはもってこいという訳だ。

 

「どうかお願いよ。正義(ジャスティス)の魂を受け継ぎ、エヴァを倒して」

「ああ、やってやるさ!」

「ありがとう、そう言ってくれると思ったわ。その目に燃える正義の(スピリッツ)が見えたから……」

 

 カルロスの丘は、ここより南東にある。このモンテカルロからも比較的近く、今すぐに殴り込みを掛けても良さそうだ。

 

「武運を祈ってるわ。そして、受け継がれる正義の(スピリッツ)……」

 

 そう言いながらクールにキメてるジャスティスカイザーをよそに、プロメスティンは何やら不満そうな顔。

 

「いいんですか、こんな事安請け合いして。エヴァとやらもそこまで脅威度が高いように思えませんが……」

「ああ、頼まれちまった以上は仕方ねぇさ。俺もドラゴンボールヒーローだしな」

 

 確かに下らない事かも知れないが……同じヒーローとして、頼みは断れない。エヴァの方も、今回こそはその気のある青年がターゲットだったが、無差別に男を襲い始めたら堪らないだろう。

 

「でも、その前にルカに言わねぇと」

「どうするのです、今からルカさん達を探しますか?」

「いや、必要無ぇ……ちょっと待ってろ、すぐに終わらせる」

 

 ヴィクトリーは、額に指を当てて目を瞑る。

 

 気を張り巡らせ、ルカの気を探し……そして、捉えた。

 

「見っけ!」

 

 ヴィクトリーは、姿を消した。

 

「!?」

「えっ……!? 消えた……!?」

「なんだ、魔法(マジック)か!?」

 

 ヒルデの動体センサーでも捉えきれない、ヴィクトリーの消失。驚いてる彼女らの前に、再び額に指を当てた彼が現れた。

 

「オッス、お待たせ! ルカも時間がかかりそうだってよ!」

「……ワープ、瞬間移動の類でしょうか……」

「移動の瞬間が見えなかった……」

「驚いた、次世代のヒーローは魔法(マジック)まで使うのか……!」

 

 ヴィクトリーは瞬間移動でルカの所に行き、ジャスティスカイザーの頼みを聞くという連絡を入れたのだった。これで、遠慮なくカルロスの丘に行くことが出来る。

 

「そんじゃ、行ってくる!」

「ヒーローズ、カルロスの丘に出動ー! やー!」

「やっぱりヒーローズって、私も入ってます……?」

 

 とにかく、ヴィクトリー達はカルロスの丘に向かうのだった。

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