れんげ「ひか姉の様子がおかしいのん....」ガヴリール「『最近の同級生の様子が少しおかしいんだが』ってスレ立てとこ」 作:開屋
視点を天界の様にゆったりとした地に降り立った悪魔に戻す。
「(これで大体のここの家族構成は掴めたわね......)」
ヴィーネはとりあえず今集まっている面子を整理する。夏海と小鞠の姉妹関係といい、蛍の学年といいあまりにもここの家庭の背景は初見殺しが多すぎる。そして案の定それらの全てに引っかかってしまったが....
「おっす、もうひかげは帰って来たかな?」
また誰か来た!?これ以上面倒なことになったらもう取り繕える自信が無い。『言うほど取り繕えているか?』と踏み込まれたら言い返せる自信は無いが、これ以上となればもうラグナロク不可避である。
「おお、楓も来たんだね。今日は色々あったけど、人も集まってるしまぁ賑やかになりそうで良かった」
「色々あった?また夏海辺りが何かやらかしたんですか?」
「いや、まぁあんま気にせんでいいさ。とりあえず上がって上がって」
来客は楓というらしい。ここから声を聴く限りでは夏海にタイプが一番近いだろうか。
「駄菓子屋も来たのん!」
駄菓子屋って......まぁ駄菓子屋をやってるからそう呼ばれてるんだろうけど、その理論なら私は『悪魔』とでも呼ばれることになるのだが。
「おぉっ、駄菓子屋も来たの?何か持ってきてくれた?」
「ホント? わざわざこっちまでくるなんて駄菓子屋もひかげに会いたかったのかな」
駄菓子屋の呼び方共通認識なの!? まぁそのくらいにお互い気が置けない関係であるってのはいいことなのかもしれないけど......
「まぁテキトーにあるもん持ってきたからそんなにがっつくな。お泊まり会するって話を聞いたから差し入れだ差し入れ」
「駄菓子屋も今日泊まるのん?」
「いや、さすがに今日は帰るよ。やらなきゃいけないこともあるし」
どうやら駄菓子屋......じゃなくて楓さんは泊まる訳では無いらしい。少し安心した。
「よぉ、ひかげ」
楓さんは部屋に入ってくる。
「うん、ひ、久しぶり」
帰省だし久しぶり、だよね?自分の一言一言に疑問を持たなければならないある種のディストピアは、のどかなここの景観とは対称的に地雷探査でもさせられている気分だ。
「先輩から聞いたけど何かあったのか?」
「えっ?」
そりゃもう、列挙しきれない程にありましたとも。一つ一つ掻い摘んで説明するのを求められるんならしたいですとも。出来ないけど。
「えっと、まぁ少しその、ドッキリのようなものを......」
とりあえずここは表面的な事実を述べるのが吉だろう。嘘の中に事実を織り交ぜるのが嘘を吐くときの基本だと魔界の学校では習った。まさかそれをこんな場面で使うなんて夢にも思わなかったが。
「ドッキリぃ?」
楓は少し馬鹿にしたような風に笑う。
「そ、そんな大したことはしてないって。もうドッキリだってみんなには言ってるし」
「へぇ、でもその様子だとあんま上手く行かなかったって感じだな。どんなの仕掛けたんだ?」
「いやホントにわざわざ教えるような事じゃないって」
「そうか?じゃあ他のヤツに聞きに行くか」
そう言って楓が立ち上がる。
「ちょ、ちょっと待った!」
付け焼刃のドッキリについて聞かれてその上感想まで求められそうになる状況とか、魔界とか生温いもんじゃなくてもはや八寒地獄レベルである。
「なんだよ、教えてくれないから他のヤツに聞こうとしただけじゃん」
「いやまぁそうなのかもしれないけどさ、ホントに大したことじゃないから別に気にするほどでもないってば」
「今の私が気になるから気にするほどのことだ。おーい、夏海ー!」
「ちょっと―」
「んー?どうした駄菓子屋?」
来るのが早い!止める猶予もなく来たよこの子......
「ひかげが何かドッキリ仕掛けたって聞いたんだけどさ、どんなのだったの?」
うわこの人めちゃくちゃストレートに聞いてきた。で、でも夏海も仕掛けた本人が目の前にいる状況では流石に説明はしないよね....?
「あー、何か記憶失ってたフリしてたよ」
この人悪魔か!?
「ほぅ、それでどんなことしてた?」
もうここで打ち止めでいいじゃん。それ以上聞いても誰も幸せにならないってば。
「んとねー、ウチと姉ちゃんでウチのが姉ちゃんだと思ったとか言ってたり、ほたるんが小学生だったことにネタバラシした後もビビってたり、あ!あと姉ちゃんに勉強教えてた!」
「別に最後のは構わんだろ」
楓が苦笑いを浮かべる。そしてその顔のままこちらの方を向いて
「ってか今の時代にそのドッキリは流石に無いだろ......」
トドメを刺された。事実っちゃ事実かも知れないけどこれドッキリじゃないんですって。素のリアクションなんですよ......ヴィーネは胆を嘗めるかのような渋い顔になる。それを見かねたのか夏海が反論する。
「で、でもその時のひか姉の演技はなかなか上手かったよ!なんかこう、ホントに驚いてるみたいな感じで!ドッキリって言われるまで演技って分からなかったもん!それに......」
「やめてやれ夏海、もう......十分伝わったから」
反論というか追い打ちである。まさか心臓を撃ち抜かれた後に跳弾の流れ弾を受けるとは思わなかった。説明求められてスベるとか若手芸人の一発ギャグか何かか?
「もう......ちょっと一人にしてください......」
隣の部屋の戸を締め切って天岩戸の如く、ヴィーネは誰かさんのように部屋に引き篭もった。