ゲーム少年はぐんちゃんと遊びたい。   作:あおい安室

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更新本当に久々になってしまい申し訳ないです。
本当はゲーム少年と「~~」の形式にするつもりでしたが、
予定変更してぐんちゃん主軸に据えて書き直し。

理由は……言わなくても分かりますよね()


ゲーム少年と友達なぐんちゃん。

 神樹様が忘れていた夏を突然思い出したのか、梅雨が明けると一気に暑くなった。しつこいほどに降り注いでいた雨は姿を消し、カラッとした暑さが四国を覆いつつある今日この頃。

 

「今帰ったわ……やっぱり、誰もいないか。蒸し暑いからそんな気はしてたけど、仕方ないわね。少し待ってて、クーラーをつけてくるから」

 

「じゃあその間に僕はお茶淹れてくる。今日のお茶は何かな」

 

「緑茶よ。泊りに来てた東郷さんが今朝淹れてたから」

 

 私、郡千景に高橋くん。高嶋さんがいないことが残念だけど、いつもの放課後にいつもの談話室。本格的に夏を迎えても私たちの関係は変わらない。いつも通り、遊んでいた。

 

 クーラーをつけた私はいつものようにテレビの前に座り込んでゲームの準備をすることにした。ファミコンをテレビにつないで、カセットを差す。パチン、と電源スイッチを鳴らすとテレビが音楽を奏で始めた。ふふっ、と小さく笑う声が背後から聞こえた。高橋くんだ。

 

「……なにがおかしいのかしら。私が何か変なことでもした?」

 

「い、いや、別に……相変わらず楽しそうだな、って」

 

「あら、そういうあなたは楽しくないの?」

 

「楽しいけども。この時期に冷房効いた部屋でゲームやることほど至福の時間はないよ」

 

「同感ね。ならそれでいいじゃない。ほら、お茶持って突っ立ってないで早く座って。始めましょう」

 

 ポフポフ近くの座布団を叩くと彼はまた顔だけ笑いながら私の向かい側に座った。時々変な挙動を見せることがある彼だけど、ここ最近妙に私と距離を置くことが多い。

 

 ゲームの誘いをしてくることも減ったから、嫌われたのだろうかと不安になる。しかし、最近の行動を思い返してもそれらしい行動はないはず。かといって彼に直接理由を聞くには勇気が足りないし、今日遊びに誘った時も普通に乗ってきたから多分違う。

 

「あっ」

 

「えっ?」

 

「郡さん、普通に穴に落ちてやられたよ。勘鈍った?」

 

「それは……そうね。最近はファミコンじゃなくて最新のゲームばかりやってたから。ほら、携帯ゲーム機で遊べる3Dのロボットを動かすゲームなんだけど。赤と青とのロボットがパッケージにいる……知ってる?」

 

「あー、あれね。僕もそれなりにやりこんでるよ。ああいう3Dの奥行きがある世界を知ると、こういう平面の世界には慣れないよね」

 

 彼の問いに頷きながらボタンを押し込む。画面の中にいる小さな青いロボットがジャンプして消える足場を乗り移っていく。さっきは考え事をしてたから落ちたけれど、次は!

 

「「あっ」」

 

 飛び上がった瞬間、頭上に新たな足場が出現。ロボットは頭をぶつけて落下して爆散した。この時代のゲーム特有の短い曲をループさせながらゲームオーバーという現実を突き付けてきた。

 

「えーっと……一機やらせてもらってもいい?」

 

「……後少し待って。次こそ、いけるはず」

 

「了解」

 

 20分後、私は高橋くんにコントローラーを渡すことになった。次もそのまた次も私はクリアできなかったのよ、悪い?

 

 


 

 

 言い訳をするわけではないが、私はレトロゲームは得意ではない。コントローラーの感覚が今のゲームに比べると固く、おまけにハードも古いからかキャラクターの動きが少し遅いことがある。

 

「よし、うまく行った。はい、郡さん」

 

 その点、彼は昔からレトロゲームに親しんでいたらしく感覚のズレがほとんどない。

 

「流石ね。やるじゃない」

 

「それほどでもないかな。これくらい郡さんでも練習すれば行ける行ける」

 

「そう。下手な御世辞ありがとう」

 

「御世辞じゃないんだけどなぁ」

 

 そう言って彼は照れくさそうに頬をかいた。ゲーマーを自称する程じゃないけれど、郡千景はゲームが好きであるのは確かだ。だからゲームが上手い彼のことは少し尊敬している。

 

 ――彼みたいになりたい、なんて言ったら調子に乗りそうだから言わないけれど。

 

 少し褒めただけで顔を赤くする彼を見ているとやはり男の子は単純だな、なんて思えてしまうのは数年前では考えられなかったこと。それだけ余裕ができた、という事なのかしら。クスリ、と笑みがこぼれた顔を引き締めるべくお茶に手を伸ばした。

 

「……苦いわね」

 

「だよね、今日の緑茶市販品に比べてちょっと苦い。東郷さんのことだから絶対お茶が有名なところの高級品とか取り寄せて丁寧に淹れたやつかな」

 

「ねえ、なんでそこまでわかるのかしら。あなた、東郷さんとは別のクラスでしょう?」

 

「確かに東郷さんは隣のクラスだね。でも、少し前に学年合同で調べ物学習があったんだよ。で、隣のクラスの東郷さんは授業時間の半分くらい愛国精神について発表してた」

 

「それのどこがお茶の話になるのよ」

 

「えーっと、東郷さんは……愛国精神を身に着ける近道はまず己の住む場所のことを愛すること、とか言ってたっけな。それで香川のいろんな名産品とか紹介しててね。しかも地元の勉強にもなるから教師も口出ししにくいときた。うまいことやってるよ」

 

「なるほどね……この前犬吠埼さんが部室で説教してたのはそういうことだったの」

 

 部長に怒られるのにやるとは、東郷さんは元気というか懲りないというか。前に勇者部のホームページを国防記事だらけにしたこともあるらしいし、どれだけ活動的なんだか……うっ、やっぱり苦い。お茶の苦みにどこか彼女の怖い微笑みを感じつつ、まったりゲームして過ごす。

 

 いつまでもこんな日々が続けばいいのに、なんて思うけれど。

 

「ふうー……ようやくクーラーも利いてきた。最近暑くて嫌になってしかたない。こういう時は涼しい部屋でゆっくりゲームするのが一番の御褒美、なーんてね」

 

「その通りね。勇者部の部室って実はクーラーがないから、この談話室と比べるとすっごく暑いのよ。一応扇風機はあるんだけど……」

 

「皆は先生とか言って拝むレベルの年代物だから効果もお察しと?」

 

「あなた本当によく知ってるわね。実は勇者部の補欠部員じゃないの?」

 

「勇者部は良くも悪くも有名だから、そういう変わった話は割と耳に入るよ。去年の夏なんて水着で校内を歩くどころか近くのお店にアイスを買いに――あれ?去年?去年、だっけ?僕が二年生の時で……でも、今も僕は二年生であれ?」

 

 割と聞き捨てならないことを聞いて問い詰めようとした、が。彼は首を傾げ始める。

 

 そう。いつまでもこんな日々が続くから。私たち勇者以外の記憶はおかしなことになることがある、と上里さんが話していたことを思い出した。神樹様の中の世界で私たちは造反を起こした神様を鎮める為に人知れず戦いを続けているが、長い戦いになると聞いている。

 故にある特定のタイミングで時間がループするような状態になっている。これまでの世界の記憶も、経験も、体験も、全てを引き継ぎながらもこの世界の住民は誰も年を取ることがない。

 だから引き継がれた記憶に混乱する人が出るかもしれない。それはすぐに神樹様の力で直される、と。上里さんが苦い顔で私たちがこの世界に来たばかりの頃に話してくれた。

 

 私たち『勇者』は終わりのない『強くてニューゲーム』をしているようなもので。

 高橋くん『一般人』はそれに気づくことのないNPCの様な物なのかもしれない。

 

 でも、私はそんなことを考えていない。彼はNPCじゃないことは私がよく知っている。

 

 ポーズボタンを押してゲームを止める。ネットで見た裏技、上上下下左右左右BA、を入れる。テレビの中の戦闘機は一瞬でフル装備になった。こんな風に簡単に高橋くんと仲良くなれたらいいけれど、それはありえない。だって彼は生きてる。私と同じく、今を生きているんだから。

 

 だから。神様が仕事をさぼってるのかいつの間にか首をひねったままボーっとして未だにロード中な彼のそばに座って、そっと頬を叩いて起こそうとした。

 

「ほら、早く起きて一緒に遊びましょう。あなたは私の大切な友達なんだから」

 

 ふと呟いた言葉に頬が熱くなるのを感じる。本当に仕事をさぼっているのかまだボーっとしている高橋くんにさっきの言葉が聞かれてないかと気になったタイミングで、平穏が乱される。

 

 

「オーッス!タマの宅配便だーっ!!」

 

「ひいっ!?」

 

「いったぁっ!?」

 

 突然の来訪者に驚いて軽く叩くどころか思いっきり彼の頬を叩いてしまい、彼はくるりと一回転して大きな音を立てながら床に倒れた。さらにその衝撃で悲劇が起きる。

 

「うわっ、なんかテレビが変な音と変な絵出してるぞ!?壊れたのか!?」

 

「いたた……あーあ。バグっちゃったか」

 

 キョトンとした顔で首をかしげる来訪者の名前は土居球子。同じ勇者仲間で、同じ時代、同じ場所から来たこともあってそれなりに仲はいいのだが今は別。キッ、と睨みながら私は彼女に向かって足を進めようとした。が、その手を不安そうな高橋くんが取った。

 ああ、何をする気なのか不安なのだろうな。大丈夫、と彼に聞こえる声量で呟いて私は微笑むとその手をほどく。

 

「え、えーっと……そ、そんなに怒った顔でどうしたんだ?」

 

「ふふふっ……ねえ土居さん、ファミコンって知ってる?」

 

「ふぁ、ふぁみ?なんだそれ?新しいゲームか?」

 

 困惑しながらも土居さんは答える。一歩後ろに下がられた。

 

「新しくはないわね。むしろ古いわ。ずっと、ずーっと古くて繊細なゲーム機なの。だから衝撃にすごく弱いのよ、わかる?」

 

「わ、わかった。でも、タマはそんなに勢いよく扉空けてないぞ」

 

 二歩足を進める。一歩逃げても確実に差を詰めるために。

 

「そうね。でも……私がそれに驚いたせいで彼が勢いよく倒れたわ。その衝撃でファミコンはフリーズ。セーブもパスワードも記録してないのに、フリーズ。意味、わかる?」

 

「わ、わからん。千景が何を言ってるのかもそこで倒れてるのが誰かもわからないけど……それ、タマが原因じゃないよう、な?だって、タマが入った瞬間千景がその人叩いてただろ」

 

 土居さんの表情が引きつる。私は逆に笑みが深くなるのを感じていた。

 

「……土居さん」

 

「おう……待て、待つんだ。落ち着くんだ、ほら、リラックスリラック――」

 

「問答無用っ!!」

 

「ひいーっ!?それただの八つ当たりだろー!?」

 

 この恨み晴らさないでおくべきか。後に聞いた話だけど、高橋くんはこの時から怒った時の私に恐怖を覚えるようになったらしい。その。いいところを邪魔されたのと、あなたを起こそうとしたのを見られた恥ずかしさだから。普段は怒ってもそんなに怖くないから。本当だから。

 

 




・高嶋さん
 いい天気なので結城の方の友奈ちゃん誘ってランニング行ったらしい。現在連載中の外伝漫画によると、のわゆ時代に毎日10km走るトレーニングをこなしながら休みの日は丸亀城周辺を約20周してるらしいが、恐らく1.5kmほどあるコースである。
 この猛暑で付いていくと流石に死ぬと判断したインドア派のぐんちゃんはゲーム少年と遊ぶ道を選んだ。

・小さな青いロボットがジャンプして消える足場を~
 人は彼を岩男と呼ぶ。絶妙に足りなくなるジャンプ力を持つロボットにとってはどんなボスよりも消える足場が手強いこともあるのだ……!!ちなみにぐんちゃんに最新作をやらせてもらったゲーム少年はスローが使えるようになってて驚いたらしい。

・勇者部のホームページを国防記事だらけにしたこともある
 ゆゆゆのDVD特典のゲームで東郷さんがやらかした話のこと。なお、職員室から問い合わせが飛んできたそうな。そりゃそうだ。少し後の水着で出歩いた話も同じゲームの話で、風先輩は説教コースに連れていかれました。

・時間がループするような状態~
 ~回目の〇〇、とか言ってるあたり少なくとも勇者部メンバーは公式でも把握してる。ループしすぎて今のゆゆゆいはちゃんと年齢数えたら18歳超える人がごろごろと。細かいことは気にするな!
 なお、そのことについて考えた高橋くんがフリーズしたのは本作オリジナル設定なのでご注意。

・上上下下左右左右BA
 言わずと知れた有名な裏技コマンド。最強装備になったり隠し要素でたりとゲームによって効果は様々だが、実は自爆するゲームもある。多分ぐんちゃんはそういう効果を引いた。余談だがぐんちゃんがやってたのはそれが搭載された最古のシューティングゲーム。

・土居さん
 杏と一緒に農家の手伝いに行ってスイカもらって来たら何故か千景に怒られた。理不尽であるとタマっち先輩は怒っているようです。……でも、割とそういう立ち回り多いですよね、タマっち先輩。次回はちゃんといい立ち回りするはず。

・ゲーム少年
 気が付いたら部屋に入ってきた人に郡さんが激怒しててガクガク震えてた。悲鳴が聞こえたけど気のせい、気のせい。それはそれとしてドアに隠れてこっちを覗いて見知らぬ金髪の子は誰だろう。





 ちなみに郡さんの『大切な友達』は聞こえてた。いつか『大切な人』に、そして『大切な恋人』になりたいけれどまだまだ道は遠い様子。頑張れゲーム少年。
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