れんげ「ひか姉の様子がおかしいのん....」ガヴリール「『最近の同級生の様子が少しおかしいんだが』ってスレ立てとこ」   作:開屋

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色々とこんがらがった

「何というか......えっと、ひかげさん向こうで何かいいことあったんですか?」

 

 少し間を置いて蛍が不思議そうに尋ねる。というよりもなぜ年上であろうこの人だけが私に敬語を使ってくるのかが疑問である。

 

「い、いいこと?えっと、何かあったかなぁ......」

 

 帰郷の前、つまり現代での生活を思い返してみる。そりゃあ学生生活を満喫しているわけだし、その辺りは良かったのかもしれないが、今のこの状況ではいかなる発言も地雷を踏み抜くような選択肢になっているとしか思えない。

 

「とりあえず向こうで色々あったのかな?今日はまぁゆっくりしときな」

 

 一穂が少し引きつった笑顔でヴィーネに気を遣う。この優しさが絶妙に辛い。

 

「い、いやいや私は大丈夫。全然気にしなくて大丈夫だから」

 

「こんなに引っ込んでるひかげってなんか不思議。ホントに何かあったんじゃないかって思っちゃう」

 

 ホントに何かあったんです......絶対に説明しちゃいけないし説明も出来ないような状況ではあるけど。この時間をどうやって過ごせばいいのだろうか。

 

「ご、ごめん!ちょっと外に出て来るね」

 

 戦略的撤退という名の無駄な時間である。とりあえず何かを考える時間が欲しい。辺りをずっと行けばもしかしたら手掛かりが見つかるかもしれないから。

 

 

 

「そうは言って外に出たはいいものの......」

 

 一通り回ってみたところ、結局全く来たことのない場所だという事しか分からなかった。というかメチャクチャのどかなんですけど。絵に描いたようなまさしく田舎って感じ。正直この雰囲気は嫌いではないけど......

 

「結局ここはどこなんだろう......こんなゆったりとした、ある種天国みたいな......天国?」

 

 そこまで考えてヴィーネはハッとなった。

 

「......もしかしてここって天界なんじゃ!?」

 

 何となく心当たりがある。魔界からの仕送りがどんどん減っていく今、もしかすると仕送りとしての支払いが見送られるレベルになって来たのかもしれない。それでよりによって転移した先がここ天界になった....少し無理はあるかもしれないけど考えられないと言い切れない。戻るとするならどうすればいいのだろうか。魔界からの仕送りを取り戻すため......

 

「悪魔っぽい事をしろ、って事?」

 

 思い当たる選択肢はこれだが、問題がある。というのも今は何故か『ひかげ』という方として生きている以上、元に戻った時その人の名誉を大きく傷つけてしまうかもしれないという事だ。他人を慮るこの考えがもうすでに悪魔らしくないのだが、ヴィーネはそんなことを意に介さない。でもそうしないと戻ることができない訳だし......

 

「ああもう、どうすればいいの!?そりゃ戻りたいと言えば戻りたいけど......」

 

 半パニックに陥りながらそんなことを考え歩き回っていると、いつの間にか家の前まで来ていた。歩いた結果としてここは、大まかな印象から細部の細部に至るまでの徹頭徹尾が田舎であった。そんな中でヴィーネの導き出した答えは......

 

「(元に戻るためなら止むを得ないわね......仕方ない。ごめんなさい!『ひかげ』さん!)」

 

 今だけは心を悪魔にして、戸を思いっきり開く。

 

「あっ、ひかげさん帰ってきましたよ!」

 

「ひか姉おかえり!今せんべいあるけど食べる?」

 

 蛍と夏海が真っ先に出迎えて来る。

 

「た、ただいま」

 

 反射的に挨拶をしてしまう。

 

「(無理だ、こんないい人たちがいる中で悪いことなんてできないって......)」

 

 ヴィーネの心の中に巣食う悪魔は十秒も経たずして浄化されたのであった。肩を落として居間の方に行くと、小鞠とれんげが勉強をしている。

 

「早くひか姉と一緒に遊びたいのん......」

 

「まぁまぁ、れんげはもうちょっとで宿題も終わりそうだしいいじゃん。こっちはもうしばらくかかりそうだからさ。そっちはあと少しの辛抱だよ。」

 

 そういやランドセル二つあったし、この二人が持ち主かな。残りの二人はもう少し大きかったし、雰囲気から察するにあの二人は中学生と高校生辺りだろうか。少しだけ宿題をしている二人の様子を見てみる。

 

「(やっぱりかわいいなぁ......)」

 

 今度は声に出さないよう心の中だけにとどめておく。それでもあんまりじっと見てたら怪しまれそうだし、もうそろそろ退散を......と思っていたがヴィーネはあることに気づいた。気づいてしまった。

 

 

 

「ここ、計算間違ってるわよ」

 

 ヴィーネ特有のお節介である。あまりアクションは起こさないつもりではあったが、気になってしまった以上教えてあげない訳にも行かなかった。

 

「えっ......あっ、ほんとだ。間違ってたのん」

 

「ゆっくりやったら大丈夫よ。他はちゃんとできてるみたいだし」

 

 そう言ってヴィーネは二人の近くに座りこむ。

 

「(私はれんげちゃんの姉だろうし、このくらいなら大丈夫、よね?)」

 

 つい行動に移してしまったヴィーネは自問自答する。

 

「(やっぱり今日のひか姉違うのん。なんか、どう言えばいいか分からないけどもう色々おかしいのん......)」

 

「(ひかげさんってこんなマメというか『お姉ちゃん』な感じの人だったっけ......?)」

 

 案の定怪しまれていた。お互いが自分の気持ちを悟られないよう平静は装っているが、果たしてお互いの考えていることが何かの拍子にバレでもしたらどうなることやら。

 

「おわったのん!一緒に遊ぶのん!」

 

 高々と終わらせた宿題を上げ、れんげが宣言する。

 

「お疲れさま、とは言いたいところだけど......」

 

 横で何かを一生懸命考えている小鞠をヴィーネはどうにも見過ごせなかった。

 

「大丈夫?」

 

「へっ?」

 

 いきなり話しかけられた小鞠は慌ててヴィーネの方を向く。

 

「かなり悩んでるみたいだけど......」

 

「だ、大丈夫だって!私一人で解けるってば。......多分」

 

 困りの強がりを見たヴィーネは少しため息を吐いて

 

「ちょっと見せて、私が教えてあげるから」

 

 そう言って小鞠の隣に行く。

 

「えっ、大丈夫だって、れ、れんげもひかげと一緒に遊ぶんでしょ?」

 

「こまちゃんのが終わってからでいいのん」

 

「そ、そう......?」

 

 明らかに年下に気を遣われて落ち込んでいる。

 

「ま、まぁそう言ってるんだし。ちょっと見せて」

 

 そう言ってヴィーネは小鞠の解いているプリントを見る。

 

「(あれ?この辺の内容って中学校くらいで習った気がするけど......記憶違いかな。まぁ教える分には大丈夫だけど)」

 

 そう思っていると

 

「えっ!? ひか姉がねーちゃんに勉強教えてる!?」

 

 夏海の声が後ろから聞こえた。

 

「げっ!夏海!?」

 

 小鞠が慌てて振り向く。......ねーちゃん?

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