もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
「あれ……私は……」
元に戻ったサラが、目を覚ます。そして、何やら虚空を見詰めて静止し……そうしたかと思えば、頭を押さえて一気に冷や汗を垂らし始めた。
「……ちょっと、ウソでしょ……!? 私、今までとんでもない事を……!」
どうやら、今までの記憶はハッキリと残っているらしい。やった事がやった事だけに、気の毒としか言いようがない。
「えっと……」
それを見ていたソニアが、おそるおそる声をかける。
「えっと、はじめましてサラ女王様……理性は戻りましたか?」
「ええ、うん……理性も記憶も、しっかりしているわ。今まで何をやっちゃったかも……全部……」
「ああ、それは……お気持ち、お察しします……」
気まずそうにする、ソニア。見た所歳も近いので、心情を察しやすいのだろうか。
そんな彼女とは違って、サラは顔を引きしめ直す。
「でも、落ち込んでは居られないわね。貴方達にも、多大な迷惑を──」
ここで、近衛兵が王の間に入ってきた。
「女王様〜、お楽しみのところ悪いですけど、急報ですぜ。なんだか、ラダイト村がえらい事になってるとか……」
「なに……!?」
衛兵の報告に一番に反応したのは、ヴィクトリーだった。続けて、サラが目を見開く。
「ラダイト村が……? 報告を、早く!」
「えっ、は、はいっ!」
様子が違うと察した衛兵は、先程までの怠そうな態度からビシッと背筋を伸ばして、息を吸う。
「サキュバス三体がラダイト村を襲撃! 大変やべぇ……いえ、切迫した状況のようです!」
「なんだとっ!?」
サキュバスが三体、ラダイト村を襲撃……ヴィクトリーの顔も、どんどん切羽詰まったものになる。
「報告、ご苦労……剣を持ちなさい!」
「は? 剣……? え……?」
「この私が、自ら出向きます! 出陣の用意をなさい!」
「へ、へい! 分かりやした!」
サラ女王があれこれ指示や準備をしてる横で、ヴィクトリーは迷わず仙豆を口にする。
「おい、ヴィクトリー……何をして……」
焦るヴィクトリーを、不思議に見つめるルカ。しかし、アリスとヒルデには意味が理解できた。
「……そうか、あの村にはっ!!」
「うん……ヴィクトリーと約束した子が……!!」
あの村には、ヴィクトリーが助けた少年がいるはずだ。家族を守りながら、いつかその家族を救おうと強くなろうとしている……あの村で、唯一マトモな男の子が。
「サン・イリアとの対妖魔防衛協定にのっとり、サバサより救援軍を派遣します! その旨、外務大臣よりサン・イリアに通達! サバサ国内には、準警戒態勢を! ラダイト村へは、私が先行します! その間に救援軍を編成しラダイト村に進軍を!」
衛兵が、慌ただしく出たり入ったりする。サラに装備を運び、彼女もそれに直ぐに着替える。どうやら、殴り込みの準備が出来たらしい。
「救援軍の隊長は、サモン……ああ、私がクビにしちゃったのね。早急にサモンを探し出し、救援軍の総指揮を! 彼は武人の中の武人、いかなる時も戦いに備えているはず!」
「へ、へい! ただちに!」
あれこれと指示をしながら、今度はルカ達に向く。
「旅の方! あなた達の力を見込んで頼みが……」
「すまねぇ、俺は先に行く!!」
ヴィクトリーはサラの言葉を遮り、額に指を当てる。
「わりぃっ!!」
「!! 待てっ、ヴィクトリーっ!! 待てったら!!」
ルカが止めるも、ヴィクトリーは瞬間移動で消えてしまった。
「あのドアホっ! 状況をややこしくして……!」
「……ヴィクトリーって言うのね彼!! 急がないと不味い!! おそらくラダイト村に襲撃したのは、私をこんな目に合わせた黒幕よ!! 私が正気に戻ったのを察して、動いたのかも……!!」
「黒幕が、ラダイト村に……!? もしかして、三人の淫魔って……!!」
「リリス三姉妹……!! 今のアイツでは、どう転んでも殺されるぞ!!」
「行きましょう!! 彼も私を救ってくれた恩人よ!」
「この女王様……理性失ってた時とは別の意味で凄い……なんて、言ってる場合じゃないよね! んもう、瞬間移動がこんな状況を作っちゃうなんて!」
「それじゃあ、ラダイト村に急ごう!」
「きゅーっ!」
ルカは『ハーピーの羽』を使い、この場からラダイト村に向かうのだった。
「『ハーピーの羽』なら、サバサからラダイト村まで3分……進軍するよりは、遥かに早いですが……」
「死なないで、ヴィクトリー……!!」
飛びながらプロメスティンとヒルデが言い、ルカ達もハーピーの羽に身を任せたのだった。
※
30分前──ラダイト村。
いつも通り、環境音と農耕の音が鳴る閑静な村。
「はっ……はっ……!」
村の隅……誰にも見つからないように、あの少年がその場で正拳突きを繰り出している。あの時のヴィクトリーのように強くなろうと、拳を鍛えていたのだ。
「……おい、何をしている?」
「!!」
声をかけたのは、少年の父。イリアス教の、
「農作業をサボって、何をしているんだ。怠け者には、神罰が下るんだぞ!! 下らない遊びをしている暇があったら、我々の為に働け!!」
「っ…………」
少年は、自分の父を睨め上げる。キッと目を鋭くして、拳を握りしめ、歯を食いしばってギリギリ言わせる。
「何だその反抗的な目は!! 親に逆らうつもりか!?」
「うるさい……お前を親だなんて、思った事はない!! 親なら、妹も僕も……母さんにも、暴力を振るわないはずだ!!」
「何だと……さては、サン・イリアの連中に何か吹き込まれたな!!」
父親が、少年の胸ぐらを掴みあげる。そして、少年の顔に拳を振りかぶったその時だった。
村の中央から、旋風が吹き荒んだ。その風の中の淫気が、二人の肌を焼くようにビリビリと痺れさせた。
「……え……!!?」
「な、なん……だ……!?」
ざわめく、村。先程まで快晴だった空には雲がかかり、不穏な曇天になる。
現れたのは、三人の女。髪の色はそれぞれ、水色と赤色と紫色。だが、羽と尾が生えている。その異様な雰囲気からして、人間では無いことは確かだった。
そう、彼女達こそがリリス三姉妹。イリアスポートからの船で戦った水色の髪の淫魔、モリガンを筆頭に……赤髪に上裸を晒した淫魔がアスタロト、紫髪で縦セタを着たのがリリスだった。
「汚らわしい魔物め、何をしに来た! 我々は、神の加護を受けているのだぞ!」
淫魔達に対し、神官が言う。
「知ってるか? お前達には、歴史の加護もないんだよ……正統な歴史には、タルタロスなんてない……だからマキナも見つかってないし、反マキナ派なんていない……」
モリガンが言いながら気を高め、滲み出てきたオーラが両手に集約する。
「つまりこんな村、歴史に存在しないんだよ! だから、消滅させちまっても全然構わないのさァ!」
大きく手を広げながら大声でそう言う彼女に、衛兵が二人も駆け寄ってくる。
「おのれ、淫魔どもめ……!」
「魔物の好きにはさせんぞ……!」
そう言いながら槍を構え、戦おうとする二人だったが……彼らを、モリガンは嘲笑った。
「ほぉら、一秒で一生分の快楽を味わいな!」
そして二人に両手を向け、エネルギーを炸裂させた。
「ひぁぁぁぁぁ〜〜〜!?!?」
なんと、それだけで一瞬にしてエナジーを吸い切ってしまい、衛兵は骨と皮だけになってその場に崩れてしまった。
その様子を見ていたアスタロトは、溜息を吐く。
「それでもサキュバスなの、モリガン? 男を搾る時は、もっと優しく天国に導いてあげないと……」
「ひぃっ……!」
「ふふっ、いらっしゃい。最高の快楽で天国に送ってあげるわ……」
「い、いやだぁ……! やだ、やだぁ……! あぁぁぁぁぁ────!!」
アスタロトはそのまま、村の青年を犯し吸う。拒否の叫びもお構い無しに、犯しながらそのエナジーを吸っていくのだった。
「さて……」
リリスが、村の隅の方を見る。そこには、あの親子。羽をはばたかせ、疾風を伴って一瞬で二人の前に来た。
「な、なんだ貴様……!! この化け物め、神罰を」
「うるさい」
「っ、ひぁあぁあぁああ────っ!!?」
声を上げる父親に、手を向ける。すると、それだけで有無を言わさないままエナジーを吸い切られ……そのまま、干物となってしまった。
「ぁ……ぁ……あ、ぁ……!!!」
少年は、恐怖する。先程まで父親だったものと、リリスの顔を交互に見ながら、その場を後ずさったが……彼女は、構わずに前屈みになって胸の谷間を見せつけながら近寄ってくる。
「坊や、お姉さんが可愛がってあげましょうか。怖くないですよ、とっても気持ちよく昇天できますから……」
「ぁ、ぁあ、あぁぁあぁあっ……!!!」
今にも泣き出しそうになりながら、少年は握っている拳に力を込める。
「そんなペースで搾ってたら、いったい何日かかるんだよ。あたしはサクサク始末しちまうぜ〜!」
モリガンが、そう意気込んで村人達を次々に干物にしていく。
そんな最中だった。
「あ──────ッッ!!!!」
少年が、拳に気を纏ってリリスに向かって踏み込む。そして、あの時ヴィクトリーが見せた技の『龍翔拳』を繰り出した。
「っっ!?」
突然の事に、リリスはそれに直撃した。顎に拳がヒットして、かち上げられてのけ反ったのだ。
「姉貴!!?」
「姉さん!?」
突然の事に、モリガンもアスタロトもそこに注目する。しかし、リリスは何ともない様子でゆっくりと顔を下ろす。
「…………モリガンとアスタロトは、そのまま続けなさい。この子の相手は、私がするわ」
「はっ、何だよビックリさせやがって!」
「ふふ、続けましょうか」
淫魔達は一瞬止まったものの、すぐに侵攻を再開する。
「あっ、あ……そ、そん、な……!!?」
少年が絶望している間にも、悲鳴が聞こえる。色々な所から、断末魔が響く。教会に逃げ込む大勢の人、資材でバリケードを作って隠れようとする人、村の外へ走ろうとする人。みんなみんな、水色の髪の淫魔が骨と皮だけにしていく。
「ふふ、大丈夫ですからね……今のは、蚊に刺された程度。それぐらいじゃお姉さんは怒りませんから……」
少年も、ついにリリスに捕まった。