今回は少しグロい表現が含まれているので御容赦ください
「全員配置に着きました!」
無線ごしに部下からの報告を受ける。俺もちょうど持ち場に到着した。
無線機を取り出して声を出す。
「よし、みんな準備はいいな。できる限りの策は打った…あとはここを守りきるだけだ!互いに健闘を祈る!!」
そうして無線を終える。上を見上げれば、そこには大量の黒い軍団が見えてきていた…
その数はこれまでの比ではなく、恐らく2倍…もしくは3倍程の数だろうか。
「いよいよ来たか…」
俺のやることは敵大将を見つけてできる限りのダメージを与えて月人にバトンを渡すことだ。
肩にかけた銃を持ち直し、銃弾のリロードを済ませる。
もうほんの一瞬も気を抜くことはできない。そうして身を潜めて…潜め……敵の半数程が地雷原に入ったのを確認し、俺は無線機で合図を送った。
「やれ!今だ!!」
その声と同時に空が爆発した。そして地面から銃弾の嵐が空に目掛けて打ち上げられた。
部下たちと妖精たちが交戦していく。
俺は混戦する戦況の中で大将を探す。何万も居る妖精たちの中で最も妖力を持っている存在……そしてそれを確認する。あれは間違いない…
クラウンピース…。それとそれよりも強大な存在が2つ…!!
「見えた…!」
銃の引き金を引いてクラウンピースに威嚇射撃を行う。向こうとこちらとではかなりの距離があるので、間違っても向こうがこちらに気づくことはないだろう。
だが、クラウンピースとは別の2人が同時にこちらを見たのを確認した。
「なっーー…」
不味い……死の感覚を感じ取る…会ったこともないはずなのにソレを見た瞬間に本能が逃げろとサインを出した。
すぐさま煙玉を取り出して地面に叩きつける。辺りに煙が散布されていく。俺は続けて2個、3個と煙が玉を投げつけて退路を確保する。
「1度体制を整える……!」
「どこへ行くの?」
「誰だお前は!?」
戦場では聞こえないはずの声、俺の部下の声ではない。それ以外の声、
その声の主は先程までスコープ越しに捉えていたはずの敵だった。
「ごきげんよう。あなたと会うのは始めてかしら。私は純子って言うのよ」
「そうか。会えて光栄とも思わないからその場で死んでくれ。」
ナイフに持ち替えて純子に向かう。
その様子を見てか、純子はクスりと笑ってみせた。
「何がおかしい」
「いや、そんなもので私と立ち会うのがおかしくて」
「何を……」
「だってそんなものはこうすれば……」
純子はそう言って片手をこちらに向けた。その後、直ぐに俺のナイフが消し去っていった。
…………なんなんだこの力…腰が抜けそうになる。今までの妖精とはもやは比べ物にならない力の差だ。だからといって俺はここで何も出来ずに殺される訳には…
「考え事をしてる場合?」
次はあなたの番よ?と言わんばかりに手を向けてくる。敵の能力の発動条件すら分からないこちらからすればそれだけで汗が止まらない。
せめて……せめて一撃を…!!
腰にかけたハンドガンで早撃ちを……!!そうして俺が右手でハンドガンを取り出そうとした時だった。
俺の右腕が消し飛んだ。
「はっーー…ガッ!?」
突然の激痛に顔を歪める。純子の攻撃なのか…?!
「もー何遊んでるのさ?友人様〜」
「あら〜ピースちゃん。別にちょっと挨拶していただけよ?」
「まっ、良いんだけどさ!私が遊ぶんだから壊さないでよね〜!」
なんて楽しげな様子で2人は会話を始めていた。どうやら俺の腕をぶっ飛ばしたのは純子ではなく、クラウンピースの方だったらしい。それよりも気になったことは
「な…んの話だ…」
考えをまとめようと思考するが、それを切断された腕から流れ続ける血のせいでまとまらないどころか意識が朦朧として来た。
だが、なんとかこの2人を抑え込むもしくは相打ちにできないかを考える…
「あんたはこれから私たちの玩具にするのよ!原型が無くなっても生かし続けてあげるから!!」
笑いながらクラウンピースはそう言った。その笑顔はどこか狂っているような笑い方のように聞こえた。
「勝手な……ことを…い……言うなァ!!!」
左手に手榴弾を持ち、クラウンピースに向かって突進する。
そして栓を外して力一杯に放り投げた。放物線を描きながら2人に目掛けて手榴弾は飛んでいき、空中で俺も巻き込む形で炸裂した。
「これが最後の秘策だったの?」
「もう意識もないわよ。この兎」
クラウンピースと純子は眼前で気絶した玉兎を見下す。
「もう!遊ぶ前に壊れるんじゃネーヨ!!」
怒りに任せて〇〇の体を蹴り飛ばすピース。○○の体は抵抗できるはずもなく地面に無惨に転がっていった。
力なくうずくまる○○を拾い上げ、松明で彼の体を殴打する。
「グッ……うぅぅぅ…」
痛みで意識が戻る○○。そして直ぐに覚醒して戦闘態勢を取り直す。
片腕が欠損している為、もう片方の腕に武器を持ってピースと純子に対峙した。
それを見た純子はまたも一笑した。
「すごい根性ねあなた。」
そう○○を褒めるが、○○はそんなことに耳も傾けずに小型のナイフの刃を純子に向けた。
とはいえ、そんなことをされた所で純子からしてみればなんともない。
それに自分はクラウンピースに着いてきてみただけなのだ。正直私ではなくクラウンピースの方に刃を向けて対峙してほしい。
「もう、さっきから何してるのよん。」
「へカーティア、私は特に彼に用はないからどうしようかと思って」
「なるほどね〜、ピース?彼をどうするの?」
「うーん…できたら妖精たちでこいつを飼ってみたい!」
「……と、言うことなんだけど…良かったら飼われてくれないかしら?」
へカーティアが○○にそう話をふった。○○は話の流れが汲み取れずに呆気に取られているようだ。
「……何を……」
「だから〜〜って、別に意見を聞く必要も無いか。ピースちゃん、連れて行っても大丈夫よ〜」
「ほんとに?!」
「おい…話を……」
「黙って着いてきてくれるなら腕の欠損だけで済むわよ?」
そう脅しを入れられる。
だが、○○はそれを聞いて怒りをあらわにしてナイフを握りしめる。
「敵にそんなことを言うのか……?お前らは」
「敵に値するほどの力も持ってないでしょ?その結果が今の状況よ」
「へカーティア…言い過ぎじゃ」
「純子は黙ってて。それにこうしてる間にも妖精たちがあなたのお仲間を殺してまわってるはずよ。だから生き残りたいなら私に従いなさいって話。」
確かに、先程まで鳴っていた銃撃音が減ってしまっている。部下たちは残らず殺されたのか?という最悪の考えが頭をよぎる。それと同時にこいつらへの怒りが爆発した。
「お前らに従う訳にはいかない……!!お前たちにやられた仲間の仇を打つために!!!」
「そっ、じゃあ足も取っちゃうわね。」
その台詞と同時に俺の左足がありえない角度に曲がり、そして歪んでいった。
経験したことも無いような痛みに絶叫して足を左手で抑えた。
もはや何をされたのかも分からなかったが、それでも痛みのおかげで自我を保つ。
援軍はきっと来る…そう信じているから。だが、この状況は俺が望んでいた状況の中で最もそれに近いと言える。
「おま……えら…ぜったいに……こ、ころすからな…!!」
「アリに殺される象は存在しないわ」
「上手いこと言ったと思ってる?へカーティア」
「ちょっと言ってみただけよん」
「そろそろこいつを連れていこうよー!今回の目的はあくまでこの兎なんだしさ!」
「は……?」
はっ、俺が目的……?本当にこいつらの考えが理解できない…
腕と足からの痛みで精神が侵されていく。もはや立つ気力すら残されていない。あるのは欠如した体と、これから起こるであろう地獄にたいする恐怖だけだ。
「な…ら話……は早い」
こんなことから、最初からこうしておけば良かったかもしれないな。
もう1つの手榴弾の栓を外す。そしてそれを自身の手に強く握りしめた。
「なっー…せっかく命は残してあげるって言ったのに?!」
俺を求めて来たんだろ……?なら目的は果たせなくしてやればいい。
やってやった…
そうして左腕すら吹き飛ばされた時、ついに依姫達が到着した。
依姫による神速に近いスピードで俺を自陣に運び込まれる。
純子達は想定よりも早い到着だったのか、多少の焦りをみせた。
「なっーーまさかもう月人が…!」
「純子!?やつはいるのか!」
「酷い……もう大丈夫だぞ○○。」
「そう……か…」
「状況から察するに純子とヘカーティア・ラピスラズリで間違いなさそうだ。またとない機会だ…ここで因縁を付ける。」
まさかの人物までもが姿を見せていた。今回で地獄との戦いも終結するかもしれない。
だが、それを見届けることは叶わないだろう。
「○○、直ぐに治療班が来ますのでそれまで耐えてください。」
「依っちゃん、行くわよ。」
「分かっています、姉さん!!」
そこで俺の意識は途切れてしまった。
ということで○○の体はかなりの傷を負いましたが戦いには勝ちました。
次話に続きます