ごめんなさい。
▶にっしをよみかえす
にっしをしょぶんする
ゆうしゃテストLv.1のにっし
▶ゆうしゃチカゲLv.24のにっし
にっしはありません
ボウケンをオモいダしますか?
▶はい いいえ
パラパラと小雨が降る日々を学校でのんびりゲームしながら過ごしている。プレイするゲームは例のRPG一本に絞っているけれどまだクリアできてない。あの世代のゲームにしてはボリュームが多いし、難易度も高く歯ごたえがあるのだ……一体いつになればクリアできるのやら。
「今日はどうしようかなぁ。昨日は港町に到着してして終わったっけ?」
「そうね。で、船に乗って隣の大陸へ向かうところでセーブして終わったはずよ」
「じゃあその道中で雪花さんに勉強教えてくれると助かるかなー。やっぱりこの学校に来たばかりだから進度が追いついてないからねぇ。勉強は子供の仕事って言うけれど大変ですよ、本当ね」
そんな今日は僕と郡さん、秋原さんの三人。高嶋さんは柔道部へ助っ人の依頼だそうで後から合流する予定だと聞いた。いつも勇者部の活動お疲れ様です。
「秋原さんが追いつけてないって言うのはちょっと卑怯だと思う」
「おや、クラスメイトが冷たい」
「この前の数学のテストであっさり一位取った人が何を言うか」
「……へぇ。やるじゃない」
ヤダナー、タマタマデスヨー。秋原さんはそう言ってケラケラと笑うけれど裏ではみっちり勉強してると見た。数学のテストはちょっと自信があったから点数を抜かれたのはショックである。
「まぁ、自慢じゃないけど元々頭の方は良かったから。ちょっとした事情であんまり勉強できてなかったけど少しやれば数学国語に英語もなんとかなるんだけど、社会の方はちょっと苦手だにゃぁ。前の学校と教えてることが全然違ってるから覚え直しだよ」
「秋原さんの学校もそうなの?高嶋さんも似たようなこと言ってたけど、社会ってそんなに学校で教えてること違うんだな……転校とかするつもりないけど、その時は大変そうだ」
「あなたの場合実家が大きな温泉だし、そういうことはまずないでしょうね……で、秋原さん。似たような誤魔化しは使わないでほしいんだけど。怪しまれるじゃない……!」
「……や、そうは言われましても。西暦から来た私たちが神世紀の歴史や社会情勢を全然知らないことをあの理由以外でどう誤魔化したらいいのさ?これがベストだよ」
「むぅ……それもそうね」
「さっきから二人で何を話してるの?」
「なんでもない。あなたの社会の成績はどれくらいなのか聞いてただけよ」
「ぐぇぇっ!あ、秋原さん言ってないよね?」
「んー?どうかなー?」
正直言って下から数えた方が早い成績であることは言わないでほしい。勉強があんまりできないこととかを好きな女の子に知られるのって結構恥ずかしいんだから。
チカゲ「ヒドいフブキだな。キをヌけばマイゴになりそうだ。ハナれるなよユウナ」
ユウナ「うん、ありがとう。ホントウにこのヤマにホコラがあるのかな?」
セッカ「ムラビトのハナシではそのはず……なんだけどね。ま、ナニがあるのかはイってからのおタノしみさね。キビキビあるくよ」
タカハシ「……いっそのことこのあたりをホノオマホウでトかせば」
チカゲ「マリョクのムダヅカいをするな。さ、いくぞ」
テレビに映るのは一面真っ白な山の中。おまけにフブキがかかっていて視認性はかなり悪い――よく見ると最初の町でパラパラ振っていた桜吹雪のドットの色変えだ――それでも前に進まなければならない。でなきゃこのゲームはクリアできない。
山のふもとにあった村で話を聞いたところ、かつてこの辺りには勇者が一人いたらしい。だけど何年も前に魔物との戦いで命を落としてしまい、勇者の遺体はこの雪山の頂上に埋葬されたらしい。勇者が使っていた武器や日記も一緒に……それらを回収することが今回の目的だ。
「秋原さん。難しいと思うけどマッピングよろしく」
「……吹雪かぁ」
「……秋原さん?おーい、大丈夫?」
「ん、大丈夫。ちょっとボーっとしてただけ。いいよ、進めて」
コントローラーを握り直して目を凝らし、勇者達は歩き始めた。秋原さんがどこか上の空なことが少し気になったけれど、それは僕の横でテレビを眺めている郡さんも同じだった。
「こんな粗いドットの雪原でも懐かしいのかしら?」
「まあね、そんなところかにゃぁ」
「懐かしい?」
「こっちに来る前に私が住んでたところは結構雪が降るところだったんだよ。吹雪いてる状況でも外出しないといけなかった時は死ぬかと思ったよ」
「秋原さん一体どこに住んでたの……?ド田舎どころか天国や地獄の親戚だったりしない?」
四国でそんなに雪が降るところなんてあるんだろうか。探せばあるんだろうけれど誰もいないような山奥くらいしか思い浮かばないぞ。
「いやー、流石にそこまで言うのは大袈裟だよ。慣れれば悪くはない場所だよー」
「悪くないとは言っても良い場所とは言わないんだね」
「……乙女のプライバシーに触れると馬に蹴られるよ?」
「あれっ?蹴られるのって恋路を邪魔した時じゃなかったっけ?」
「それもそうか……よし。ここは勇者部バージョンで乙女のプライバシーについて触れたら園子に蹴られるというのはどうかな」
馬に比べたら一気に平和感が増してきた。でもなんで乃木園子さん?
「しょっちゅう私らの日常風景メモしてるから。乙女のプライバシーに触れることはすなわち、メモを邪魔することと同義。哀れな高橋くんは園子に蹴られるのであった……」
「あはは……流石にそれは冗談だと思うよ。でも園ちゃんって結構運動神経いいよね。結城ちゃんから聞いたんだけど、風さん夏凛ちゃん園ちゃんで競争してたら園ちゃんがあっさり一位取っちゃったらしいよ」
「嘘でしょ、あののんびり乃木園子が?」
「事実よ、私も同じ話を聞いてる。足がそれだけ速いってことは蹴られたらかなり痛そうね……高橋くん。あなたとはもう少し一緒にやりたかったけれど、この関係も今日までみたいね」
「待って待って僕が蹴られて死ぬことを前提としないで。手を合わせるな手を合わせるな」
ふざける郡さんに悪ノリした秋原さん、そしてとりあえず手を合わせる高嶋さんというこの奇妙な光景はなんだ。僕本当に蹴られて死ぬんじゃないよな。結局、この日はいつもより気を付けて帰ることにした。いつぞやの様に隠れてこっそりついてくる若葉さんとかはいなかった……と思う、うん。
後、それはそれとして。
「……ところで秋原さん。ダンジョンマッピングしてる?」
「あっ。忘れてた」
「クッキーいただきます」
「ちょっとーっ!それ私の最後の一枚!!」
秋原さんにはそれとなく反撃はします。
「――とまあ、そんな具合かな。あ、詳しいプレイ内容は例のノートにメモしてあるから」
「結構お楽しみの様で何よりです。ノートは後で確認させていただきますね」
その日の夕方。秋原雪花、もとい私は今日の出来事を上里ひなたに報告しながら夕食を作っていた。寄宿舎組の食事は当初は大赦職員が寄宿舎に来て作るという話もあったが、なるべく自分たちで済ませるようにしており、基本的には巫女組と一部勇者の希望者が調理している。
ちなみに勇者が希望者制度なのは料理をあまり作れない人もいるから。千景とかゲーム好きな子とか友奈が好きな子とか。なんでうどん玉からインスタントうどんが出てくるんだろう。
「ところでおやつのクッキーですが実は少しだけ余ってるんですよ。皆さんが帰ってくるまでにこっそり食べちゃいましょうか」
「やった。高橋くんに一枚取られたことがちょっと心残りだったからねー」
「ふふっ……ちょっとイタズラして仕返ししておきましょうか?」
「ううん、そこまでのことじゃないから。あーむっ。んー、しっとり食感にバターの甘みがたまらないねぇ。また腕を上げた?」
「バーテックスと戦う皆さんと違って、私たち巫女はこういったことでしか支えることができませんから。神世紀の料理本も西暦出身の私にとっては結構興味深くて面白いんですよ」
「それは確かに。でも、不思議だよね……私たちが生きてた時代の300年後なのに特に技術が進化した様子はないし。それどころか放課後にいつも古いゲームを遊んでるとむしろ過去に来たんじゃないか、って気がするよ。あそこだけ時間の流れが昭和なんじゃない?」
「……なるほど。では、今度昭和のお菓子作りの本を探してみますね」
変なところでこだわるなぁ、と苦笑する。そして、周囲を確認して他に人がいないことを確認するとひなたの耳元に口を寄せる。
あのゲーム、やっぱりちょっとおかしい気がする。
私の言葉にひなたは瞬きをすると、瞳が鋭くなる。ここにはいない若葉が見れば「怒っているのか?」と不安がるような表情。
「今日のゲームは雪山を探検して、その奥の祠へ向かう内容だった。そこはかつて命を落とした勇者のお墓だったんだけど、そこで回収した勇者の武器がボウガンなんだ」
「ボウガン……その勇者の死因はわかりますか?」
「ふもとの村人の話では、たった一撃で勇者は倒されたみたい。その魔物は別の勇者が討ち取ったらしいけど……怪しい、よね。おまけに祠の中には本ばかりたくさん置いてあったんだよ。劣化が酷くて一冊も読めるやつなかったけどさ」
「……まさか?」
「確証はないよ。でも多分同じこと考えてる」
ぞの問いにひなたは頷く。ボウガンを使う勇者は勇者部に一人だけいる。伊予島杏。若葉や千景の仲間である西暦時代の勇者だ。そして、勇者部屈指の読書好きでもある。話を聞いたひなたの中ではその命を落とした勇者というのが伊予島杏を指しているようにしか聞こえないのだろう。
「ねえ、ひなた。この時代は私たちが生きていた頃から300年後だから、皆がどう死んだのかもわかってるんじゃないの?こういうことは聞きたくないけど、杏の死因は何?」
「……ごめんなさい。実はこちらでも以前から調べようとはしたのですが、どうやらこの時代の大赦の情報管理がかなり複雑化しているみたいで。サーバーや書物などを四国中に分散させていたらしく未だにはっきりとしたことはわからないんです」
「ここ最近四国奪還がちょっと滞ってるのが原因か……ごめんね?」
「いいえ、気にしないでください。ただ……参考になるかもしれない情報はあります。上里家と同盟関係のような名家がいくつかあるのですが、その中に西暦時代の勇者の名が残っていました。伊予島家の存在も確認しています」
「ふむ。となれば杏は子供を残してた可能性はあるのかな?それなら杏はちゃんと生き残ってるか。うーん、難しい問題だね……」
一息つく雪花。ちょうどポットが沸いたので、適当なインスタントドリンクの粉をカップに入れるとお湯を注ぎ、一つはひなたに差し出す。二人はそれを飲みながら話を続ける。
「それにしても名家かぁ。そんなのがあるっていうことはひなたたちもやっぱり結婚するってことだよね。元の世界にいい相手とかいるの?」
「ふふっ、ノーコメント、です。でもあっちにいた頃は私は若葉ちゃんたち勇者の皆さんと一緒に生活していましたから、同年代の男性との出会いはあまりありませんね」
「ふーん……ちなみに参考程度に聞くけど、例の高橋くんはどうなの?」
「いい友達だと思っています。ただ、そういった対象として見るのなら……ちょっと物足りませんね。もう少し頼れる方とお付き合いしたいかな、と」
「厳しい意見だね。若葉なら?」
「えっ!?えーっと、その……ふ、不束者ですがよろしくお願いします?」
「私に告白してどうするのさ」
頬が赤いのは飲み物の熱さなのか、それとも恥ずかしいのか。どっちなのかを聞くのは野暮だ。ただ、なんとなくだけどひなたの中には若葉という理想像があるから男性に求めるラインも高そう。多分、若葉よりも結婚したのは遅いと見た。いつかこれでからかえるかも。
「ま、とりあえず今日はこれくらいかな。さて、晩御飯の続き作ろっか」
「そうですね。あと……少しだけ、伝えておきたいことがあります。こちらで調べた結果幾つかのことが分かったのですが――です」
「それは……半分だけ驚いた。で。私にどうしろと?」
さりげなく伝えられた驚愕の事実に息を呑むもいつものように飄々としながら返すと、ひなたは私を見つめた。
「雪花さんにおまかせします」
「え、マジ?いいの?全部皆に言っちゃうかもしれないよ?」
「まさか。雪花さんはそんなことをする方ではないと信じています」
「ならどうして教えたのさ」
「……この戦いは長く続くでしょう。ならば事実は早いうちに知っておくべきだと考えました。後で知って後悔するよりは、きっと今知って後悔しておいた方が――」
「ある程度は楽、か。同感だよ。まあ、その件については任せて。何とかしてみせるよ」
「助かります」
「その代わり一つ条件」
「なんでしょう?」
「今日の夕食は札幌ラーメンがいいなー、なんてね」
「ええっ!?……今日は私の好みであるとろろうどんの予定だったのですが……くっ、わかりました、やむを得ません。その代わり準備はちゃんと手伝ってくださいね」
「モチ。雪花さんに任せなさいってね」
こんなこともあろうかと麺を買い込んでおいてよかった、と私は眼鏡の奥で瞳を輝かせた。その心の奥にはひなたから聞かされた事実が暗い根を張りつつある気がした。
秋原さんと千景さんの名前が、少なくとも上里家と関係がある名家として残っていない。
遠い北海道出身である私の名前が残っていないのはまだわかる。認めたくはないけれど、四国まで私はたどり着けなかったのだろう。でも。なんで千景の名前が残っていないんだ?何かが裏にあると私の勘が囁いていた。今はまだ謎の闇に隠されているそれが明らかになった時。
それを千景が知ってしまえば、間違いなく私の平穏だけでなく勇者部の今の状況は瓦解する。
脳裏にちらつくのは、寄宿舎の広間で皆で遊ぶ光景。首をかしげたり不運に見舞われて嘆く高橋くん、それを見てどこか楽しそうに一緒に笑ったり叫んだりする友奈。そして、そんな二人と共にいると仏頂面がどこか微笑んでいるように見える千景。
そんな三人と一緒にいる時間は悪くない、と思えていたから。
「……全く、私って損な役回りですよ」
笑いながら、あの空間を守ろうと考えている自分がいた。ゲーム内で何かきわどい事実が発覚しそうになったら最悪本体に衝撃与えてバグらせるか。あるいはそういう方向になりそうなら別の展開へ誘導してその部分はこっそり進めるとか。
やれやれ、前途多難な日々になりそうだ。
――とか、考えてたのに。
「あれ、アクションゲームやってる。今日はあのRPGやらないの?」
「……レベリングで詰まりました。ダンジョンの敵が急に強くなりすぎて時間かけてレベル上げないと無理なのに、雑魚がやたらと強い」
「あらま」
「どうせRPGって気長にやるゲームだから、気が向いた時にやる方針にしたのよ。今日は別のゲームをやることにしたんだけど……やりたかったの?」
「え、あ。んー……あんまり、かな?」
「ならそれでいいんじゃないかな。ってあーっ!?ちょっと、今僕置いていったでしょ!?ああもう、残機が後一機だよ……!」
「そうは言われてもこっちには敵来てたんだから仕方ないわよ……ごめんなさい」
「謝って済むのなら警察はいらないっていうよね」
「……ねぇ、高橋くん。一機やらせてもらってもいい?」
「え?いいけど。やったことがあるの?」
「いや、ないけど面白そうだからさ。先に上に登っていけばいい感じ?」
「うん。上がりすぎてもう一人を下に置き去りにしちゃうともう一人は死ぬから程々にね」
「りょーかい」
コントローラーを握って足を組みなおす。操作方法はAでジャンプで、Bでハンマーねと。で、氷の上は滑るように設定された典型的な雪山を登っていく、と。
「まぁ……どうにかなるかな」
千景。悪いけどちょっと仕返しさせてもらうよ。全く、どいつもこいつも人の覚悟を返せっての。高橋くんにも似たようなことされたし。やれやれ、似た者同士な二人だからこんなに仲がいいんだろうか。
「――ん?あんずー、今千景の悲鳴聞こえなかったか?」
「聞こえなかったけど。気のせいじゃないかな……それにしても、こんなにたくさんのスイカどうするの?」
「いいじゃんか、タマタマ手伝った農家さんとこで豊作で余ってるって話だし。皆でスイカ割りする時とかに使えばいいだろ。そうだ、ちょうどいいし、千景に差し入れよう」
「千景さんに?」
「うん。あ、そうだ。千景がよくやってるゲームもいいけどさー。みんなで遊びに行くのもどうだ?海とか!」
「うーん……みんなと相談しないといけないかな。でも、タマっち先輩。宿題はちゃんとやったの?」
「グハッ……あんずー、手伝ってー……」
「もう、仕方ないなぁ。それにしてもスイカ割り……か。もう梅雨明けで日差しも熱くなってきたし、そろそろ海水浴もできる頃か。そんな時期なんだね」
そんな時期。暑い夏が、ついにやってくる。
・西暦から来た私たちが~
普通に難しそうな問題。神世紀組以外は大変そう……
・桜吹雪のドットの色変え
昔は容量がないからいろんなものを色変えで対応するというのはちらほら。某配管工のスーパーな冒険の雲と草むらが実は一緒なのは有名。
・園ちゃんがあっさり一位取っちゃったらしいよ
ゆゆゆい最初のイベントである運動会参照。今ならストーリーチケットで簡単に閲覧できますよ。
・なんでうどん玉からインスタントうどんが出てくるんだろう
料理教室を部長に志願したけど火が付かないのでカップ麺作った子です。
・典型的な雪山を登っていく
アイスクライマー。予想以上の腕前に翻弄された千景さんは後日「秋原雪花……!!」ギリィってなったとかならなかったとか。
RPGですが、予想以上に長くなりそう&メインストーリーに絡みそうなので時々やる感じにさせてください。申し訳ありません。
多分。RPGクリアする話が出たら最終回が近いサインです。当分先ですけども。