綿月姉妹率いる月の援軍が到着してから戦いが終結するまでにまる3日かかった。
その間月の前線で時間を稼いでいた玉兎のリーダーである○○には野営での緊急処置が施され、なんとか一命を取り留めた。
しかし、その他の玉兎……○○の部下の玉兎に関しては八割以上がその亡骸すら判別できないほどにその体を破壊されていた。
あれから数ヶ月……私は○○の容態を確認するが、未だに意識が戻らないと報告された。
あの時もっと早く到着していればここまで彼の体にダメージを与えてしまうこともなかっただろうに…私は自身の愚かさを怨んだ。しかしそんなことをしても○○の意識が戻ることはない。やるせない気持ちで毎日がただ漠然と過ぎていく。
姉さんからも心配され、ついには心療内科に受診することを進められてしまい、今はそこに通院しながらの生活だ。
「○○…すまない……」
私は目覚めない○○のベッドの傍でそう言葉をこぼして涙を流した。
「失礼します。依姫様、少しお話が」
「どうしたのですか。」
「はい、実は…………」
「それは…!しかし…私の一存では…」
「すぐにでも行うべきかと…姉上様とお話されれば直ぐにでも私たちの所へ来て貰えますか。これが同意書です」
そうして依姫は1枚の紙切れを渡される。それを見た依姫は足早と病室を後にして姉である豊姫の元へと向かった。
「姉上!○○の目を覚ますことができるかもしれません!」
依姫は豊姫の元についてそのままこのことを説明する。これならきっと彼は目を覚ます。それに姉さんだって了承してくれるはずだ。
しかし、豊姫はどこか難しい顔をして固まっている。
「でも…それをしたら○○はもう……」
「もともと既に彼の体は殆ど機能しないのですよ?!ならばもうこれで覚醒させてあげるのが彼のためです!」
「それもそう……だけど…」
「姉さん!!」
「少し考えさせて。それとこのことは口外しないように」
そう言って逃げるように私の元を去っていった。残された私もすこし冷静になるべきだと感じ、自室に戻ることにした。
その途中だった。
「サグメ様…」
『どうした?それにその紙は?』
「これは……すみません、姉上にこの話はするなと言われているので」
『そうか。まぁ何かあったら相談してくれ』
「ありがとうございます…それでは失礼します」
……サグメ様ならどうするだろうか。月のためにと実行に移すだろうか?それとも…………
それから一日が経過した。○○は相変わらず目を覚まさない。
私は姉さんの所へ行き、昨日の話の答えを聞く。
「姉さん、○○の件ですが」
「あぁ、分かってるわ。依っちゃん、やりましょう。○○のために」
やった……良かった……!!
「姉さん…!ありがとうございます!!」
「きっと○○もわかってくれるはずだわ。」
そうだ。○○だってずっと動けないのは辛いはずだ。ならばその体を起こしてやろう…。他でもない○○のために……!!
「お前たち、同意書にサインは済ませた。早速取り掛かれ。」
「はい!!お任せ下さい!!」
そうして治療室に○○の体が運ばれる。続いて上層部に所属する月の最高医師が何人も治療室へと入っていった。
何時間…何十時間にも及ぶ交代制の手術が執り行われ、そして…………
手術中の文字が消えた。
「…!!」
中から出てくる医師を捕まえて私は尋ねる。
「○○は?!実験はどうなった!?」
「成功です。そのうちに目を覚まします。それからは暫くは監視対象となりますが…安定すれば立派な月人です。」
「それは良かった。本当に……」
早く目覚めてくれ…○○…。
次回かその次くらいがラストになりそうです。
それでは良いお年を!!