明るい筋肉   作:込山正義

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原作開始前からキャラに介入できたら平田とか櫛田とか一之瀬とかをAクラスに引き込めることに最近気づいた。
強そう(小並感)



結果発表

 

 試験最終日。

 時刻はすでに正午を回り、1週間前に試験の説明が行われた地点へと全クラスの生徒が戻ってきていた。

 

『ただいま試験結果の集計をしております。暫くお待ちください。すでに試験は終了しているため、各自飲み物やお手洗を希望する場合は休憩所をご利用ください』

 

 アナウンスに従い、多くの人間が休憩所へと移動を開始する。

 その流れの中で、Cクラスの生徒たちがこちらに近づいてきた。

 メンバーは龍園、石崎、小宮、近藤、金田の5人。浅橋に姿を現さなかった時からもしかしたらと思っていたが、金田は伊吹と違いリタイアを選択しなかったらしい。無人島生活を少しでも楽しもうとするその姿勢に内心で激しく同意する。

 

「テメェの話を聞いた時は半信半疑だったが、どうやら鈴音は本当にリタイアしたみてえだな」

 

 Dクラスの集団を観察しながら忌々しげに龍園は呟く。

 舌打ちしそうな眼光とは裏腹に、その口元は僅かにだが緩んでいた。

 

 龍園が最後に堀北を見た時、彼女の体調はそこまで酷いものではなかった。

 加えて堀北鈴音という少女はプライドが高く、自分の意見は曲げようとしない。リーダーを任された以上は途中で投げ出すような真似はせず、意地でも最終日まで耐え抜くだろうことは想像に難くなかった。

 

「もしこれが偶然じゃなく狙ったものだとしたなら……」

 

 だが現実はどうだ。

 堀北はこの場におらず、Dクラスの生徒たちは結果を予測することもできずに不安がっている。

 

 それらの情報を龍園の視点から統合した場合、何者かが堀北の症状を誰にも──それこそ堀北本人にも悟られないまま悪化させ、伊吹にリーダーの情報をわざと握らせた後、リーダー当てを失敗させるために半ば強制的にリタイアさせたようにも見えるかもしれない。

 その上原作ではAクラスとCクラスのリーダー当てまで成功させているときた。

 まさにやりたい放題である。主人公すげえ。

 

「クククッ、雑魚どもの集まりだと思っていたが、それなりに楽しめそうじゃねえか」

 

 堀北及びDクラスを陰で操る存在X。

 今回の件が意図的なものだとしたら、暴力事件解決の際にもその人物が関わっていた可能性が高い。

 同族の気配を敏感に察知した龍園が獰猛に笑う。

 

「テメェの過剰な警戒心もそいつが理由だったりしてな」

 

 問い掛けというより独り言っぽかったので応えない。

 龍園が綾小路の存在を探りに動いたとして、それを止める権利は俺にはない。

 俺の口から情報を漏らさないよう気をつけたり、綾小路に注意を促すくらいがせいぜいのものだ。

 

「もうすぐ試験の結果が発表される。考察するのはそれからでも遅くはないだろう」

「ハッ、それもそうか。だが、想定外なんざ起こらねえだろ。つまんねえ話だがな」

 

 拡声器にスイッチが入る際の独特な高音が砂浜に走る。

 視線を音の鳴った方へ向ければ、真嶋先生が壇上に上がるところだった。

 一年生たちが慌てて列を形成しようとするのを手で制される。

 

「そのままリラックスした状態で聞いてくれて構わない。すでに試験は終了している。今は夏休みの一部のようなものだ」

 

 だからといって雑談を続けるような生徒はいない。

 辺りは静まり返り、緊張感が漂っている。

 

「この一週間、我々教員はじっくりと君たちの特別試験への取り組みを見させてもらった。真正面から試験に挑んだ者。工夫を凝らし試験に挑んだ者。様々だったが、総じて素晴らしい試験結果だったと思っている。ご苦労だった」

 

 試験が終わったと改めて告げられ、多くの者から安堵が漏れる。

 これでようやく辛い生活から解放されると喜んでいるのだろう。

 だが俺の場合はむしろ逆。無人島生活が終わってしまうことに、一抹の寂しさを感じていた。

 今度は一人きりでのサバイバルもしてみたいものだ。その時プロテインがないのは非常に辛いから、そこだけは持ち込み可にしてほしい。

 無人島に一つだけ持って行けるとしたら? という質問に、今度から俺は『プロテイン』と答えることになりそうだ。

 

「ではこれより、端的にだが特別試験の結果を発表したいと思う」

 

 聞き手側の表情が引き締まる。

 

「なお結果に関する質問は一切受け付けていない。自分たちで結果を受け止め、分析し次の試験へと活かしてもらいたい」

 

 それでも、比較的冷静なままの生徒も少なからず存在していた。

 

「最下位は──Cクラスの100ポイント」

 

 Bクラス、及びDクラスからざわめきが起きる。

 Cクラスが全ポイントを使い果たしたのは周知の事実。にもかかわらず100という数字。

 リーダー当てを成功させたのは火を見るより明らかだった。

 

「続いて3位は──Bクラスの110ポイント」

 

 聞こえてきたのは驚愕よりも悔しさを滲ませた声だった。

 金田がスパイであったことはBクラスもすでに理解しているのだろう。

 お人好しクラスのまま突き進むのか。それとも方針の転換を検討するのか。

 その判断が求められてくるはずだ。

 

「2位──Dクラスの158ポイント」

 

 158ポイントということは、綾小路はリーダー指名で龍園の名前を選ばなかったらしい。

 原作通り龍園は無線機を常に自分の近くに置いていたし、石崎、小宮、近藤の三名は三日目以降洞窟の内部で徹底的に匿っていた。

 龍園は自他共に認める自分絶対主義者だ。拠点の提供という普通はあり得ない条件でもない限り、自分以外をリーダーに据えるなんてことは基本的にしない。

 このことからリーダー当てを失敗する可能性も少しだけ考慮していたのだが……うーむ、やはりこうなるのか。

 一体どこでバレたのだろう。ポイントを削るだけの結果にならなかったのはいいことなのだが少しだけ気になるな。

 

「そして1位は──Aクラスの240ポイントだ」

 

 まあ、無事1位を取れたので良しとするか。

 

「以上で結果発表は終わりとする」

 

 Aクラスの歓声を全身に浴びながら、俺はチラリとDクラスの方へ視線を向けた。

 

 予想外を許さない。逆転劇を生み出さない。

 ルールを端から端まで把握し、実行可能な攻撃手段を考慮し尽くした上で、その全てを跳ね除けられるような徹底した防御策を妥協なしに遂行する。

 常にイレギュラーを想定し、脅威的な個人に対してはメタを張ることで行動そのものを制限する。

 

 ──これが、利を活かした堅実な勝利というものだ。

 

 後学のために覚えておくといい。

 誰にも真似はできないだろうがな。

 

 

 

 ****

 

 

 

 試験の結果発表後の騒がしい砂浜。

 少し確認しなければいけないことがあった俺は、船へと戻ろうとする龍園の背中に声をかけた。

 

「龍園、一つ聞いていいか?」

「あ? なんの用だ」

 

 面倒くさそうに振り向く龍園。

 

「うちのクラスに、裏切りの素質を備えた人間はいたか?」

「ハッ、気づいてやがったか」

 

 なぜAクラスに有利すぎる契約を結んだのか。

 その理由がAクラス内にスパイを生み出すためだったのではと気づいたのは、龍園がAクラスのベースキャンプで生活するようになってからだった。

 最初は疑問に思っていた。ポイントを全て捨てるくらいなら、普通に無人島生活を送った方がいくらかマシだろうと、そう決めつけていた。

 だが彼の本当の目的は別にあった。Aクラスの生徒と自然に接触できる機会を狙い、手頃な人間を唆してCクラスの手駒としようと企てていたのだ。

 共同生活を送るとなれば、距離の近さから色々と見えてくるものもある。加えて他者の目を掻い潜るタイミングも容易に訪れるとなれば、引き込みを打診するにはまさにうってつけの環境と言えた。

 

 先程までは所詮可能性の一つでしかなかったが、今の龍園の受け答えで確信に変わる。

 嫌になるほど合理的な作戦だ。Aクラスを目指すなら、試験ポイントを守り抜くよりもよっぽど手っ取り早い。

 試験の度にこちらの情報が筒抜けとなれば、300程度のポイントは一瞬で取り返せる。いや、それだけではない。Cクラスが300ポイントを得る頃には、必然的にAクラスのポイントは300近く下がることになるのだ。

 それを繰り返されれば驚くべき速さで差は詰まってしまうだろう。

 スパイの厄介なところは対策が難しい上に狙い撃ちが可能になってしまう点だ。

 仮に魔女裁判紛いのことをしてスパイを炙り出そうとしても、少なくない亀裂がクラス内に残ってしまう。

 だからと言って放置もできない。毒はやがて全身を巡り、Aクラスそのものが崩壊するという最悪の事態もあり得るからだ。

 

 だがこれは当然、龍園の企みが成功していたらの話である。

 

「けどありゃダメだな。俺にとっては癪な話だが、Aクラスにスパイができそうな人間は一人もいなかった」

 

 すでに大差で一位にいるAクラス。

 仮にクラスを裏切ったとして、リスクとリターンが釣り合わない。Aクラス内にスパイを作るのは、他のクラスの人間を対象にするよりも余程難しいだろう。

 

「半分以上の考え無し共は自分たちが負けるなんて想像もしてやがらねえ。それに、残りの奴らも勘付かれないまま裏切るのは不可能だと考えてやがる」

 

 筋肉を信仰している者は俺以下の筋肉には靡かないし、坂柳の実力を知る者は下手な嘘を貫き通せるとは思っていない。

 

「どんな統制をしたらああなる。テメェの見た目だと、暴力で支配したって言われた方がよっぽどしっくりくるぜ?」

 

 俺と同じようにな──。

 挑発するようなセリフと視線を残してから、龍園は配下を連れて去っていった。

 彼の口から出た言葉を、そっくりそのまま鵜呑みにすることはできない。

 だが現状では行動のしようもない。探るような真似をすれば、それに伴って俺の信用度が失われる。お前は仲間を疑うのかとか言われた日には、俺のガラスメンタルは大ダメージを負う結末を迎えるだろう。

 

 まあ実際のところ、そこまで心配はしていないわけだが。

 どんなに巧妙に隠そうとしても、坂柳ならどうせ気づく。むしろその状況すら利用するだろう。

 原作で龍園と繋がっていたのは橋本だったか。

 とりあえず、俺はそこだけ注意していれば問題ない。はずだ。

 

 

 

 





アニメ放送分終了ですね。
驚きもドラマもどんでん返しもない結末は読者にとっては退屈なものだったと思います。
けどそれでええやん? ここまでして負けたら泣くぞ(葛城並感)
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