「敬礼!!点呼!始め!!」
依姫の声が辺りに響き渡る。それと同時に玉兎達の点呼が始まった。
ここは月の裏側…そしてそこには月の住人達がいた。
「これより訓練を開始する!!」
その声と同時に、今日の訓練が開始した。
最近は地上から人間が月面へと向かって来るなど、月の平和が脅かされている為、訓練にもキツさが掛かる。
当然、ついていけない玉兎も出てくるが………
「よっちゃん…そんなにやったら可哀想よ。もう少し優しくしても…」
そこに依姫の姉…豊姫が声をかけた。どうやら様子を見に来たらしい。
「それではいざと言う時に戦えませんから。」
依姫はそれを拒否する。この二人の意見が一致することは滅多にないのだ。
「私たちでなんとかなるじゃない…」
「姉さん……それではいけないのです。」
「でも…………」
なんて会話をする最中、そこに一人の玉兎がやってくる。
「失礼します、綿月姉妹。」
「どうかしたかしら?」
豊姫が玉兎の話を聞く。その知らせがどんな内容だったのか、それは
依姫が豊姫の顔を見た途端に察してしまった。
「姉さん。」
「えぇ、どうやら純子達がこっちに攻めてきているみたい。」
「では直ぐに迎撃に。」
そうして依姫は自身の部隊に迎撃指示を出し、戦場へと向かった。
ーーーー
ーーー
ーー
「応援部隊はまだか?!」
その玉兎は焦りのこもった声でそう叫んだ。
彼は〇〇。月の玉兎であり、前線で戦う兵士である。
年はかなり取っていて、かつて依姫を模擬戦にて打ち負かした経歴を持っている。
「隊長!!これ以上は!」
「くそ…!!何としてもここを食い止めないと……!!妖精達は何としてもここで食い止めろ!!」
そんな指示を飛ばしながら、〇〇は戦場を疾走した。
目の前に現れる妖精を銃剣で切り裂き、遠くに居る妖精にはその引き金を引いた。
そうして何匹も何匹も討ち取っていくが…それでも、妖精の数は減らない。
せいぜい動きが止まる程度だった。
「くそ…!キリがない!!」
そうして銃を構えて敵の体を撃ち抜く。
縦横無尽に飛び回る妖精達と、それを撃ち落とす玉兎達。
その様子はさながら地獄絵図と言えるものだった。
「へぇ〜!!私を落とすなんて…あんた、面白い!」
撃ち落とした妖精の1匹がそういった。
知性のある妖精、それが一体なんなのかは把握していた。
それは地獄の妖精の中でもトップクラスの実力を誇る化け物……クラウンピース。
まさか、こんな所にいるとは……!
〇〇は心の中でそう思った。そして体は知らず知らずのうちに引き金に手をかけて……妖精の頭に照準を定めていた。
「とまれ。」
「はぁ?」
「……動くな、撃つ。」
「撃っても無駄って分かってるでしょ?なのに脅しのつもりなの?」
耳を傾けるな…。こいつらとの会話は不要だ。
俺は鉛玉を妖精に撃ち込んだ。
銃弾は妖精の頭に着弾、そして妖精はそのまま力なく倒れる。
「それで終わり?」
「……なっ?!再生のスピードが早いのか!?」
「ほらほら!!もっと楽しませてよ!!」
妖精からの攻撃が開始される。
こちら側は相手の攻撃を受けるわけにはならない。なぜなら彼女らの攻撃は食らうだけでも穢れをもたらす。
月の住人にとって穢れはあってらならない代物だ。
「避けるのが上手いねぇ!!これならどう?!」
弾幕の量が一気に増幅する。
その攻撃を躱すのは至難の技だろう…
四方八方から飛び交ってくる弾幕を被弾覚悟で躱し続ける。
「ぐっ……!くそ…!!!」
「まだまだぁ!!」
躱せ……躱せ……!!この銃の一撃を奴の頭に…!
地面を飛び、襲いかかる弾幕を躱していく。
「なっーーーー…」
そうして生まれた隙に俺はクラウンピースの頭を撃ち抜いた
ーーー
ーー
ー
「………。……。」
戦場跡は汚染され尽くされていた。
結果として俺の部隊の半数は穢れを被り戦場離脱。
俺自身も月の医療機関への診断を強制された。
「失礼します。」
病室にて横になっていると、ある人物が俺の元を訪れた。
その人物は綿月依姫本人だった。
「あまり近づかない方がいい。あんたが穢れるのはよくない。」
「……そうさせてもらいます。それと…今回の件はありがとうございました。あなたの成果あってあそこまでの被害で抑えることができました。」
そこにはクラウンピースがいた状況というのが含まれているのだろう。
俺自身クラウンピースがいたあの場所であれだけの被害で抑えられるとは思っていなかった。
「気にしないでくれ、それが俺たち前線組の仕事だ。」
「そう言ってくれると助かります。……それと今回はどれ程やられたのですか」
「動けるようになるのに1ヶ月。穢れが抜けきるまでに3ヶ月って診断されたよ。まぁ長い休暇と思って休むことにするがね。」
「そうしてください…。それと、ここを退院したら私の部隊に来ませんか?そうすればこんな思いをすることも無くなる。」
「心配してくれるのはありがたいが…俺はあそこから部隊を変る考えはない」
「何故ですか?」
「何人にも聞かれたが……俺は最期まで前線で戦いたいんだ。それでここを守りたい。穢れで完全に壊れるその時まで。」
何人にも聞かれた質問だった。
俺が戦いで穢れを受けた際に、部下やかつての上司等によく聞かれ、そしてその提案をされていた。
だが、俺の答えは一貫した物を貫いていた。
「…分かりました。でも、考えが変わったらいつでも伝えてください。」
「そうさせて貰うよ。」
「それじゃあ、またどこかで会いましょう。」
そうして依姫は部屋を後にして行った。
俺はその後の数ヶ月間、見舞いにやってきてくれる知り合い達とふれあいながら、前線復帰への準備を始めるのだった。
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ーーー
ーー
「復帰おめでとうございます!隊長!!」
「あぁ…、それにしても…随分と顔ぶれが変わったな…」
「はい……他の者はみんなあの戦いで……それに穢れを受けたせいで
復帰は難しいそうです。」
「仕方ない。なら、ここにいるものに初めに言っておく!!俺たちの居るこの場所は地獄だと思え!そして俺たちの墓場であると!!
ここを破られてしまえば月の都は直ぐに終わってしまう!……だからそこ我々はここを退いてはならない!何としても…ここで奴らを食い止めてみせるのだ!……例え死んでしまうとしても!!」
その言葉に嘘はない。
俺の体にあるのは穢れによる傷の数々。
彼らの顔には不安の顔が浮かんでいる様だった。
「だが、安心してくれ。戦闘は訓練通りにこなせば問題はない。
軽度の穢れなら月から追放されることもないからな。…………それでは訓練を開始する。」
そうやって俺たちは準備をする。必ずやってくる彼女らを確実に追い払う為に。
そして、月の平和を守るために。
続くよ