魔法の森……人里からは少し離れた森の奥に進んだ所に位置する人ならざるものが住まうとされる危険地帯。ここには魔法の森特有の魔素が色濃く存在しており、近寄った人間は高確率で消息を絶つ。
それに辺りには幻覚をもたらす幻覚キノコが生えている為、気付かない内に迷い込んでそのまま……というパターンが多くを占めている。
中には迷い込んだ人間を人里近くまで返してやる優しいやつもいるが、大半はそれ以外だ。
「おっ、こんな森でうろちょろしてるやつがいるなんて珍しいな」
「珍しいのはそっちの格好だろ。おまえ人間じゃないのか?」
その二人はたまたま森の中で出くわした。方や普通の魔法使いとして異変解決を買ってでる幻想郷の数少ない人間の実力者。もう片方は名前も知られていない迷い人。おまけに他人に一切興味のないつまらない性格をしている。
「お前私のこと知らないのか?」
「他人に興味はない。それよりここはどこなんだ」
「礼儀ってもんをしらないんだな…ここは魔法の森。なんでお前みたいなやつがここにいるのか知らないが…帰るなら案内するぜ」
「魔法の森…?あーーいいわ、俺ここで暮らす」
「……は?お前何言ってるんだ?」
「人付き合いがいやで誰もいない所を目指して歩いてきたんだ。ここなら誰もいないんだろ?ちょうどいいところだ」
男はこう言い放ったが、それでも無理がある話だ。男は至って普通の軽装でここまで来てるにも関わらず、何か魔素を防ぐための術を施されている訳でもない。成程、死にに来たのか。そう魔法使いは判断した。
「そうか、じゃあ別にとめないぜ。でも気を付けろよ?ここは夜になると危険だからな」
「お気遣いどうも、さようなら」
最後まで淡々としている男を見て魔法使いはさっさと飛び去って行った。
こうして男の森での生活が始まった。
一年後、男は生きていた。
彼の生命力は人間のケタを外れていたらしく、魔素の濃い森でもピンピンしているどころか、彼の気が付かない内に魔力が練られ始めていたのだ。
それに彼は気がつく素振りはないが、日に日に襲ってくる森の生物を殴る拳が重くなってきている事に気がつくのもそう遅くはないだろう。
彼は森の葉っぱやら木の枝やらを使ってベッドを作り、森の木の生い茂る場所で雨風を凌いでいた。
「そろそろ安定してきたな…」
そう思った彼は次のステップに移ろうと行動にでた。
彼がとった行動は、道徳を逸脱した行為だったが、それを咎める人間は残念ながら存在しない。彼は森で衰弱しきった人間を見つけては森から出してやり、その後で金品を奪い取るという物だった。
宗教やらが流行りの幻想郷で見返りを求めるのは御法度という考え方があるはずなのだが、それを言い聞かせてやれる実力者が森の奥地にねぐらを構える異常者の所にきてやるはずも無いのだ。
「……食料を取りに行くか。」
最後に狩りにでたのは何時だったか、ねぐらから出て男は森の動物をとりにでた。のそのそと歩くその姿は一年前にここに来た時よりも筋肉がつき、全体的にがっしりとしていた。
そしていつもの狩場にやって来た時だった
「お前は…何時か見た変なやつ!」
森で初めて会った人間と再開した。
「……誰だお前」
「忘れたのか?そんな訳ないよな?!だって人との関わりはゼロだもんな」
そもそもそんな変な格好をしたやつを忘れる訳がないだろう。と男は思ったが、自分の格好を考えたらその台詞は口に出せなかった。
「てかお前、服着ろよ。流石に外に出るのに裸はありえないぜ?あっそっか」
家がないんだったな!と小馬鹿にされたが、何も言い返せない。
「なんなんださっきから」
「いやーさっさと死んじまうもんだと思ってからよ、珍しくてついな」
(それにここに適応したのか魔力も付いてきてる……ちょっと鍛えたら魔法使いにでもなれるんじゃないのか?)
「まじまじと見てどうした、もう行くぞ、獲物が逃げた」
「まーまー待てよ。お前、どの辺に住んでるんだ?」
「食料分けてやるからさ。」
そうやって魔法使いは男のねぐらをチェックして、また来るとだけ言って飛んで行った。
「出来れば二度と来て欲しくはないな」
食料を分けてもらいはしたが、男はそう思っていた。最も、その願いが叶うことは無いのだが……
続きます。