東方短篇置き場   作: 白黒魂粉

26 / 36
つづき


博麗のモノ 中編

翌日、俺は人里の団子屋で店番をしていた。

 

あとの仕事はこれを含めてもひと月程で完遂できることだろう。

すぐにでも帰れるのならそうしたいが、そう行かないのだから仕方がない。

受けた仕事は最後までやり遂げる……という責任感に駆り立てられて、俺はここに暫く残るという選択をとった。

 

「いらっしゃい!空いてる席にどうぞ〜」

 

客が来れば、そう言ってメニューを取りだして向かった。

 

その人物は…………

 

「あら、今日はここで働いてたの?」

 

「…?十六夜さん?」

 

「えぇ、そうよ〇〇。元気だった?」

 

紅魔館にてメイド長を務めている十六夜咲夜本人だった。

 

「元気もなにも……今日は何用で?」

 

「たまたまよ。別に何もないわ」

 

少し警戒してしまう…

なぜなら、この人の主…レミリア・スカーレットには過去に眷属にされかけたという思い出があったからだ。

その頃の十六夜さんとの接触率とか…そういうことに恐怖を感じて一時期外に出られなくなったことがあった。

 

「レミリアさんはもう大丈夫ですよね?」

 

「えぇ、お嬢様の考えはよく変わるもの。もう貴方には特に思い入れはないはずよ」

 

「そうですか…」

 

フゥ……と胸を撫で下ろした。

不安だったことが1つ解消されたような気がしたからだ。

 

「どうしたの?いつもより調子が良さそうだけど」

 

「あ、分かります?実はですね…俺、遂に向こうに帰ることができるようになったんですよ!」

 

「…………へぇ〜 、良かったじゃない」

 

「へへっ……ありがとうございます。」

 

「それで?」

 

「え?」

 

「帰るのはいつ頃になるの?」

 

「詳しくはまだ決めてないんですけど……多分ひと月後には」

 

そう言うと十六夜さんは

 

「そう、じゃあそれまでに挨拶位はしに来なさいよ。私たちの館には貴方と関わった人物が多いから」

 

と言ってご馳走様。と料金を置いて店を出ていった。

 

残された俺は呆然と立ち、「挨拶か〜…………どうしようかな…」と

少し考えるのだった。

 

 

 

ーーー紅魔館ー

 

「霊夢?どうかしたかしらこんな時間に」

何とも珍しい客人が現れた。それも一人で、だ。

「咲夜、〇〇のことについてだけど……」

 

「〇〇?彼がどうかしたの?」

 

「あいつが外に帰っちゃうのよ…!」

 

「別にいいじゃない。それにあなたの懐も温まるでしょ?」

 

「良くないのよ!!……〇〇はダメ。ダメなの…だからさ……私に協力してくれない?」

 

「協力?」

 

「そう、〇〇を此処から出られないようにする協力。」

 

何を言い出すかと思えば……

「何を言ってるのか分かってる?それをするということは…」

 

「〇〇は望んでないかもしれない……って言う気?それでも私は私のために〇〇をこっちに留めるの。勿論協力…してくれるわよね?」

 

……本気だ。

なんなら異変解決の時よりも目が本気になっている。

これは断ればどんな危害を加えられるか分かったものではない。

「…分かったわ。手伝ってあげる」

 

「そう…話がわかるやつで助かったわ。」

 

ニコリと笑った霊夢の目はどこか濁っているような気がした。

そして霊夢はそのまま館の中にいるレミリアの所へ行き、数分程話をしてから紅魔館を後にして行った。

 

「お嬢様、あれはなんと?」

 

「異変を起こせ……って言ってきたわ。どういうつもりなのかしらね」

 

「さぁ……私には分かりかねます。」

 

霊夢は何を考えているのだろう…と考えてみたが、そのうち興味も薄れて行ったので、私はそのことを、頭の隅に追いやるのだった。

 

 

 

ーー〇〇の家ーー

 

「そういえば明日から休みか。」

 

店番を終えた俺は家に帰ってきて畳に寝転がりながらそう呟いた。

休み……か。と、そこで十六夜さんから言われた事を思い出した。

 

「明日……せっかくだし別れの挨拶でもしておくか。」

 

まぁ特に仲の良い人物が多い訳でもないので、世話になった人らに報告だけしに行くのがいいだろう。

 

そうして、俺は眠りに付くのだった。

 

 

翌日、俺はいつもの癖で早く起きてしまい時間を持て余していた。

「適当にぶらつくか〜」

そう思い立ったので、俺は家を出て里を歩く。

 

何年も見てきた風景だが、それとももうすぐお別れだ。

少し寂しい気もするが、それでも大切な肉親と再開したいという気持ちが勝っていた。

俺は未だに親孝行もろくにできていないのだから。

 

「お?〇〇じゃないか。」

反対側から俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 

「あ、慧音さん。」

ここで寺子屋を開いている人で、なにより俺が一番世話になった人だ。

住む場所も、働き口も生活方法も…全てこの人から教えてもらった。

そんな人が俺の前にいた。

 

「どうしたんだ?こんな朝早くに」

 

「ちょっと退屈で…先生こそどうして?」

 

「いや……身体を動かしたくてな。最近は運動不足気味で…」

 

「そうなんですか…」

 

「まぁな。それよりもどうだ?まだ朝食食べてないだろ?よかったら家で食べていかないか?」

 

「え?……悪いですよそれは。」

 

「構うな構うな!遠慮せずにこい!」

 

「あ…じゃあお言葉に甘えます。」

 

そうして俺は彼女と喋りながら彼女の家へ行った。

朝食を頂きながら、俺は慧音さんにあのことを伝える。

 

「そうか…それは良かったな。」

 

「本当にお世話になりました…!今までありがとうございます。」

 

「別に構わないさ。まぁ、あと少ない時間だが、よろしくな。」

 

「こちらこそお願いします。それでは失礼します」

 

ちょうどご飯も食べ終えて、俺はそのままその場を去った。

この調子で進めていこう。

と、決めて俺は里を進むのだった。

 

 

それから数日後、あらかた別れのことを済ませたので、家に帰ると

珍しい客人がドアの前に立っていた。

 

「霧雨さん?どうした?」

 

「あ、〇〇。やっと帰ってきたのか」

 

「?俺を待ってたのか?」

 

「そんなとこだぜ。とりあえず中に入れてくれよ」

 

「あ、悪い。ちょっと待ってくれ」

 

鍵を開けて中に入れる。

霧雨は部屋で座り込んで、こちらを見た。

 

「実はいいのが見つかってな。」

 

これを見てくれ。と言って霧雨は帽子から何かを取り出した

 

覗き込むようにそれを見ると、顔に粉が噴射される。

 

「……はっ?!なんだ……これ…」

 

慌てて離れるが、何か吸い込んでしまったのを確認してしまう。

 

「魔理沙…今のは?」

 

「うーーん、痺れ茸?それも結構即効性のやつ。」

 

「はっ?何を言ってーーー」

 

体が思うように動かない。

それに何故か眠気まで襲ってくる。

 

 

「悪いな、これも霊夢の頼みなんだ。」

 

「霊ーーー夢…………、?」

 

そこで……意識が切れた。

 




次回完結
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。