運命の弾丸最終話!
満月の夜の前日。
森に入る二人の男が居たという。
目撃者によると、この二人はどこか重々しい雰囲気というか、近寄り難い何かを感じた。
「ジン、ここからは作戦通りに頼む。」
「任せてくれ。俺の合図と同時にあの門番の相手を頼んだ。」
「俺は死なない程度で撤退するからな。吸血鬼はお前が仕留めろよ。」
「分かった。ここからは無線は使えない。後は頼んだ」
それだけ言葉を交わして、俺は使い物にならなくなったその無線機を放り投げた。ここからは吸血鬼のテリトリーだ。
そして……
ついに目標の住まう館を視認できる位置まで辿り着いた。
(打つとしたら正面から打った方が効果的か……だとしたら…)
持ってきたミサイルランチャーに弾を込めながらそう思案する。
これが俺の合図であり、これを打つと同時に俺は正面門を突破する。
その時に門番の気を引くのがジンに頼んだ仕事だったのだ。
俺はスコープ越しに館を見ながらふと、十六夜の事を考えた。
吸血鬼のことをよく知る依頼者。何故かこの街に吸血鬼が居ることを
知っていて、尚且つその弱点すらも彼女は熟知していた。
(まさか…な。)
俺は門に照準を合わせてトリガーを引いた。
バシュン!
と音をたててそのミサイルは弾は直線を描きながら門めがけて一直線に進んで行った。
そしてミサイルは見事に門に着弾し、凄まじい爆風と共に門の扉を周りの煉瓦の壁ごと撃ち抜いたのを確認した。
(さて……動くか。)
俺はそこから姿を隠し、横からの侵入を図るため、移動を開始した。
◇
俺は門のすぐ近くで身を潜めていた。
相方からの合図で俺は門番と対峙し、できる限り時間を稼ぐ必要がある。
過去にヤツに危機を救ってもらった恩がある俺からしたら、あいつの
指示に従ってやるのが俺なりの恩返しになるだろう……
あいつはどんな依頼だって受けてくる金に貪欲な男だ。
その上人を殺すことに何の躊躇いもなく、正しく殺し屋の素質が
完全に備わったプロの殺し屋だ。
俺のように殺しの述を教わっただけの特殊部隊上がりの殺し屋もどきとは違う。
そしてあいつに手を貸したもうひとつの理由は十六夜という女の存在があった。
あの女は過去にも大勢の殺し屋に今回のような依頼を飛ばしているのだ。
調べているだけでも50件以上あるのは確認済みだった。
そして中には今住のように助っ人を頼む輩もいた。
しかし、それを断って数日後にはそいつらとは何の連絡も取れない…
ということが多く続いたのだ。
この事は今住も知っていた。
だからこそ俺はそれに何か裏があると悟ったのだ。
なら俺がすることは…
「殺し屋殺しをこれ以上させないことだ。」
合図だ。俺は全意識を戦闘に集中させる。今の俺は、軍隊をも壊滅させる程の気迫に満ちている。
「止まりなさい!」
門の前まできて、声をかけられた。
「お前が門番か……」
「いかにも、貴方は何用でここに来た!」
「ここに来る理由だ……?そんなもんお前らはよーく知ってるだろうが……」
ニヤリと笑みを浮かべながら
「俺の名はジン=ジェース!!貴様らの主の命を貰いに来た!
邪魔をするなら貴様から片付けてやるぞ!門番…!!」
「殺し屋……?!ならば貴方をここで倒す!主には指一本触れさせない!」
そうして人外と妖怪の戦いが始まったーーー
◇
ズドォンーーと何かがぶつかり合う音が何も無い夜の世界に木霊していた。
俺は門の横から忍び込むように移動していて、もうすぐ正面口が見える頃だ。
そこには互いに全力で鎬を削るジンと門番の姿が見えた。
「やっているな……もう少し耐えてくれ。」
ジンが攻撃を仕掛けてもそれを門番が受け流し、カウンターで門番が
攻撃をしてもジンは難なくそれを弾き落としていて、本当に両者の戦闘能力は互角なものだった。
そしてジンが隙を見つけて、門から離れる。
門番もそれを追って門から離れた……!
俺はその隙を逃すことなく、門の中へと入り込むことに成功するのだった……
◇
「しまった……?!」
どうやらあいつは成功したらしい。
「俺はここで退散だ。じゃあな門番……俺はここで逃げさせてもらう。」
そう言って懐から煙幕グレネードを取り出し起爆させる。
缶の中から大量の煙が発生し、その煙が周囲を覆った。
「なっ……?!逃げるのですか?!」
門番はそんなことを言っているが、当然答えるはずも無く、俺は戦線を離脱する為、森から全速力で離れるのだった…………だが
突然足を斬りつけられたような鋭い痛みに襲われる。
体制を崩し、その場で地面を転がるように横転した俺が斬られた方へと目線をやるとそこには………
「何……?!やはり貴様…!」
俺の危惧していた通りになってしまっていたのだ…
そうして俺の最期の光景は、無数に飛んでくる銀のナイフと、銀髪の
少女の姿なのだった。
◇
俺は何とか館の中に侵入することに成功した。
今から、俺は吸血鬼を見つけ出して…今持っている武装で、何とかソレを始末しなければならない。
不穏な空気を感じながら、俺は赤いカーペットの敷かれた長い長いその廊下を歩き続けた。
そして……侵入から数十分が過ぎた頃だった。俺は沢山の本が収納された場所にたどり着いていた。
「ここは……」
物珍しい光景に目を奪われていると、奥から声がしていることに気がついた。
俺はすぐに本棚に身を潜め、その会話に耳を立てる。
その会話…というのは初めは他愛もない話だったのだが、やがて人間の生贄等という訳の分からない会話になっていた。
「咲夜がおびき寄せた輩の相手もこっちには回ってこなかったしね」
「門番が仕事をしている証拠よね。美鈴もしっかり働いているのが証明させられたわ。」
「咲夜程じゃないけどね…だからこそあの子の頼みは断れないのよ…」
「レミィも優しいのね。」
「そう?まぁ人間達からしたら私達は恐怖の対象になっちゃうからね…
ま、エサにどう思われてもなんとも思わないというのが私の見解なんだけどね。」
なんなんだこの会話……それに嫌な汗が止まらない…
逃げたせと本能がそう言っていた。
しかし、動くしかない。
銃を持ち出したその時だった。
「誰かいるの?」
二人のうちの一人が反応した。
「殺し屋でしょ?」
もう1人がそう答えた。
……なんと答えた…?殺し屋……?
「でも美鈴が取り逃がすなんてことあるの?レミィ」
「隙を付かれればその可能性もあるさ。……それよりも、だ。
レディの会話を盗み聞きとはな…少し遊んでやる必要があるわよね…」
このセリフで、こちらの存在がバレていることを確信した俺はすぐに本だなから飛び出し手に持った機関銃で声のする方へと撃ち込んだ。
300の弾丸を撃ち込み、すぐに煙幕グレネードを使って視界を曇らせる。
果たしてこれが効果的なのかは知らないが、俺はこれをするしかなかった。
「あら、面白いことをするのね。パチェの本ごと撃ち込むなんて…」
「面白くないわよ!!……死ぬ覚悟だけはしておきなさいよ!!魔女に喧嘩を売るってことがどういう事なのか教えてあげる!!」
「まぁまぁ落ち着いて…これが最後なんだから。」
なんと何も食らってないような口ぶりで会話を続けるターゲット。
どうやらそこにいるのは本当に吸血鬼と魔法使いらしい。
「ねぇ、殺し屋さん?貴方が初めてなの。私の元まで辿り着いた人間は
どう?私のイメージ。咲夜に聞いた通りだった?」
「まだ姿が見えないから分からないなぁ!でも女だったとは思っていなかったよ!」
くそ……種族が違うとはこういうことになるのか……俺はポケットからグレネードを取り出した。
栓を外してある程度の狙いを定めてそれを投擲する。
殺せなくてもいい。今は動きを止められればそれで……!
そんな思惑とは裏腹に吸血鬼からはなおも聞いた様子のない愉快な声をかけられる……
(不味い……通用する攻撃手段がなくなってきた……)
残るは近接戦闘用の銀のナイフと単発銃だけだ。
単発銃に関しては着弾するのかが分からないために無闇に使うことができないため、俺は残る投擲物を使って時間を稼いでいた。
だが…その時間稼ぎは一瞬にして無駄に終わる。
「もう飽きちゃった。パチェ、あとはやってもいいわ。殺さないようにね。」
「えぇ。心得たわ」
その短い会話をした直後、俺の身体が宙に浮いた。
そして一気に引き摺られるように猛スピードで空を引っ張られて…
開けた空間に叩きつけられた。
「…ぐ……っ…」
飛びそうになる意識を何とか保って、俺は現状の確認をする。
何をされたのかは全く検討もつかない事だが、どうせこのどちらかがやったことで間違いないだろう。
俺は即座にターゲットがどちらなのかを見極める。
片方は紫のパジャマの様な服をきた本を片手に持った女で
もう片方はピンクのドレスを着ていた子供程の背丈をした少女だった。
だが、その少女には翼が背中から生えており、俺はそれを視認してしまった。
「なっ……」
「へぇ…意外と顔は良いわね?そう思わない?」
「興味無いわよ。私は早く本の報復をしたいのだけど」
「もう少し待つのよ。咲夜にこの侵入者であってるのかを聞かなくちゃいけないんだから。」
……そう会話をする少女を見ながら、俺は灯火が消えるように
意識を失った。
ー
ー
「………!?ここは……!」
突然意識が覚醒する。
俺は確か……吸血鬼と戦っていたら訳の分からない攻撃を食らってそこから……
そうだ…俺は何故ここにいる…?!誰か居ないのか……
服を確認したところ幾つか没収されているのもあるが…それでも見せていない単発拳銃は懐にしっかりと入っていた。
しかし、予備の銃弾が空中浮遊の際に落としたのか、2発だけになっていて…今の装備は単発拳銃3発だけだった。
周囲を見渡してみると、そこには干からびた変死体が転がっているのを見た。
「なっーー…」
それに気がついた途端、凄まじい死臭が鼻にきた。
想像以上にキツいその臭いにクラクラとするが、なんとか牢屋からでられる場所はないのかと牢の中を念入りに観察する。
すると…隅の方に人1人入れるかの隙間があることに気がついた俺は
その隙間に入って行くのだった。
ー
ー
狭い通路をほふく前進して進んでいくと、そこには先程俺が意識を失ったのであろう図書館らしい場所に辿り着いた。
通路から抜け出してそこに足を付けて辺りを探索する。
服はかなり汚れていてホコリなどがあちらこちらについているのが
見てわかった。
パッパとホコリを払い落として、俺はあるきつづける。
とりあえずこの空間から抜け出さない限りには何も始まらない。
探索して数分…何とか出口を見つけることに成功し、俺はその図書館からの脱出に成功する。
「……まさか…ここまで吸血鬼が強いなんてな。」
そんな愚痴をこぼしながら、俺は廊下を進んだ。
すると、初めに訪れたであろう玄関にまで戻ってきていた。
そこに居たのは…吸血鬼と魔女……それに…
「……やっぱりか……」
「あぁ……今住様…ようこそ紅魔館へ……」
「黙れ……」
銃を取り出し銃口を彼女に向ける。
「どうでしたか?私の主……レミリア・スカーレット様の殺害依頼は…
上手く成功しましたか…?」
「嫌味を言ってくれるな……?君はなんの為に自分の主を殺すようにと依頼してきた…!!」
その問いに咲夜はとくに思うことも無いかのように
「さぁ?適当に…尚且つその能力問わずに依頼しましたわ。」
と答えた。
俺は…彼女が何を言っているのかが分からなくなった。
「……つまり俺も……その中で選ばれた一人ということか。」
「それは違うわね…貴方は少なくとも他の人間とは違うわよ。」
「……どういう事だ」
吸血鬼………もといレミリアはこう俺に伝えた
「貴方は咲夜から直々に選ばれたのよ。私達の向かう幻想郷に連れていく紅魔館の執事にね」
「……意味がわからない…それがこれにどう繋がるんだ」
「話は最後まで聞きなさいよ?私たちは人間の血を集めて、こことは違う別世界…幻想郷という楽園へ向かうことを決めていたの。
その為に必要な人間の血がちょうど一人分余ってね…余った人間の中から一人だけ、同じ人間である咲夜が決めたの。だから貴方は生かしておいた。」
「……つまり俺はあんたらの勝手で生かされている…ということか?」
「その通りよ。……それも咲夜の勝手でね。こっちの魔女は貴方のことよく思ってないらしいから。」
……確かに、レミリアの隣にいる紫の服をきた女からは凄まじい殺気をこちらに飛ばしているのを感じ取れる。
「そうか……だが吸血鬼…お前は一つ誤算をしてしまっている。」
「?何が?」
そう聞く彼女に俺は何も言わずに十六夜から銃口を向け変えて
引き金を引いた。
発射音と共に一撃の弾丸が彼女の頭に目掛けて打ち込まれる。
「……それは俺を…弱者だと思ってしまったことだ。」
それと同時に俺の身体にナイフが突き刺さり、俺は自身の身体から溢れた血流を見ることとなった……
ー
ー
ー
〜幻想郷〜
「咲夜ー?紅茶まだー???」
「レミリアさん。十六夜は今異変解決に出かけていますよ。」
「あれー?そうだっけ…なら神馬。貴方が入れてちょうだい。」
「分かりました。少々お待ちくださいね」
「それにしても…自分の嫁なんだからそろそろ名前で呼びなさいよ。」
「慣れないことはあまりしないんですよ。」
あれから数ヶ月…もしかしたら数年が過ぎたのかもしれない。
俺はあのナイフの攻撃を受けて尚意識を取り戻したのだ。
レミリアの頭に打ち込んだと思った俺の弾丸は、みごとに外していて
当然、意識を取り戻した後…俺はもう既に外の人達からは忘れ去られた存在になっていた。
それからは色んなことを体験した。
平和とは無縁だった生活をしていた反動か、この幻想郷ののどかな空気に流されて、気がつけば紅魔館専属の執事として、殺し合いとは無縁の生活をしている。
当然、目を覚ました直後は驚いた。
真っ先にレミリアに攻撃を仕掛けて、十六夜に羽交い締めにされた。
それを近くにいた妖精メイド?に目撃されて笑いものにされてと
様々な仕打ちをうけた。
それに……俺には友と言える人物がいないのは尚のこと…友を作る方法もわからないので誰とも慣れ会えないのだと、人里に行くことは滅多になかった。
代わりに、香霖堂という古道具屋を営む霖之助とは武器のことで意気投合して、よく話をしに行くこともある。
それと……レミリアがここの世界を支配するために赤い霧でここの幻想郷を覆い尽くした時に来た巫女と魔法使いの二人と出会した時、二人からの攻撃をかいくぐって助けてくれた十六夜に惚れた俺は、執事として認められた後に告白した。
初めは驚かれたが、その後喜んでお受け致します。とのことでOKを貰いデートとかは特にしなかったが…そのまま結婚となった。
「あ、そうだ。ねぇ神馬?」
「どうかしましたか?」
「貴方がここに来た時に貴方が撃った銃弾あるでしょ?」
「ええ、そうですね。」
「正直ね、あの行動を貴方がしなかったら…貴方を殺すつもりだったの」
「え?」
「それにあの時銃を回収しなかったのも私の命令。」
素っ頓狂な声がでた。
この人何言ってるんだ……?
「だって…選ばれた運命に沿って動くなんてことは誰でもできるでしょ?私が欲しかった人材はね……」
レミリアは立ち上がり、こちらを見てから強い口調でこう言った。
「運命に抗うトリガーを引くことのできる。強い意志を持った
者のことよ。」
「だからこそ神馬……貴方は喜んでいい。自らが勝ち取った運命の道筋を…!」
ここまでお読み頂きありがとうございました。
前話で次回最終回なんて言ってしまったので6000字で終わらせました。
書いてて思ったのは、この話をどう終わらせればいいのか、という事ですね。
かなり悩みましたが、こういう結末に落ち着きました。
この短編物語の結末も書いたので、これの続きは恐らくないです。
あるとするなら、この十六夜神馬という男が暮らす幻想郷で起こる
様々な出来事にて彼自身が登場することがあるのかもしれません。
それではまた他の物語でお会い致しましょう。