れんげ「ひか姉の様子がおかしいのん....」ガヴリール「『最近の同級生の様子が少しおかしいんだが』ってスレ立てとこ」 作:開屋
夕方ごろになり、一穂が晩ご飯の準備を始める。そんな中でも夏海、小鞠、蛍の三人はひかげについての話で持ちきりである。
「どうしよう、絶対ひか姉何かあったんだよ!冗談のつもりがマジになっちゃったよ!」
「それに関しては夏海は悪くないって、問題は何があったかってことだけど......この様子じゃ多分あんまりよくない事っぽいよね......」
「そんな......ひかげさん大丈夫なんでしょうか。もしかして今回帰って来たのもそれが原因だったとかなんじゃ......」
「それならウチ今回の件大戦犯じゃん!やっべどうしたらいいんだ......」
夏海が頭を抱えて悶える。元からボサッとしている夏海の髪がさらに乱れる。この様子をこのみが見ようもんなら、ため息を吐くだろう。少し重い空気が三人を包む。すると不意にキッチンの方から声がした。
「あ、私も手伝うよ」
声の主は紛れもなくひか......ヴィーネだった。三人は一斉にキッチンの方を見る。
「え?ひかげが? ......大丈夫大丈夫、久しぶりに帰ってきたわけなんだしそんな気を遣わなくてもいいよ」
「いや......今はとりあえず何かしら体を動かしたいというか、何かに没頭しておきたいから手伝わせて」
何となく陰を含んだ声にさすがの一穂も何か察したのか
「そ、そう? それなら手伝ってもらおうかな......」
と、それ以上の追及はしなかった。
「ひか姉が自分からキッチンに立った......」
夏海が文字通り信じられないものを見たかのように言う。
「それってそんなに珍しいことなんですか?」
「少なくとも私はほとんど見た覚えはないかな。そんな料理ができるってのも聞いたことないし......そういえばれんげはどうなの?」
小鞠がれんげに聞く。
「ひか姉の料理......中々にエキセントリックな感じなん......」
「な、なるほど。普段はあまり料理されてる所は見ないんですね」
「ウチも知らない。正直料理の出来るイメージとかほとんどないんだよね。このみちゃんとかなら分かるんだけどさ」
完全な先入観からの失礼な話をされているとも知らず、ヴィーネは料理の方に集中している。その手際を見ている一穂は
「ひかげそんな料理上手だったっけ......?」
と、ヴィーネに尋ねる。
「え? あぁ、少しは練習もしてるし上達もした、んだと思う」
少し言葉には詰まったがヴィーネは返事する。
「ひか姉が料理の練習......? こりゃやっぱり何か裏があるぞ」
「もしかしたらひかげに彼氏が出来たとか......?」
「彼氏!?」
思わず大きな声を出してしまったのは蛍だ。キッチンにいた二人もその声に思わず振り向く。
「あっ......えっと、すみません。多分私の勘違いです......大声出しちゃってすみませんでした......」
「(彼氏......あの蛍って子彼氏って言ってたわね......どういうことだろう)」
手を動かしながらヴィーネはさっきの蛍の発言を反芻する。多分向こうは女子三人で集まってるし恋バナの一つ二つくらいはあってもおかしくはない。あの中の誰かに彼氏がいるという事だろうか?
申し訳ないが一番可能性がありそうなのは、一番年下の蛍だ。夏海は男っ気のある感じじゃないし、小鞠ちゃんは......うん。最近の小学生は隅に置けないものだ。この年頃で彼氏がいるとなれば色々と不安なこともあるだろう。自分にはそういう経験も無いけど、もしそうだとしたら何か力になれることがあったらいいな......
「さっきは大声出しちゃってごめんなさい......」
蛍が今度は夏海と小鞠に謝る。
「いやいや、蛍もそんな気にしなくてもいいよ。私が急に突飛なこと言っちゃったんだから」
「にしてもひか姉に彼氏かぁ......全然男っ気なかったけど、もしかしたら向こうでそういうことがあったのかな?」
「というかひか姉の料理見てて思ったんだけど......めっちゃ手際良くない?」
ヴィーネの様子を見ていた小鞠が指を指す。
「確かにそうですね。私のマm......お母さんも料理上手だけどそれに負けてないくらいかも......」
「ほんとだ......実はひか姉って料理上手だったのかな。今までそんな要素ウチらの前で全然見せたこともなかったのに......」
「もしかしてこれって花嫁修業とか......」
「ウッソでしょ!あのひか姉が彼氏とか通り越してもう結婚するの!?」
ここまで声を押さえてきた夏海も思わず大きな声が出かかる。
「しっ!声が大きいって」
「いや姉ちゃんもいきなりそんなこと言わないでよ。ビックリするじゃん......」
「わ、私は別に悪くないじゃん!」
「あ、あの二人とも......」
姉妹喧嘩を蛍が止めようとした時
「ほーい、晩ご飯できたよ——」
一穂の声だ。ここは一時休戦、卓を含めた全員が食卓に着いた。
「おおっ、いつもと違うけど美味い!」
「こらこら、そんなにがっつかないの」
夏海が一穂とヴィーネの料理を頬張る。
「すごいのん!ひか姉料理上手なのん!」
一番家のご飯を食べているれんげにも好評だったようである。他のメンツからも好評だったようであった。
「ホント?よかったぁ......」
ヴィーネは心底安心した様子である。
「今日はひかげが手伝ってくれたから大分楽だったよ。普段も手伝ってくれたら嬉しいのにねぇ」
一穂が冗談っぽく言う。それを聞いて周りは一斉に笑い出すなど、まさしく和気藹々以外に形容のしようがない食卓風景だった。
「(みんなが私たちの作った料理を食べて喜んでくれてる....なんかすごく嬉しいな....)」
天使のような笑顔でヴィーネはみんなの顔を見る。
「(なんだこのひか姉の顔......今までこんな表情見たことないんだけど....マジで向こうで彼氏とかできちゃったの?ゔぁ゛ぁ゛めっちゃ気になる~......にしてもご飯美味ぇ......)」
その笑顔は理性と食欲の間でせめぎ合う夏海に幾多もの疑問を植え付けることになった。
この辺でいっぺん次話からはガヴドロ時空に戻します。