ゲーム少年はぐんちゃんと遊びたい。   作:あおい安室

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お待たせしましたー。

ゲーム要素薄いと言われたら反論できない……気がする(震え声)


ゲーム少年と「尾行者」

「誰かの気配を感じる!」

 

 それは漫画やアニメ、そしてゲームでもおなじみの台詞。

 ゲームでこういうセリフが出たら「尾行していたり、隠れている敵がいるから気をつけろよ」っていうヒントだからありがたいけど、「現実で他人の気配に気付けるわけがないよなぁ」って毎回ぼやいてた……ぼやいてたんだけど。

 

「……誰かの気配を感じる」

 

 まさか自分が本当に他人の気配を感じることがあるとは思わなかった。

 そんなわけで、今日は尾行されていたお話です。

 

 


 

 

「痛っ」

 

 放課後、寄宿舎の広間。

 いつも通り郡さんとゲームしようとテレビの前で座った時、足首に激痛が走った。座り方をいろいろと変えてみるけど、痛みはなかなか引かない。

 

「……足をひねったの?」

 

「そんなところかな。我慢できないほどじゃないし、大丈夫だよ」

 

「よくないわ。怪我を放置してたら後々響くことがあるんだから……少し待ってなさい」

 

 そう言って郡さんは棚から救急箱を取り出し、塗り薬を渡してきた。うちにもある関節用の痛み止めだ。

 

「ありがとね、郡さん」

 

「気にしなくていいわよ。足が痛いのを理由に負けた時の言い訳されたくないだけだから」

 

「……ツンデレ?」

 

「今日のあなたは最上段から降ろしてあげないから覚悟しなさい」

 

 普通に死刑宣告なんですがそれ。

 

 わからない人に解説すると、マリオブラザーズはステージがいくつかの段に別れてます。で、最上段は敵が出現する場所なので非常に危険だけど、ミスしたときの復帰場所でもある。なので急いで降りる必要があるんだけど……降りる場所が一か所のみ。

 

 なので二人プレイだと相手を降ろさないように妨害するというプレイがあります。そして、郡さんはすっかりこのゲームをやりこんでいるので……

 

 結果はお察しください。いくら僕が強くても妨害に徹した郡さんに勝てるわけがない。

 

「ふふっ、腕を磨きなおした方がいいんじゃないかしら?」

 

 だけど、郡さんがすごく機嫌良かったので良しとする。やっぱり笑ってる郡さんは美人だ。

 

 

 

 笑顔の郡さんを拝めて満足気分でのんびり歩く帰り道。

 

「……やっぱり気配がする」

 

 どうもぞくっとするような何かを感じる。ここ最近の帰り道でこの変な気配を感じる事が多くて、正直気味が悪い。かと言って、これを誰かに相談するわけにはいかない。

 

 あまり他人に迷惑をかけたくない性分なのもあるけど、郡さんには絶対に知られたくないからだ。何故ならこの気配は郡さんと一緒に遊んだ日に感じることが多い。それを知ったら二度と遊びに誘ってくれなくなるだろうし……それだけは絶対にダメだ。

 

 幸いなことに気配はある程度距離を歩いたり早歩きしたりすれば撒くことができる。

 なので、気配を感じるときはいつもよりもちょっと遠回りして帰っている。そのルートはちょっとだけ足場が悪くてうっかり足をひねることも少なくないけど、相手を撒くためだ、我慢我慢。

 

 グキィ。

 

「ぐえっ!?」

 

 


 

 

 翌朝。

 

「それで変な歩き方で登校してきたんだね」

 

 教室に入ったら高嶋さんに心配されたので、変な気配を感じること含めて事情を話した。

 

「そういうこと。足の痛みをかばうとどうしてもあの歩き方になっちゃうんだよね。あ、この話は郡さんには……」

 

「ぐんちゃんには内緒だよね。大丈夫、約束はちゃんと守るよ!」

 

 最初は話すつもりはないから「気にしないでいいよ」って言ったんだけど、高嶋さんが悲しそうな表情になったので話さざるを得なかった。というか、話さないと何故か郡さんに怒られる気がした。高嶋さんが悲しそうになった途端に郡さんの冷たい笑顔が脳裏に浮かんだ謎。

 

「とりあえずつま先立ちで傷まないから、骨が折れてはないとは思うんだけど、踵をつけて歩くと信じられないくらいに痛くて。何とか登校出来たけど帰りはどうしようかな……

 ところで……さっきから手をぐるぐる回してるけど、何してるの?」

 

 足首に向けて平手でぐるぐる回している高嶋さん。

 

「東郷さんがやってたんだけど、こうやってアルファ波を送ったら足が治らないかなー、って」

 

「アルファ波ってそうやって送れるものだっけ!? それにアルファ波はリラックス効果はあるけど鎮痛効果はなかったような……」

 

「治れー、治れー……」

 

 そうやって念じられても治らない……はず。はずだよね? 高嶋さんがグルグル回しているのを見ていると、なんだか自分の記憶が怪しくなってきた。後で理科の先生に聞いてみよう。

 

 

 昼休みに聞いてみた。アルファ波には鎮痛効果が本当にあるらしい。

 人間にとって嫌な信号をブロックしてくれるからリラックス効果があるわけで、それは痛みにも同じことが言えるのだとか。なるほど、通りで足の痛みがちょっとマシになったのか! 

 

 なんですか先生? そんな方法でアルファ波は送れないはず? 

 

 高嶋さんの声にアルファ波が含まれているんだろうか。あるいは、あの手を回す動作は東郷さんがやっていたみたいだし東郷さんが編み出した秘術だからアルファ波が送れるとか? うーん、気になるけどあの東郷さんに聞くのはちょっと怖い。

 ……よし。そっとしておこう! 触らぬ神に祟りなし。

 

 


 

 

 高橋君がある意味懸命な判断をしていたちょうどその頃。

 

「そういうことね。高橋君の様子がおかしい理由がようやくわかったわ」

 

 讃州中学の一角で千景は高嶋さんから話を聞いていた。人付き合いがあまり得意ではない千景だが、人が何かを隠していることくらいには気付ける。彼女もいじめられていた過去を勇者部の仲間たちには隠しているから。秘密を隠しているからこそ、他人が隠している秘密にも気付けるのだ。

 

 そこで彼と同じクラスである高嶋さんに彼のことを探るように頼んだ結果早朝の一件となった。

 

「どうしよっか? 私は勇者部の活動で放課後は忙しいけど、ぐんちゃんは空いてたよね?」

 

「空いてるわね。ちょうどいいし気配の相手を捕まえてくるわ。友達に手を出されて黙っていられないもの」

 

「……そっか」

 

「え、ど、どうしたの高嶋さん? 私何かおかしなこと言った?」

 

 突然優しい笑みを浮かべた高嶋を見て慌てる千景。笑顔のまま高嶋は首を横に振る。

 

「ううん、おかしなこと言ってないよ。ぐんちゃんが高橋君のことを友達って呼んでるのが嬉しくて。ぐんちゃんが勇者部以外の人と仲良くしてるのを見なかったから気になってたんだよ」

 

「そ、そうかしら……?」

 

 千景は普段の行動を思い返す。確かに過去の経験から勇者部以外の人とはあまり関わらないようにしている自覚はあったが、多少は仲がいいはずだ。例えば同じクラスの人とか……

 

「郡さん昨日のドラマ見た?」

 

「見てないわ」

 

 同じクラスの人……

 

「この問題の解き方郡さんはわかる?」

 

「自分で調べた方がいいわよ」

 

 同じクラス……

 

「あたしたちこれから遊びに行くんだけど郡さんも一緒に行く?」

 

「いえ、用事があるし別にいいわ」

 

 明らかに仲良くなかった。あまり趣味ではないからやっていないが、恋愛ゲームの好感度が低いヒロインの反応と千景の反応がほぼ同じであった。

 

「心配かけてごめんなさい高嶋さん……!」

 

「だ、大丈夫だよ! これから仲良い人を増やせばいいんだから!」

 

「……そうね。ところで高橋君はこれを内緒にするように言ってたのよね?」

 

「うん」

 

「となると彼に同行して尾行相手を探すことは出来ないわね。どうして私がそのことを知ってるのかってことになるし。高嶋さんを約束を破った裏切り者には出来ないわ」

 

「普通に一緒に帰ろうって誘えばいいんじゃないかな」

 

「私と彼は学年が違うし、寄宿舎に住んでるから帰る道が全然違うわね……」

 

「そうだった!じゃあ……高橋君の家に遊びに行くとか?」

 

「高橋君とはそこまでの関係じゃない。一緒にゲームしてるだけなのに家に遊びに行こうとするとか、彼に嫌われる未来しか見えないわ……」

 

「そうかなぁ……?」

 

 確かに高橋君と千景の関係は相変わらず放課後一緒にゲームしているだけである。しかし、その頻度は結構多いことを連絡役である高嶋は知っていた。そこまで一緒に遊んでいるのなら、普通に友達の家に遊びに行っても問題はないと思っているくらいには。

 

「そういえば、私は行ったことないんだけど高橋君の家って大きい温泉らしい――」

 

「「……それだ!」」

 

 口に出したところで、情報を聞いたところで、お互いにハッと気付く。

 

「温泉に入りに行くのなら普通に高橋君の家に行ける!」

「温泉に遊びに行くのなら普通に高橋君の家に行ける!」

 

「「……あれ?」」

 

 微妙に二人の認識がズレていた。高嶋にとって温泉とは入浴する場所であり。千景にとって温泉はゲーム機で遊べる場所。ある意味ゲーマー特有の思考のズレであった。




相手を降ろさないように妨害する~はマジで弟にやられたことがあります。リアルファイトしなかった当時の自分を褒めたいです。

次回、後編的な感じです。
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