ゲーム少年はぐんちゃんと遊びたい。   作:あおい安室

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色々とやってる間に大満開の章は終わり、
のわゆ外伝漫画で朝に弱いぐんちゃん出たり
ゲーマー力がポンコツな高嶋さんと乃木さんに「どうすんの???」
と頭を抱えていたら半年以上放置して作中に季節が追いつきました。

更新速度が遅すぎることは自覚しておりますが、
ぐんちゃん大好きですので最後まではやりますので、
今後もお付き合いください……(冷や汗)



……あ、こちら休止期間にskebで描いていただいた挿絵です。

【挿絵表示】

描いてくださった八つ手様にこの場を借りてお礼申し上げます、
本当にありがとうございました……!ぐんちゃんかわいい……


ゲーム少年となつやすみ。

 ふと。朝早くに目が覚めた。朝に弱い私にしては珍しいことで、窓の外から差し込むささやかな日光を浴びながらぼんやりする頭を起こすためにペシペシと頬を叩く。少しはすっきりした。

 

「……緊張してる、のかしらね」

 

 パジャマから着替えようとして、手に取ったシャツをロッカーに戻した。今日から夏休みだ、学生服を着るのは勇者部の活動時だけで十分。とは言っても今日は体を動かす予定があるから動きやすい格好にしなければ。後は……ちょっと跳ね気味な寝ぐせを直すだけ。

 小さい頃から伸ばし気味で今も昔もこの髪型が気に入っているけれど、周りはどう思っているのだろうか、とふと考える。もっとも見られて気になる相手は高嶋さんぐらいだけど。

 

「そういえば、高橋くんはこの髪型をどう思っているのかしら……夏だし、少しうっとおしいとか?言われても変えるつもりはないけど」

 

 髪を整えていた指先が耳に触れる。少し耳に入った一筋の線に触れると少しだけ痛んだけれど、きっと気のせいだ。傷はもう、塞がっている。鏡で見ても今も跡が残っているそれは勇者になるずっと前に付いた傷。

 それを隠すための髪をわざわざ切る必要なんてないじゃないか。その通りだ。

 

 私と彼は友達。だけど、話さなくていいことの一つや二つ、あってもいい。

 

 というか、話せないことが私には多すぎる。何を今更考えているのやら。鏡の中で髪型を整えていつも通りの郡千景になった私はそっと微笑んで、勇者システム入りのスマホとパジャマを抱えて廊下に出た。

 

 ……正直話した方が色々と楽な気もするが。ゲーム中にバーテックス襲来で呼び出されて何度高橋くんを誤魔化したことか!お の れ 造 反 神!

 

 


 

 

「ん?誰かと思えば千景か」

 

「……えっ、乃木さん?」

 

 パジャマを洗濯機に入れに行くと、洗濯機の前に乃木さんが立っていた。ちょうど洗濯機を回し終わったところのようでその手の中には湿った道着がある。

 

「なるほどね。朝練ご苦労様。その為に早起きした、と?」

 

「あははは……夏休み中は大赦で仕事が多くて起こしに行けないから、一人でも起きれるようになってくださいね、とひなたから言われてな」

 

「お互い朝が弱いと辛いわね。あなたの場合は上里さんに依存しすぎな気もするけど。で、そろそろどいてくれる?」

 

「ああ、すまない」

 

 乃木さんの足元にあるカゴにパジャマを放り込む。寄宿舎の洗濯物は基本的に朝と入浴時の二回に分けて洗濯して当番制で乾かすことになっており、私と乃木さんはお互い朝が弱いので朝はなるべく避けて入浴時の当番に回してもらっている。

 ちなみに汚れがひどい物や個人的な物は別途に分けて洗濯しており、乃木さんの道着もそれだ。

 

「……ねえ、乃木さん。今日の予定は?」

 

「大赦の方に顔を出しに行ってひなたと合流。その後は夏服を買いに行く予定だ。私とひなたの子孫が大赦で大きな権力を持っているからと言って、今の私はそこまでの人物ではないと思うんだがな」

 

「そう。あなたも大変ね……乃木さんがいたら助かったのに」

 

「ん?」

 

「なんでもないわよ。朝ごはん食ベに行くけどどうする?インスタントのスープぐらいなら入れてあげるけど」

 

「ならお言葉に甘えるとしよう。私はおにぎりでも握るかな」

 

「ふうん。あなたにできるの?」

 

「むっ、馬鹿にするな千景。私とてそれくらいできる!」

 

 そこまで言うのならお手並み拝見と行きましょうか。私も料理得意な方じゃないけど。

 

 


 

「うーん……流石にちょっと硬いかな。これはこれで美味しいんだけど、ふんわり優しく握るのが雪花さんのおすすめだよ。中の具も潰れないしね」

 

「あの、若葉さん。慣れないうちは具を入れない方がいいですよ。おにぎりの作り方が乗ってるレシピ本、今度持って行きますね」

 

「簡単なのだと、混ぜご飯にして握るのもお手軽で美味しいぞー。シャケおにぎりやわかめおにぎりはタマの探検のお供だ!」

 

「皆の優しさが身に染みる……」

 


 

 

「というわけで、これ、お土産の乃木さんが作ったおにぎりよ。食べなさい」

 

「なんで?なんでそんなものが?」

 

「硬すぎるって駄目出ししたら負けず嫌い発揮してたくさん作り始めたのよ。で、そのあまり。少しは力を抜けるようになったみたいで最後は少しはマシになってたけど」

 

「乃木さんらしいなぁ……うーん、食べてみたら確かにちょっと硬い」

 

「やっぱりそうよね。あの人うどんを打つのは得意なのにどうしておにぎりはダメなのかしら」

 

「誰でも初挑戦ならそんなもんだよ。そういう郡さんはどうなのさ」

 

「……やったことないけど、乃木さんよりはうまい自信があるわよ」

 

「それならお昼は一緒におにぎりは作るのは……あ、ダメだ。今日は団体客が来てるから厨房にお邪魔したら蹴りだされる」

 

 隣でおにぎりを食べている彼にほっと胸をなでおろしたのは見られなかっただろうか。今晩上里さんに頼んで教えてもらおうかな、と予定を頭の中で考えながら埃にまみれた広場を見渡した。

 

 夏休みに遊ぶ約束をした私と高橋くんはとある計画を立てた。彼の実家である温泉施設にはゲームセンターがあるのだが、以前話していた通りゲーム機のほとんどが故障中で閉店中。修理用部品を愛媛の工場に注文したけど色々な事情で時間がかかるので、営業再開は当分先だった、が。

 

 原因の一つである、造反神によって占領されていた愛媛を私たち勇者の活躍で取り戻すことに成功。工場も営業再開していたが、元々工場が引き受けている依頼の順番の都合で後回しにされるはずだった。

 が、依然として徳島と高知は占領されているため依頼を進められず、部品にも余裕が出たそうでこちらにもパーツを回してもらえることになったそうな。勇者の働きが足りない、と言われそうで耳が痛いが私たちも頑張っているのだ、これは仕方ないことなのだ――と内心言い訳しておく。

 

「それでもうすぐパーツが届く時間だけど。本当にあなたが直せるの?」

 

「保育園の頃からここで遊んでて、業者さんの作業もずっと見てきたからある程度はできるよ。今日届くのは簡単なボタン交換用だから余裕余裕。問題は僕らの手に余る筐体だけど……」

 

 高橋くんが向けた視線の先にはいくつもの大型筐体。どれも故障中の張り紙がされているのはどこか切なかった。レースやガンシューティング等の専用コントローラーを必要とするゲームはどうしても筐体が大きくなりがちで、故障個所はわからないがこれを直すのは骨が折れそうだ。

 中には液晶画面を贅沢に三画面使った大型シューティングや白と青のバイク型コントローラーのゲームとか、平成どころか昭和のゲームまであるとかすごい品揃えだ。

 

「流石に勇者部でもこれを直すのは無理ね。この銃とかガムテープで修繕してるけど、パーツの継ぎ目で割れてるじゃない。テープ剥がしたら即分解しそうね」

 

「その筐体は工場に相談したら、同型のコントローラーがあるからそれと交換するってさ。だけど見ての通り筐体と一体化してるから修理するためには工場に送らなければならない」

 

「だけどこの時期は宿泊客が多くて工場へ発送する人手は足りない、と」

 

「そこで困った時の勇者部ってね。讃州中学に通ってるけど勇者部を初めて頼ったかも」

 

「ふふっ。そうね、困った時は勇者部に任せなさいな、後輩君?」

 

 そう、これは高橋くんから勇者部への依頼なのだ。

 

 依頼内容は、高橋くんの実家である温泉施設に併設されたゲームセンターの再建。

 ゲームセンター自体が長い間放置されていたためそこそこ汚れていたり、筐体も同様で工場にすぐには送れない状態と問題は山積み。流石に高橋くんも一人では無理ということで、手伝ってほしいと頼まれたのである。友達からの頼みでもあり、古いゲームに触れるチャンスだ。

 ついでに高橋くんから面白い提案があった。修理不可能な筐体を入れ替えたりで空きスペースが出るけど、そこは自由にしていいとのことだった。新しいゲーム機を入れたり休憩スペースを作ったりも自由。つまり――『私たちのゲームセンター』を作ることができる。まるで夢みたいだ。

 

 さらに従業員特権で営業時間外である早朝ならフリープレイ。つまり、無料で遊べる。楽園はここにあったのか。

 

 もちろん予算も決まっているから好き勝手はできないけれど、夢は広がる。携帯ゲーム機でプレイしてる対戦ロボットゲームのアーケード版を入れてもらおうか、なんて考えていると高橋くんは首を傾げていた。何かおかしなことを言っただろうか……まさか、知らないうちにニヤけてた?

 

「後輩君、って言われてみて思い出した。郡さんって年上だったなー、って」

 

「そっち!?……ゴホン。あなた忘れてたの?わざわざ三年生の教室まで行って遊ぶ予定を立てるのが面倒だからって連絡先まで交換したのに。全く、今後は少しくらい先輩を敬いなさい二年生」

 

「はーい、郡先輩」

 

「郡先輩……いいわね。高橋くん、夏休みの間は郡さん呼びは禁止よ。郡先輩と呼びなさい」

 

「えええええええ」

 

 郡さんと呼んだら無視すると付けたしたら渋々ながら郡先輩と呼び始めた。勇者部では最年長の三年制だけど、最初の自己紹介で「年なんて関係ない」と言ったからか先輩呼びしてくるのは一人くらいなので結構新鮮な気分だ。なかなか気分がいい、夏休みの間に限定しなくてよかったかも。

 あなたはいつもゲームで好き勝手やってるんだもの、これくらいのわがままを言ってもバチは当たらないでしょう?なーんて、声に出すつもりはないけれど。さぁ、私たちの夏休みを始めよう。

 

 

 

 

 

 

「おまたせーぐんちゃん!高嶋友奈、朝のランニングを終えてただいま合流しました!……あれっ、高橋くんはどこにいるの?」

 

「お疲れ様、高嶋さん。彼は掃除道具を取りに行ってるからもうすぐ戻って来るわ」

 

「そっか。でも……本当に良かったのかな、高橋くんのゲームセンター復活を手伝う事、風先輩に言わなくて。勇者部ではぐんちゃん以外は私しか知らないんだよね?」

 

「ええ。人手が足りなくなってきたら乃木さんと秋原さんには話すかもしれないけど」

 

「ふーん……ねえねえぐんちゃん。それってもしかして、私と高橋くんだけで一緒にやりたかったってこと?」

 

「えっ!?え、えっと、それは考えてなかったわね……その、勇者部の方に伝えたら皆に高橋くんのことがバレるでしょう。それを避ける為よ」

 

「そういえば、まだ皆には紹介してないね。丸亀城から来た私たちとせっちゃんくらいかな、今知ってるのって」

 

「ええ。別に知られてもいいけど、乃木園子さん二人にバレたら面倒なことになるわよ」

 

「な、なるほどね……そのちゃんズもそこまで失礼なことはしないと思うけど……」

 

「私と高嶋さんがネタにされてるのはまだいいのよ。正直半分くらいは諦めてるから。でも、高橋くんまで巻き込むのはちょっと……その、嫌なのよ」

 

 その嫌な気持ちって、もしかして特別な思いだったりするのでは?と思ったけど相談できそうなそのっちには内緒にしないといけないので、しばらく悶々とする高嶋さんでした。




・お の れ 造 反 神!
 お の れ 邪 鬼 王!
ファミコン時代を支えたアクションゲームの有名なシーンが元ネタ。多分ぐんちゃんとゲーム少年がやった場合数分に一回くらいは悲鳴が上がる。敵配置の高難易度による事故死が多いゲームでした。

・一人でも起きれるようになってくださいね、とひなたから言われてな
ゆゆゆいのストーリーでひなたが熱を出してダウンしたことがあるのですが、
その際に判明した、ひなた無しでは靴下の場所すらわからない若葉ちゃん。
時系列的には結構後にはなるのですが、恐らく神世紀生活の初期から……

・従業員特権で営業時間外である早朝ならフリープレイ
「ちなみに結構人気な筐体はフリープレイにしてたりする」
「えっ?それって元が取れるの?」
「ゲーム目的で来る子も増えるから元取れる。郡さ……先輩はどう?」
「……行く。毎日は無理だけど、週一くらいで通いたいわね」
そんな温泉も昔はよくあったモノでした。今はどうなんでしょうね。

・郡先輩
勇者部で先輩呼びしてくるのはそのっち(小)だけなぐんちゃん。
先輩呼びされるのはなかなか気分がいい模様です。
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