続きませんがご覧下さい
「逃げないで下さいよ〜○○さ〜ん。」
暗闇の森の中でそんな言葉が木霊している。
当然、その声に返事はしない……俺は意識をできる限りに殺して、その
人物が別の場所へ行くのを待った。
これで何回目かは忘れてしまったが、彼女…天狗である射命丸文の自宅に軟禁状態にある俺は隙をついて彼女から逃げ続けている。
「こっちかな〜?全く逃げるのが上手くなったんだから〜」
そう言って文が別の場所へ飛び立ったのを確認して俺は更に移動を開始する。
何故…俺が彼女にこんなに好かれているのかは不明だが、夜明けまでに人里へ辿りつかなければいけない。
俺はただの人間なので、この妖怪の山にいる妖怪達からすれば良いエサにすぎないのだ。
そうして俺は闇の中を進むのだった。
「あっ、そこにいたのか〜見つけましたよー?」
進み続けることものの数分で俺は彼女に発見された。
瞬間、とてつもない風圧が一気に俺の身体にぶつかってくる…
目を開けると、そこにはニヤニヤと濁った目で笑う射命丸が俺の目の前に立っていた。そして目にも見えない速さで、俺は拘束された。
その光景を写真機で撮りながら彼女は尋ねてくる。
「なんで逃げるんですか?私からは逃げられないっていうのに。」
そんなの決まってるだろ…俺はお前と暮らすつもりなんかないし、里の
暮らしを取り戻したいからだ。
「またまたそんなこと言って〜照れ隠しも程々にしてくださいよ〜」
照れ隠しだと……ふざけるなよ…俺は本気で……
「なら、私も本気ですよ?私は貴方と暮らしたい。…でも私と貴方とでは生きられる時間が余りにも違いすぎる。」
だったら何だよ…だったらお前は俺が死ぬまでお前の家で軟禁され続けるのか?
冗談も程々にしてくれ。
「冗談じゃないですよ〜ただ私はちょっとだけ貴方の時間を頂いているだけです。まぁ……それも今日までですけどね」
……?どういうことだ…
「そろそろ私も夜に逃げ出す貴方を追いかけるのも疲れちゃったので…
ここらでちょっと逃げられないようにしておきますね。」
その時、俺は首に衝撃を与えられて意識を失った。
目を覚ましたのは数日後だった。
目を開けるとそこの景色は見慣れない景色で、一瞬自分がどこにいるのかわからなかった。
しかし、近くに居たうさ耳の少女の姿を見て俺はここがどこなのかを
理解した。
「あ、師匠ー○○さんが起きましたよー!」
俺が起きたのに気がついたのか、彼女はバタバタとした足つきで部屋を後にしていった。
それからすぐに彼女はある人物…八意永琳を連れてきて、俺の状態の確認を始めた
「ふむ……まぁ、こんな所ね。一応意識は取り戻せたけど…何かしらの障害は残っているはずよ。何か身体に不具合はある?」
そんなこと言われても……と身体を起こし言葉を発しようとした瞬間に気がついた。
声がでないことに
それに……身体を上手く起こせていなかった。
頑張っても頑張っても身体が上手く機能していない。
困惑する俺に永琳は淡々と
「どうやら声帯と半身不随……ってことかしら。何をしたらこんなことになるのやら……」
俺は伝えたかった。射命丸にされたのだと…俺は彼女から逃げたいから
助けて欲しいと。
しかし、それは出来ない。自分で逃げることも…喋ることも……もう出来ないらしいのだ。
「師匠ー、文々。新聞の記者が師匠に用があると尋ねてきてますー」
来てしまった。俺をこうした彼女が、俺を回収しにやって来てしまった……
「こんばんは、元気ですか?○○さん。」
とある小瓶を手に持ちながら、射命丸は俺の近くまで来ていた。
文句や恨み言は腐るほどあるのだが、俺は喋る事が出来ないのでただただ彼女からを睨みつけた。
「なんとか言ってくださいよ〜って、そう言えば声が出ないんでしたっけ?可哀想に○○さん……、もう里での暮らしは絶望的ですね?」
そんなことを言う彼女に、俺はどうすることもできない。
もしまともに動ける状態だとしても……だ。
妖怪と人間の力の差はどうやっても覆すことはできないのだ。
俺は自身の無力を恨んだ。
「あぁ、そうだ!○○さん!もしもう一度前のように動けるようになれるとしたらどうしますか?」
……何を言ってるんだ?こいつは
「実は貴方のその体を治す薬を貰ったんです。だからこれがあったら
貴方は以前の様に振る舞う事ができるんですよ。」
甘い誘惑だ。それに俺はだまされる気はない。
「○○さん?その顔は欲しいということでいいですよね?それじゃあこの薬を飲んでもらいますよ?」
そう言って小瓶の液体を俺の口に流し込む文。俺は抵抗できるはずもなく、その薬を飲みきった。
薬品の苦味が口全体に広がっていくのを感じた。
それと同時に……さっきまで動かせなかった体が動かせていることに
気がついた。
「さぁ、帰りますよ。○○さん。」
優しい声色で文がそういう。
「分かったよ。行こうか。」
「やっと心を開いてくれましたね?」
「俺は初めからこうだったよ。」
そうして俺はまた山に戻るのだった。
◇
「師匠ー?なんであの記者が来ていたのですか?」
私は二人が居なくなった後に、師匠になんの用だったのかを尋ねた。
「あの天狗はね、私にある薬の調合を頼んでいたのよ」
「???何の薬なんですか?」
「それはね、服用した者の身体を妖怪のモノへと作り替えて服従させる薬よ。」
師匠が何を言ってるのかよく分からず、私は再度薬についてを尋ねた。
すると師匠は続けて補足した。
「つまりは鳥の雛の刷り込みね。あの薬にはあの記者の血液が混入している。だからあれを飲んだ人間は天狗になる。そして彼が初めに見た
人物こそが射命丸文…もう彼は私達の知る○○ではないわ。人里に来ていたとしても、彼とは関わらないようにね」
お読みいただきありがとうございます。
恐らくヤンデレ…と言えるでしょう!
歪んだ愛情から種族すらも捨てさせる文さんです。
○○くんはその事に気が付くことはないでしょう。
まぁ、それなら両方幸せですよね!
良かった良かった!!
それではまたお会いしましょう