ゆきのんは告らせたいーボッチ達の恋愛頭脳戦ー   作:Lチキ

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長くなったので何話かに分けます。
アニメを見て触発されたので少々の無理やりは多めに見てもらえると助かります。

感想お待ちしてますね~


葉山隼人は歌いたい。

「あれ? 比企谷じゃないか珍しいなこんな所にいるなんて?」

 

 昼休み俺はベストプレイスでパンをかじり終わり屋上に来ていた。

 普段は人気がなく、いたとしても周囲の喧騒から逃げ出した独り大好きーがちらほらいる程度の場所に似つかわしくないイケメンの声が流れた。

 

「別に珍しくはねえよ、俺は常連だ。むしろ、葉山みたいな奴が来るほうが珍しいだろ」

 

「それもそうか、あの時も真っ先に――いや、なんでもない。すまない」

 

 いつぞやの文化祭の話を口にしかけた葉山はなんとも気まずげに視線を逸らした。珍しい事もあるものだ。

 葉山は由比ヶ浜と同じくらい場の雰囲気を察知できる。俺にはない能力だなその見分色。そんな奴が自ら地雷案件を踏み抜いて自爆するとは。

 

「謝られることでもないだろ」

 

 もう終わった事、とは言わないが過ぎた事だ。

 

「そうだな、隣失礼するよ」

 

「……別に俺の場所ってわけじゃないんだから好きにしろよ」

 

「相変わらずだなお前は」

 

 このなんとも言えないやり取りで俺達の会話のキャッチボールは終了する。取り繕った中身のない会話をする訳でもなく、だからといって仲がいい訳でもない。

これが俺と葉山隼人の正しい距離感なのだ。

 

「……」

 

「……はぁ」

 

「……」

 

「……はぁー」

 

 ため息多くね?

 それも、かまってちゃんが良くする様な話けてほしいアピールみたいなため息だ。いやいやまさかね。

 なんか知らんがすげー落ち込んでいるのだろう。ならここはそっとしておいた方がいい。八幡少し大人になったから知ってるよ。

 

「……じゃ、俺はこれで」

 

「待て、なんでスルーするんだ?」

 

 教室に帰ろうとしたら袖をガッシりと掴まれた。

 

「いや、なんかめちゃくちゃ落ち込んでいたから場所譲ろうと思って」

 

「なんでそうなるんだ? ふつうここはどうしたって聞くところだろ」

 

 心底意味が分からないという顔の葉山。

 いやいや、お前の普通とかおれ知らんし。よしんばそれが世間の普通だとしても俺知らねえし。なにより。

 

「めんどい」

 

「ほんとそういう所だぞ! いや、これはこっちが悪かった。悩みがあるんだ聞いてくれないか?」

 

「なんで俺が……お前俺の事嫌いだろ?」

 

 単純な疑問だった。人は嫌ってる人間に悩み相談なんてするだろうか。少なくとも俺はしない。そんな事をしたら、翌日にはクラス全体で俺の悩みを共通し笑い者にされるからだ。

 

「ああ……けど、比企谷も嫌いだろ?」

 

 葉山は何がとは言わない。

 

「まぁ、な」

 

 俺も何をとは言わなかった。                         しいて理由を上げるなら王様の耳はロバの耳のように誰でもなんでもいいから話したいだけなのだと納得しておこう。

 

「それで、この間の事なんだが……聞きたいか?」

 

「いやそんなに……」

 

 すると、昼休み終了のチャイムが鳴る。

 

「昼休み終わりだから」

 

「聞きたいか?」

 

 だから戻ろうといいかけた俺の肩を葉山は全力でがっしりと掴んだ。ひぇぇこわいよ。

 

「お、おう、わかった聞かせてくれ、いやください。でも時間無いからまたあとで」

 

「わかった。それじゃあ放課後に」

 

 あまりの必死さに恐怖を覚え、握られた肩の痛みで思わず放課後に会う約束してしまった。

 

・・・

 

 ファミリーから学生まで幅広い客層に愛されるレストラン。

 

「フォカッチャお待たせしました~」

 

「ども」

 

 女性店員は俺の頼んだフォカッチャを持ってきた。

 でも、その視線は完全に対面に座る葉山をロックオンしている。

 名残惜しそうにバックヤードに戻った店員は、はしゃいだ声で同僚たちと会話の花を咲かしていた。

 

「キャーマジでイケメンだったわ! ほんとほんと――」

 

 ちょっと、まだ仕事中ですよ。店長注意して~。

 

「……それでどうしたんだ?」

 

「少し悩んでいてね。俺ひとりじゃどうする事もできないんだ。もう、何が悪いのかすら分からない状態なんだ」

 

「あー……それはアレか、また修学旅行みたいな感じの奴か?」

 

 真剣に悩んでいる葉山の様子につい警戒してしまう。また戸部が海老名さんにアタックするのかそれとも、残りの2人か。

 けれど、ゆるく首を振り否定された。どうやら人間関係云々な話ではないようだ。

 

「いいや、そう言うのじゃないよ。もっと個人的な悩みさ。実を言うと音痴なんだよ」

 

「へー」

 

「……意外と驚かないな。あの葉山隼人が実は音痴なんて学校だったらトレンド1位をとってる所なのに」

 

「自分でよく言えるなそれ。普通に驚きはしてるけど、というか今更だが俺にそんな事打ち明けていいのか? 明日には学校中に言いふらしてるかもしれないぜ?」

 

「フ、比企谷の事は嫌いだし信頼もしていないけど信用はしているよ。そういう事をする奴じゃないだろ」

 

 なんだろうか、その信頼されてる感あるセリフは。ついついこいつ俺の親友だっけと勘違いしそうになったぜ。

 

「お、おう」

 

「あと、言いふらす友達もいないだろ」

 

「俺の感動を返せよこの野郎。純度の高い打算じゃねえか」

 

 糸色さんちの望君ならカメラ3つ使って絶望してる所だ。

 

「あれ? でも学園祭の時とかライブしてんかったけ?」

 

 俺は実行委員で忙しかったからアレだが、葉山グループはあの文化祭でライブをしていた。相模を探しに行く前に時間稼ぎを頼んだから間違いないはずだ。

 

「……ああ、そういえば相模さんを探していてライブ見ていなかったんだっけ? ボーカルは優美子が担当して俺はギターだったよ。歌は下手だけど楽器はそれなりにできるんだ」

 

「それ普通逆じゃね? 歌は人並みにできても楽器なんて普通できないだろ」

 

 ハイスペックなのか違うのか微妙なバランスだ。

 ただ、そんな疑問は葉山の一言で納得した。あの人の名前を出されると大体なんでも納得できる。万能調味料かな?

 

「ずっと昔に陽乃さんが突然ライブをしたいと言い出してね……死ぬ気で練習したよ」

 

「あの人か……それで、得意不得意があるのは分かったけどなんで悩んでるんだよ。歌が下手なら歌わなきゃいいだろ」

 

 お前の歌に世界の平和がかかっている訳でもない。パンがないならケーキを食べればいいし、歌が下手なら謳わなきゃいい。これぞマリーアントワネット的解決。革命が起きるかどうかは運次第だけど。

 

「実は、この間カラオケに皆と一緒に行ったんだけど、戸部が俺のソロを聞きたいって言いだしてね。その場はなんとか時間切れで歌わずに済んだけど、次は1番に歌うって言ってしまって……」

 

 どんよりとした雰囲気が漂う。

 戸部的にはノリというか悪意はないというか、悪気なく人を窮地に陥れる感じだったのだろう。

 つまり戸部はギルティ―。

 

 本日の有罪が決まった所で、これまでの事について聞いてみた。話の流れ的にこれまでも何度かカラオケに行った事はあるのだろう。リア充の遊び場でカラオケとボウリングとららぽーは定番だ。

 

「これまでは大人数で歌うような曲を入れて戸部と一緒に歌ってしのいでたよ。あいつは頼んでもいないのに人の歌に入ってくるんだ。それに優美子と話していると歌わずに済むし、大人数で行くからそもそも1人あたりの歌う回数は少ないんだ」

 

 なるほど。ソロカラしかやらない俺には分からない事情だ。

 

「それで、相談なんだが俺の歌を聞いてくれないか?」

 

「マクロス? え、なんで?」

 

 唐突に切り出されて普通に驚いた。

 

「こういうのは誰かに聞いてダメな所を指摘された方が上達するって聞いて」

 

「そうじゃなくてなんで俺に頼むんだよ。他の奴に頼めよ」

 

「それができたら苦労はしないよ。できる限り秘密にしておきたいんだ。でも、誰かに頼めば絶対に話が回って放課後には大人数でカラオケに行くことになるんだ」

 

 俺とは違ったケースの連絡網だが理解はできる。ああいう奴らってどれだけ情報共有能力高いんだよってくらいに情報の出回り方が素早いし精確なんだよな。

 その癖、学校からの連絡網は途中で途絶える。中学の頃、俺の前だった関口なんて1回も俺に連絡を回した事ないしな。おのれ関口。

 

「それなら女子に頼めばいんじゃね? 葉山の頼みなら喜んで黙秘するだろ」

 

「……カラオケは密室なんだ。女子と2人で行けばそういう噂が流れる」

 

「ああ……」

 

 苦虫を潰したような葉山の表情で大体の事は察知した。噂の出所を特定するとその女子に行きつく感じのアレか。

 

「だから――」

 

「めんどくさいからヤダ」

 

「ここまで来てそれはないだろ!?」

 

 ガタンと机を叩いて抗議する葉山。

 だが、逆に聞くがなんで俺がそんなめんどくさい事をしなればいけないのか。まぁ、そんな事解いてもこいつは納得しないのだろうよ。

 そこらへんは任せろ。口先だけで生きてきた男、比企谷八幡が納得させてやる。

 

「いやいや、別にいいだろ人間なんだし欠点があっても。むしろ欠点ていうからマイナスイメージがつくけどいいかえれば個性だよ個性。ジャイアンも歌が下手な暴君って個性があるし、野原さん家のお父さんだって足が臭いって欠点を武器にして映画じゃ大活躍じゃねえか」

 

 つまり逆説的に俺のボッチも目が濁っているのも個性でありオンリーワン。リア充共のモットーはナンバーワンよりオンリーワン。でも非リアがナンバーワンになるのは許せないだからね。

 

「お前の欠点ならみんな笑って受け入れてくれるさ」

 

 ニコリと微笑み葉山の肩にポンと手をおく。

 どうだ、これならお前も納得するだろう。けれど、俺の思惑とは真逆に葉山の目はギロリと鈍く光った。

 

「フ……分からないだろうね。CDを2枚も出してるお前に俺の気持ちは!!」

 

「メタい事いうなよ」

 

 おいこらやめろ。俺の静止も虚しく葉山のフラストレーションはプレパラート並みにボロボロだったらしく、止めどを知らない。

 

「お前に分かるのか? 葉山隼人ならできて当然って顔をされる重圧に、邪気のない顔でマイクを渡してくる戸部を殴りたくなるのを必死に押さえている葛藤が!」

 

 ああ、やっぱり戸部はギルティーだったのか。分るよその気持ち凄い分かる。

 

「名目もジャケットも3人で映っているのにセリフ以外はずっと小声だった俺の気持ちがお前に分かってたまるか!?」

 

「だからメタいからやめろよ」

 

 その話は本当にやめろ。確かに戸部のうぇーいみたいな声は合間に聞こえたけど葉山の印象薄いなーとは思ったけど。

 

「恥を忍んで頼む、俺を男にしてくれ!」

 

 バッと頭を下げる葉山。

 そこに現れたのは葉山の頼んだ料理を持ってきた女性店員でした。タイミングが最悪ですね。

 

「ぱ、パスタお待たせしました……」

 

「あ、ども」

 

 さっきの店員とは違い速足でバックヤードに戻った店員は同僚たちと腐った花を咲かせていた。

 おいコラ誰だ、根暗受けとかイケメン攻めとか言った奴。だかれが根暗じゃ。まぁ、俺なんだろうけど。

 キャーキャー姦しいバックヤードから葉山に視線を戻し、俺はできるだけ嫌そうな顔と声で注意をする。

 

「紛らわしい言い方するなよ。海老名さんが沸くだろ」

 

「姫がどうかしたのか?」

 

 キョトンと首を傾げる葉山。

 そこは察しろし。

 

「別に……まぁ聞くだけならいよ。その代わり少しだけだな」

 

「! ああ、恩にきる」

 

 我ながら人がいいと思う。なのになぜ俺は世の女性にモテないのだろう。

 キラキラと微笑む目の前のイケメンを見れば理由は明白だった。世の女性は光物が好きなんですね。カラスかよ。

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