一、バーテックスは出さない:戦闘描写絶対やりたくない(大の苦手)
二、ぐんちゃんをいじめない:一流の悲劇より三流のハッピーエンドが好きです
三、ラスボスは地の文で倒す:神様の出番、(あったら戦闘が起きるので)ないです。
四、執筆は無理せずに頑張る:体調崩した前科があるので更新ペースは程々を目標に
以上を了承していただけると幸いです(震え声)
ゲーム少年と「RFスイッチ」
目の前の小さな液晶画面が暗闇を照らしている。カチカチカチとボタンを押す音だけが部屋に鳴っていた。意識は手の中の携帯ゲーム機へと向けられ、それ以外を気にする余裕はない。
「──ッ!」
ゲーム機にはロボット同士が対戦する姿が映っている。自分が操作するロボットの状況が悪化した。操作をさらに急ぐ。が、時すでに遅し。
「あーっ、負けた! 畜生!」
耐久値が無くなった青いロボットは煙を吐き、爆発四散。そして赤文字で「You Lose」と表示された。生き残った赤いロボットが勝利ポーズを決める。赤いロボットは防御力が低い分スピードが非常に速いピーキーなスペック。
なので使い手を選ぶ上級者向けの機体だ。予想はしてたけどめちゃくちゃ相手が強い。完敗だ。
「どうすればこの人に勝てるかなぁ」
相手のユーザーネームは『C-shadow』。最近見かけるようになったプレイヤーで、ゲーム内のランキングでもかなりの高順位のプレイヤー。いつか絶対に勝ってやる……!
さて、今日はもう遅いしこの辺にするかな。ゲームの電源は切ったし寝るとしよう。ついついやりすぎてしまうのは悪い癖だ。夜更かししすぎると学校がしんどい。朝までひと眠りしよう。
……待てよ。今何時だ。確か布団のこの辺に……あったあった、目覚まし時計。今が四時だから……二時間しか寝れない! ヤバい、ゲームやりすぎた!!
急いで布団に潜って羊を数えたけれど、そんな短時間でぐっすりと眠れるわけもなく。
「あはは、それで眠たそうだったんだね」
なんとか学校までたどり着き、眠気でフラフラしながらも授業を受けていると隣の席の女の子に心配された。うーん、まだ眠いし頭が重い……
「……ゲームってやりすぎると怖いよ結城さん……」
「私高嶋だよ」
「……眠たい頭で高嶋さんと結城さん見分けるの無理……」
誰か高嶋さんと結城さんの見分け方教えてください。
隣の席の女の子――高嶋友奈さんは、隣のクラスの結城友奈さんと非常に似ていて僕には見分けがつかない。聞いた話によると二人は趣味や好きなものも似ているそうな。それのに、二人は血縁関係が全くない赤の他人だというのだから不思議だ。
「……この世界で一番難しいゲームは高嶋さんと結城さんを見分けるゲームだと思う。声も容姿も似すぎてて学校の制服姿だと見分けるポイントがなさすぎる……転校してきたときは違う制服だったから見分けもついたのに……うぐぐ……」
「あはは……でもぐんちゃんと東郷さんならいつでもどっちがどっちかわかるよ。前に制服交換してどっちがどっちでしょうか! っていう問題出したけど正解してた」
「マジですか」
東郷さんって、結城の方の友奈さんのことが大好きな東郷美森さんか。あの人のことなら僕も知ってるけど、確かにあの人なら二人を見分けることもできそうだ。ただ、ぐんちゃんって誰だ。そんな人この学校にいたか?
「ぐんちゃんは私の友達で、少し前に私と一緒にこの学校に転校してきたんだよー」
「転校生か。道理で知らないわけだ」
「そういえば、今日のぐんちゃんもなんだか眠たそうにしてた気がする。もしかしたらそのゲームの対戦相手はぐんちゃんだったのかもしれないね」
「ははっ、ないない。あのゲームをやってる人凄く多いんだし、多分別の人だよ」
「そっかー。あ、そろそろ次の授業の時間だね」
「高嶋さんと話してて休み時間に寝るの忘れた……!!」
「あっ! ご、ごめんね? なるべく寝てるの見つけたらこっそり起こすよ」
マジでお願いします。次の授業の時間先生めっちゃ怖いし、寝てるのがバレたらどうなることか……頼んだぞ高嶋さん!!
なお、最終的に怒られた。高嶋さんが。
授業が難しすぎてついうとうとしてしまったそうな。気持ちはわからなくもない……のでジト目で見るのをやめてください。僕は頑張って起きてただけだから。
そんなこんなで時は流れ、放課後になったが。
「起きて起きて。ホームルーム終わったよー」
「んー……」
僕は机に突っ伏して寝ていた。眠たい目を擦るが、相変わらず瞼が重い。
「わぁ、まだ眠そう。大丈夫?」
微妙。夜更かししたのが久しぶりなもので体が全然慣れてないのだ。放課後にも関わらず体と頭が相変わらずだるくて仕方がない。
「横になってひと眠りしたら少しは楽になるとは思う……うちの家は門限は緩いから多少は寝てから帰っても問題ないし……高嶋さん、どこか眠れそうな場所知らない?」
「そうだね……勇者部の部室使う?」
勇者部。『人が喜ぶことを勇んでする』ことを目的とした部活動で、ぶっちゃけボランティア部であると共に讃州中学の名物。そして、高嶋さんは勇者部の部員なのだが。
「前に一度部室に行ったことあるけど寝れる場所は床しかないでしょ」
「タマちゃんが部室に寝袋置いてたから寝る道具はあるよ」
「タマちゃん? あー、隣のクラスの土居球子さんか。でも女の子だらけの部室で寝袋使って床で寝るとか変態一歩手前だと思う。スカートの中身見えるでしょ?」
「……えっち」
「そもそも話題振ったの僕じゃない件について」
そういえばそうだった! と言わんばかりに高嶋さんは赤い顔を一瞬で元に戻した。
……適当に反論しただけなんだけど、それで納得していいのか。将来が少し心配である。
「あ、そうだ! 良かったら寄宿舎の広間使う?」
「寄宿舎? そんなのこの学校にあったっけ」
「学校の隣にある寮みたいな施設だよ。ほら、あのおっきい建物。私やぐんちゃんもあそこに住んでるんだけど、寄宿舎のみんなで集まれる広間があるんだ。あそこなら横になっても誰も咎めないし、静かだからゆっくりできるはずだよ」
「言われてみれば用途がよくわからない建物があるな……あそこが寄宿舎だったのか。ふーむ、お言葉に甘えてもいいかな、高嶋さん」
「どうぞどうぞ。ご自由に甘えていいよー」
高嶋さんの優しさが身に染みる……!
そして、高嶋さんに連れられて寄宿舎の広間を訪れることになる。
この部屋とはこれから長い付き合いになるのだが、この時はまだ思いもよらなかった。
「お布団はないけど、座布団を並べれば寝やすいと思うよ」
高嶋さんはてきぱきと座布団を数枚並べて広間に簡易的なベッドを作り上げた。そういえば僕もこういうの作ったことがあるな。こういう即席ベッドって意外と慣れれば寝心地がいいんだよね。なんか懐かしくなった。
「高嶋さん、色々とありがとう。この借りはどこかで返すよ」
「別にいいよ、これくらいどうってことないし。気にせずに休んで休んで」
「そういうならお言葉に甘えるけど……じゃあおやすみなさい……」
「おやすみなさーい。あ、そうそう。一応六時くらいには寄宿舎の皆が帰ってくると思うからそれまでには帰った方がいいよ」
「……りょー、かい……ZZZ……」
「寝るのはやっ!」
ふふふ……寝つきがいいのは……ひそかな自慢……ぐう。
――座布団布団で寝たせいか懐かしい夢を見た。
僕の家は大きな温泉施設を経営している。露天風呂やらバブルバスやらサウナやら陶器風呂やら、いろんなお風呂が揃っている自慢の温泉だ。そして、自慢のポイントはそれだけじゃない。ゲームセンターがあるのも自慢の一つだった。
ただのゲームセンターなんかじゃない。『古い』ゲームセンターなのだ。
夢の中の自分はそこで好きなレースゲームを遊んでいた。在りし日のように。
うちの温泉施設はそこまでゲームに力を入れていないから最新の筐体とかは入ってこない。せいぜい少し古いUFOキャッチャーの筐体に新発売のぬいぐるみとかを入れるくらいだ。そんなゲームセンターだからこそ、昔懐かしのゲームが沢山揃ってた。
ゲームセンター近くの休憩室に座布団を敷いて布団代わりにして毎朝毎晩遊ぶくらいに、大好きだった。『だった』のだ。あのゲームセンターにはもう長いこと行っていない。
昔懐かしのゲームはやはり寿命が来てしまう筐体も多かった。今はかなりの数が故障や部品不足などで使用不能になってしまって遊べなくなってしまい、事実上の閉店状態。
あそこに行くと、『夢の残骸』、あるいは『夢の墓場』を見せられている気になってしまう。
今の僕にとってあそこはあまり好きじゃない。むしろ、苦手なのだ。
暗いことを考えていたせいか、夢の中にまで悪影響が出てきた。遊んでいたレースゲームの筐体のハンドルが外れる。液晶がバツン、と音を立てて消えた。
そして、椅子が折れてそのまま床に落ちそうになって――
「痛っ!?」
腹のあたりに鈍い痛みを感じて目覚める。な、なんだ一体。
「……あなたここで何してるの?」
眠たい目を擦りながら目を覚ます。目の前には冷たい視線を向けてくる女の子。讃州中学の制服を着てるし、寄宿舎に住んでる人か。
「え、えーっと……高嶋さんに許可をもらってここで寝てました」
「……そういえば高嶋さんがそんな話をしていたわね。ごめんなさい、忘れていたわ」
小さく頭を下げられる。女の子の長い黒髪が揺れた。ありきたりなその様子になぜか目が離せなかった。黒い髪がサラサラと揺れているのに見惚れていると、女の子はため息を吐いた。
「そろそろ寄宿舎の人たちが帰ってくる時間よ。早く帰った方がいいんじゃないかしら」
「もうそんな時間か。起こしてくれてありがとうございました。えーっと……」
この人の名前はなんだろうか。初めて会った人だ。こんな綺麗な人だったら一度見たら忘れないとは思うんだけど。戸惑っていると、女の子が口を開いた。
「私は郡千景。呼び方は任せるけど、変な呼び方をしたら……わかるわね?」
「あ、はい。郡さんありがとうございました」
「その呼び方なら別にいいわ。じゃあね」
そう言って郡さんは僕を無視して広間のテレビのそばへと向かった。ごそごそと横に置いてあった段ボール箱を整理しているようだが。何をしているんだろうか。こっそりと覗きに行った。段ボール箱に入っているものは懐かしい代物だった。
「ファミコンか」
「……あなたもこのゲーム機を知ってるの?」
中古品なのか少し汚れている白と赤の本体、鈍く輝く黄金のパネルのコントローラー。
今もほとんどのゲーム機のコントローラーに受け継がれている十字キーにA、B、スタート、セレクトボタン。僕が生まれる遥か昔に誕生した伝説のゲーム機だ。
「知ってるとも。僕も昔はよく遊んだよ。郡さんも好きなの?」
「……ちょっと気になってこの前中古ゲームショップで買ってみたの。最近の新しいゲームもいいけど、こういう古いゲームもやってみたいな、って思って」
「レトロゲームはいいよー。さすがにグラフィックやボリュームは今と比べるとはるかに劣ってる。だけど、面白さは今のゲームにも負けるもんか。小学生の頃からレトロゲームに育てられてきた僕が保証するよ」
「そう……それは遊ぶのが楽しみね。でも、ファミコンがテレビにつなげないのよ。テレビとコードの端子が合わなくてつなぎ方を調べようにも説明書もないし、ネットにも肝心な情報はなくて……もし知ってたらつなぎ方教えてくれないかしら?」
「それくらいお安い御用だよ。使うテレビはこの部屋のテレビかな?」
「自室にもゲーム用のテレビはあるけど、これと同型だし……つなぎ方だけ教えてくれたらそれでいいわ」
なるほどなるほど。液晶テレビか。まずは背面を確認してみるけど……やっぱり入力端子はないか。ファミコンはアナログアンテナ用の入力端子を使って映像を写しているんだけど、最近のテレビはそんな端子はない。アナログ放送は遥か昔に終了してるから。
「……このテレビじゃダメなの?」
「ん、顔に出てたかな。ちょい厳しめかもしれない。でも厳しめなだけでまだ方法はあるから」
テレビが置かれている台には古そうなビデオデッキがある。こっちを調べてみよう。後ろのコードが抜けないように慎重に引っ張り出して背部を確認。おっ、あったあった!
「大丈夫、ビデオデッキに端子があった。これを通してテレビにつなげばいけるはず」
「ビデオデッキ……私の部屋にはないし、ファミコンはこの部屋でするしかないわね」
「そっか。じゃあこのまま普通に接続しておいていいよね、うん。RFスイッチ貸して」
「あ、RFスイッチ?え、えっと……どれ?」
「これくらいの白い箱でコードが二本出てるやつ。もしかして、ないの?」
「それらしいものは買ってないわね。ごめんなさい、買った時の私のミスよ」
なんてこったい。さすがにないものはどうしようにもないぞ。
「今度買いに行くわ。教えてくれてありがとう」
郡さんがお礼を言いつつ小さく笑みを浮かべた。その姿に思わず息を飲んでしまう。
クールで冷たい雰囲気を漂わせているからか、笑った時の柔らかさが引き立つ。例えるのなら、雪の中に咲く満開のひまわりというか……うむむ、僕の知ってる言葉では表現が難しい。ストレートに言うなら「郡さんの笑顔……なんて素敵なんだ!」って叫びたいくらいに良かった。女の子を見ていてこんな気持ちになるのは初めてだ。
――もっと郡さんの笑顔を見てみたい。そう思った。
こうして、僕は郡千景さんに出会ったのだ。誰かが言うのはこの時僕は彼女に一目ぼれしたらしい。なるほど、言われてみれば確かにそんな気がする。
なお、ここで余談だけども。
「ぐんちゃんただいまー。あれ、高橋君はやっぱりもう帰っちゃった?」
「高橋……君?高嶋さん、それって誰のこと?」
僕は郡さんにうっかり名乗ることなく帰ってしまいましたとさ。何やってんだか。
高橋君
主人公。高嶋さんと同じクラスの二年生。
一言で言うと恋愛クソ雑魚ナメクジゲーム少年(無慈悲)
ぐんちゃん
ヒロインというか、相方ポジ。勇者部一のゲーマー。
ちなみに三年生なので高橋君より年上。高橋君はその事を知らない。
高嶋さん
同級生かつ隣の席ということで高橋君とはそれなりの付き合い。
高橋君はゲームが好きだからぐんちゃんのいい友達になるんじゃないかなー、とか思ってる。
ファミコン
説明不要の伝説のゲーム機。神世紀300年でも残ってる……はず(遠い目)
RFスイッチ
分かりやすく言うとファミコンとテレビをつなぐコネクターみたいなやつ。策中でも説明したけど最近のテレビには入力端子の都合でそのままでは繋げない。