もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
ルカ達は、酒場で聞いた話を元に、サラーンの家を尋ねてみた。
しかし、玄関には魔術由来の施錠が掛けられていた。ノックをしても、誰も応えない。
「ど、ドアが動かねぇ……!!」
「ヴィクトリーの怪力でも動かないのか……」
ヴィクトリーはどうにか玄関を開けようとするも、施錠の魔術は強力だった。そんな彼を見かねたアリスが、ため息を吐きながら前へ出た。
「どけ……仕方ない、強引に施錠の魔術を解いてやろう……」
アリスが魔力を宿した指をかざすと、施錠の魔術が解除された。
「おお、やるじゃねぇか!」
「いいのかなぁ……」
「今は一大事だからな」
ルカ達は、そのままサラーンの家に入る。中は無人で、物資が沢山あるような場所……家と言うより、アジトなんて表現が当てはまる所だった。
「ずいぶん簡素……ってか、雑な部屋。サラーンって人、こんな所で暮らしてたんだ……」
「何かあるかもしれん、調べてみるぞ」
ソニアとアリスが言い、皆は家を探索し始める。
立派な像、ネギが入ったタル、床に敷かれた布団……手分けして、色々な所を探った。
「ドロボーみてぇで嫌だな……」
「勇者には民家を探索する権利もあるんだって。まぁ、悪用してる奴が多いらしいけど……」
「これもサバサの為なのよ……」
ヴィクトリーもルカもソニアも、探し回りながら話し合う。人外たちは特に何も気にせず、遠慮なしに調べていた。
「きゅー!」
ふと、ヌルコの元気な鳴き声が聞こえた。
「どうしたの、何か見つけた?」
「きゅっきゅー」
ソニアに言われたヌルコが触手で指す先……そこに、書類の束が散乱していた。
「なんだこりゃ……」
ヴィクトリーはそれを束ね、見てみる。女王身辺の調査メモだが、真新しい情報はないようだ。書いてあるのは、当の女王であるサラの悪行や悪評だ。
「うーん……まぁ、既に俺達が把握してるような情報ばっかだぜ」
ヴィクトリーはパラパラと流し読みしながら、紙の束をアリスに渡す。彼女もそれを読んで、納得したようだ。
「まあ……有益な情報をここに残したままとも考えにくい。やはり、本人に話を聞くのが一番だろう」
「サラーンが何処にいるのか、手掛かりは無いかな……さすがに、サバサ城下町にいるとは思えないけどね」
ルカが考えていると……ふと、紙の束の間から紙が出てきた。どうやら、それは何かの地図のようだった。
「むっ、この地図は……恵みのオアシスの地図ではないか?」
「……という事は、恵みのオアシスに潜んでいるんじゃない? お手柄ね、ヌルコ!」
「きゅーきゅー!」
ソニアに撫でられ、嬉しそうに鳴くヌルコ。そんな彼女らを横目に、アリスは「うーむ」と唸る。
「アサシンたる者が、わざわざ地図を残していくのか……? まあ、同志へのメッセージという事もありえるな」
しかし……恵みのオアシスに、何かあるのは確実だろう。行ってみても、損は無いかもしれない。
「よし、恵みのオアシスへ行ってみよう!」
「よっしゃあ、いっちょ行こうぜ!」
ルカ達はアジトの調査を切りあげ、恵みのオアシスへ向かうのだった。
※
サバサから出て北上し、大橋が掛けられた川へ突き当たったら東へ歩く。
熱い日差しに当てられながらも、モンスターの襲撃を凌ぎながら歩くと……やがて、一際大きなオアシスが遠くに見えた。
「み、見えたぞ……」
「ああ、風も涼しくなってきた」
話に聞く、恵みのオアシス……川に面しているこのオアシスは水が豊富で緑も茂っていた。魔物娘達も、快適そうにリラックスしてるのが見受けられる。
「きゅーきゅー!」
「ヒルデも、見回りたい……ついでに、先行して雑魚を蹴散らすよ……」
「では、私も生体調査を……サンプルも多めに取って、それとそれと……」
ヌルコとヒルデとプロメスティンは、先に行ってしまう。広い場所でもないし、三人とも露払いしてくれるので、これぐらいなら許容範囲内だろう。
「おいおい……ヴィクトリー、気は感じるかい?」
「ああ、人間の気が一人だ。ほら」
ヴィクトリーが指した先……黒い格好に身を包んだアサシン風の女が、木に寄りかかって目を瞑っていた。
さっそく、話しかけてみる事にした。
「オッス!」
ヴィクトリーが声をかけた瞬間、彼女はぱっちりと目を開けた。その瞬間、アサシンらしい冷たい気にルカ達はたじろぐ。
「……失礼、見ない顔なので威嚇した。戦う気は無い」
「おめぇ、相当出来るみてぇだな……」
ヴィクトリーのサイヤ人センサーも、ビンビンに反応している模様。しかし、今回はそんな事をしに来た訳では無い。
「お前達、私を探しているようだな……私がサラーン、サバサ直属アサシン団の首長だ」
「サラーンって、女の人だったの……」
意外に思ったソニアが、そんな事を口走る。
「私の性別は関係あるまい……お前達が知りたいのは、サラ女王に関してだろう?」
「ああ、話が早くて助かるぜ……」
「結論から言おう……サラ女王は妖魔の血が目覚め、正気を失っている」
「なに……!?」
ヴィクトリーは驚くが……言われてみれば、そう考えた方が普通だった。あの時感じた気は、妖魔のものだったのか。
「サバサ王家には、妖魔の血が混じっているとか。それが、現女王の代で覚醒したのか……」
アリスはそう言ってから、サラーンの方へ向き直す。
「だが……人格が変わるほどの自然覚醒が起きるものなのか? しかも女王即位と同じタイミングとは、なんとも不自然だな」
「その通り……この一件には、黒幕がいるようだ。女王を覚醒させた者がいる……もちろん人間ではあるまい。そうすると、王位の継承自体にも疑問が生じる。果たして、前王の死は本当に事故であったのか……」
「全部、陰謀だったって事……? 前王を亡き者にして、サラ女王を覚醒させて……」
何者かが、サバサを
「私が集めた情報によれば、そうなる。黒幕は女の妖魔という事以外、全くの不明だがな……」
「じゃあ、まずはあの女王をどうにか正気に戻して、黒幕の正体を吐かせねぇとな」
「少し手荒な気がするが、それが一番いい」
「尻尾を全く見せん黒幕よりも、サラ女王を何とかする方が現実的だな」
サラ女王をどうにか元に戻さねば、ただでさえ戦の渦中であるサバサは堕落しきって滅びてしまう。それだけは、あってはならない。
「それで、あいつを元に戻すにはどうしたらいいんだ? ぶん殴れば元に戻るんか?」
「出来の悪いマキナじゃないんだから……」
ぶん殴る事しか頭に無いヴィクトリーに呆れる、ルカ。
「……ただ倒すだけでは妖魔の血の精神汚染は止められん。一応だが、アテはある。妖魔の血が目覚めたのなら、その始祖自身に聞くという事だ」
「その始祖……?」
ヴィクトリーが考える横で、アリスは思いついたようだ。
「……スフィンクスか! 確かに、奴こそが妖魔の血の大元だな」
「スフィンクス……?」
「あの、ピラミッドに居るっていう……?」
「誰だ?」
ルカもソニアもヴィクトリーも、怪訝な顔をする。特にヴィクトリーは、スフィンクスなんてものは聞いたことも無い。
「1000年前、サバサ1世の妻となった妖魔だ。こいつの血が覚醒し、こんな事件が起きたとも言えるな」
「……うむ、事情に詳しいようで説明が省ける。このスフィンクスは今も生存し、ピラミッドにいるのだ。彼女の力ならば、陛下を元に戻す事も出来るかもしれん。そう考えた私は、単身でピラミッドに潜入したが……流石に敵が強く、途中で撤退せざるを得なかった。現在、再潜入に向けて準備を整えているところなのだ」
「いや、僕達が行くよ」
ルカは、今のサラーンを見て言う。彼女は、よく見れば怪我をしており……激しい戦闘の痕が見て取れたのだ。
「お前達が、行ってくれるのか……? ではピラミッドは任せ、私は黒幕を調査しよう」
「はいっ! 僕達は、なんとかスフィンクスに会ってサラ女王を元に戻す方法を聞いてみます!」
「ピラミッドは、確か西の方だったっけ……わくわくすんなぁ」
次に向かう先は、西のピラミッド。そこでは、間違いなく強敵が待ち構えているはずだ。
「きゅーっきゅ!」
「行先、決まったみたいだね……」
ここで、周りを見てたヌルコとヒルデがこっちに来た。何となく話は聞いていたようで、大丈夫そうだ。
「ありゃ、プロメスティンは?」
「向こう……」
ヒルデが指す先……プロメスティンが、サソリをつまみ上げて毒を出させてた。
「ふふ、このサソリの毒をサンプルに新薬を作ってみましょう……もちろん試験はルカさんかヴィクトリーさんに……」
「……」
「……」
怪しげな薬を作って、ルカ達に飲ませようとしている……
「よし、サバサの国の為にも!」
「ああ、いっちょやってみっかぁ!」
「うんっ! 私も頑張っちゃうわよ〜!」
「ふん……ピラミッドなど、余達にかかれば楽勝だ!」
「ヒルデも、がんばるよ!」
「きゅっきゅー!」
こうして、ルカ達はピラミッドに行く為に歩き出した。
「わ、待ってくださーいっ!」
プロメスティンが遅れて、その背を追うのだった……