ちなみに私は参加しておりません。
この作品で参加するという手もありましたが、私がこの作品を書くことを参加者の大半が知っておりまして……投稿した瞬間に作者名バレてしまいます。
ある日の放課後、行きつけの中古ゲームショップをぶらついていると思わぬ出会いがあった。
「おや?」
ファミコンの周辺機器コーナーを覗いている赤いカーディガン姿の黒い長髪の少女を見つけた。間違いない、郡さんだ。あの辺は確かRFスイッチ置いてたっけな。どうやら他の周辺機器とかも見てるみたいだし、そっとしておこう。さて、僕もそろそろ何を買うか決めなければ。
僕も帰ったら久しぶりにファミコンやろうかな。せっかくだし新しいソフトを買っておこう。となると……よし、あれとかどうだろうか? 手に取った中古カセットはオレンジ色。ラベルにはファミコンの初期ソフトに使われていた汎用の折れ線が描かれていた。
「少し高めだったから手が出なかったけど、お小遣いにも余裕があるしやってみますか!」
翌日、登校すると珍しく二番目にクラスに着いた。ちなみに一番目はいつも高嶋さんである。高嶋さんは学校傍の寄宿舎暮らしなので登校するのは一番早い。そんな高嶋さんは教室に入ってきた僕を見て元気に挨拶してきた。
「高橋君おはよーっ」
「おはよう。今日も高嶋さんは元気だね」
「あはは、元気なのは私の取り柄だからね……ねえ、高橋君。何かあった?」
「えっ、わかるの?」
「普段と比べると高橋君の表情が暗い気がしたからもしかしたら何かあったんじゃないかなー、って思ったんだ。困ったことがあるのなら相談に乗るよ」
ニコニコと笑う高嶋さん。それを見ていると暗い気持ちも晴れる気がした。
「実は昨日ゲームやろうと思ったら、親がゲーム機を親戚に渡してたことが発覚したんだよ。久しぶりにゲームやろうと思ってたら出ばなをくじかれちゃったもんでショックを受けててね」
「あらら……それは気の毒だね」
「とは言っても最近そのゲーム機使ってなかったから仕方ないとは思ってるし、親戚もゲームが好きな人だから別に気にはしてないんだけどね。ただ、出来なくなるとこう……余計にやりたくなったりしない?」
「その気持ち私もよくわかるよ。肉うどんを食べたくてうどん屋さんに行って肉うどん売り切れですーって言われたらもっと肉うどん食べたくなるんだよね」
「うどんで例えるあたり高嶋さんも勇者部の一員なんだって実感した。流石別名うどん部」
「勇者部ってそんな風に呼ばれてるの!?」
うん。勇者部と言えば十人中九人がうどん、稀に女子力と答えると言っても過言ではないくらいにうどん好きが有名なのだ。むしろうどん以外で女子力が出てくるのが謎である。何故だろう?
「は、話を戻すけどさ。親戚からそのゲーム機を返してもらう事ってできないの?」
「頼めば返してもらえるだろうけど、今すぐは無理かな。その親戚高知に住んでるんだけど、最近の事故で香川から高知への道が封鎖されてるし、しばらく返してもらえそうにないよ」
「……私、もっと頑張るね」
「は? 高嶋さんが頑張っても封鎖は解除されないと思うけど……」
「ううん、何でもないよ! 気にしないで気にしないで」
高嶋さんってたまーにぽろっと変なことを言うよなぁ。
「じゃあさ、ゲーム機を新しく買うっていうのはどうかな?」
「んー……それが昨日そのゲーム機用のソフト買っちゃったから財布の中すっからかんなんだよね。次のお小遣いの日までまだまだ時間があるし」
「ダメかー……あ、そうだ! ぐんちゃんに貸してもらう、っていうのはどうかな? ぐんちゃんなら沢山ゲーム機持ってるから高橋君が探してるゲーム機もきっと持ってるよ!」
「そうなんだ。ぐんちゃんってゲーム好きな人なんだね。郡さんと気が合いそうだな……」
「ぐんちゃんって郡さんだよ?」
「え?」
「あれ?」
「え?」
ちょい待ってどういうことなの。
放課後、高嶋さんが呼び出してくれた郡さんにその辺のことを聞いてみた。
「それ私のあだ名よ」
「あだ名? ええ? 郡千景、こおりちかげ。やっぱり『ぐん』って言葉どこにも入ってないよ。どこから『ぐん』が来たのさ」
「……高嶋さんが最初に私の名前を見た時に読み方を間違えて『ぐんちゃん』って呼んだのよ。それから高嶋さんは私のことをぐんちゃんって呼んでるわ」
「なるほどなぁ……なら僕もぐんちゃんって呼んだ方がいいの?」
「ダメよ」
ダメかー。冷たい表情できっぱりと却下されてしまった。
「……好感度を上げたらそのうちぐんちゃんって呼べるようになるかな」
「なるわけないじゃない。まあ、検討くらいはしてあげるわ」
いつか郡さんをぐんちゃんと呼べる日が来ますように。好感度かぁ……手広く色んなゲームをやってる僕だけど恋愛ゲームはからっきし。果たして好感度を上げられるのかどうか。
「話を戻しましょう。高橋君が私を呼びだした理由ってゲーム機を貸してほしいのよね?」
「そのつもりなんだけどさ、郡さんはこのソフト知ってる?」
バッグからタオルに来るんだ物体を取り出す。そのタオルの中には昨日買ったファミコンソフトがあった。家に取りに帰ってこっそりと学校に持ち込んだそれを郡さんに見せると目を見開いた。
「マリオブラザーズ……! やったことはないけど名前だけは聞いたことがあるわ」
西暦時代に誕生し、今でも続いている大人気配管工ゲームの初期の一作だ。本当に息が長いな。
「それでさ、これを思い切って郡さんにあげようかなー、と思ってます」
「……それは嬉しいんだけど、どうせ何か代わりに何か望みでもあるんでしょう? 見返り無しにそんなことをするはずがないわ」
「あー……えっと、その。時々でいいんでファミコン貸してくれませんか? この前のRFスイッチの話題の時から僕の中のファミコン熱が再燃してるのに肝心のファミコンが手元になくて困ってて……お願いできませんか?」
頭を下げて頼み込む。それを見ている郡さんはしばらく考え込んでいた。そして──
「いいわ、貸してあげる」
「やった! ありがとう郡さん!」
「その代わり、一つ条件がある」
郡さんは窓の外を指さす。その先には寄宿舎が見えた。
「寄宿舎の広間でやりなさい。そこであなたのプレイを見せてもらうわ」
「……えっ?」
郡さんに見られながらゲームやれと? 女の子に見られながらゲームとかちゃんとプレイできる自信がないんだけど、大丈夫なんだろうか。
「へぇ……なかなか手馴れてるじゃない」
「このゲームはやったことがないけど、ファミコンって最近のゲーム機と比べるとちょっとボタンが固めだから入力にもコツがあるんだよ。ファミコンをよくやってた経験だね」
大丈夫でした。ゲームに集中してたら女の子に見られながらでも全然気にならないや。画面の中で操作しているキャラクターが軽快にジャンプして次々に敵をさばいていく。よし、慣れてきた。
「ところでさ、なんで僕のプレイを見てみたいとか言い出したの?」
「純粋にあなたの腕前が気になっただけよ。時には慎重に敵をかわし、隙あらばまとめて退治を狙う大胆さもある。時間経過で出現する火の玉もすぐに対応しているしなかなかやるわね」
「……あ、ありがとう?」
「どうして疑問形なのよ」
「ゲームの腕前をほめられたことがあんまりないもので反応に困ってる。実は郡さん以外にこの学校でゲーム好きな同級生を知らなくてさ。昔からどうもゲーム好きな同級生になかなか会えなくて肩身が狭くてさぁ……」
「その気持ちわかるわ。私もあなたみたいにゲームが好きな人に会ったのはこれが初めてだから」
「えっ、郡さんもなの?」
「ええ。クラスメイトにもあまりいないし、私が入ってる勇者部にも私みたいにゲームが好きな人は全くいないし。若者のゲーム離れは相変わらず深刻なのね……」
「……ほえー……あっ!」
口元に手を当てて悩む郡さんをボーっと見つめてたらカメに噛みつかれてミスった。
「ちょっと、なにやってるのよ」
「ごめんごめん、ちょっと郡さんって大人びてるなーって思ってね」
ゲーム離れを悩む中学二年生とか僕以外に初めて見た。
「実際私はあなたより年上よ」
「え!?」
「あなた、高嶋さんと同級生なんでしょう? 私これでも三年生よ」
「そ、そうだったんだ……通りで同級生を探しても郡さんに会えないわけだ。あっ」
ふふん、と得意げな郡さんを見ていると、今度は火の玉に当たった。ヤバい、残機残り一機だ!
「……本当にあなた何やってるの?」
「面目ないです。というか情けない。ボーっとしてなかったら避けれたのに」
「それにあなたが私を探していたとか初耳なんだけど。どうして私を探してたのよ?」
「……恥ずかしいから言いたくない」
「言わないと電源切るわよ」
「ゲーマーにとって死亡宣告に近いことを!?」
郡さんがマジでファミコンの電源ボタンに手をかけたので慌ててスタートボタンを押してポーズをかける。言わないと絶対ダメな奴だこれ。でも、探してた理由が郡さんの笑顔を見たいから──とか普通に不審者。かといって嘘をついても見破られそうな気がする。
正直に、素直な気持ちで。どうして郡さんを探していたのかを伝えるとしたら──
「郡さんがいいゲーム友達になってくれないかなー、と思って探してました」
「……」
「郡さん?」
「……」
「郡さーん?」
勇気を振り絞って伝えたら郡さんがなんかフリーズしたんだけど。ここにはいない高嶋さんを呼ぼうかと悩んでいると、郡さんは突然ファミコンの電源を切った。
「え、なんで電源切ったの!?」
驚いて問いかけるも、郡さんは答えることなくファミコンの電源を入れ直した。
「……私、どちらかと言えば友達はいない方が気が楽なタイプなのよ」
「う、うん」
「だけど、ゲームが好きな友達は一人くらいいてもいいかもしれない、とは思ってる」
「お、おー。で、結局なんで電源切ったの?」
郡さんはその質問にファミコンに備え付けられたもう一つのコントローラーを手に取り、ニヤリと笑みを浮かべて答えた。
「友達なら私も混ぜなさい。このゲームって二人同時プレイもできるわよね?」
その言葉にはっとしつつ。僕は喜んで「もちろん」と答えた。
……なお、余談ではあるが。
「ちょ、郡さん邪魔! 通れないんだけど!?」
「ああっ!? 何やってるのよ高橋君! あなたのせいでカメにぶつかったじゃない!!」
「そういう郡さんだってさっき僕を突き落としたでしょうに……!!」
一瞬友情が芽生えかけたかに見えた二人だったが、およそ10分後には喧嘩を始めたそうな。
『マリオブラザーズ』。人はこのゲームを元祖『友情破壊ゲーム』と呼ぶそうな。
……もちろん、ちゃんと協力すればすごく面白いゲームである。
ぐんちゃん
ゲーム友達になってくれないか、と言われたら処理落ちした可愛い人。
その時は内部で過去の経験とゲーム友達を天秤にかけており、ギリギリゲーム友達の方が重かったそうな。
高嶋さん
実は広間の外で観察していた人。二人が順調に友達になりそうで喜んでいる。
喧嘩を始めた時はあわあわしてたけど、翌日ゲームの話をしている二人を見つけてほっと一息。
高知に行けない
ゆゆゆいの世界観では勇者含む一般人の活動範囲が四国内でも制限されているのです。勇者の活躍によって最初は香川内だけだったのが愛媛、徳島、高知とどんどん広くなります!
……つまり最後に高知は解放されるのでファミコンが帰ってくるのはめちゃくちゃ遅い。
今回は実名のゲームが出ましたが、ぶっちゃけ例外に近い。
小説形式でゲームをプレイさせるのに四苦八苦しておりまして、非常に厳しいです。やりすぎてもゲームをただ紹介するだけになりますので、一部の要素を抜き出して話題にする形になりそうです。
そのため、次回以降は架空のゲームが登場することをご了承いただければ幸いです。