れんげ「ひか姉の様子がおかしいのん....」ガヴリール「『最近の同級生の様子が少しおかしいんだが』ってスレ立てとこ」 作:開屋
ラフィとヴィーネが去っていつもと同じのんきな世界に戻った。これまでの一連の白昼夢のような悪魔のドタバタ劇は天使の登場と退場を以て幕を閉じたのである。
「行っちゃったのん」
口をあんぐり開けてれんげが呟く。
「行っちゃったね。ホントに一瞬で」
夏海も誰もいない玄関を見て真顔で言う。
「とりあえず私も戻ってこれてこれて全部が元通り......ってとこかな」
ひかげは戻って来られたという現実を噛み締めるように、それでもどこか少し寂しそうな顔をしている。
「えっと......とりあえず私は夕飯の準備してくるね」
何とも言えない寂寞感に堪えられなくなったのか一穂がそう言って台所の方へ行った。それを聞いたれんげがあることを思い出す。
「そういや本物のひか姉の料理も食べてみたいのん」
「へ? 私の?」
「うん。ウチってヴィー姉の料理は食べたけど、よくよく考えたら本物のひか姉の料理あんまり食べた覚えがないのん。実際の姉としてどうかと思うのん」
「本物のひか姉って何だよ、どこかに偽物がいるみたいじゃん....別にヴィーネも私の偽物でも何でもないし......しかしまぁそう言われてみればそうかもなぁ」
「へ? ホントに乗り気なの?」
やや気が引けてるのは台所を基本任される一穂の方である。
「まぁ手伝いってくらいなら私にだってできるって。せっかくれんげもこう言ってるんだし、たまには姉貴っぽいことれんげにもしてやらないと」
ひかげはかなりやる気を見せている。
「そっかー、私たちも食べて見たかったなぁ。多分一生に一度だろうし......でも今日帰らなきゃ」
小鞠が笑ってその後残念そうに言う。それを見た一穂が
「そんならもう一日延長していいんじゃないの? 親の方にそう伝えとくよ。もちろん蛍もこのみの方もね」
と、提案する。
「ホントですか!?」
それを聞いたみんなは嬉しそうな顔を浮かべる。
「いいっていいって、それに今回来たのもひかげが帰って来たから来てくれたのに、これで終わりって言うのもなんか味気ないしね」
「やったぁ!たまにはかず姉もいいこと言うじゃん!」
思いもよらぬロスタイムの発生に夏海が笑って一穂の肩を揺らす。
「たまにはは余計かなぁ。まぁいいけどさ」
「にしてもひか姉のって料理どんな感じなんだろうね。正直気になるなぁ、見たことないし。このみちゃんとかはウチより付き合い長いし知ってたりしない?」
「うーん、よく知らないなぁ。にしてもどうだろう? 私はヴィーネちゃんの料理がどんなものか知らないから何とも言えないけど。それより上手だったりするかな?」
「いやぁ、ヴィーネさんの料理を超えるのは難しいと思うよ。蛍もそう思うでしょ?」
「まぁ確かにヴィーネさんとても料理上手でしたし......」
「そうだったの?それなら是非とも私も一度食べて見たかったなぁ」
「大丈夫なのん、きっとひか姉ならやれるのん」
「(後ろから妙な期待と言うか色々入り交ざった視線が伝わってくるんだけど......)」
色々噂されるひかげの心中はあまり穏やかではない。
「......ひかげ、そろそろ火止めないと煮こぼれするよ。」
「へっ!? うわホントだあっちぃ!」
「やっぱりダメかもしれないん」
「切り替え早いなれんちょん......」
まぁそんなこんなはあったが恙無く(?)夕食の時間を迎えた。今夜こそ宮内家の三姉妹が揃った夕食である。『いただきます』を合図に全員がおかずに手を付ける。
「なんか、いつもと同じなのん」
一口食べたれんげが言う。それを見て一穂は笑う。
「そりゃほとんど私が作ったからねぇ」
「そうなのん?」
れんげがひかげの方を見る。
「まぁ......ヴィーネがどうかは知らないけど私には料理の才能がそんなになかったってワケで」
ひかげがだらしなく笑って言った。
「なんだー、それじゃねーちゃんと同じだな」
「なっ、あんただって料理別に上手じゃないでしょ!」
「ほらほら、ケンカしないの」
夏海と小鞠の言い争いをこのみが諫める。いつもの、日常だ。
夕食を終えた後は当然ひかげの話になった。
「向こうでの生活ってどんな感じだったんですか?」
最初に蛍がひかげに尋ねる。ひかげはこことは大違いの騒がしい日常を思い出したのか気の抜けた笑い声を枕詞にして話し始める。
「正直かなりめちゃくちゃだったよ......だっていきなり悪魔とか天使がいる学校で悪魔として生きていかなきゃならんのだから......まぁ正体隠してた意味は無かったんだけどね」
「意味が無かったってどういうことなのん?」
「それがさぁ、のっけからバレバレだったんだよね。今日来たあのラフィとかいう天使に。初めて教室で会った時から既にほとんど見破られててさ。それを分かった上で私が慌ててるの見て楽しんでたんだってさ。ありゃ天使じゃねーよ。悪魔よかよっぽど悪魔だ」
「それは確かにすごい話だねー......」
このみがそう言うと今度は夏海が話し始める。
「でもこっちはそう言うこのみちゃんが正体を見破ったんだよね。確かに私たちも色々怪しいとは思ったんだけど、さすがに別人になってるなんて思いもしなかったもん」
「まぁあの時カマかけたのは冗談半分だったんだけどね。ヴィーネちゃんにはちょっと悪いことしちゃったかなぁ......」
「あの時はヴィーネさんも含めてみんなこのみちゃんにビビってたもんね......」
当時のことを思い出して小鞠が小さく笑った。他の皆もその様子を思い出したのか、一部このみに畏怖を抱いて様子で笑った。
「ラフィ姉以外にも天使とかいたのん?」
今度はれんげが質問する。
「うん、何人かいた。基本変な連中ばっかだったけどな。多分あそこではヴィーネが一番マトモな奴だ。めちゃくちゃ堕落してる天使に、小学生レベルの悪魔。それで極め付けはあのラフィだ。まぁ普通に天使っぽかったり悪魔っぽいやつもいたっちゃいたが正直ラフィが一番ヤバい」
「そうなんですか?まぁいきなりこっちに来たりやることはスゴいとは思いましたが基本礼儀正しい人って感じでしたが......」
蛍がそう言うとひかげは手を横に振って答える。
「まさか!他人が慌ててるの見て楽しんでるし、こっちの行動とかほとんど把握してて先回りしてきたり、やってることほとんどストーカーだったよ。まださっき言った小学生レベルの悪魔が天使に見えるレベルだし」
「へ、へぇ~......」
あんまりイメージのつかない天使と悪魔の像に蛍はちょっとだけ混乱する。蛍自身も好きな人の話を悪魔にして、あのピュアな反応が返ってきてるわけだし、尚更天使と悪魔のそれぞれのイメージから乖離していく。
「でも話聞く限りホントに大変だったんだね」
小鞠が同情の視線をひかげに向ける。
「まぁね、まぁ全部が嫌って訳でもなかったし今となっては笑い話だけどね。こんな経験は二度とごめんだけど」
遠くの方を見てひかげが答える。ロクでもない日々の中でも間々にはそれなりに面白いこともあったと思うし、こんな経験をしてる人はそうそういないだろう。ガヴリールたちのような妙な連中と付き合うのも100%悪いものかと言われればそういう訳でもない。また会える機会があったら会ってやってもいいと思う。今は無理でも携帯を開けば真っ先にヴィーネには会える。もう一度待ち受けにした写真を見てみるとしよう。
ん......?
「あれ?急に顔色悪くしてどうしたの?」
このみがひかげに尋ねる。
「えっと,.....携帯......向こうの世界に忘れて来た......」
結局のところ、ひかげの携帯はヴィーネが気付くまでヴィーネの家で過充電を続けていたのであった。
以上をもちまして『れんげ「ひか(以下長いので略)』はお終いです。個人的に前書いてたものより楽しんで書くことが出来たので、悪いものではなかったような気がします。というよりも元来単発1話で終わる予定だったので、まぁここまで続けるとは自分でも思いませんでした......
結構この作品は自分の好きなキャラ同紙にスポットを当てた自己満小説だったのでまさかここまで多くの方々が読んでくださるとは思ってもいませんでした。評価バーに色がつくのはまだ都市伝説か何かだと......
とまぁ、締まらない挨拶でしたがここまで読んでいただきありがとうございました!また別の作品を書かせて頂くかもしれないのでその時はよろしくお願い致します!
それでは、来るべきのんのんびより3期に愛を込めて。