マスター必須技能:コミュ力 Rebirth   作:ブリーム=アルカリ

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代償

 体と頭を休め、ついでに作戦会議も済ませて休憩は終わった。

 

 洞窟内部を解析したDr.の声に従って進んでいく。

 

 

『…うん。その先に強大な魔力反応が確認できる。真っ直ぐ進んでくれ』

 

 

 数分歩くと出口が見えた。

 暗雲、という表現が相応しい厚い雲。黒々とした硬い地面。そして不自然な台地。

 いかにもな舞台に立つは黒衣の王。

 

 さながらセイバーさんが魔王で私達が勇者パーティーってところだろうか。

 

 

 

 

 

「…その宝具は…」

 

「…はぁ!?お前喋れんのかよ!?」

 

「面倒な観客がいるのでな。案山子に徹していた」

 

 

 興味深げなセイバーさんと驚愕に顔を歪ませるキャスターさん。

 

 面倒な観客とやらは確実に今も見ているだろう。彼はそういう役割だ。

 

 

「だが…まさかそんなものを持ち出すとはな。誰の仕業かは考えるまでもないだろうが」

 

 

 持ち出した犯人もやはり見ているだろう。彼もやっぱりそういう役割だ。

 

 

 

 

 

 

 

「──構えろ娘。その守りが真実かどうか。この剣で確かめてくれる!」

 

 

 

 吼えると同時に突っ込んでくるセイバーさん。魔力を燃料に化物染みた加速をするその姿は、まさにロケットの擬人化だ。

 

 

「受けてみせます!」

 

 

 キリエライトさんが盾を構える。剣がぶつかると同時に凄まじい爆風が吹き抜けた。

 

 ただの斬撃でこの威力。決め技でも撃たれようものなら衝撃波で私が死にそうだ。

 

 

 

「突撃壱番隊前へ!弓兵隊放て!」

 

 

 

 スケルトン達に指示を出す。前回の様に上手くいくといいのだが…

 

 

 

「邪魔をするな」

 

 

 矢をことごとく避けられ、突撃隊も一撫での内に沈められていく。

 鎧袖一触。ここまで差があると溜息もつけない。

 

 

 しかしこちらにはキャスターさんがいる。挙動の節を狙って的確に火球を放っていく。

 

 

「無駄だ」

 

 

 だがその火球も大したダメージにはなっていない。彼女には高ランクの対魔力があるのだ。詠唱の短い魔術では足止めにもならない。

 

 

「オレもランサーの時は似たような事してるけどよ!やっぱせこいよなあソレ!」

 

 

 こちらの通常攻撃では全て効かない。作戦会議の時から分かっていた話ではあるが、実際に目の当たりにすると絶望的だ。

 

 だが諦めてはいけない。勝機は確かにあるはずなのだから。

 

 

 

「突撃弐番隊前へ!」

 

 

 

 追加の突撃隊を出す。本来なら戦力の逐次投入は悪手だが、一度に大量に投入すると大火力で薙ぎ払われてしまうのがオチだ。それでは目的が果たせない。

 

 キャスターさんが長い詠唱をする隙を骸骨で潰す。それが第一の作戦だった。

 

 

 

『isa!』

 

 

「チッ…」

 

 

 氷の魔術がセイバーさんを捕らえた。黒鎧のガントレットが凍りつき、動きを鈍らせる。

 

 

「キリエライトさん攻撃です!突撃参番隊は随行せよ!」

 

 

 頷いたキリエライトさんが走り、突撃隊がその後を追う。

 

 第二の作戦、袋叩きだ。格好はつかないがこれが戦闘でもっとも効率がいい。

 

 

『魔力増大!気をつけて!』

 

 

 迎撃の為に剣に膨大な魔力を纏わせ、袈裟懸けに振るうセイバーさん。

 

 

「効きません!」

 

 

 

 しかしキリエライトさんによって防がれる。この通り、彼女をセイバーさんの近くに配置できれば骸骨達への被害も減る。

 問題はサーヴァントしては遅いキリエライトさんの敏捷だった。それをキャスターさんの妨害で突破したのだ。

 

 

「思いの外上手くいってます。キャスターさん、予定と違いますが宝具を」

 

 

 小声で知らせると彼は無言で頷き、詠唱を開始した。

 

 突撃隊との魔力パスが切れる。恐らく全滅したのだろう。号令を掛けるため視線を戻す。

 

 

 

 

 

 

 

 ───目が、合った。

 

 

 

 

 

 

 

 ヤバイ。キャスターさんは詠唱中。キリエライトさんは遠い。突撃隊は間に合わない。弓兵隊は近接に向かない。所長は防ぐ術を持たない。

 

 ならばするべきことは間違いなく

 

 

 

「令呪を以て──」

 

 

 

 飛んできた。弓兵隊が掻き消えた。剣が振りかぶられる。

 

 

 

「命ずる──」

 

 

 

 切られた。右腕がゆっくりと飛んでいく。

 

 

 

「我が下に──」

 

 

 

 セイバーさんの顔が歪んでいく。しかし剣は止まらず次の構えへ。

 

 

 

「──来い!」

 

 

 

 目の前に見覚えのある髪色が現れる。

 

 間に合った。

 

 

 

 

 

「ああああああああああああ!!!!!!!」

 

 

 

 キリエライトさんが叫ぶ。

 

 再び爆風。足に力が入らず吹き飛ばされた。

 

 みっともなくゴロゴロと転がっていく。左腕を地面に突き立ててなんとか止まる。

 

 起き上がる為、右腕で地面を押そうとするが手応えがない。

 

 そういえば切れたんだった。

 

 

 

「そのまま寝てなさい!」

 

 

 

 所長が駆けつけてくれた。知っていた様に包帯を私のリュックから取り出し、テキパキと処置してくれる。

 

 

「切断面が恐ろしく滑らかで血も殆ど出てないわ…これなら大丈夫」

 

 

 死の恐怖がやって来ないのはそのせいだろうか?

 

 なんにせよ助かった。敵だから感謝はしないが。

 

 

 

 所長の肩を借りて立ち上がる。

 

 

「令呪が左腕にあるとはな!手袋に騙されたぞ!」

 

 

 何故か笑顔のセイバーさんが、キリエライトさんに猛攻を仕掛けながら話しかけてくる。

 

 別に騙した覚えもないのだが。グローブで令呪が見えなかった事を言っているのだろうか?

 

 

「一般的に令呪は右腕に浮かぶのよ。もし右腕にあったら、切断されて発動しなかったでしょうね」

 

 

 これまた何故か妙に冷静な所長に説明される。

 運がよかった。そういう事だろう。

 

 

「それよりポイントに立ってるわよ」

 

 

 見ればキリエライトさんとキャスターさんが誘導し、目標の場所で戦っていた。

 

 

 

「…はい。そろそろ、終わらせます」

 

 

 

 

 

 所長に発破を掛けられ、魔術回路を起動させる。パスを繋ぐのはセイバーさんの足元に散らばる骸骨の残骸。

 

 キャスターさんも察して詠唱を始める。

 

 

 

 

 

『──Kolekte epi pran』

 

 

 

 骨が宙に浮き、セイバーさんを取り囲む。彼女が惑う内に、その柔肌に突き立ち、そして喰い込んでいく。

 

 一本一本は大した事はないが数が数だ。少しずつ動きを押し留めていく。

 

 

「なるほど。チマチマとスケルトンを送ってきたのはこれが理由か…だがこの程度…!」

 

 

 撤退するキリエライトさんを睨みつつ、持ち前の魔力放出で吹き飛ばそうとするセイバーさん。しかしもう時間は稼ぎ終わった。

 

 

 

 

 

「焼き尽くせ木々の巨人。『焼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』!」

 

 

 

 

 

 第三にして最後の作戦。キャスターさんの宝具が開帳された。

 

 地を割り、岩を飲み込んで紅蓮の人影が現れる。

 

 もはやビルと同じ位の大きさのその巨人は、セイバーさんを殴りつける。

 

 一発目で骨が全て溶けた。二発目で地面が溶けた。三発目で空気が溶けた。

 

 

 

「──トドメだ!」

 

 

 キャスターさんの合図と共に巨人が大爆発を起こす。

 

 強烈な熱波がここまでやってきた。肌が焼ける痛みに、所長が口を歪める。

 

 

 

 やったか…?

 

 

 

 

 

「──卑王鉄槌」

 

 

 

 煙が晴れ、黒い光が溢れかえる。

 

 …嘘だろ?

 

 

 

「極光は反転する」

 

 

 

 絶望に暮れ、地面を見つめる。

 

 …死ぬのか?死にたくない。死にたくない。しにたくないしにたくないしに

 

 

 

「大丈夫です。マスター」

 

 

 

 足音が、聞こえた。

 

 

 

 

 

「光を呑め。『約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)』!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何度目か分からない凄まじい衝撃。

 

 途切れそうな意識をかき集め、前を向く。

 

 

 

 烏の濡羽の様な。黒く、しかし輝いた暴力的で優しい光が──

 

 

 

 

 

「死んでください」

 

 

 

 

 

 肉を潰す醜い音。まるでプレス機にでもかけられたような────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きてください!」

 

 

 

 背中に硬い地面の感触。どうやら気絶していた様だ。

 

 

「あれ、キリエライトさん…?」

 

「よかった。目を覚まされたんですね!」

 

「セイバーさんは!?」

 

「消滅しました!同時にキャスターさんも『次はヘマをしない』とだけ残して座に退去されました!」

 

 

 キャスターさんの真似のつもりなのか芝居がかった渋い顔で告げるキリエライトさん。

 

 

 

「…色々言いたいけれど。まずは体、借りるわよ」

 

 

 

 横から声を掛け、いきなり入ってくる所長。

 

 目を覚ました直後なのにそれはマズイ!

 

 

『…大丈夫よ。もうコツは掴んだから』

 

 

 頭の中に響く所長の声。

 

 確かに混ざる気配もないし、不調が起こることもない。まったくもって平常運転だ。

 

 

『…疲れたわ。少し寝ます。レフによろしく…』

 

 

 それを最後に声は聞こえなくなった。寝たのだろうか?

 

 …いやそれよりだ。所長はどうやらレフ教授の正体が何たるかを知っているようだ。

 薄々分かってはいたが、私の記憶は全てバレた。そう思って間違いはないだろう。

 これは…後でお話をする必要があるだろう。

 

 

 

「…マスター。安定しましたか?」

 

「あ、はい。どうにか」

 

 

 キリエライトさんにも融合のことは伝えてある。心配そうな顔をしているが、私は大丈夫だ。精一杯の笑顔で返事をしておく。

 

 

「じゃあ帰りましょうか。ドクターロマン?」

 

 

 

 キリエライトさんが呼びかけるも、返事がない。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、カルデアとの通信なら切断させてもらったよ」

 

 

 

 低い声が響き渡る。

 

 声がした方を向くと、台地の上に緑衣にシルクハットの男が立っていた。

 

 

 

「レフ教授!?」

 

「やあマシュ。さっきの一撃、素晴らしかったよ」

 

 

 にこやかな笑みを浮かべる男、レフ教授。セイバーさん風に呼ぶなら面倒な観客だ。

 

 

「しかし驚いたよ。逃げたと思っていた48人目が来ていたこと。オルガがまだ存在している事。君達がセイバーを倒したこと。お陰で大忙しさ」

 

 

 

「レフ教授!何故ここに!?」

 

 

 

 混乱した様子のキリエライトさん。無理もない。レイシフト適性のない彼がここにいるのは、本来有り得ないことだからだ。

 

 

「何故?何故ってそれは──私が2015年担当者だからさ」

 

「一体何を言ってるんですか!?」

 

 

 戸惑うキリエライトさんに困った顔をするレフ教授。

 

 

「ふむ。では改めて自己紹介しようか。私の名前はレフ・ライノール・フラウロスだ。端的に言えば──君達人類を滅ぼす存在さ」

 

 

「滅ぼす?何故…」

 

 

 

「さっきも言ったが私は忙しくてね。理解のトロい君達低能に付き合ってる暇はないんだ」

 

 

 

 突如として態度を変えるレフ教授。瞳孔を開ききり、残酷な笑みを浮かべる彼の表情に、恐怖を呼び起こされる。

 

 

「まあ無駄だとは思うがね、精々抵抗するといい」

 

 

 嘲笑し、杖を振り上げた彼は消え去った。

 

 転移魔術だろうか?さすがは魔神柱、なんでもありだ。

 

 

 

 

 

『おーい!聞こえるかい!』

 

 

 

 Dr.の声だ。レフ教授が去った事で通信が復旧したのだろう。

 

 未だに混乱しているキリエライトさんに代わって自分が答える。

 

 

 

「Dr.急ぎ回収願います。また意識が堕ちそうです…!」

 

 

 

 慌てるDr.の声が聞こえるが、いまいち聞き取れない。

 

 キリエライトさんも正気に戻ったのか私になにか呼びかけている。

 

 だが…もう…

 

 

 

「すいません…ちょっと寝かせてください…」

 

 

 

 むりだ。ねる。

 

 

 

 

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