更新遅延した原因の別作品がいったん投稿完了したので更新再開します。
「そろそろ時間だし後5分で終わりにしましょうか」
「了解ー」
放課後に今日も今日とて郡さんと一緒にゲーム中。若干こじれ気味だった関係も無事改善されて元通り。最近は郡さんが買ってきた新しいファミコンのゲームを一緒に遊んでいる。風船を背中につけて空を飛ぶゲームで、協力プレイが楽しめるファミコン名作ソフトの一つ。
ただし、協力プレイしている仲間にも当たり判定があるので協力してるはずが攻撃してしまうこともしばしば。このゲームは操作性がトリッキーだから結構ミスをやらかしやすくて、ここ数日で何回郡さんに睨まれたことやら……それはそれでありと思い始めてる自分が怖い。
でも、まぁ。
「……流石ね、頼りになるわ」
やっぱり、笑ってる郡さんが僕は一番好きだ。信頼の言葉と共に小さな笑みを見せてくれる郡さんに少しだけ見惚れながらも画面に集中する。残り五分とはいえ、手は抜きませんよっと。
そして、楽しい時間はあっという間に過ぎていって――必ず、終わりの時が来る。その後は別れの言葉を言うだけだったけど、最近はちょっと違っている。
「明日は勇者部の活動があるから無理だけど、明後日なら空いてるわ」
今は次に遊ぶ約束をちゃんと決めてから解散しているのだ。郡さんは勇者部、僕は実家とお互いに忙しい理由があるから遊びたくても毎日は遊べない。その分遊ぶ時の楽しみが増すからお互い気にしてないけどね。だけど悲しいかな、今回は僕の都合が合いそうになかった。
「あー、明後日は空いてると言えば空いてるんだけど……」
「歯切れが悪いわね。はっきり言いなさい」
「駄菓子調査の予定です」
「……何それ?」
今回はそういうお話です。
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駄菓子。それは昔からゲームとは切っても切れない関係にある相棒と言ってもいい。ゲームしながらポリポリサクサクつまんだり、昔ながらの駄菓子屋さんには古いゲームの筐体が置いてあることもしばしば。駄菓子購入ついでにワンコイン遊んでいくかー、なんてこともあるのだ。
限られた小遣いで駄菓子を買うか、ゲームをするか……なんて悩みも子供心にはつきもの。それは子供にとって永遠の悩みでもあるのだ。
「そうかな? 私は駄菓子屋さんに来たらいっぱいお菓子買う方だから悩んだことがないや」
「えっ」
「……近場にそういうお店がなかったし、あったとしても使う気にならなかったわね」
「えっ」
これ僕だけの悩みだったの? なんかショック!
郡さんと遊んだ日から時は流れて明後日の放課後。僕と郡さんと高嶋さんの三人で行きつけの駄菓子屋さんへ向かっていた。乃木さんも誘ったけれど、今日は勇者部の活動で忙しいそうな。いつもお疲れ様です。お土産買って帰ってあげよう……
「そういえば駄菓子調査って何するの? 私面白そうだからついてきたけど、まだ聞いてないや」
「新作や人気の駄菓子の味を実際に食べて調べるんだよ。僕の家は銭湯やってるのは知ってると思うけど、実は子供向けにスタンプサービスやっててね。スタンプを3つ集めるごとに用意した駄菓子の中から好きな駄菓子をプレゼント!っていうのが結構人気なんだよね」
「……そういえば土居さんがそんな感じのスタンプカードを持ってたわね」
「えっ、土居球子さんがスタンプカード持ってたの? それおかしいなぁ……」
「どういうこと?」
「スタンプカード配布してるのは小学生だけなんだよね。同級生でしょ、土居さんって。なんでスタンプカード持ってるんだろう」
「「……ああー」」
「なんで二人とも納得してるのさ」
「高橋君はタマちゃんには会ったことがないのかな。会ってみればきっとわかるよ」
「え、あ、うん?」
疑問符を浮かべながらもとりあえず納得しておくことにする。後日、隣のクラスの土居さんを見に行って納得した。今のところ土居さんとは違うクラスだから特に接点はないけど、今後関わることがあったら優しくしてあげよう……頑張れ、土居さん。きっとこれから背は伸びるはず。多分。
「とにかく、そんなわけでうちは駄菓子を子供に配ってるから子供が飽きないように定期的にラインナップを更新してるってわけですよ」
「そのために高橋君が新しいお菓子を調べるのが今日の目的なんだね」
「そういうことー。なので高嶋さんと郡さんも感想聞かせてくれたらうれしいなー、と。わざわざ付き合ってもらってるし駄菓子代はおごるよ」
「いいの?」
「二人にはいつも遊んでもらってるしこれくらいは、ね」
「じゃあお言葉に甘えるよ。ありがとね、高橋君」
「ただし300円までだよ」
「遠足の定番だね」
定番ですよね。これだけの金額でもたくさん買えるのは駄菓子の魅力である。
……あ。妙に静かだと思ってたら郡さんが表情を少し曇らせながらそっぽを向いていた。思ったより駄菓子調査がつまらなさそうで落胆してるのかな。ふーむ……そうだ。
「ハマるかどうかわからないけど目的の駄菓子屋さんには古いゲーム置いてるよ?」
「!」
「後で1プレイおごるね」
曇っていた郡さんの瞳が嬉しそうに輝いた。やっぱり郡さんはゲームが好きなようだ。
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千景が嬉しそうな表情になったのを見て笑顔になった高橋君を眺めながら「ぐんちゃんはやっぱりゲーム好きだなぁ」とか考えてるんじゃないかなー、等と高嶋友奈は考えていた。
彼女は人一倍他の人の考えていることや雰囲気を読み取る力が強い自覚がある。だから、千景が高嶋友奈の事を大切に想っているということは自身もわかっており、先程千景の表情が曇っていたのは自分と高橋君が仲良さそうにしていたからではないか、という推測もついていた。
そして、それは高嶋友奈にとっての悩みとなっていた。以前、高橋は「高嶋友奈と郡千景の二人の関係に入ることは邪魔ではないか」と考えていたが、最近の高嶋友奈も「ぐんちゃんと高橋君の関係に入ることは邪魔ではないか」と似たような悩みを抱いていた。
元々高橋と千景を結びつけたのは彼女自身である。千景はゲームをすることが好きで、自分も千景がプレイするゲームを見るのは楽しいし一緒にやるのも楽しかった。だけど、時々物足りなさそうな表情を見せることがあったのを覚えている。自分ではゲームの腕が足りていないからだ。
だからこそ、高嶋友奈は千景のゲーム友達を探すことにした。千景と仲良くなれそうで、同じくらいにゲームが好きな誰かを讃州中学で探していて――見つかったのが高橋君であった。
二人は彼女の予想通り、いい友達になっていると思う。だけど、そんな二人の関係に自分はヒビを入れているのではないのかと不安になることが増えてきた。千景の持つ高嶋友奈への想いが強いというだけではない。純粋にゲームをするうえで邪魔なのではないか、と思うことがある。
「このお菓子今度のゲームのおともにどうかな」
「そうね。べたつかないとは思うけど脂分が多いんじゃないかしら」
「だよねぇ……味はいいんだけど」
いろいろと話しながら二人でお菓子を選んでいる光景を見ている今もそんな不安がよぎる。
二人が良く遊んでいるファミコンのコントローラーは元々二つだけ。元々多くても二人で遊ぶことが想定されていたため、三人目のプレイヤーのことは考えられてはいなかった。それが奇しくも今の状況を表している気がした。
プレイヤー1――千景と遊べるのはプレイヤー2だけ。
プレイヤー2になれるのは高嶋友奈か、高橋君のどちらかだけ。
ゲームが大好きな千景のことを想うのなら、自分は引いてゲームが得意な高橋君に任せるべきなんじゃないのか? それはわかっている、わかっているけれど。
「……どうして、悔しくなるんだろう」
一足先に駄菓子を選びきって二人きりにすることで関係を進展させようとした高嶋友奈は、店の外から二人を眺めながらポツリと呟く。その言葉は店内の子供たちの喧騒に紛れて二人に聞こえることはなかった。他人のことはわかっても、自分のことはよくわからないことが恨めしかった。
そんな高嶋友奈は――
「いたたたっ!こ、腰が……!」
「っ!だ、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫だよ。お、思ってたよりこのゲーム機が重くてね……すまないお嬢さん、どうにかしてこれをゲームコーナーに並べてくれないか?」
一台の古びたゲーム機と出会うことになった。
「はい、わかりました!」
店員のおじさんに指さされたそのゲーム機は、長方形の金属でできた箱に足がついていた。金属の箱の中には日本各地の地名と名所が描かれていて、見ているだけでなんだか懐かしさを覚えた。ふと、一番上の金属プレートゲーム機の名称が記されていることに気付いて読み上げる。
「『新幹線ゲーム2』……? 聞いたことがないや。ぐんちゃんなら知ってるのかな」
それは、『10円ゲーム』という愛称で子供たちから親しまれている懐かしのゲームであった。
風船を背中につけて空を飛ぶゲーム
バルーンなファイトゲーム。面白いんですがほとんど続編が出ておらず、移植が主体の珍しいゲーム。今でも盛り上がれるポテンシャルはある。
土居球子さん
身長驚異の147cm(公式)。わすゆ組では銀以外に負けている……。
店員さんも普通に勘違いして、同行していた杏も「タマっち先輩が喜んでるしいいか」と指摘しなかったそうな。
『新幹線ゲーム2』
十円玉をはじいてゴールに落とす昔懐かしのゲーム、通称『10円ゲーム』の代表格。正式名称は『2』がラテン文字なのだが、読んでくださっている皆さんの端末によっては正常に表記されないためアラビア数字で表記しています。