感覚が空いてるので、前日談(前編、中編)を読まれた後にお読みください。
ーーーーなんだ、冷たい……ここはーー…どこだ?
そうして目を覚ました。しかし、そこは暗闇の中だった。
俺は確か魔理沙に……眠らされて……?
周囲を見ても、暗すぎて何も見えないのだ。
だが、見渡していると一つだけ見えるものがあった。
なんだろう……と、それに手を触れると、瞬間俺の視界に光が差し込んだ。
「やっと起きたの?〇〇。」
そこに居たのは博麗の巫女、博麗霊夢。しかし、なぜか分からないが
彼女に抱いたのは恐怖だった。
「……霊夢?ここはどこなんだ?」
「これからあなたが暮らす場所よ、〇〇。」
「はっーーーー?」
一体何を言っているんだ?俺はもう外の世界に帰ると彼女に伝えた筈なのに……?
「霊夢?俺はもうこっちにはいないって前に……」
「黙って?それ以上その事は口にしないで。」
「え……?ごめん。」
とてつもない形相で睨まれて思わず怯んでしまう。
霊夢の顔は何故かとてつもなく不機嫌のように見えた。
「〇〇、あなたはここに残って私と一緒に暮らす。いい?」
霊夢はそう言うとニコニコと微笑んでいるようにみえた。
一体どうしたって言うんだ、俺はここにいたいと思っていないって言うのに……!
「暮らす……?だからなんの話だ………?あっ、さては何かのイタズラか何かなのか?魔理沙とグルで何か企んでるんだろ」
「そんなこと考えないわよ。ほら、早く私とここに棲みたいって言いなさい。」
「いや……言わないって!俺は外に帰るの!!この前はおめでとうって言ってくれじゃないか!どうしたんだよ!」
「あれは嘘。本当は〇〇に帰ってほしくない。だから返さない」
「はぁ?!なら俺のこの数年間は!?どうなるんだよ!俺は外に戻る為にひっっしになって働いてきたんだぞ!!?」
「そんなの知らない!!〇〇は私のモノなの!だからーー」
ものだと…?ふざけんな!!そんな理由で俺をここに閉じ込めたとでも言いたいのか!
俺は怒りに任せて立ち上がり霊夢を抜けて外へと走った。
霊夢はとてつもない力で俺の腕を掴んだが、それすらも振り切って、
俺は神社の中を走り行った。
「〇〇ッ!!止まってよ!」
「止まらない!金は払うからさっさと外に返してくれ!!」
「……なら、お金を払ってよ。」
「分かった。ちょっと待っててくれ」
家の中にある。それを持って渡せば良いだけ。
俺は早速家に戻った。時刻は恐らく深夜、境内の階段を下る俺は
そんなことを何も考えちゃいなかった。
そして、それがいけなかった。
夜は、俺のような人間が居れば、格好のエサと言うことを考えていなかった。
グサッーーと俺の首元に冷たい感覚が生じた。
そこから血が吹き出てバランスを崩し、なし崩しのように階段から転げ落ちる。
何十もある階段から落ち終えた時には、既に意識は無かった。
ー〜〜
「レミリア、お疲れ様。」
私は横たわる彼を見ながら、ハンカチで口元を拭いているレミリアに
そう言った。
レミリアはこちらを見て
「別に…以前私もやろうとしたことよ。」
「そう言って貰えると助かるわ、このお礼はどうすればいいかしら?」
「必要ないわよ。あなたが寿命を迎えた後、彼を紅魔館に引き込んでしまえばいいから」
なるほど……そう来たか。
まぁでも、私は〇〇と一緒に居られればそれで問題はないか。
「分かったわ。できるだけ長生きしなきゃね…それじゃあ、〇〇を連れて帰るから。またね」
「えぇ、じゃあね。」
そうしてレミリアは帰って行った。
さて……これで〇〇は……フフフフフ…反応が楽しみだなぁ〜!!
私は〇〇を担いで、先程の部屋へと向かうのであった。
ー〜〜
冷たい感覚……目を開けると…俺は布団に横たわっていて…………確かここは博麗神社の一室だろうか。
「…………?、!」
首を確認する。
傷は…………ない。だが、確かにーー…俺は首を何者かに噛まれた…?
意識がまだハッキリとしていないからか、思考が混ざってグチャグチャになっている。
「そうだ…!霊夢は……?!」
「呼んだ?」
横から声が来て少し驚いた。こんなに近くにいたのに気付かないなんて……
「隣にいたのか……何か起きたんだ?」
「帰る途中に襲われたのよ」
やっぱりそうだったのか…ならなんで生きてるんだ?
なんて疑問に思ったが、それは思わないようにすることにした。
とりあえず金を取りに行かないと…………、と?
「なんだ……上手く立てない?」
「もう、どうしたのよ。〇〇、立てないの?」
霊夢は何故か嬉しそうな顔をしていた。
何かがおかしい、その理由は分からないが…立てないことと関係しているのは確かだろう。
「何かしたのか……?」
「治療をしたのよ?でも、〇〇の体が思ったよりも深刻だったから…」
ーーーちょっと、妖怪になる薬も使っちゃったわ。
そこで、それを聞いたことによって俺の頭は真っ白になった。
妖怪になる…以前慧音さんに聞いたことがあった話を思い出してしまったのだ。
ここから帰還しようとしたある男の話、とある妖怪に気に入られ毒を盛られた挙句、その妖怪と同じ性質を持ったせいで永遠にここに囚われることになった男のことを。
「霊夢……なんてことを…………」
「別に問題はないでしょ?だってもうすぎた話だしさ。」
彼女からは罪悪感なんてものは無かった。
頭の中にあるのは俺を捕らえたことに対する達成感だけなのだろう。
「あっ!みんなから〇〇の記憶は消しておかないといけないわね! 変な虫が寄り付かないようにしなきゃいけないし!」
「ふざけ…………、!」
「本気よ。私」
「本気だから……あなたがここから…私の手の届く場所からいなくなるって思ったから……私はあなたをここに縛り付ける為の鎖をあなたに打ち込んだ。二度とこの幻想郷から出られなくする為の鎖。
一度打てばもう二度と前には戻れない。わかるでしょ?あなた自身、もう元通りにはならないって。」
「………………………………………………それは言い訳でありお前の我儘にすぎない。」
「そ。ただのわがまま。でもね〇〇…私は幻想郷の博麗大結界を管理する博麗の巫女よ。そんな私のわがままならみんなも容認してくれるはずよ。」
「……なら最後に聞きたい。なんで俺だったんだ?」
「それは……初めて会った時から〇〇のことが気になってて…気づいた時には好きになってたから。」
そうか……でもな…
俺は勢い強く起き上がる。
人間を超えたその力で、足に全体重を乗せてそのまま地を蹴った。
部屋の襖を突き破って外への脱出を図る……!!
バァン!!
と、後ろで襖が吹き飛ぶ音が聞こえた。
俺は一瞬で外へと飛び出していたのだ。このままどこか隠れられる場所へと逃げ出す……!!
そうした時、俺の右腕から煙が上がった。そして、それと同時に燃え上がるような痛みが全身に襲った。
「ーーーーーーッッ!!!??」
訳の分からない状況に判断が鈍る。
太陽にてられされただけなのだ。たったそれだけでここまでの痛みを受けることになるなんて…!?
「ダメじゃない〇〇。急に外に飛び出しちゃ………」
しまった……!霊夢がそこまで…
「言ったでしょ?あなたに妖怪化の薬を打ち込んだって。」
目の前には彼女が居て、俺の体が宙に浮いた。
痛みよりも先に、身体が耐えられなかった。
俺は強制的に意識を飛ばされた。
ーーー
ーー
ー
今日も俺は博麗神社の一室に居る。
あれから何年が経過したのかは分からない。
だが、あの日から霊夢も…他の異変解決者達もかなり老けた様に見える。
最も、霊夢とある人物以外は俺の事を完全に忘れてしまっている様だが……
「〇〇、ご飯よ。食べましょう」
「……ありがとう。」
食事をとる必要というのはあの日から無くなっているのだが、彼女からの温厚を無駄にする訳にはいかない。
彼女の作る料理はとても美味いのだ。それ以外の料理の味を忘れるほどに……
故郷にいる家族のことを思いながら、月を眺めながらぼんやりとしていると霊夢が唐突に話を切り出した。
「ねぇ〇〇。」
「なんだ?霊夢」
「まだあの日のことを怒ってる?」
「怒ってない……と言えば嘘になる。」
「やっぱり……そうよね…許されたいとは思っていないわ。」
「まぁでも…何年も居るとどうでも良くなるよな。こうなったら最後まで君にめんどうを見てもらうことにするよ。」
「…………ありがと」
肩をくっつけて熱を交わし合う。
忘れ去られたモノの行き着く最期の楽園。
そこに住まうのは物の怪か人間か……はたまた外から迷い込んだ外来のもの達か…
博麗神社に住まう名前のない妖怪は、博麗の巫女と共に今日も月に照らされているのだった。
〜完〜
とある巫女に好かれていた人間のお話
この話の中に出てきた男の話は、後日書こうと思っているので是非お待ちください。