れんげ「ひか姉の様子がおかしいのん....」ガヴリール「『最近の同級生の様子が少しおかしいんだが』ってスレ立てとこ」   作:開屋

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大変なことになった

 ヴィーネが家に帰ると、一穂以外は全員起きていた。

 

「あっ、やっと帰って来た!ちょっと助けてほしいんだけど......」

 

 夏海がバタバタと足音を立てこちらへ走ってくる。

 

「どうしたの?」

 

「それがねーちゃんが昨日ひか姉が料理してたの見て『私だってその気になれば料理も出来る!』って言ってキッチンから離れないんだよ!」

 

 ......そんなに困った事態だろうか?そう思って台所の方へ向かうと

 

「せ、先輩!それじゃ危ないですよ!」

 

「だーいじょうぶ、このくらい私にだってできるって!」

 

 過去最大の被害者が小鞠を止めようとしている。小鞠が何をしでかしているのかは分からないが、遠巻きに見てもダメそうなのが伝わってくる。

 

「な、何してるの?」

 

「あっ、帰ってきてたんだ!私も昨日のひかげみたいに料理作ろうと思ってるんだけど、みんながすごく心配しててさ、別に大丈夫なのに......」

 

 心外そうに小鞠が言う。それを見たヴィーネが悟った。過去の調理実習の経験からして、このパターンはメシマズのソレだと。

 

「そ、そうなんだ。でも確かに普段あんまり慣れてない人が一人で料理をするってなったら危ないし、無理に背伸びすることはないと思うよ?」

 

 ヴィーネも小鞠を止めるサイドに回る。

 

「え~?大丈夫だって、そうだ!隠し味にこれを......」

 

 それは隠れない味だ。メシマズ特有の謎アレンジにヴィーネは小鞠に一瞬だけ殺気を向けて

 

「いいから、ね?」

 

 と、言うと何かを察知した小鞠は

 

「ひゃ、ひゃい......」

 

 怯えた様子で台所を出た。蛍も一瞬の殺気を感じ取ったらしく、ヴィーネにビビっている様子だった。

 

 

 

 

 

「ごちなのん!今日のひか姉のご飯もおいしかったのん」

 

「ごちそうさまー!いやぁ、またひか姉に料理作ってもらっちゃって悪いねぇ」

 

 何とか小鞠のアレ()を回避できたれんげと夏海が満足そうに言う。

 

「うぅ......私だってお姉ちゃんだしちょっとは出来るもん」

 

「まぁまぁ先輩。またいつか別の機会に『みんなで』やりましょう?」

 

 蛍が小鞠を諭す。もはやどっちが年上なのかという話である。

 

「そうそう、一緒にやろう。それなら大丈夫だって」

 

 ヴィーネも蛍に乗っかる。

 

「大丈夫って、なにか私の料理が大丈夫じゃないみたいな......」

 

 大丈夫じゃないもん、とはさすがに言えなかった。

 

 

 

 

 朝食を終えヴィーネはふと気になっていたことを思い出した。今日の帰りに訊こうと思っていたことである。

 

「ねぇ、ちょっといい?」

 

 ヴィーネは他の誰にも気づかれないように『蛍』を呼ぶ。

 

「はい、どうしました?」

 

「ちょっと二人で話したいことがあってさ、いいかな?」

 

「構いませんが......」

 

 そう言って蛍はヴィーネの方に向かった。

 

 

 

「それで、話って何ですか?」

 

 正直どういう風に訊くかは色々悩んでいたが、回りくどいことをすればまた面倒なことになってしまうかもしれないし、いっそのことダイレクトに訊くことにした。

 

「好きな人っていたりするの?」

 

 と、まぁ尋ねてはみたものの、前の駄菓子屋から聞いた話もあってあまり芳しい返答が来ることは期待してはいなかったが......

 

 

 

 

「す、すす、好きな人......ですか? えっと......」

 

 ......ん? 少し蛍の様子がおかしい。ほんの軽いジャブのつもりが鳩尾にクリーンヒットしたような反応が返ってきた。これは少し掘り下げてみたら面白いことになるかもしれない。

 

「それってひょっとして私の知っている人だったりする?」

 

「そそそそんなわけないじゃないですか!」

 

 クロだよコレ。『そんなことはなかったー』で終わると思ってたらエラい事なっちゃったよ。どうすんのこれ。いやホントに他人のプライバシーを詮索しすぎるのも良くないってことは分かってるんだけど、もうこうなっちゃったらねー......ここまで来たらもう突き詰めちゃおうって。

 

「......ひょっとして今ここにいたりする?」

 

 イベントの如くヴィーネがグイグイ来る。元の環境が環境だったせいか、彼女にとってはこう言った女子トークもある種イベントにカウントされているのかもしれない。

 

「(な、なんでそんなにグイグイ来るんですかひかげさん......)」

 

 蛍は口を真一文字に結んで。小さく震える。なぜだろう、背後に悪魔の尻尾のようなものが見える気がする。だが、そんな蛍よりも動揺しているのはヴィーネの方であった。なんせ今の質問に蛍が全く否定していないのである。こうなると逆にヴィーネの方が立場的に辛くなってくる。

 

「ご、ごめんねいきなり色々聞いちゃって!今の話は忘れても大丈夫だから!」

 

 そう言ってヴィーネは行ってしまった。

 

「えっ!? ちょっと待ってください!あの!ひかげさん!?」

 

 蛍が呼び止めようとしたが手遅れだった。

 

 

 

 

 しかし大変なことである。まさか蛍が卓のことが好きだったとは。これまで全くそんな素振りは見せていなかったし、ひょっとすると自分以外にそれを知っている人はいないのではないだろうか......? まるで一人で国家機密を一人で抱え込まされた感覚である。もしかしてまだ蛍が卓と話しているのをほとんど見ていないのは、それを隠すための行動だというのだろうか......

 

 

 

 

 しかし大変なことである。まさか自分が小鞠先輩のことが好きだったことがバレてしまうとは。これまで全くそんな素振りは見せていなかったつもりだし、ひょっとすると皆にもバレているのではないだろうか......? まるで国家機密が漏洩したかのような感覚である。もしかしてさっきひかげから一瞬感じたさっきのようなものは、それを察知した時のものだというのだろうか......

 

 

 

 

 それぞれが辺獄に取り残されたかのようにマイワールドに耽っていると、その一角の世界を打ち破るかのようなタイミングで玄関の戸を叩く音がした。

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