「体調は大丈夫?」
豊姫がそう尋ねてきた。
俺はそれに
「あぁ、それよりも早く前線に戻りたい。」
あれからまた数年が経過し、俺の体にある穢れは一定値を下回ることに成功した。
これにより、俺は遂に前線への復帰が許されたのだ。
「その事なんだけど…もう少しこっちにいない?その方がみんなも……」
「ダメだ。俺の代わりに向こうに行ってるあいつが死んでは俺の責任になってしまう。俺の穴は俺で埋めることしかできない。」
「……分かったわ、明日にはすぐに出発できるように手配しておく。」
「すまないな。それじゃあ失礼するよ」
本当に申し訳ない。俺の事を大切に思ってくれているその気持ちを踏みにじってしまって。
できることなら君たちの傍で若者を育てて上げたいとおもうが、それ以上に俺はあそこで……戦場で彼ら若者を導きたいんだ。
あの場所に送り届けてしまったら……きっと彼らは死んでしまうだろうから。
武器屋にて、俺は新しい武器を探した。
気になるものが幾つか見つかったので、それを手に取って店主の所へと向かう。
「これを頼む。」
「はい……これは…これほどの値段になります。」
「はい。」
「毎度。」
そして物資の調達を終えた頃にある人物と鉢合わせた。
「……サグメ様。奇遇ですね」
「少し…話がしたい」
「は……?分かりました。」
「そこの店で話そう」
そうして近くの店へ入り注文をすませて、彼女が話を切り出した。
《まずは退院おめでとう。》
「ありがとうございます」
《そして前線復帰も。》
「えぇ。今後も精進していくつもりです。」
《その事なんだが……考え直さないか?》
「?何故です」
《君の存在がどれだけ月の民に影響しているかは知っているだろう。
だからこそ前線で死んでしまうことはそれだけで彼らにとっては最悪の事になる。》
「あなたもですか?それに関しては以前にもお伝えしましたが…」
そこまで言って彼女の顔を見ると、サグメ様は悲しげな表情でこちらを見つめていた。
《最悪の場合は能力を使う。》
「何を言っているんです……?」
《いや…君の意志をねじ曲げるためにはこの力は必要だったのかもしれない。》
「〇〇。君は前線に…………ー」
そこまで言った彼女の喉元に俺は手を当て込む。
「それ以上口にするなら…ここであなたの声帯を潰します。」
そうするしか、この人の能力は止められないから。
例え反逆の罪に囚われても、俺はこの人の行動を止めなければならない。
《……冗談だ。》
「なら良かった。穏便に解決できて」
《だが、一つだけ伝えなければならないことがある》
「何をですか?」
《次に帰ってくる時には、もうここから出られないと思って欲しい。》
「それはーー…」
「君の身体が限界を迎えて……………ということだ。」
「そうですか」
《軽いんだな》
「何回も聞きましたからね。そういう脅しには慣れてるんですよ」
《それは心強いな》
「えぇ。それじゃあここで俺は失礼します。またどこかで」
そうして会話を切り上げて帰宅する。
明日にはあそこへと戻ることができると思うと、心が踊った。
最後の…兵としての任務だ。
張り切って取り掛かろう
そうして、翌日。俺はかつての隊へと戻るのだった。
ゆったりつづく