マスター必須技能:コミュ力 Rebirth   作:ブリーム=アルカリ

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蒼衣

「未だ成果なし…嫌になるわね。本当に」

 

 

 橋や学校などめぼしい場所は全て探索したのだが大した発見は無かった。

 どこもかしこも焼け爛れており、生存者はおろか情報すらないのだ。

 

 

「本命はまだ調べていないですし、諦めずに頑張りましょう」

 

「素材の宝庫だから貴方は気分もいいでしょうけどね。こっちは気力が萎えそうよ…」

 

 

 指摘通り、合法的かつ大量に人骨が手に入るのでこちらはホクホクである。

 回収してはカルデアに送りつけているので、向こうの一室はもう埋まったのではないかと思う。スタッフさんの引き攣った顔はまだ記憶に新しい。

 

 

「堪えてください、所長。マスターのお陰で効率良く探索できているのですし」

 

 

 キリエライトさんがとりなしてくれた。

 彼女の言うとおり、ここは私にとってカモしかいないのでろくな戦闘すら起きていない。

 更に余ったスケルトン達を別行動させているので、人海戦術が取れるのだ。

 探索効率は飛躍的に上昇し、恐らくだが原作より数倍早く調査が進んでいるのではないだろうか。

 

 

「それは感謝しているけどね…」

 

 

 腑に落ちない気持ちは理解できる。

 彼女はこの事件の事後処理が控えているのだ。時計塔や国連の怪物共は、水を得た魚のように彼女を責め立てるだろう。そんな未来が想像できるのに帰還すらままならず、だというのに横でのんきに喜んでいる奴がいればそれは不快というものだ。

 …年上だというのに力になってあげられない自分が恥ずかしい。

 

 

「あ、目標地点が見えてきましたよ」

 

 

 重要度の低い場所はスケルトンによる別働隊に任せ、我々本隊は教会に向かっていた。

 この場所は聖杯戦争に大きく絡む聖堂協会の管轄である。この異常事態にそこそこ大規模な魔術的儀式である聖杯戦争が関わっていない可能性は低いので、探索すべきだという提案をしたのだ。

 

 まず生命反応を探知すべく精査するが当然に反応はない。次に一体のスケルトンを先行させる。

 

 

「頼んだぞ」

 

 

 カルデアとの本格的な魔力ラインの接続にも成功し、魔力の心配もなくなったのでスケルトン達を本格的な使い魔とした。

 結果として感覚器のシンクロが行える様になったので、極めて精度の高い偵察ができるようになっている。

 

 

「どうですかマスター。何かありそうですか?」

 

「残念ですが特には…ここなら何かあると思ったんですがね」

 

 

 拍子抜けする話だが、特筆すべき情報は見つからない。

 あの罪深い地下室も覗いたが、そこには焼けた跡があるだけでやはり何かがあるわけではなかった。

 

 

「これじゃ骨折り損のくたびれ儲けじゃない!なにかあるかもって言うからわざわざ来たのに!」

 

『ぷーっ!所長!それはスケルトンだけにって事ですか?』

 

 

 所長は無言で通信を切った。

 我々は英語で会話しているのだが、二人とも日本の諺に詳しいのだろうか。その知識を活かした会話がくだらないので台無しではあるが。

 

 

「すいません。適当な事を言って…」

 

「もういいわ。ここで貴方を責めたって無益だし、それよりさっさと拠点に戻りましょう」

 

 

 寛大な措置に頭を下げる。

 おかしいな。確かここでイベントがあった気がしたのだが。

 なにぶん最後に原作を見たのは転生する前の28年前だ。物覚えは悪い方ではなかったが、流石に細かい所は覚えていない。今回は記憶を読み違えたのだろう。

 

 頭を擦っていると所長の方から電子音がした。

 所長はまだ怒っているのか着信を拒否するが、その度にけたたましい音が鳴り響く。

 耐えかねたのか、彼女は遂に通話を許可した。

 

「もー!分かったわよ!分かったからコールを連打するのはやめなさい!」

 

『違います所長!そちらに高速で向かっている反応があります!迎撃準備を!』

 

 

 Dr.の声は真剣そのものだ。冗談には聞こえないし素早く戦闘体制を整えねば。

 

 

「キリエライトさん!敵が現れ次第にスケルトンを突撃させますので攻撃お願いします!」

 

「了解ですマスター!」

 

 

 スケルトンには高速移動ができない。であらば向かってくる反応は間違いなくシャドウサーヴァントだろう。

 まともな戦闘はこれが初めてだ。なんとか上手く連携したいものだが。

 

 

「冗談なんか言ってないでもっと早く伝えなさいよロマニ!」

 

『それが急に反応が出てきて…ついさっきまではなかったはずなんですよ!』

 

 

 高速移動に気配の隠蔽。これは間違いなく…

 

 

「気配遮断です!向かってくるのはアサシンのサーヴァントだ!」

 

 

 恐らくシャドウサーヴァント化によってスキルが劣化している。だからこそカルデアのセンサーでも捉えられたのだろう。

 だが現場のこちらはそうもいかないのが現状だ。目視で捉えるのは難しいに違いない。

 

 

「あんまりやりたくなかったんですけどね…!」

 

 

 眼鏡を外し、眼球に全神経を集中する。

 

 光が唸り、曲がり、叫びを上げて螺子曲がっていく。

 

 青黒い世界の全てに、うすぼんやりとした線が入る。

 

 ぐにゃぐにゃと捉えどころのないそれらの中で、一際素早く動くものがあれば…

 

 

「そこだ!」

 

 

 大した威力も込めていないただの魔力弾を発射する。

 それを受けた一見何の変哲もない壁は、黒い人影を吐き出した。

 

 

『Chaje!』

 

 

 スケルトン達が人影に向けて走り出す。遅れてキリエライトさんも走り出した。

 

 姿を捉えられた事に驚いたのか動きの鈍いその男は、スケルトンによる包囲に囲まれていく。

 前後左右全てを塞いだ。彼に突破できる面攻撃はない。こちらの勝ちだ。

 しかしまだ油断はよくない。少しずつ、気を緩ませず、和を小さくしていく。

 じりじりと距離を詰めていくその円に耐えかね、男が大きく飛んだ。

 

 

「しまっ…上か!」

 

 

 真横から飛ぶ閃光。高速で真っ直ぐ進んだその光は、宙の影を貫いた。

 男はそのまま地に落ちる。今度こそ決着はついた。スケルトンに魂喰らいを許可する。

 

 

「助かりました…」

 

「まあ、これくらいはね。貴方に世話になりっぱなしって訳にはいかないわ」

 

 

 所長のお陰でどうにかなったが、経過を見れば無惨なものだ。

 直接戦闘に向かないアサシンのその劣化体を相手に切り札の一つを使用。その上で詰めの甘さから離脱を許しかけた。

 

 いくら味方に機動力が無いとは言え、初戦は酷く苦いものに終わった。

 

 

『まだだ!もう一体来てるぞ!』

 

 

 響き渡る高笑い。ねちゃついてはいるが、その声には聞き覚えがあった。

 

 

「武蔵坊…!なんで冬木式に東洋の英霊が来てるんだよ…!」

 

「貴方アレを知ってるの!?」

 

 

 頷きつつ魔力を編む。日本一有名な僧兵を偽りながら、その正体は仙人に近いものである。私の知る中でもトップクラスに相性の悪い相手だ。

 

 

『Tire!Chage!』

 

 

 スケルトンの弓兵に射撃を、近接兵に突撃を命令する。

 今するべきなのはとにかく時間を稼ぐ事だ。

 

 

「キリエライトさん!張り付いて防御をお願いします!所長は最低二小節以上の攻撃を!」

 

「了解、突貫します!」

 

 

 対魔力C持ちである彼はそれ以下の魔法を無効化する。二小節ともなれば時間がかかるので、時間を稼がなければいけないのだ。

 優秀な魔術師である所長は圧倒的に詠唱が速い。他の魔術師より待ち時間が短くて済むのが唯一の救いだった。

 

 

『ハッハッハッハッハ!』

 

 

 唐突に魔力の繋がりが消えた。驚いて周囲を見渡すと、近くにいたスケルトンはおろか、遠くから射かけていた弓兵までもが消滅している。

 

 

『調伏…!仙術なのか!?』

 

 

 いくらなんでも想定外の術構築の速さだ。

 こんな事になるなら調伏対策を考えておくべきだった。第五次に宗教系のサーヴァントはいないからと怠っていたのだ。

 

 焦っていると横から魔力弾が曳光を引いていく。所長が詠唱を終えたのだ。

 

 

…いや待て。どうしてこちらに飛んで

 

 

「ぐぉっ…」

 

 

 破壊の光が胸を抉る。

 走る痛みは尋常なものではないが、その衝撃が一つの事実を思い出ださせた。

 

 

「ちょっ…ちょっと大丈夫!?」

 

「マスター!?」

 

 

 怨霊調伏。九字を切ることで相手の魔術を封じ、使用できるという強力なスキルだ。

 ランクAのあのスキルを突破するには、物量で突破するか…

 

 

「そのスキル。果たして俺の一撃も制御できるかな!?」

 

 

 強力な単発でぶち破るかだ。

 

 

「嬢ちゃん!少し時間を稼いでくれ!」

 

「っはい!」

 

 

 大きな魔力の流れに目を向けると、そこには蒼衣に身を包んだ魔術師然とした男が立っていた。

 大地から吸い上げられている魔力の総量は、現代において最強クラスである所長の術がちっぽけに見えるほどだ。

 

 

『Ausuz!』

 

 

 立ち昇る業火が敵を呑み込み、猛り狂う。

 しばらく経ち、火が消えた時にはもはや何も残ってはいなかった。

 

 肌の痛みで正気に還る。10mほど離れていたのに、まだ熱が顔を苛んでいた。

 

 

「助かりました!あの、お名前は…?」

 

 

 呆然としていた私達と違い、キリエライトさんはしっかりとお礼と挨拶をしていた。

 

 

「盾の嬢ちゃん。聖杯戦争ではな、クラスで呼び合うもんだ。俺の事はキャスターと呼べ」

 

 

 ゆっくりと姿を表したキャスター。目深に被ったフードからは人懐っこい笑みが漏れている。

 所長が若干怯えながらも話しかける。

 

 

「貴方、マトモなサーヴァントなのね」

 

「俺は泥から逃げきったからな。アイツらと違って堕ちちゃあいねえ」

 

「なら、話は早いわ。我々は人理継続保証機関カルデアの者で」

 

「まどっこしいのは止めだ止め。どうせおたく等はこの異常を解決しに来たんだろ?協力してやるよ」

 

「そ、そうよ。承諾、感謝するわ」

 

 

 相手が協力者だから強く出れないのか、らしくもなく非礼に耐える所長。その口は引きつり、まぶたはピクピクと震えていた。

 

 

「この異変の原因は大体分かってる。セイバーの野郎だ。奴さん、泥に呑まれてから大暴れしてな。俺以外は皆死んじまった」

 

「セイバーを倒せば私達は異変解決。キャスターさんは優勝でWIN-WINという事ですね」

 

 

 もっともこの戦争で勝利した所で何も景品はないが。きっとこんな所に長居はしたくないのだろう。

 意思が通じて嬉しかったのか、彼はニッカリと笑って口を開いた。

 

「お、坊主察しがいいじゃねーか。マスターが優秀だと楽でいい」

 

「つまり自分の為じゃない!折角敬意を表して接したのに!」

 

 

 我慢できなかったのか所長が激憤する。しかしキャスターさんは全く気にかけていない様だ。

 

 

「いいじゃねーかお互い得すんだから。坊主、契約だ」

 

 

 そう言って魔力パスを投げてくる。頷き、令呪を通して契約をした。

 

 

「はい、確かにっと。まあこんなとこで話すのもアレだ。あんた等の寝床に行こうや」

 

「ではご案内します。いいですよね所長?」

 

「ええ!不本意だけどね!」

 

 

 案内を始めたキリエライトさんに着いていくキャスターさんと所長。

 所長は未だに噛み付いているが、キャスターさんは飄々と受け流している。

 

 頼もしい仲間ができた様だ。

 

 

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