ちゅるっと放送日に間に合いましたが放送時刻には遅刻しました。
久しぶりの本編なのになんだか申し訳ないです。
うたのんに驚くぐんちゃん可愛かったですね!
カセットは直った。攻略情報メモ用に新しいノートも用意した。ついでに例の駄菓子屋さんで手が汚れにくくてつまめそうなお菓子も買ってきた。そして、最後に準備すべきは。
「どもどもー、転校生の秋原雪花ですよっと。香川はまだ来て間もないから色々と疎いから教えてくれたらありがたいかな」
「秋原さんは……高嶋さんの隣の席にしましょうか。高嶋さん、いろいろと教えてあげてね」
「はーい。せっちゃん、これからよろしくね」
「こちらこそ。あ、それはそれとして後で話があるから」
「あれっ、笑顔なのにどこか怖い!?」
一緒に遊ぶ友達である。教師の紹介を聞き流しながらこっそりスマホを操作して僕と郡さんと高嶋さんのチャットルームに書き込む。
<今日ゲームやれるのなら秋原さん誘ってみたい
送信。あ、着信。
<そういうのじゃなくて
<策士タイプらしいからゲーム攻略に役立つかなと
<なんでさ
「……高橋君?」
そもそも郡さんや高嶋さんとは付き合ってすらいないのになぜ浮気なのか。いつか郡さんと付き合えたらいいなぁ、とは思うことはあるけども。
「高橋君?」
え、まさかこれ嫉妬されてるんだろうか?いやいやまさか……ねぇ?多分冗談のはず。
「うーむ……」
「何悩んでるのか知らないけどさ、あれ、どうすんの?」
「はい?」
高嶋さんごしに秋原さんが教卓を指さす。にっこり笑った先生がそこにいた。
「高橋君。後で先生のところまで来なさい」
「笑顔で怖いこと言うの最近の流行ですか」
「反省文も追加ですね」
やってしまったー!ケラケラ笑う秋原さんの笑い声をBGMに頭を抱えた。
どこか抜けていて絶妙に失敗するよくある中学二年生の日常。そんな日々に小さな彩りが欲しくて、今日も僕は友達と、もっと仲良くなりたいあの人と一緒にゲームで遊ぶ。今日はそんなお話。
時は流れて昼休み。高嶋さんに誘われて校舎の片隅で昼食をとっていた。ちなみに郡さんも喜んでやってきましたので三人の昼食です。パパっと弁当を完食した僕は反省文執筆中。
「よし、書き終わった」
「早っ!書き始めてまだ5分も経ってないよ」
「文章は授業受けながらずっと考えてたから。で、ゲームやってるとメモすることが割とあるからやっているうちに自然と速筆になるから楽勝なんだけど……」
「なんでこっちを見るのかしら?……言っておくけど私の書く速度はそれなりよ。いちいちメモしなくても記憶すれば済むわ」
「それはそうなんだけども。記憶力ある人はうらやましいなぁ」
「あら、あなたもそれくらい鍛えればいいじゃない」
そう言いつつ郡さんは唐揚げをパクリと。食事中じっと見られると女性は困るとか聞いたのでそっと目をそらした。ちなみにこれもゲーム知識である。恋愛のやつ。
「一応記憶力はあるよ。ゲーム関連ならやってるうちには覚えるんだけど、細かいとこまでは何度も繰り返しプレイしないとちょっとね……」
「勉強と同じだね。繰り返し勉強するのが大事、復習予習が肝心……あれっ、なんでそこで驚いてるの高橋君!?私何かおかしいこと言った?」
「あー、そのー。たまーに結城の方の友奈さんがそんなに勉強はできないって聞いたことがあったから、高嶋さんから勉強できる発言が出るのが意外だった」
「わ、私は結城ちゃんと見た目は同じだけど結構違うところあるよ?」
「はぁー……あのねぇ高橋君。いくら見た目が似ていても高嶋さんは結城さんとは別人に決まっているじゃない。同一人物扱いするのは失礼じゃないかしら」
「ご、ごめんなさい。ついでにどの辺が違うのか教えてください。ちょっと興味がある」
「いいよー。まず結城ちゃんとは血液型は違ってた。私はA型なんだけど結城ちゃんはO型なんだって。だからもしも怪我したときは私の血は結城ちゃんには使えないって聞いたよ」
「誕生日も当然違うわよ。高嶋さんは1月11日、結城さんは3月21日ね。他には……趣味かしら。高嶋さんは格闘技が好きで、結城さんも格闘技を習ってるらしいけど押し花の方が好きみたい」
「なるほどなるほ……いや、趣味以外パッと見わかる違いがない!?」
「趣味もある程度仲良くならないとわからないことでしょうけどね……」
「全然二人を知らない人からしたらやっぱり同一人物なんじゃ……もう少しこう、見た目でわかる違いは何かないの?」
「えーっと、えーっと……あ、そうだ!身長!……ダメだ、154cmで一緒だったと思う」
身長一緒なのか。
「体重は……ちょっと言えないけど似たような数字だった気がする……」
体重も一緒疑惑がありと。
「他に何かあるのかな……そうだ、ぐんちゃん!……ねぇ、私のスリーサイズってわかるかな?」
「し、知らないわよ……!自分の分もちゃんと計ったことがないし。それにそんなデリケートな数字は結城さんの分がわからないから比べるのは無理よ……」
「そっかぁ……でも多分一緒だよね。ここに来たばかりの頃は結城ちゃんから服をもらってたけど普通に着れたし」
「なら多分一緒なんじゃないかしら……」
ボソボソ声で何か話し合っているけど、多分同じだろう。
「ここまで見た目が同じなのに血縁関係がないっていうのが本当に謎だ。勇者部七不思議ができるとしたら絶対ラインナップに入るよ。これまでに何度か結城さんを高嶋さんと間違えたことがあるし。いっそのこと制服を前のやつに戻してくれたらなぁ……」
「ごめんね、それは学校の規則でダメみたい。でも、髪飾りを見ればすぐ見分けられるよ」
髪飾り?首をかしげていると高嶋さんがスマホを起動して1枚の写真を見せてくれた。結城さんとのツーショット写真だ。可愛い。
「……ねぇ、今変なこと考えてなかった?」
「か、考えてないって!髪飾りをちゃんと見てただけだってば。……あっ!高嶋さんのは花だけど結城さんの髪飾りは花びらだ。今度からここを見ればいいのか。なるほどなぁ」
後ろから見た時は見分けがつかないけど前から見た時は見分けがつくね。いいことを知ったぞ。
「まさか今まで気づいてなかったの?」
「え?うん」
「……観察力不足のゲーマーっていろんな意味でどうなのよ。策士タイプっていうことで秋原さんを誘ったのはそれが理由?」
「あー、それは違うかな。RPGって基本的に四人パーティだから僕ら三人以外にもう一人誰かが欲しいなーって思ってスカウトしようかなと。まだオッケーはもらってないけど秘密兵器高嶋さんがあればいけるはず!」
「私がやるんだ!?でも、いいよ。その作戦乗った!」
「そういうことだったのね……全く、これだから高橋君は」
郡さんが一息つきながらボソッと文句を言った。……もしかして、本当に嫉妬していたんだろうか。気になるけど聞きづらい。
「あ、せっちゃんは誘うとして、若葉ちゃんは誘わないの?」
「乃木さん誘ったら間違いなく上里さんがついてきて定員オーバーなので今回は除外」
「……もし本人がそれを知ったらすごくヘコみそうね」
さて、放課後になった。寄宿舎の広間でいつも通りファミコンを準備していると秋原さんが覗きこんでくる。
「おおー、ファミコンだ。懐かしいねぇ」
「おや、秋原さんファミコン知ってるんだ。もしかしてゲーマー?」
「生憎だけどゲームは全然やらなかったかな。本で見たことがあるだけ」
勇者部のゲーマー不足は相変わらず深刻な模様。その内また部員増えそうだけど、一人くらいはゲーマーがいてもいいとは思うんだけどなぁ。
「あ、そういえば普通に誘ったけどみんな勇者部の活動はいいの?部員三人となると色々と出来そうだけど」
「活動はしたいんだけど……この天気じゃちょっとね」
ちらり、と外を見る高嶋さん。外はまたしてもザーザー降りの大雨である。夏に入ってきて少しだけ暑くなってきたけど、まだまだ梅雨明けは見えそうにない。
「勇者部の活動って肉体労働が多いから。この雨だと活動が制限されてできることはほとんどないのよ。一部の部員が持ち回りで依頼をこなす形ね」
「なので新入部員の秋原さんは暇してたんだけど……いやー、二人に「放課後、寄宿舎の広間集合で」ってボソッて囁かれた時はぞっとしたにゃぁ。勇者部から解雇通知出されるんじゃないかなと不安だったよ」
「……何やってるの?」
「それっぽい雰囲気出せば断らない気がする作戦!」
「呼び出す理由も秘密にしてたら尚更食いつくかなーと」
「ま、回りくどい……」
「で、来てみたらゲームやるから手伝ってとのことでいろいろと心配して損しちゃったよ。面白そうだから別にいいんだけどね。お菓子も美味しいし」
「……あれ、秋原さんお菓子で釣れるの?」
「あはは、私は現金な女でして。500円分あれば付き合ってあげるよ」
「高いのか安いのか微妙な金額ね」
少なくとも中学生のお財布にとっては高い金額である。さてさて配線終わりっと。カセットも差し込んだから電源を入れるだけ。パチン、と電源を入れると音楽が流れてタイトルが表示された。スタートボタンを押してメニューを出現させてもセーブデータが消えたというメッセージは出ない。よしよし、ちゃんと直ってる。
「あたらしいにっしをつける、と。それじゃあ主人公の名前は誰にしようか」
「あれ、ここにいる人から選ぶんだ。こういうのってオリジナルで名前を考えたりしないの?」
「オンラインゲームとかならリアルバレを防ぐためにもちょっとひねるけどRPGだったら主人公には自分の名前付ける派。その方が感情移入しやすくない?」
「なるほどなるほど。で、勇者部のゲーム専門家はどう思われますか」
「私もそんなところね。ただ最近のゲームだとデフォルトで名前が決まっていることが多いからそっちを使うことはあるけど。今回はファミコンのゲームだからそういうのは特にないわね」
「ふむふむ。じゃあ、策士としてスカウトされた私はパスで」
「私も横で見えてるのが楽しいしパス」
「そういうことなら郡さんにしよう」
「はぁ?あなたがやればいいじゃない」
露骨に嫌そうな顔をされた。割と表情が表に出る郡さんにはよくある表情だったりする。
「普段だったら喜んで自分の名前を入力するけど、勇者部部員が大半を占めるこの場でゲームとはいえ僕が勇者やるのはなんかおかしくない?」
「よ、予想外の言い返しね……」
「あららー。勇者部所属であることが裏目に出ちゃったねぇ」
「そういうことなら、ぐんちゃんがピッタリだね。勇者ぐんちゃんの冒険の始まり始まり~」
「も、もうっ、からかわないで高嶋さん。わかったわよ。やればいいんでしょやれば」
「了解。じゃあ名前はぐんちゃんでいこう」
「それを入力したら……どうなるかわかってるのかしら?」
わかってます。冗談ですからあまり怒らないでください。
コントローラーを郡さんに渡す。五文字入力できないのはこの時代ならではね、とボヤキながら郡さんは「チカゲ」と入力して、性別をオンナのコに決めると、ゲームを始めた。
ユウシャチカゲのフシギなボウケンの、ハジマリハジマリ。
「しょうがないコね。いいわ、おハナシをハジめましょう」
ムカシムカシのあるヒのおハナシ。ホシがソラからフりソソぎました。
ホシからウまれたイキモノはヒトビトをヨウシャなくオソっていくスガタから、マモノとヨばれるようになりました。そしてマモノとタタカうヒトを、ワタシタチはユウシャとヨんだのです。
それからナンネンものトキがナガれて。ユウシャタチがたくさんのマモノをタオして、セカイにヘイワがオトズれて。ユウシャがデンセツとなってヒサしいあるヒ。
マチのカタスミで生きていたチイさなオンナのコ、チカゲはヒョンなことからユウシャになるのです。このセカイでサイゴの、ユウシャに。セカイをミトドけるボウケンの、ハジマリ。
・結城の方の友奈さんがそんなに勉強はできないって聞いたことがあった
外伝作品の勇者部所属では一期終盤の入院期間による学力低下を心配していたりと、どうやらそんなに勉強ができる様子がなさそう。公式の高嶋さんがどうなのかはちょっと不明。
・「放課後、寄宿舎の広間集合で」
もしかして私始末されるのかな?と少しでも最悪の可能性を考えた自分への呆れをギリギリ二人への文句が上回った模様。それをあまり口に出さない雪花さんは策士。
・最近のゲームだとデフォルトで名前が決まっていることが多い
レトロRPGって主人公名を自分で決めるタイプが結構多いんです。最近はアニメ化や漫画化で公式の名前が決まってることが多かったり。時代の流れでしょうか。
・ひらがな&カタカナ
ファミコンの容量だと漢字一文字入れるのも一苦労だった時代。漢字部分をカタカナにして誤魔化す手法が多かったものです。
というわけで、次回からRPG編はじまりまーす。多分二話構成になるかと。
オリジナルゲームですがいろいろな要素はレトロRPGから持ってくる予定です。