もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
宿屋で一日過ごしたルカ達は、ルビアナから東に向かった。案内は、エヴァがしてくれている。
「求道者の洞窟はこっちね……めぼしいものも無さそうだけど、何しに行くの?」
「ああ、ちょっと約束事があってよ」
エヴァとヴィクトリーがそう話しながら、歩く事数分……切り立った岩山の一部分に大きな穴が空いている。
「ほら、あそこよ。求道者……っていうか、人形遣いの魔物が修行の為に籠る場所と聞いてるわ。中は強力なモンスターだらけで、さっきも言ったけどめぼしいものも無いわ」
「強力なモンスターか……」
「露払いは僕にさせてくれ。シルフの力、試したいんだ」
そうして入った求道者の洞窟……修行用の場所と言っても、整備された様子もない洞窟だ。薄暗く、不気味な雰囲気が立ち込めている。
「ここを抜ければ、人形遣いの塔がある高原に行けるのだな」
「魔導懸糸、あればいいんだけどね……」
アリスとルカが、前に出て先頭を進む。
「残念ながら洞窟の中までは案内出来ないわ。入るのも初めてだし……」
「仕方ねぇさ、行こう」
ヴィクトリーとエヴァがそう話し、二人の後を着いていく形をとった。
ソニア達は、その後ろに控えてくれている。
※
進んでいると、拓けた場所に出る。そこで、やはり魔物が襲いかかってきた。
「任せて」
「おう」
言った通り、ルカが引き受けるらしい。ヴィクトリー達は下がり、背後を警戒しておく。
「ふふ……こんな所に旅人が来るなんて」
「しかも、男が二人も……」
現れたのは……大きなムカデに女の上半身が生えた魔物娘と、ミノタウロスと呼ばれる牛の魔物娘。
ムカデ娘は長い胴体をうねらせ、ミノタウロスは大斧を持って構える。
「おい、1対2だけど平気なんか?」
「まぁ見てなって……シルフ!!」
「はーいっ! いけーっ!」
ルカは、シルフの力を解放する。呼応するようにシルフが飛び出し、当たりに旋風を巻き起こした。
「むっ……!?」
「きゃ……!」
魔物娘二人は、その場で踏ん張ってルカを凝視する。
「あれが、シルフの力……! すげぇ気の上がりようだ……!!」
「精霊の力って奴よね……私も見るのは初めてよ!」
ヴィクトリーも、横にいるエヴァも、驚きを隠せずにいる。
「いくぞ」
ルカはそう言って姿を消したかと思えば、一瞬でムカデ娘に肉薄する。そして、剣の柄で腹を打った。
「ぐはっ……!?」
息つく暇も与えず、握っている剣に気を込める。その気が剣に巻き付き、炎となって炎上する。そして、燃え盛るその剣を振り上げ、渾身の力で振り下ろした。
「烈火天翔閃ッッ!!」
「!!」
斬撃が、見事にムカデ娘に叩き込まれる。凄まじい威力の剣技に、彼女は悶絶した。
「っ、ゲホッ、ゲホッ……!! こ、降参よっ!!」
そう言って、そそくさと逃げて行ってしまったのだった。
「まずは一人……」
「ちっ……少しは骨があるようだな!」
ルカは残心したまま、息を吐く。そこに、ミノタウロスが大斧を振り回しながら迫ってきた。
回転しながら左右上下から迫り来る大斧だったが、ルカはそれを避けたり剣で弾き凌いだりして対応する。体格では圧倒的にミノタウロスの方が
「ちっ、ちょこまかと……!!」
ミノタウロスはそう言って大斧を両手持ちし直してから、高速回転させる。その刃の部分が滾る気によって炎上した。
「これでも食らえ、轟炎斬!!」
「!!」
炎を伴った、斧の一撃。咄嗟にルカは剣で弾こうとする。しかし、そのミノタウロスの怪力によって剣がルカの手から離れ、後方へ飛んでしまった。
「……」
剣が、壁に寄りかかっているヴィクトリーの方に飛んでくる。彼はそれを見てから首を傾げ、剣は壁に刺さった。
すぐ横にいたエヴァは、壁に刺さってる剣とヴィクトリーを凝視した。
「あっぶないわね……今の、よく避けたわね」
「あぁ、俺もそう思う……あっぶねぇえぇえ……!?」
どうやら、偶然だったらしい。
「それはそうとして、ルカも危ないか……!?」
「どうやら、そうじゃねぇみてぇだ」
心配するアリスに、ヴィクトリーは言う。
ルカの戦意は、衰えちゃいない。
「なら、もう一発食らえ!! 轟炎斬!!」
先程と同じく、炎上した大斧の薙ぎ払い。今度は、剣の無いルカに迫ってくる。
ルカはそれを、しゃがみ避ける。体格差が仇となり、しゃがめば容易に避けられる一撃だった。
「っ、うわっ……!!?」
渾身の一撃が空振り、ミノタウロスの身体がすっぽ抜ける。その隙を見逃さなかったルカは一気に走って距離を詰める。
「聖なる光、悪を払い邪を滅ぼせ!!」
その瞬間、天使の力を解放して右手に聖なる魔力を込める。それをミノタウロスの腹に押し付け、起爆させた。
「うわぁあぁああっ!?」
ミノタウロスは、炸裂する聖なる光に融ける。その光が晴れ、彼女は倒れたのだった。
「っふぅ……!」
魔物娘を、ルカだけで追い払ってしまった。
「終わったよ、皆!」
契約で得たシルフの力に、目覚めた天使の力……ルカの力は、想像以上に凄まじいものとなっていたのだ。
「やるじゃねぇか、ルカ……! おめぇ、そんなに強くなってたんか……!」
ヴィクトリーがそう言いながら、ルカに剣を渡す。ルカはそれを受け取りながら、「ふふん」と笑って見せた。
「強くなってるのは君だけじゃない……それに、男同士だからね。君に実力で抜かされる訳にはいかないよ」
「なんだぁ、いっちょやってみるかぁ!?」
「ええい、そこまでだドアホども」
やる気になるヴィクトリーとルカを、アリスがげんこつする。
「うぎゃっ!」
「いでっ!」
「ヴィクトリー、言い出しっぺは貴様で……ルカ、賛同したのは貴様だ! さっさとクロムとの約束を果たすために、人形遣いの塔に行くのだ!」
「は、はいーっ!」
「な、なんで僕まで怒られてるんだ……!」
ビシッと言うアリスに、男達は並んで先頭を走って進む。
「ある意味、アリスが最強……?」
それを見ていたヒルデが、そんな事を言って首を傾げる。
「精霊と天使の力のシナジー……実に興味深いです! 出来ればルカさんの脳を今すぐ取り出して観察してみたいものです!」
「それ、間接的にあの子を殺すって言ってない?」
プロメスティンの言葉に、ドン引きするエヴァ。そんな彼女に、ソニアは笑う。
「大丈夫、いつもの事だから……」
「きゅっきゅー」
「えぇ……」
いつもの事……そう聞いて、更に困惑するエヴァ。しかし、ソニアは続けた。
「それに、いつも言ってるから平気よ。「やるんならヴィクトリーにしなさい」って」
「それはそれで酷くない!?」
「やっぱ俺いつかバラバラにされちまうんかな……」
そんなことを話しながら、進むルカ達。
やがて進んでいると、出口が見えてきたが……その左には、洞窟の奥があるようだった。
「先決なのは、人形遣いの塔に行く事だったよな……」
「洞窟の探索は、また後ですることになるな」
「よし、行くか!」
ルカ達は、出口を通る。
アッサリと抜けれた洞窟……その目の前の右側に、高くそびえる塔が見えた。間違いない、あれが『人形遣いの塔』とやらだろう。
「……」
近くまで来たタイミングで、ヴィクトリーはその塔を見上げて目を鋭くする。
「ヴィクトリー、どうしたんだ?」
「この塔……何か、とんでもない気を感じる。荒事は避けた方が良さそうだぜ」
ヴィクトリーらしくない物言いに、ルカは唾を飲む。
「戦うのが大好きなヴィクトリーが言うって、相当じゃない……?」
「きゅ……」
ソニアとヌルコも、一緒になって緊張しているようだった。
「……まぁ、失礼が無ければ良いだけの話だ。さっさと行くぞ」
アリスは意味ありげに間を置いてからそう言い、二人を急かす。
「……? わ、分かったよ」
「よっし、行くぜ」
不審な様子のアリスに疑問を覚えつつも、二人は人形遣いの塔へ足を踏み入れたのだった。