もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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大劇場、無血開城

「おお、すげぇじゃねぇか!」

「お姫様っぽい!」

 

 ヴィクトリーもルカも、揃ってサラに言った。

 

「バイオリンに、ブレイクダンス……意外性なら勝てる……! 後はパフォーマンスね!」

「きゅ!」

 

 ソニアとヌルコも、手に汗を握って舞台を見守る。

 

「く、クク……さ、さぁヴィクトリー、き、貴様の真価を見せてみろ!」

「動揺しながらそれっぽい事を言うな!」

「想定外の事が起きているなら、素直に驚くべきでは?」

 

 震え声で言う黒のヴィクトリーに、アリスとプロメスティンが突っ込む。

 

「わくわく……」

 

 その横で、ヒルデは期待しながらステージを見ていた。

 

「おし、じゃあ行くかんな……!」

「ふふ、何時でも仕掛けていいよっ! ミュージック、スタート!」

 

 音楽が始まる。テンポの速い、重低音混じりの音楽。二人は殴り合うような動作を挟みながらステップを踏む。ブレイクダンスで言う所の、『アップロック』だ。

 

 リズムを取るにつれ、二人の足さばきにキレが増す。ヴィクトリーもサキも、本気だ。

 

「ヴィクトリーのダンスを見るに、激しめの曲調で行った方がいいわよね……確実に決めるわ……!」

 

 サラは、そう言いながらヴィクトリーを見つめる。

 

 ステップを踏む二人の本気の掛け合いに、観客席はおおいに盛り上がった。

 

「いいぞーっ!! サキちゃーんっ!!」

「男の方も、頑張れーっ!!」

 

 盛り上がる観客席に混じり、客の一人であるサバサの衛兵がステージの端に目を向ける。

 

「ん……あれは……」

「サラ様と……あ、あれは……ば、ば、バイオ、リン……!!?」

 

 衛兵達の視線の先には、サラがバイオリンを構えてる。ヴィクトリーの合図を待ちながら、今か今かと機をうかがっている。

 

 それを見た彼らは、手を震わせた。

 

「に、逃げるなっ!! 逃げたら、サキちゃんが悲しむっ!!」

「そうだ、サバサの勇士に逃走の二文字は無い!!」

 

 やけに騒いでいる衛兵達に、黒のヴィクトリーが反応する。

 

「おい貴様ら……何を騒いで……」

 

 黒のヴィクトリーがそう言いかけた時には、ヴィクトリーはサラにアイコンタクトを取る。彼女も頷き、バイオリンの弓を弦に触れさせ、目を閉じた。

 

 次の瞬間……凄まじい大音量の不協和音が音楽を上書きして、フロア全体に鳴り響いた。

 

「!!?」

「うわぁあっ!!」

「ぎゃあぁあっ!!?」

「ぎゅ──っ!!?」

 

 ヴィクトリーはずっこけ、ルカとソニアとヌルコが耳を押えて悶絶する。

 

「うわぁあぁあっ!? 音波攻撃!!?」

「あ、頭が割れるーっ!!!」

 

 観客席は、もうすっかり大パニックだ。なのに、サラは演奏に夢中である。

 

「ブラストボイス並の音波攻撃です!! 音源は……サラさんのバイオリンからです!!!」

「超ド下手なだけではないかぁあぁああ!!!」

 

 プロメスティンもアリスも、割れそうな頭を耳を塞いで押さえ、目を白黒させていた。

 

「集音デバイスに、エラー、エラー、エラー、エラー……」

 

 ヒルデは既に白眼を剥いて、耳と思われる所から煙を吹いている。

 

「ぐぉぉおおぉおおおお!! 何だこれはぁあぁあああ!!?」

 

 なんと、黒のヴィクトリーまで耳を塞いで悶え苦しんでいた。

 

「何でおめぇまでダメージ受けてんだぁあぁああ!!!」

 

 思わず突っ込んでしまう、ヴィクトリー。黒い方のヴィクトリーは、衛兵の方を向いた。

 

「おい、サバサの衛兵!! あの小娘の演奏を止めさせろぉおおっ!!」

「無理だ、サラ様が演奏を始めたら、あと三分……長くて五分は、そのままだ!!!」

 

 それを聞いたルカ達は、絶望する。最低でも、あと三分はこのままだと言う。退席しようにも、自分たちは勝負を投げ出したことになるし観客はサラとサキを悲しませる事になるので、動けない。

 

 なお、当のサキは白目を剥いて涙を流しながらカニのように泡を吹いていた。

 

「る、ルカ……あたし、もう限界……おちんちんしゃぶらせて……」

「きゅー!!?」

「ヴィクトリー、ソニアが混乱し始めたーっ!!」

「知らねぇええ!!」

 

 音波攻撃は、被弾したものに確率で混乱状態をもたらす攻撃だ。このサラのバイオリンも、例に漏れずだ。

 

「おい衛兵、その口ぶりからして過去からそうなのだな!? なぜ放置したのだぁあああ!!」

 

 黒のヴィクトリーが聞くと、衛兵は申し訳無さそうな顔をする。

 

「だ、だって……サラ様泣いちゃうし、サバサ王の怒りを買えばどうなるか……」

「ドアホ──っっ!!!!」

 

 それを聞いていたアリスの絶叫も、サラのバイオリンの音に掻き消される。そのまま、五分間も演奏が続くのだった……

 

 

「……ふぅ、どうかしら!?」

 

 演奏に満足したサラが目を開けると、そこは死屍累々。ヴィクトリーもサキも、ルカ達も、観客までもが倒れ伏していた。

 

「……あれ?」

「よ、よぉ……お陰様で……サキも、倒せたぜ……」

 

 ヴィクトリーが、何とか顔を上げて言う。親指を立てて腕を伸ばし、ガクッと倒れた。

 

「ちょ、ちょっと……!!? 大丈夫なの、何があったの!? ヴィクトリーだけじゃなくて、ルカ達まで……!!」

「…………」

 

 かくして、サキに勝利した。

 

「勝利なのこれ?」

 

 ルカが疑問を口にするが、とにかくこのグランドールの大劇場は、サキから解放されたのだった。

 

 

 大劇場前……客の邪魔にならない場所で、ルカ達が黒のヴィクトリーと顔合わせをする。

 

「た、確かめさせて、もらったぞ……貴様らの、実力を……」

「無理して喋んじゃねぇよ……」

「お前は何者だ……なんて、今は聞かない方がいいのかな……」

 

 頭を押さえてフラフラよろめく、黒のヴィクトリー。何とか意味深な事を言おうとはしてるが、これでは台無しだ。

 

「………………」

 

 サラは、不服そうな顔で皆を見詰めていた。

 

「だ、大丈夫よサラ! 次は上手く演奏できるわ!」

「……練習あるのみだ。これから頑張れ」

「きゅ!」

「ヒルデも、応援するよ」

「楽器の扱いは、反復練習が重要です。ひたすらに数をこなしながら、上達するしかありませんね」

 

 ソニア達に慰められ、サラの顔に笑顔が戻る。

 

「ええ、ありがとう……そうね、私がこれしきで諦めるなんてガラじゃないわ!」

「サキも応援してるよっ! キラッ☆」

「ええ、頑張るわ!」

 

 とりあえずサラを慰め終わった所で、黒のヴィクトリーの方を向いた。

 

「無事に大劇場を占拠するサキュバスを倒したらしいが……ククク、気をつける事だな……この世界は、特異点……私ですらこの世界では想定外の事しか起きていない」

「そうだな、俺もそう思う」

「僕も」

「私もね……」

「余もな」

「きゅ」

「私もです」

「ヒルデも……」

「私もよ」

「サキもだね」

 

 大劇場の件もあったので、皆は一様に口にする。

 

「決定的だったのは、精霊の森の一件だが……まぁ、今語っても貴様らにはなんの事か分かるまい。だが、一つ警告しておくぞ……次の魔女狩りの村では、気をつける事だ」

「あんたに言われなくても気をつけるわ……」

「サラ元女王……貴様には危機感が足りないようだ……まぁ、せいぜい勇者一行を頼る事だな」

 

 黒のヴィクトリーはそれだけ言うと、フラフラと浮き始める。

 

「それでは、さらばだ……! 全てを超えた先で、待っているぞ……!」

 

 そして、飛び去っていこうとしたが……フラフラと飛ぶものだからヤシの木に頭をぶつけ、止まってしまった。

 

「……全てを超えた先で、待っているぞ……!」

「言い直すんじゃねぇ!」

「無かったことにしようとした!?」

 

 ヴィクトリーとソニアが突っ込み、黒のヴィクトリーは今度こそ飛び去って行った。

 

「あいつ、この件で一番株を落としたんじゃねぇか?」

「何とかキャラを保とうとはしてたけど……」

「……黒のヴィクトリーめ……何故、奴から魔王の魔力を感じるのだ……?」

「それに、全てを超えた先……ねぇ」

「きゅ〜……」

「ヴィクトリーさんを100人目と言っているのも気になります」

「敵か味方かも、分からない……ヒルデのデータにも、あんなヴィクトリーは居ない……」

「マギステア村では、何が起きてるって言うの……?」

「サキのステージは大人しく聴いてくれてたし……悪い人じゃないのかも……」

 

 思い思いにそう言ってから、皆で一息つく。

 

「おめぇは何でしれっと居んだ!!」

 

 ここで、ようやくヴィクトリーがサキに突っ込んだ。大劇場を出た時から、ずっと居たのだ。

 

「だって、サキはリベンジマッチを申し込むつもりだし……何より、誰かとダンスするのがこんなに楽しいなんて思わなかったの!」

「あれ勝利でいいの?」

「俺はドラゴンボールヒーローだ! ダンサーじゃねぇっての!!」

 

 そう言うヴィクトリーだが、サキにはまだ伝えたい事があるようだ。

 

「それに、サキの夢は世界一のトップスターになる事……キミ達と一緒に世界を巡って、舞台があれば歌い踊ったりダンスバトルしたりして、皆を笑顔にしたいの!」

 

 それは、彼女の夢。戦争やら何やらで斜陽を迎えているこの世界で、皆を笑顔にする……立派な目的だった。

 

「まぁ、そこまで言うなら……グランドールの占拠もやめてくれるみたいだし、ポケット魔王城も賑やかになりそうだね」

「まぁ、劇場占拠よりはマシ……なのか? 路頭に迷う踊り子さんも居なくなるなら……」

 

 サキが仲間になる事には、反対はしない。だが、彼女の相手にはヴィクトリーに白羽の矢が立つ。

 

「こやつのダンスバトルの相手は貴様だぞ」

「サイヤ人はバトルが大好きなんでしょ? 相手してあげなさいよ〜!」

「俺は殴り合い専門だぞ……」

「そういう訳でみんな、サキは全国に行くよ!! 応援してね、キラッ☆」

 

 サキが大声で言うと、いつの間にか周りに居たファンは大歓声を上げた。

 

「うおおーっ!! 俺達のサキちゃんは、全国に羽ばたくんだーっ!!」

「頑張れよーっ!!」

「たまにはグランドールで踊ってくれーっ!!」

「男の方とのダンスバトルも魅せてくれーっ!!」

 

 ファンの声に、ヴィクトリーは青筋を立てる。

 

「踊らねぇっちゅーに!!」

「ノリノリだったくせに」

 

 サキのファンの声を背に受けながら、グランドールを後にするルカ達。彼らには、重要な目的があった。

 

 楽しかった繁華街を後にした彼らの表情は、真剣なものに切り替わっていたのだ。

 

「……次は魔女狩りの村っちゅう所か」

「マギステア村とも言うね……黒いお前も忠告してたけど、果たして何があるのやら……」

「分からない……けど、これから凄く大変な事になるわ。頼りにしてるわよ、みんな」

 

 サラの言葉を聞いたルカ達は頷き、マギステア村へと向かったのだった。

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