もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
「向こうに、鍛治ギルドがあるな……貴様の折れた剣も、繕えないか?」
「ああ、そうしてぇけど……」
ヴィクトリーの持っていた剣……アスタロトに折られ、今はラダイト村であの少年の墓標になっている。刃の方だけ、一応持ってはいるが……
「俺、あれ以外の剣使うとぶっ壊しちまうんだよ。ほら、前に拾った剣とか試しに振ってみたんだけど、それだけで柄の方からガギッて音してガタガタになっちまって」
「試し振りで目釘を壊すとは……貴様の脳みそ筋肉っぷりも呆れたものだな」
剣士というのは、力も必要なのだが……その力に見合った技量も相応に必要で、そもそも自分の力で剣をぶっ壊してしまうようであればまず不向きだ。
これが、ヴィクトリーが剣技ではルカには勝てない理由だった。
「ヴィクトリーの剣、凄いやつだったんだね……」
「そう言えばルカさんと一緒に頻繁に鍛冶屋に行ってましたね……あの剣も、丈夫な割には相当大事に扱ってるように見えましたが」
プロメスティンは、よくヴィクトリーとルカの事を観察している。あの剣も、なんとなくただの剣では無い事を理解していたようだ。
「ああ、あの剣は特別なんだ……ヒーローになる俺の背中を叩いてくれた人の剣だ。まぁ、製法が同じなだけの偽物だけどな」
「特別な力は感じられませんでしたが……ヴィクトリーさんの怪力に耐えうる剣と聞くと、少し興味が出てきましたね」
ここでアリスは、ふと思いつく。実は、イリアスベルクで仲間にした魔物盗賊団……そのドラゴンパピーのパピが、新しい鉱石を取る度にパーティに入って鉱石の打ち方を各所の鍛冶屋で教わっていたのだ。
そのため、彼女は結構な腕前を誇っている。
「へし折られたのなら、ポケット魔王城のパピに修繕は頼めなかったのか?」
そう提案するも、ヴィクトリーは苦い顔。
「あの後、へし折られた刃の方持ってパピの所や、サバサの鍛冶屋に行ったんだけどよ……無理だってよ。素材自体は鋼なんだけど、同じもの再現すんのに何十年もかかるって見積もられた」
「なんと……」
「気長……」
「天使にとってはすぐですが、ヴィクトリーさんはそうでは無いんですよね……」
ヴィクトリーは自分の道具袋から、折られた刃を出す。そして、鍛冶屋ギルドの方へ歩いた。
「まぁ、ダメ元で話はしてみるさ」
「うむ……」
ギルドに入ると、ギルド受付のおっちゃんと鍛冶屋が並んでいる。その左手には集会場があり、色々な職人さんが話し合っていた。
そう言えば、各国で戦争をしている最中だったか。こういう武器を扱う所も忙しいのだろう。
とりあえず、鍛冶屋の方にヴィクトリーは行く。
「オッス!」
「いらっしゃい……おお、なんとまぁ派手にやられたな!」
「こいつ直して剣作れる?」
ヴィクトリーが刃を渡し、おっちゃんはその断面を見る。鋭い目で暫く見たかと思えば……血相を変えて、集会場の方を見た。
「おおーいっ!! これ見てくれないかーっ!!?」
おっちゃんが呼びかけると、ざわざわと人が集まる。そして、みんなして折られた刃の断面を見るのだが……あまり、いい雰囲気ではなさそうだ。
「い、いや……俺は無理だぞこれ……」
「私も無理よ……どんだけ鍛えてあるのよ……」
「こんな細い剣なのに、折り返しが数億……いや、もっとある……何年鍛え続ければ、いったいこんな……」
「そんな剣がこのザマって、いったい何と戦ったんだ……?」
と、まぁ……大体は予想出来ていた光景に、ヴィクトリーは苦笑いした。
「やっぱ無理なんか?」
「……鍛冶屋ランドルフ」
身振りの良さそうな男が出てきて、ヴィクトリーにそう言う。
「ふぇ?」
「おっと、紹介が遅れたな……俺がこの鍛治ギルドのギルド長で、俺こそが鍛冶屋ランドルフ……」
「おめぇが!?」
「……と来れば都合がいいだろうが、残念ながらそうじゃない」
ギルド長の言葉に、ヴィクトリーはずっこける。
「なんだよ!!」
「ハッハッハ、からかって悪かった。鍛冶屋ランドルフはこの世界で一番の腕前を持つ、伝説の鍛冶屋だ。聞いたことは無いか?」
「たまもから聞いた事があるな……確か、人魔合わせても鍛治の腕はある一人の人間が頭抜けて一番だと。その者こそがそうか」
アリスが、そんな事を言う。彼女が言うからには、間違いなさそうだ。
「それで、その伝説の鍛冶屋っちゅうのは何処にいるんだ?」
「さぁな……今も行方知れずだ。まだ放浪してるのか、鍛治の腕を極めて逝ったのか……ギルドですら、把握してない」
「じゃあ、この剣の修繕は無理っちゅう事か……」
そういう訳で、ヴィクトリーの剣の修繕は無理そうだった。
「まぁ、俺は剣無しでも戦えるけどよ」
「余が教えた剣技が無駄になるのは嫌だぞ」
困った様子のヴィクトリー達。見かねたギルド長は、声をかけた。
「何だお前ら、丈夫な剣が欲しいのか? それなら、サルーンの鍛冶屋を尋ねるといい。ここまで来れた冒険者だろう? クリスタルの剣ならきっと眼鏡にかなうはずだ」
「サルーンの鍛冶屋だな、分かった!」
「だが、あの周辺は『ウロコ盗賊団』の縄張りでもある……クリスタルを取りに行くなら、気をつける事だな」
「盗賊団がいるんだね……ヒルデ、やっつけるよ」
「イリアスベルクの時とは訳が違うだろう。行くんなら気を抜くなよ」
クリスタル製の武具……それを作れるのなら、ヴィクトリーの怪力に耐えうる剣も、何よりパーティの武装の大幅強化にもなるだろう。
「サンキューな!」
「次は道具屋に行きましょうか。魔導書のページを……」
「余は食べ物屋に行って腹ごしらえをしたいぞ」
「ヒルデ、歩きたい……この街、お店たくさんある……」
ヴィクトリー達は、準備を進めながらもちゃっかり『グランドール』の街並みを堪能するのだった。
食べ物に舌鼓を打ち、良さげな防具屋で装備を見てみたり、道具屋に魔導書のページが無くて凹んだり、出くわしたイリアスと試食コーナーを平らげたり……戦いばかりの日を癒す、穏やかな旅の一幕だった。
「……なぁアリス」
そんな中、ヴィクトリーはアリスに話しかける。
「なんだ?」
「……ありがとうな。気ぃ遣ってくれたんだろ?」
「……構わん。仲間に何かあれば、士気に関わる」
アリスはそう言ってから間を置き、続けた。
「……忘れろとは言わんが、失ったものばかりを数えるな。貴様の傍にはルカ達も、余達もいる……ミカエラやあの子の意志も受け継いで、皆でここに立っているのだ」
「ああ、そうだよな……いつまでもクヨクヨしてたら、俺達に意志を託してくれた人に申し訳がねぇよ」
ヴィクトリーは少しだけ悲しそうな顔をしてから、その表情をキッと引き締めた。
「リリスは、いずれこの手でぶっ飛ばしてやる! あの時始末しなかったことを、めちゃくちゃ後悔させてやる! 俺を支えてくれてる仲間の為にも、俺達に託してくれた人達の為にも……俺はまだまだ強くなる!!」
いつものヴィクトリーの、気合いの入った言葉。サイヤ人らしい、まだまだ強くなるという誓い。
力強い言葉を聞いたアリス達は、思わず頬を緩ませた。
「そうだ……貴様はそれでいいのだ」
「ヴィクトリー、元気になった……」
「元気になったのなら、何よりです」
気合いを取り戻したヴィクトリーと、彼を囲む仲間達。そんな所に、拍手しながら歩いてくる人影が一人。
「……ん……ッッ!!?」
「な……貴様はっ!?」
ヴィクトリーもアリスも、驚いて身構える。
「そう身構えるな、派手に事を起こしに来た訳では無い……私はただ、『祝福』に来ただけだ」
そう言いながらやってきたのは、なんと『黒のヴィクトリー』だったのだ。