もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
「こんな所まで来るなんて……!」
まさか、こんな戦いの後に休む間もなく会うとは。運がいいのやら悪いのやら……
「おめぇ……」
エヴァの背後……テントが立っており、焚き火の跡があった。どうやら、この荒野で野宿してるらしい。
「……ずいぶん、みずぼらしい暮らししてんだなぁ……」
「というか、生活苦ならば働けばいいのでは……?」
「う、うるさいっ!」
ヴィクトリーとプロメスティンのツッコミを、そう言って否定するエヴァ。
「生活が苦しいのは同情してやるけどさ、町の人を襲っちゃいかんぜ?」
「ふん、私は獲物を好きな時に好きなように吸うのよ……あんただって、干物になるまで搾ってやるんだから!」
エヴァはそう言って構え、気を解放した。
「問答無用ですか……」
「ヴィクトリー、敵の戦闘力は中々高いよ……どうするの?」
「指名は俺みてぇだし、俺一人でやるさ」
そう言ってヴィクトリーは歩き、前へ出る。そして、エヴァと向かい合うのだった。
「いくぜ……!!」
「ふんっ!!」
エヴァは手を向け、風魔法を放つ。三日月状の風の刃が飛ぶも、それを弾き飛ばすヴィクトリー。
だがその間にエヴァは接近してきて、手を伸ばしてきた。
「よっ!」
それを躱し、エヴァの腕をキャッチするヴィクトリー。そのまま腰を落として、背負い投げたのだった。
「ちっ!」
エヴァは投げられたまま、羽を広げて宙で体勢を整える。そして、本来なら叩きつけられるであろう壁を蹴って勢いよく飛び、飛び蹴りを繰り出してきた。
「ちっ!!」
ヴィクトリーは腕を交差し、それを受け止める。しかし威力は中々に強く、靴を擦らせながら後退するのだった。
「……やるじゃねぇか、淫魔ってのは肉弾戦も得意なのか?」
「夜の肉弾戦だけじゃないのよ?」
ニヤリと笑いながら言うエヴァに、ヴィクトリーは腰を捻って手を合わせる。
「波──っ!!!」
放つは、かめはめ波。エヴァに向かって一直線にエネルギーが伸びる……が、彼女は手を向けて不敵に笑うだけだった。
そして、エヴァの手にかめはめ波が触れた次の瞬間、かめはめ波のエネルギーが「ズキュン」という音と共に急速にしぼみ、彼女の手に消えてしまった。
「なにっ!?」
「っぷは──っ! 久々の男の精は格別ね! 精液じゃないのが残念だけど……!」
しかも、エヴァの気が膨れ上がっている。肌も髪も何だかツヤツヤと瑞々しくなって、みすぼらしい格好に似合わないほど生気が満ちた状態になってしまった。
「ヴィクトリーさん、エナジードレインです! 淫魔の手は、触れたもののエナジーを吸収してしまいます!」
「気功波の類は推奨できないよ……!」
「なんだと……!!」
プロメスティンとヒルデの助言から察するに……どうやら、かめはめ波がエナジードレインで吸われてしまったらしい。まるで、人造人間19号だ。
うろたえていると、エヴァは舌なめずりをしながらヴィクトリーをじっとりと見る。こんなんでも、淫魔……妖しく誘惑するように、前かがみになって胸の谷間を見せてきた。
「今のが大技なら、あんたに勝ち目は無いわ……あんた、良いオトコだし降参するなら
「遠慮しとく……!」
誘惑に乗ることなく、ヴィクトリーは気を解放する。界王拳を使って蹴り出し、地面を踏み砕きながら突撃した。
「だりゃあぁああぁ!!!」
吼えながら、拳と蹴りの連続攻撃を繰り出す。しかしエヴァはそれを避けてから尻尾で足払いする。
「わっ!?」
「そこっ!!」
すっ転んだヴィクトリーに、風魔法を当てるエヴァ。
「くっ!?」
寸前に腕を交差して、ガードするヴィクトリー。しかし、その腕にエヴァの手が付けられた。
「はっ!?」
「ほぉら気持ちいいわよぉ!」
次の瞬間、「ズキュン」という音と共にヴィクトリーの腕に快感が迸った。
「うっ……!!!?」
学が無ければ、女の経験も無い……そんなヴィクトリーでも、本能で理解出来る。この『気持ちいい』は、ダメなやつだと。
「っ!!!」
「きゃっ!?」
エヴァに気合い砲を放って押しのけ、どうにか距離を取るヴィクトリー。そうして地面を掴んで立ち上がろうとしたが……腕に力が入らない。
「……おめぇ、直接触っても吸収できんのか」
「というか、本来は直接触るのがエナジードレインよ」
風魔法に、エナジードレイン……淫魔という種族の厄介さを理解させられるヴィクトリー。気功波は吸収され、接近すればエナジードレイン……今の自分と、最高に相性が悪いみたいだ。
「おめぇ、強ぇなぁ……ちゃんと働けば、普通にいい暮らし出来るんじゃねぇのか?」
「ふん、バカバカしいおべんちゃらを……」
ヴィクトリーの賛辞を、一笑に伏すエヴァ。
世辞が嫌いな程、誇り高い奴なのか……そう思ってるヴィクトリーに、彼女はカッと目を見開いた。
「労働なんて、この世で最も無意味な行為よ!」
ヴィクトリーは、倒れながらずっこける。
「気持ちは分かります」
「プロメスティン……?」
涼しい顔でコメントするプロメスティンを、心配そうに見つめるブリュンヒルデ。
「おめぇ、働きたくねぇだけか!!」
起き上がって、元気にそう言うヴィクトリー。
「そうよ、何が悪いのよ! 美味しいものを食べて、満足するまでエッチして、寝たい時に寝る! 私はそうしたいのよ!」
「うっせぇ、馬鹿な事言ってねぇで働け!!」
「ええい、生意気な子ね!! いいわ、私が世の中のルールってモノを教えてあげる!!」
「働いてから言え!!」
ヴィクトリーは構え直し、走ってくるエヴァを見据える。
エヴァは猛スピードで、何回も攻撃を繰り出してきた。パンチやキックを連射してくるが、ヴィクトリーはそれらを次々に捌いていく。
これらは、全て牽制。本命は、やはり淫魔の技だろう。
「ほらっ!!」
案の定、掴みかかりがやってきたが……ヴィクトリーは敢えてそれを掴み止める。
「へぇ!?」
エヴァはもう一方の手も伸ばし、ヴィクトリーがそれを掴む。そのまま、恋人繋ぎみたいな状態で押し合った。
ただしエヴァの両手からは絶えず「ズキュン」という音が続き、彼女のエナジーが増大していく。比例するように、ヴィクトリーの気がしぼんでしまう。
「あははは、私の手に触れるとエナジードレインされちゃうのを忘れちゃったの!? 何を考えてるのかしら!」
エヴァの言葉に、脳裏の記憶が誘発される。
夢の中の強敵に「何故戦う」と問われた自分と、今の自分が重なり……自然と、口が開いた。
「『命懸けで戦ってる時に、
ヴィクトリーがそう言った瞬間、今にも消えそうな気が急激に膨れ上がった。
「なっ……!!? そんな、ここまで吸ったらエナジーなんて無くなって……」
「我慢比べと行こうぜ……界王拳5倍だぁあぁあああ!!!」
ヴィクトリーは、界王拳を5倍に引き上げる。気が更に上昇し、その体が悲鳴を上げ始める。
エヴァも負けじとエナジードレインを続けたが、あっという間にエナジーが彼女のキャパシティに迫って来てしまった。
「っ、う、くっ、も、もうお腹いっぱいよっ……!!!」
エヴァはエナジードレインを中断し、離れようとしたものの……ヴィクトリーが逃がすまいと手を掴み、気を送り込んでいた。限界以上の気が、彼女に注ぎ込まれる。
「っ!!?」
「はぁあぁあああ!!!」
ヴィクトリーは最後に凄まじい気を注ぎ込み、離れる。すると、エヴァの腕に界王拳の赤いオーラが宿った。
「っきゃあぁあぁあ!!!?」
慣れない者が、無理やり界王拳を使わされたのと同じであろう。しかも、5倍は今のヴィクトリーですら無理をしながら保っている倍率だ。
「その状態ならもうエナジードレインは出来ねぇだろ!! 一気に決めてやる!!」
ヴィクトリーはそう言って離れ、かめはめ波の構えを取る。
「か……め……は……め……!!」
手を合わせ、フルパワーでエネルギーを込める。
「うぐぐぐぐぐ……!! ば、馬鹿な男ね!! 私にエナジーを分けるなんて……!! 吸ったエナジーは、攻撃にも利用できるのよ!!」
エヴァは、軋む体で魔力を解放する。ヴィクトリーから吸い上げたエナジーを全て魔力に変換し、とてつもない風魔法を放つつもりらしい。
「なんだと!?」
「もう遅いわ……暴虐なる風、無尽の嵐となって吹き荒れろ! エアロ!」
詠唱により、最大出力。膨大な風の魔力がエヴァの手の中で渦巻き、ヴィクトリーに向けて光る。次の瞬間、衝撃波と斬撃を伴った凄まじい風魔法が放たれたのだった。
それは、ヴィクトリーの姿を飲み込む。直撃を確信したエヴァは、ニヤリと笑った。
「ああっ、ヴィクトリーさんが……せめて検死解剖だけでも……」
プロメスティンも、直撃を確信してそんなことを口走る。
しかし、ヒルデは笑っていた。
「……ヒルデ、この動き覚えてるよ」
そう言った、目線の先……エヴァの背後。そこに、手を合わせて気を凝縮させているヴィクトリーが居たのだった。
そう……ヴィクトリーは瞬間移動で風魔法を避け、エヴァの背後に回っていたのだった。
「はっ……!!?」
「波──────ッッ!!!!」
次の瞬間、エヴァにかめはめ波が零距離砲撃された。背後からの攻撃なので、手で受ける暇も無い。
「な、なんで私が……私ばっかり、こんなぁああ──っ!!!」
見事に直撃し、大爆発が巻き起こったのだった。
「はぁ……はぁ……」
「むきゅう……」
エヴァは、倒れ伏す。ダメージを負ってるものの、命に別状は無いだろう。
「……ふぅっ!」
ヴィクトリーは界王拳を解いて、息を吐く。そして、プロメスティン達の方を向いて笑い、親指を立てたのだった。
「やりましたね!」
「えへへ」
プロメスティン達も、親指を立てて返したのだった。