れんげ「ひか姉の様子がおかしいのん....」ガヴリール「『最近の同級生の様子が少しおかしいんだが』ってスレ立てとこ」   作:開屋

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サプライズがあった

 聞き間違いで無ければ、さっき夏海は『ねーちゃん』と呼んでいた。目の前の小鞠を。いや、もしかすると実は私は夏海の妹なのかもしれない。アングル次第では私が勉強を教わっている立場に見えて......いや、さっき小鞠本人が『げっ』と言っていた。ってことは......

 

 

 

「えぇ!?そっちが姉だったの!?」

 

 

 

「ちょっとそれどういうこと!?」

 

「ちょっといきなり何言ってんのひか姉!?」

 

「とうとうひか姉が壊れたのん!?」

 

 一斉にツッコミを喰らってしまった。それを聞きつけたのか

 

「どうしたどうした?一体何の騒ぎだ?」

 

「皆さんどうしたんですか!?」

 

 一穂と蛍も来てしまった。この状況をどう鎮められようか、いや普通じゃ鎮められない。甘美な言葉をかけるために策略を張り巡らせるメフィストフェレスの如く頭を回転させる。

 

「えっと、実は......」

 

 前々から万一マズい場面に陥った場合の逃げ道は用意してあった。『全てを何でもアリにする』魔法の言葉である。正直奥の手だし副次的なことを考えると使いたくはなかったのだが、この騒ぎになってしまった以上ここで使わなければ、ラストエリクサーになるのは目に見えている。もう使おう。

 

「え、えっと!これ実は全部ドッキリです!」

 

 思いっきり叫んだ。当然の如く周りは水を打ったように静まり返る。

 

「ドッキリ、ですか?」

 

 静寂を穿ったのは蛍だ。恐らくこの人が一番物分かりが良いだろう。私と同い年かそれ以上だろうし。とはいえこのカオスを沈静化させるのに良い言い回しが浮かばない。

 

「えっと、ドッキリっていうのは......その——」

 

 

 

 

 

「つまりは久しぶりに帰ったという事で記憶を失ったといったような一芝居を打った......ってことかな?」

 

 しどろもどろなヴィーネの説明を聞いた一穂がこれ以上無いほどに簡潔に纏める。

 

「そう!そういうこと!」

 

 思いっきり一穂に乗っかった。このまま勢いに任せてここは押し切るしかない。

 

「じゃあ最初に会った時に何となく雰囲気が違ったのもそのせいだったのん?」

 

 それは知らない。心がけようも減ったくれもない。つくづく考え直してみればこれまでの言動がドッキリだったというのはかなり無理のある設定である。

 

「なぁんだ、そんなことだったのか。ビックリしたなぁもう」

 

「びっくりさせないでよね、もう」

 

「じゃあこれはひかげさんなりのサプライズだったってことなんですね、騒ぎにしてしまってごめんなさい......」

 

 謝らないでください蛍さん....悪いのは私なんです。....元はと言えばこの頓珍漢な状況に私とひかげさんとやらを巻き込んだ姿も何も分からない第三者があらゆる元凶なんだけど。というかよく見たらもう一人なんか男の人いるし。今の今まで全然気づかなかった......一言でも喋ってたっけ?あの三人と一緒に来ていたのか?

 

「......」

 

「どうしたの?にーちゃん」

 

 夏海が尋ねる。なるほど、この人は夏海さんのお兄さんなのか。それにしてもどうして今まで気づかなかったんだろうか....お兄さんは結局何もなかったと言わんばかりに首を横に振っただけだった。そういえばどこかで『卓』と名前が書かれていたノートが出ていたが、この人の物か。

 

「それで、小鞠先輩とれんちゃんは宿題ですか?」

 

「ああ、そうだった。ひかげに教えてもらってたんだよ。色々わちゃわちゃしちゃったけど....」

 

 そうだった。今は小鞠ちゃんに教えてたんだ......って小鞠先輩?

 

「私も先に宿題済ませておかないと。えっと確か......」

 

 そう言った蛍はあろうことかランドセルの中から問題集を出した。

 

「えぇぇぇぇ!? もう一人ってそっち!?」

 

 またまた思わず叫んでしまった。でもこんなの見せられたらそりゃビックリするに決まってるし....

 

「もうそのドッキリはネタバラシしたじゃんひか姉!?」

 

 いや、これが率直な感想なんです。別にドッキリのリアクションじゃないんです...むしろこちら側が盛大な逆ドッキリに掛けられた気分なんです......というかこれって逆に私の方にドッキリ仕掛けられてるんじゃないの?

 

 色々と納得が行かず悶々としていたがとりあえず今はこの状況に順応するしかないと改めてヴィーネは思い知った。

 

 

 

 

 

 一方まさか自分がドッキリの仕掛け人になっているとはつゆ知らず、ひかげは何事もなく(!?)その日の学校を終え、家路に就いていた。色々はあったがとりあえず今分かったことをざっと整理しておこう。

 

 元のヴィーネとやらは普段の生活とかの態度はかなり真面目な部類である、その癖してイタズラっぽい一面もある。それが恐らく彼女なりのガス抜きの手段なのだろうか。

 

 あと、ガヴリールとかいう名前の人と親しい仲にあるという事だ。私はまだ顔も見たことが無い訳だが。そう言えばあの時着信来てたけどそれもガヴリールからだったのだろうか。あの時はラフィが怖すぎて電話どころじゃなかったし確認はできなかったが。

 

 そして一番特筆すべきは妙に『悪魔』というワードが多発していることだ。考え得る限りは『自分が本当に悪魔である』ということか、もしくは『自分を含めたあの三人組で悪魔とかいったような痛いキャラ付けをしている』、あるいは可能性は薄いが『元のヴィーネが大変悪魔らしい性格をしている』とかその辺りだ。

 

 普通のなら真っ先に最初の考えが消えるのだろうが、残念ながら悪魔がこの世界にいるというには他の誰でもない自分が何よりも理解している。確信が持てない今はとりあえずどの立ち位置でも矛盾の生じない立ち居振る舞いをせねば......

 

 色々考えながら歩いていると、ようやくアパートの前まで来た。一人暮らしみたいだし一度じっくりと考えることにしよう......?ん? 誰か部屋の前にいる?

 

 自分の部屋の階まで行くと、本当に誰かが自分の部屋の前に立っているのが見えた。......見ない顔だ。

 

 

 

「おいヴィーネ......お前自分のやったことの罪深さが分かるというのか......?」

 

 すぐそこにいる顔も知らない誰かは、何故かこちらに向けて可視化できる程の負のオーラを向けてきている。え....?何なのコイツ......それでどうして睨まれてるんだ私は......?

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