もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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人形遣いの塔

「おじゃましまーす」

「おや……?」

 

 塔に入ったルカ達を出迎えたのは、何だか奇妙な格好をした少女だった。和装だが大きな箱を背負って、顔も隠している……だが、覗いている肌からは生気がないように白く見える。

 

「おじゃまします……えっと、君は……?」

「私は、人形遣いの影紬……この塔の長を務めております」

「……」

 

 影紬と聞いた瞬間、アリスの眉が動いた。

 

 しかし、二人はそんな事を気にせずに影紬に向かう。

 

「俺はヴィクトリーで、こっちがルカだ。よろしくな!」

「どうも」

 

 ヴィクトリーが元気に言うが、影紬は一本調子に会釈するだけだった。

 

「いきなりで失礼ですけど、魔導懸糸を譲ってくれませんか?」

「……それは出来ません」

 

 即答だった。

 

「ええっ、何でだ!?」

「あれはからくり人形の師が、弟子に譲る品なのです。その道を志してもいない者が、そう軽々しく譲られるようなものではないのですよ……」

「そ、そうなんですか……? いきなり勝手な事を言って、すみませんでした」

「いえ……知らぬ事ならば仕方ないでしょう」

 

 ヴィクトリーとルカは、影紬に頭を下げる。そして目を見合わせて、小声で喋った。

 

「どうすっかな、約束なのによ……」

「うーん、困ったなぁ……」

「どうしても欲しいのでしたら、手段はありますよ」

 

 影紬が唐突にそんな事を言い、二人は頭を上げる。

 

「え……?」

「おそらく貴方達は、求道者の洞窟を通ってここまで来たはず。その洞窟は、魔芸を志す者が特訓した場所でもあるのです。そこの最下層には、魔導懸糸が保管されてあったはず……どうしても必要ならば、取りに行くと良いでしょう」

「情報ありがとうございます!」

「サンキューな! じゃあ……」

 

 ここでアリスが、礼を言う二人の手を引っ張った。

 

「……二人とも、情報を得たのならさっさと帰るぞ。ほら、来い……」

「お、おい……」

「引っ張るなよアリス……まだ、お礼をちゃんと……」

「いえいえ、構いませんよ。誰であっても、時間とは大切なものですから……」

 

 そのまま、二人は塔の外へと引っ張り出されてしまった……

 

 

「何だよアリス、まだお礼もまともに言ってなかったじゃないか」

「あれじゃ、めちゃくちゃ失礼だろうが……」

 

 不服そうに言う二人だったが、アリスはシリアスな様子を崩さなかった。

 

「……影紬は、妖魔の間でも有名な人形遣いだ。外法の者でもある、決して関わるな」

「あいつ、妖魔だったんか……」

「しかも、外法の者……危ない奴ってこと?」

 

 アリスは、一息置いてから続けた。

 

「影紬とは、正確には一族の長に与えられる雅号(がごう)。さっきの奴は、四代目影紬にあたる。からくり人形術のみに限定すればだが……影紬一派の腕前は、三魔芸を極めたアルテイスト家よりも上。影紬には手を出すな……それは、魔王として母上から告げられた事でもあるのだ。奴は極めて危険だが、求道に没頭している最中は無害。それゆえ、断じて手を出すでないぞ」

「そんなに危ない奴だったのか……」

「ひえぇ……」

 

 だけど、そんな事を言われたらそれはそれでワクワクする。いつか、そのからくり人形術の腕前に挑んでみたいものだ。

 

 ともかく、情報に嘘はないだろう。

 

「くっそ〜! それにしても、中に何があんのか気になるな〜! でも、あの影紬って奴がいる限り、探索は出来ねぇんだろ?」

「ああ……求道とは孤独なものだ。誰にも踏み込ませぬ、崇高な領域……それを土足で踏みにじろうものなら、どうなるか……」

「想像したくもねぇな……でも……」

 

 この塔に、何かがあるのは確かだ。しかし、中から感じる尋常ではない気によって、探索は無謀というのが嫌でも分かる。また来る時は、もっともっと力をつけてからだろう。

 

「よし、それじゃ求道者の洞窟に潜ろう。その最下層に、魔導懸糸があるって話だね」

「きゅきゅっ!」

「ああ、行くぜっ!!」

 

 こうしてルカ達は、再び求道者の洞窟に戻ったのだった……

 

 

 人形遣い塔……その上階にて。

 

「影紬……祝福なき勇者達はどうでしたか?」

「さて……海の物やら、山の物やら。私にはなんとも判断しかねます」

 

 影紬と、誰かが話していた。

 

「あら、なんとも気のないお返事……」

「私への評価も、似たようなものでしょう。あなたにとっては、この私とて海の物やら山の物やら……」

 

 影紬はそう言いながら玉座に腰をつけ、座る。そして、顔にかかっていた布を上げて素顔を晒した。

 

「……そうでしょう、アリスフィーズ8世陛下?」

 

 なんと、影紬の話し相手はアリスフィーズ8世だった。

 

 アリスフィーズ8世……またの名を、黒のアリス。世界を揺るがしている、魔王の一柱でもある。

 

「私は、あなたを高く評価していますわよ……最後の人形使い、4代目影紬」

「陛下は、500年前に初代影紬を見出されたお方。そして現代、人形遣いの技は完成し、終わりを迎えました。4代目影紬の私が編み出した、究極にして最後の人形術……必ず陛下のお力となりましょう」

 

 影紬の言葉を聞き、クスクス笑う黒のアリス。

 

「頼りにしておりますわ、二度も夢破れた身ですから。負け続けてここまで来た身、それも覇道の一興……聖魔融合を果たす秘薬『白の兎』、更にはヴィクトリーを吸収した事によるサイヤ人の力……その力でさえ、祝福なき勇者達には勝てなかった……」

「あの少年達が、それほどのものとは……正直、とても思えませんけれど」

 

 先頭を歩いていた、ルカとヴィクトリー……今の彼女らからすれば、吹けば飛ぶ程度のものとしか思えないだろう。だが、黒のアリスには油断の色は無かった。

 

「今度のパーティは、少数精鋭という趣向でいきましょう。聖魔大戦の時代に君臨した、神話クラスの魔物達を率いて……」

 

 黒のアリスがそう言いながら、指を鳴らす。

 

 すると、その場に強大な気を持った魔物達が現れた。

 

「この世界、壊してやればいいのだな……」

 

 アジ・ダカーハと呼ばれる魔物娘が、黒髪を靡かせながら登場する。

 

「任せなよ、思いっきり暴れてやるさ!」

 

 そう言って割れた腹筋に力を込め、大きな胸を揺らしながら続いたのは、斉天大聖という魔物娘だった。

 

「脆弱な現世の魔物など、相手にもならないわ……」

「ウニャー! あたしの力を見せてやるニャー!」

 

 巨大で色鮮やかな羽根を持つハーピー型の魔物娘と、下半身にジャガーの四足を有する猫型の魔物娘が意気込む。ケツァルコアトルと、テスカトリポカだ。

 

「全て、黄泉に還すとしよう……」

「くくっ……派手な宴になりそうだのう」

 

 下半身は蛆のような生物で覆われており、上半身も腕が骨だったり継ぎ接ぎの痕が見える和装のゾンビ……イザナミ。

 

 黄金の髪飾りをつけ、和装をはだけさせ、周囲に巻物を浮かべ、その足元には女性の下半身が付随している異形の妖女……ヒミコ。

 

 黒のアリスの秘蔵の魔物娘……それらは、あまりにも強力で邪悪な気を放っている。それを受けながらも、影紬は笑っていた。

 

「ふふっ、なんとも頼もしき神話のお歴々……では、私が作り上げた作品もご覧にいれましょう」

 

 影紬が指を鳴らすと、異形体に改造された歴代の魔王達が現れた。

 

「お、お姉様……ご、ご機嫌……うるわしゅう……」

「ふふふっ、アルテイスト家の者に劣らぬゾンビ術ですわね。これぞまさに、ゾンビ術と人形術の究極融合……」

 

 そう言いながら、黒のアリスは最初に目に付いた魔王の前に立ち、その頬を撫でた。

 

「あれだけ私に刃向かった妹も、こうなれば大人しいもの……今なら仲良く、人形遊びでも出来そうですわね」

 

 アリスフィーズ9世……異形に改造され、意識も朦朧としているようだが、従順になっている。

 

「うふふっ……あははっ……」

 

 中には、ピエロのような格好をして、胴体がくっついて腕も六本もあり、頭が二個あるものもいた。

 

「11世と12世は、死体の欠落箇所が多かったもので……2体を融合させる事で、制作に成功したのです」

「うふふっ、素敵な姿。あなたのそういうセンス、大好きですわ……」

 

 そう言っている黒のアリスの背後……和服にも似た格好をした、魔王がいた。アリスフィーズ6世だ。

 

「控……えよ……我は、魔王……アリスフィーズなるぞ……」

「まぁ、お婆様ではありませんか。随分と、ご達者なようで……」

「死体はヤマタイの聖廟に安置されておりましたので……損傷も少なく、早急に仕上げることが出来ました」

 

 影紬は息を吐いて、黒のアリスの方へ向いた。

 

「他の魔王人形は、少しばかりお待ちを。死体はすでに揃えてありますが、損傷も多いもので……」

 

 影紬はそう言ってから間を置き、まっすぐに黒のアリスに向いた。

 

「そして、ぜひともあなたに見せたい作品が」

「まぁ、まだあるのですか……?」

「はい……」

 

 影紬は、指を鳴らす。そこに、ある人物が瞬間移動で現れた。

 

「……お呼びですか? 影紬様に、アリスフィーズ様……」

「男……いやっ、まさか……!!」

 

 黒のアリスは驚いたような顔から、どんどんと笑顔になる。

 

 黒い道着に、ボサボサの黒髪……左耳には、かわいい白うさぎのピアス。そんな格好をしているのは、嘗て黒のアリスが対峙した祝福なき勇者の一人……ヴィクトリーだった。

 

「ええ……これが、私の秘作。ヴィクトリーというサイヤ人のゾンビです。作品名は……さしずめ、黒のヴィクトリーと言った所でしょうか」

 

 そう、黒のヴィクトリーが現れたのだった。

 

「まぁ……まぁ、まぁ……! どこで、こんなものを……!」

「ここより、遥か遠くから……とだけ言っておきましょう。損壊が甚大でしたが、魔王人形を作る際に余ったパーツを組み込むことで完全な再生に成功……それどころか、魔王の力も振るえるようになりました。かつては脅威だったこの力も、今は陛下のものとなっております」

 

 影紬がそう言うと、黒のヴィクトリーは自分の胸に手を置いて、黒のアリスに跪いた。

 

「かつては不肖を働いたこの体、今は陛下の刃となりましょう……」

「ええ、頼りにしておりますわ……! とっても……!」

 

 黒のアリスは、目を光らせながら黒のヴィクトリー達を一望した。

 

「これだけの戦力があれば、さぞ楽しいお茶会が開けますわ。たっぷりと楽しみましょう、うふふっ」

「それでは、陛下に三度目の栄光を……世界の全てを、その手に掴むために……」

「全ての世界を、この手に掴むために……うふふふふっ……」

 

 人形遣いの塔に、黒のアリスの笑いが響く。

 

 征服の野望を秘めた笑いが、この人形遣いの塔を包んだのだった……

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