マスター必須技能:コミュ力 Rebirth   作:ブリーム=アルカリ

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杞憂

「マスター!おかえりなさい!」

 

 

 喜色満面といった表情のキリエライトさん。意外にも機嫌はいいようだ。

 

 

「その…すいません、帰るのが遅くなってしまって」

 

「いえ。ドクターから通信で話は聞きました!義手を受け取りにいった、と」

 

 

 Drが?まだ用事があったのだろうか。

 

 

「ブリーフィングを管制室で始めるそうです」

 

 

 七つの特異点を補足し、行くべき場所も当たりをつけたという事だろう。

 呼び出されたからにはすぐ行くべきだ。特に準備もいらないだろうし、すぐに部屋を出る事にする。

 

 

「じゃあ行きましょうか」

 

「はい!お供します!」

 

 

 

 

 

 

 

 隣を歩く彼女はとても楽しそうだ。何が嬉しいのか笑顔のまま表情が変わらない。

 …セイバー戦以降、明らかに変だ。テンションが常に高く、時折更にはね上がる。

 昨夜の告白が全てだとは思いたくはないが、それに由来する所もあるのだと思う。本当に忌々しい事だが。

 

 

「マスター。髪に糸くずがついてますよ」

 

「えっ…あっ、ありがとうございます」

 

 

 髪に何かが触れる感覚で意識が戻った。考え事をしていた隙を突かれ、回収されたらしい。

 

 私は人に触られる事があまり好きではない。その人を穢している感覚に襲われるからだ。特に彼女の様な純粋な人には一層触れられたくない。

 …のだがそんな私を他所に、キリエライトさんのテンションはまた上がっていた。

 

 

「あの…どうしてそんなに上機嫌なんですか?」

 

「どうしてって…当たり前ではないですか?」

 

 

 心底分からないといった表情を浮かべる彼女。

 おかしいのは私なのか?

 

 

「マスターのお役に立てたんです。それはとても嬉しいに決まっています!」

 

 

 拳を握って力説される。その瞳に篭もる熱は本物に見えるが…

 確かに誰かの役に立つ事はとても楽しいし嬉しい。それは絶対的な同意ができる。だが、対象が私となれば別ではないだろうか。

 少なくとも私ならば、こんな奴に貢献するのは不快でしかない。

 

 

「…何かおかしかったでしょうか?」

 

「いえ、少し驚いただけです。改めてありがとうございます。キリエライトさん」

 

「……………はい!」

 

 

 感極まった、といった表情に笑いかけて前を向く。

 

 何か隠し事があると結論付ける事にした。

 私も子供ではない。その秘密を暴こうとせず、黙して付き合っていくべきだろう。

 今はそれよりも、目の前にある管制室を重要視すべきだ。

 

 

 

 

 

 

「やあ、待ってたよ二人とも」

 

 

 正面にはDr.がいた。手前には二つの椅子が置かれている。座れという事だろう。

 

 

「まず謝らせて欲しい。暮部君、ボクは君の意思を軽視してしまった」

 

「いや、問題ありませんよ。気が動転するのも止むなしです」

 

 

 チラッとキリエライトさんを見て目配せする。

 旧知の仲である彼女が変わってしまったのだ。他に気が回らなくても仕方がないだろう。

 というか本当なら腕を斬られてしまった私が謝るべきなのだ。しかし彼女の手前、その事を話す事はできない。

 

 

「そう言ってくれるとボクも助かる。でもちゃんと確認させて欲しいんだ」

 

 

 はにかんでいた顔から引き締めるDr.

 

 

 

「君は世界を救う旅路に出てくれるかい?」

 

「はい」

 

「それが辛く苦しいものだとしても?」 

 

「はい」

 

「ひょっとしたら死んでしまうかもしれないよ?」

 

「えっと…はい」

 

 

 じゃあ嫌です。そう言えられれば楽なのだが。

 

 

「両親と約束したんです。家の名を残す、と」

 

「両親と約束した、か。ふふっ」

 

 

 突如として笑うDr。え、なんか笑うところあった?

 

 

「人類の為に〜とかじゃなくてさ。身近な人の為に頑張れる。キミは優しいんだね」

 

「はい!マスターは素晴らしい御方です!私に全てをくださいました!」

 

 

 

 

 は?私が優しい?何処がだ?違うだろう?そういう言葉はさ。カルデアの皆みたいな────

 

 

 

 

 

「それじゃあブリーフィングを始めるね。まず今回向かってもらうのはフランスだ」

 

 

 おっとお話はちゃんと聞かなきゃマズイ。失礼だし、何より自分の命がかかっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあこれでブリーフィングは終わり。理解してもらえたかな?」

 

「恐らく特異点の原因である、聖杯の探索及び奪取ですね」

 

「うん。大正解だよマシュ」

 

 

 告げられた内容に大した変化はなかった。まあ大きな変化があっても困るのだが。

 

 

「それじゃあ次の大仕事だ」

 

「大仕事?」

 

「うん。君が使役するサーヴァントを召喚するんだ」

 

 

 …サーヴァントの、召喚。

 

 協力してくれるだろうか。アンデルセンさん辺りが来たら、上手くやっていく自信がないのだが…

 

 

「二人で召喚室に向かってくれ」

 

「Dr.は行かないんですか?」

 

「忙しいし…それに、サーヴァントとの初対面だ。邪魔はないほうがいいよ」

 

 

 苦笑いを見せる彼。…悔いているのだろうか。

 

 

「ではマスター!まだ見ぬ新たな仲間に会いに行きましょう!」

 

 

 興奮気味のキリエライトさんに促され、召喚システムに足を向ける。

 

 

 

 

 

 

 召喚室は真っ暗だった。 

 廊下から光が差し込んでいるというのに何も見えない。まるで私の未来の様だ。

 

 

 キリエライトさんが戦闘体に変身し、盾を台座に置く。変貌してしまった彼女だが、その盾の性質は変わらないでいてくれるだろうか。でなければ何も召喚できなくなってしまうのだが。

 

 

「準備完了です、マスター。エネルギーは一回分ですね。…相性の良い方がやって来られるのを祈りましょう」

 

 

 召喚方式からして、人理修復に否定的なサーヴァントが来ることはないが、それでもソリが合わなければ戦力にはならないだろう。

 

 …大博打だ。

 

 

 

「…キリエライトさん。お願いします」

 

「了解しました!」

 

 

 

 

 

 真っ暗だった部屋が、突如として光り輝く。星座の様な蒼い光が宙を漂い、小さな光達が星の様に瞬いている。

 同じく幻想的な風景であるあそこと比べると、その光は無機質ではあったが、否定的な意思を感じさせないクリーンなものだった。

 

 

「宇宙みたいで綺麗ですね…」

 

 

 

 キリエライトさんが背中にそっと体を預けてくる。彼女も不安なのだろうか。

 

 光が集まり、柱となって天井まで伸びていく。かと思いきやスパークし、視界全てが白く染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────サーヴァントセイバー」

 

 

 

 

 

 

 

 ああそうか。そうだよな。

 

 

 

 

 

 

 

「ジル・ド・レェ。参上致しましてございます」

 

 

 

 

 

 

 

 俺の最初期サーヴァント。白銀の騎士がそこに居た。

 

 

 

 

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