マスター必須技能:コミュ力 Rebirth   作:ブリーム=アルカリ

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洞窟

 

「ここが敵拠点…」

 

「正確にはその入り口だな」

 

 

 特訓の日の翌朝、私達はキャスターさんの案内で敵首魁であるセイバーさんの居場所へ向かっていた。

 

 その入り口である洞窟に差し掛かったのだが、あまりに広く、また整然としている。人の手が加わっているのは明白だろう。

 一般人がこんなところに用があるとは思えないし、十中八九魔術師の仕業だ。

 

 

「キャスター、セイバーの正体は分かってるわけ?」

 

 

 どうでもいい事を考えていると、所長がキャスターさんへ質問していた。

 

 

「まあな。宝具を喰らえば誰でも分かる。エクスカリバー、聞いたことあるだろ?」

 

「っ!ではセイバーとはアーサー王なのですか!?」

 

 

 アーサー王。イングランドの伝説に伝わる王様だ。選定の剣に選ばれた王の中の王。ゲームやラノベでもよく出る彼、ではなく彼女だ。

 

 

「…その、私なんかに聖剣の一撃を防げるでしょうか…」

 

 

 不安そうに眉尻を下げるキリエライトさん。彼女の盾、いや本来は盾ですらないそれはセイバーさんへの最高の対策になりうる。

 そこまで心配する必要はないのだが、本人はそんな事を知る訳がない。励ましてあげた方がいいだろう。

 

 

「大丈夫ですよ。キリエライトさんなら余裕です。所詮聖剣程度ですからね」

 

 

 

 

 

 

 

「──聖剣を所詮扱いか。大きく出たものだな」

 

 

 

 岩陰から黒い影が飛び出してくる。細身の双剣を構える彼は間違いなくアーチャーだろう。

 明らかに矛盾しているが事実なのだから仕方がない。

 

 

「よう信奉者。まだセイバーを護ってんのか?」

 

「信奉者になった覚えはないがね。まあ蛮勇の輩程度は片付けておくさ」

 

 

 彼の耳の近くでセイバーさんを貶すのは不味かったようだ。少し苛ついているように見える。

 

 こちらが本気で言ったわけではないと分かっているだろうに、奇襲も仕掛けず馬脚を表すとは。影に堕ちて精神も劣化したのだろうか?

 

 

 

 …私こんな嫌味っぽかったかなあ。

 

 

 

「マスター!指示を!」

 

「亀で行きます!合図で宝具を!」

 

「了解!」

 

 

 敵は影エミヤさん。マスターがいない以上、投影を連発することもできないだろう。守りに徹せばそこまで強敵でもないはずだ。

 

 

「弓隊前へ!」

 

 

 弓使いの骸骨達を前に出す。キャスターさんが矢避けの加護を持っているからと前回は使わなかったが今回は出し惜しみなしだ。

 

 大雑把に狙いをつけて次々と放っていく。強化なしの私や骸骨の動体視力ではサーヴァントの動きを見て予測など出来るはずもない。ならば適当に射って移動範囲の制限に使った方がマシと言うわけだ。

 

 そして案の定、影エミヤさんは動きあぐねている。そこに…

 

 

 

『ansuz!』

 

 

 

 キャスターさんが狙撃していく。

 

 近接に持ち込まれてもキリエライトさんが受け止めてくれるのでその間に袋叩きにできる。かなり上出来な陣ではないだろうか?

 

 

「マトモに戦う気はない訳か…」 

 

「お前だってセコい戦い方すんじゃねーか。インガオーホーだよインガオーホー」

 

 

 適当な発音で四字熟語を使うキャスターさん。因果応報かどうかはともかくかなり封殺できているようだ。

 

 

「なるほど勝機はないようだ。しかしこれはどうかな!?」

 

 

 距離をとったあと弓を構えるエミヤさん。壊れた幻想と見た。

 

 

『高魔力反応!宝具がくるよ!』

 

「任せてください!ロード・カルデアスッ!!」

 

 

 Dr.の報告を聞いて宝具を展開するキリエライトさん。弓に番えられた矢はドリル状ではない。カラドボルグⅡではないだろうし、防御は破れないだろう。

 

 

 しかしエミヤさんは弓を頭上に向ける。つまりこれは…

 

 

「キリエライトさん!盾を上に!」

 

「了解です!」

 

 

 疑いもせず素直に向けてくれるキリエライトさん。その直後、矢が天井に着弾した。

 

 

 

 凄まじい轟音。巨石が雨のように降り注ぎ、盾に弾かれていく。砂埃が舞い上がり、視界が塞がれる。

 

 

「次弾警戒!Dr.!魔力反応の位置を!」 

 

『しょうめ』 

 

『algiz!』

 

 

 

 爆音と共に再び砂埃が舞い上がる。正面では鹿の角の様なマークが輝いていた。

 

 恐らくルーン文字。キャスターさんが障壁を貼ってくれたのだろう。

 

 

「あっぶねえあっぶねえ。やーっぱアイツもセコいじゃねえか」

 

 

 Dr.が言い切る前に障壁を貼っていたのだろうか?勘かそれとも見えていたのか。どちらにしろ尋常ではないことだ。

 

 

『敵サーヴァント消滅。周囲に反応もないよ!お疲れ様!』

 

「無理に二連射したか。命に変えてまで何をそんなに守りたいのかねぇ…」

 

 

 ため息をつくキャスターさんを横目にキリエライトさんを覗く。彼女は落ち込んでいるように見えた。

 

 

 

「すいません…私、皆さんを守れませんでした…」

 

「問題ありませんよ。結果的に全員生き残りましたし」

 

 

 死が這いよる感覚もなかった。

 

 

「確かにそうですけど…もしキャスターさんがいなかったら…」

 

 

「マシュ。貴方、過ぎた事を気にし過ぎよ。休憩にするから整理なさい」

 

 

 言うや否やシートを広げ、座る所長。キャスターさんもちゃっかり座っていた。

 

 空気を読んで自分も座る。

 

 

 

「所長…ここは崩落の危険が…」

 

 

 

 困った様に進言するキリエライトさん。

 

 

 

「あら、貴方が守ってくれるでしょ?」 

 

 

 なんでもない事のように返す所長。これはひょっとして彼女なりに励ましているのだろうか?

 

 キリエライトさんも気づいたのか少し笑っている。

 

 

『まあ敵が来たり、崩落の前兆があったらボクが伝えるからさ。今はゆっくり休んでよ』

 

 

 Dr.の勧めに従い彼女も座る。

 

 

「ほら、甘いものも食べなさい。」

 

 

 そう言ってドライフルーツを押し付けられ、おずおずと食べ始めるキリエライトさん。

 

 

「オレと坊主の分はねーの?」

 

「ないわよ。元は私一人で食べる予定だったんだから」

 

「マジかよ〜。イノシシでも狩ってくるかねえ」

 

「いないでしょ。そんな生き物」

 

 

 

 所長の無慈悲なツッコミ。

 確かに冬木市に生息しているか分からないし、していたとしても既に死んでいるだろう。

 

 

『しかし、所長。こんなものを持ち歩くなんて用意周到ですねえ』

 

「頭痛に柑橘系が効くと言ったのはあなたでしょ、ロマン」

 

 

「え、これ医療用だったんですか!?」

 

 

 驚き、すぐに返そうとするキリエライトさん。食べかけなのに返しても受け取ってはくれないと思うが…。

 

 

「別にいいわよ。私にはもう必要ないから」

 

 

 何か代替案があるのだろうか?やんわりと拒否する所長だった。

 

 

 

 もうすぐ決戦だ。今は私もしっかり休むとしよう。

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