明るい筋肉   作:込山正義

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TSが流行ってるし私もTSゴリラ系マッチョ女子主人公物を書かなければならないのか?(誰得)



第一回グループディスカッション

 都合六回行われるグループディスカッション。その第一回目がもうすぐ始まろうとしていた。

 二階にある竜と書かれたプレートが掛けられた部屋に同じクラスの三人と共に入室する。部屋の中には大きな円形の机が一つとそれを取り囲むように置かれた計14個の椅子。そして三人の生徒たち。

 先にいたのはBクラスのメンバーだった。

 

「早いな」

「緊張の表れだとでも思ってくれ」

 

 挨拶の意味も込めてそう問えば代表として神崎が答えてくれる。

 もちろん額面通り受け取るようなことはしない。ディスカッション前だがすでに試験は始まっている。先に待ち構えて相手の様子を窺い少しでも情報を多く手に入れようとしているとかそんなところだろう。

 

 席の数には限りがあるため、後から来る人のことも考え神崎の隣へと腰掛ける。俺が座るとその隣に西川がやって来て、そこから矢野、的場と続いた。

 なんとなく男男女女って並びになると思ってたがそうなるのか。これがオセロなら間の女子二人は性別が逆転しているところだ。

 

「あ、もう何人か来てるみたいだよ」

「ほんとだね。順番で言うと僕たちは真ん中くらいかな?」

 

 扉が開く。

 俺たちの次に現れたのは櫛田と平田のDクラス組だった。そこに堀北がいないことについてはすでに疑問を挟む余地はない。

 同じクラスの仲間ということでここまでの道中に作戦でも話し合っていたのだろうか。勝手なイメージだが沈黙とは無縁そうだ。コミュ力お化け同士無限に話題が湧いて出てきそうである。

 しかし美男美女でお似合いにも見える二人だが、組み合わせとしては少し珍しい印象を受けた。Dクラスのリーダー格同士関わる機会は多そうなのに何故だろうか。お互いにグループの中心にいることがほとんどで、個人的な話し合いをする暇があまりなさそうに思えるからかもしれない。

 

 席順としては的場の隣に平田が座り、そのさらに隣に櫛田が座る感じになった。

 櫛田の椅子をさりげなく引いてあげるあたり紳士ポイントが高い。さすが平田だ。さすひら! 

 

「…………」

 

 続いて入ってきた堀北は部屋を見渡すと同時に僅かに眉を動かした。

 現在置かれた状況を理解してしまったのだろう。先に中にいた生徒たちはB、A、D、といった順で綺麗にクラスごとに纏まって着席している。つまり流れに従うなら堀北の座る位置は自ずと決まってしまうわけだが、しかしそこは櫛田桔梗の隣の席。二人の関係を思えば躊躇いを覚えるのも仕方のないことだと思えた。

 かと言ってこれからの話し合いを考えれば一人孤立するのも得策ではない。結果として堀北が取った行動は、櫛田の隣には座るが席は離すという当たり障りのないものだった。

 それをよく思わない櫛田が腰を浮かして少しだけ距離を詰める。もちろん堀北は逃げた。

 磁石の同極を近づけるようなやり取りが三回ほど繰り返し行われた後、ようやく諦めたのか櫛田が大人しくなる。

 笑顔の櫛田と顰めっ面の堀北。真逆の表情が印象的だった。

 

「なんだ、俺たちが最後か。みんなして張り切りすぎだろ」

 

 そして時間ギリギリ。三人の手下を侍らせながら傲然たる態度で部屋に入ってきた龍園は当然のように堀北の横の席に陣取った。

 嫌いな人間二人に挟まれる形となった憐れな少女堀北鈴音。残念だが俺にはどうしようもないので諦めてそのままの状態で試験に臨んでほしいと思う。

 

『ではこれより一回目のグループディスカッションを開始します』

 

 そんなこんなで戦いの幕が切って落とされた。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 試験開始直後の刹那の沈黙。

 

「学校の指示もあったことだし、とりあえずみんなで自己紹介しない?」

 

 それを破ったのはDクラスの櫛田だった。

 

「そうだな。部屋のどこかにカメラやマイクが仕掛けられている可能性もある。従っておくのが無難だろう」

 

 追従するようにして賛成の意を示すのはBクラスの神崎。BクラスとDクラスは協力関係にあるためこういうところでも小さな連携が見て取れる。

 こちらとしても否はない。俺たちAクラスも異論はないと小さく頷いておく。Cクラスは何もアクションを起こさなかったがこの場合の無言は肯定であると判断された。

 

「櫛田桔梗です。この中にはまだあんまり話したことのない相手もいるので、この機会に仲良くなれたらと思っています」

「僕の名前は平田洋介。違うクラスのみんなとも手を取り合えたらと思っているよ。これから同じグループの仲間としてよろしくね」

「堀北鈴音よ。言いたいことは一つだけ。負けるつもりはないわ」

 

 クラスの壁を感じさせない自己紹介を行う櫛田、平田と主に龍園と俺に向かって宣言してくる堀北。

 さて、Dクラスが自己紹介を終えたわけだが、次はどこのクラスがいくのだろうか。

 普通に考えたらそのまま時計回りの流れで龍園が妥当だ。問題はその流れを汲み取り素直に従ってくれるかなのだが……。

 

「次はあなたの番よ。早くしなさい」

「あ? 何言ってやがる」

「順番で来ているのが分からないの? いらないところで時間を取らせないでくれるかしら」

「ハッ、俺の行動を許可なく他人が決めてんじゃねえよ。だがまあ、鈴音がどうしてもって言うなら考えてやらなくもないぜ?」

「……そう、ならいいわ。罰でもなんでも勝手に受ければいいじゃない」

 

 堀北は呆れたように息を吐いた。

 その仕草を龍園は楽しそうに眺めている。

 

「神崎くん。次お願いできるかしら」

「本人にその気がないなら仕方ないな」

 

 そうしてCクラスを飛ばしBクラスが自己紹介を始める。

 神崎が一番手を務めるあたり時計回りの法則も消失した形だ。

 

「神崎隆二だ。よろしく頼む」

「津辺仁美です。よろしくお願いします」

「安藤紗代。よろしく」

 

 なんというか口調を変えただけのコピペのような自己紹介だった。

 しかしこれが普通なのかもしれない。この状況で話したい事柄とか特には思いつかないし、俺たちAクラスもシンプルな自己紹介でいくことにしよう。

 

「葛城康平。趣味は筋トレだ。船内行きつけの店は今のところステーキボンバーだな。あそこのヒレステーキは絶品だから一度食べてみてくれ。逆にオススメの店があったら教えてくれると嬉しい」

「西川亮子です。趣味は筋肉を眺めることです。シアターに行けばコマンドーという映画が観られるので知らないという人は是非足を運んでみてください。一緒に筋肉談義で盛り上がりましょう」

「矢野小春です。運動は苦手だったんですけど最近になって筋肉に目覚めました。……というか目覚めさせられました。新たな被害者……じゃなかった、同志の方を募集しています。見るだけならタダだし疲れないのでオススメらしいですよ?」

「的場信二です。僕は筋肉にはあまり興味がないのでそこは期待しないでください」

「は?」

「あ?」

「えっ、なんで僕睨まれてるんですか……」

 

 さて、これで一先ずCクラス以外の自己紹介は終わった。

 ここからは本格的な探り合いが始まるのだろう──と思っていたら、龍園がいきなり口を開いた。

 

「龍園翔だ」

「鈴木英俊です」

「園田正志」

「小田拓海だ」

「……あなたたち、自己紹介はしないんじゃなかったの?」

「よく思い出してみろ鈴音。誰がいつそんなことを言った?」

 

 嘲笑うような視線を堀北が睨み返す。

 龍園の態度は褒められたものではない。が、間違っているというわけでもない。

 平常心を奪って情報を引き出しやすくするのは作戦としては大いに正しいだろう。むしろ正攻法の部類に入る。

 まあ、実際には堀北を揶揄って遊んでいるようにしか見えないわけだがな。

 

「せっかく同じグループの仲間同士になったんだし喧嘩はやめようよ。ね?」

 

 火花を散らす二人を櫛田が抑えようとする。

 鬱陶しそうに視線を反対側に移動させる堀北。お前はどちらの味方なのだとでも言いたげだ。

 しかしDクラス最後の一人である平田も櫛田と同じ意見である様子。残念、今の堀北に味方はいなかった。A、B、Cのみならず己の所属するDクラスの人間からも宥められる始末。これが本当の四面楚歌というやつか。少しだけ同情する。

 

「早速だけど、今回の試験について私からいいかな?」

 

 予め戦略を考え、今なお現在進行形で勝利への道筋を計算しているであろうクラスの代表たち。

 その中で最初に切り出したのはまたしても櫛田だった。

 

「私はこの竜グループを、出来れば結果1で終わらせたいと思ってるの」

 

 突然だが優待者には法則というものがある。

 それは、グループ内の人間をクラスの垣根を取っ払ってごちゃ混ぜにし、改めて五十音順に並べ替えると、そのグループの干支に因んだ順番の者が優待者で確定するというものだ。つまり鼠なら五十音順で1番目の生徒。逆に猪なら12番目の生徒になる。ルール説明の時に茶柱先生が言っていた『AからDまでの関係性を無視しろ』という言葉がこの法則に辿り着くためのヒントにあたる。

 

 竜グループの生徒全14名を五十音順に並び替えると、安藤紗代、小田拓海、葛城康平、神崎隆二、櫛田桔梗、鈴木英俊、園田正志、津辺仁美、西川亮子、平田洋介、堀北鈴音、的場信二、矢野小春、龍園翔という順になる。干支で竜は5番目。つまりこのグループの優待者は五十音順で5番目に来る櫛田桔梗になるというわけだ。

 

「みんながみんなプラスで終われるなら、それが一番でしょ?」

 

 それを踏まえた上でのこの発言。櫛田の裏の性格まで考えると全てが本音というわけでもないだろう。

 結果1で終わった場合、優待者には報酬として100万プライベートポイントが贈呈される。それが欲しいという可能性は大いにあり得るがそれだけ。間違ってもみんなが幸せになればいいと本気で考えているとは思えない。

 

 横目で西川の表情を窺う。

 反応は見られない。顔に出していないだけなのか。それとも櫛田の演技力が西川の観察眼を上回ったのか。はたまた櫛田の筋力が足りなかったのか。

 どれが正解なのか今すぐに判断を下すことは出来なそうだ。

 

「結果1で終われると、本気でそう思っているの?」

 

 櫛田の意見に切り返したのは意外にも堀北だった。

 そこは普通他のクラスの人間が突っ込むとこだろうに、なぜ同じクラスの仲間同士で対立し始めるのか。

 見ろ、平田も苦笑いだ。

 

「堀北さんは反対なの?」

「……いえ、反対ではないわ。ただ難しいと思っただけ。全員の協力が不可欠だもの」

 

 突然の内紛勃発……と思いきやそうでもなかったらしい。

 堀北はあくまで話を膨らませようとしただけ。嫌い合っていても試験の場ではちゃんと協力するらしい。少なくとも表向きは。

 

「出来るところまで結果1を目指す。それがDクラスの方針よ。他のクラスの意見も聞かせてくれないかしら」

 

 心にも思っていないことを言いながら堀北は会話の範囲をグループ全体へと広げようとする。

 実際、結果1で終われるなんて思っていないだろう。優待者が確定したら他のクラスに抜け駆けされる前に裏切る算段のはずだ。Dクラスに優待者がいる以上堀北がそれを実行することは不可能なんだけどな。

 情報の共有がまだ堀北の元まで届いていないのか。もしくはそう見せるための演技なのか。

 どちらかというと後者の方が可能性は高いように見える。

 

「なんだ、最底辺のDクラスが仕切るつもりか?」

「その方が効率的だと思ったからそうしたまでよ。それとも、あなたの方が上手く話を進められるのかしら?」

「そうかもしれねえな。たが、俺はそんな面倒なことはしたくねえ」

「その気がないなら黙ってなさい。この問答自体時間の無駄よ」

「まあ待てよ。確かに俺にはやる気がない。けどそこに進行役をやりたそうな顔をしてる人間が一人いるぜ?」

 

 そう言いながら龍園は俺を指さす。

 いやしてねーよ。

 ……してるのか?

 …………してるかも。

 

「……そうだな。確かに話の主導権を握りたいという気持ちはある」

「そう。だったら──」

「だが今はいい。進行役、及びまとめ役を買って出てくれる者がいるなら大人しくそれに従うつもりだ」

「……今は、とはどういうことかしら?」

 

 当然の疑問を堀北は追及してくる。

 

「このタイミングでこんなことを言うのは筋違いかもしれないが……」

 

 なんとなく言うタイミングが来たので前置きしてから本題を告げる。

 

「このディスカッションが終了した後、少しだけ時間をくれないか? 俺の意見もその場で述べたいと思っている」

「……それに、なんの意味があるのかしら? 言いたいことがあるなら今この場で言えばいいでしょう?」

「いや、今言っても意味はない。というより二度手間になる。この場には一之瀬がいないからな」

 

 何を言っているのか分からないという様子で眉を顰める堀北。グループ外の人間の名前をいきなり出されたらそういう反応にもなるだろう。他の何人かの生徒の頭上にも疑問符が浮かんでいるように見える。

 

「彼女が所属しているのは兎グループ。竜グループの話し合いには関係ないはずよ」

「いや、関係ならあるさ。なぜなら一之瀬はBクラスのリーダーだからな」

 

 その点に関しては、星乃宮先生は全く余計なことをしてくれたものだと言いたくなる。この場に一之瀬がいればわざわざ試験終了を待つなどという面倒を起こさずに済んだものを。

 

「葛城、それは俺たちでは話し合うに値しないと言いたいのか?」

「確かにこの場に相応しいのは私よりも一之瀬委員長でしょう。でもだからといってそういう態度はやめてもらいたいですね。眼中に無い宣言を黙って見過ごせるほど私は大人ではありませんよ。こっちも真剣なんです」

「……負けない」

 

 Bクラスの三人の鋭い視線がこちらを射抜く。

 どうやら誤解させてしまったようだ。確かに今のは俺の言い方が悪かった。反省しよう。

 

「不快にさせたようですまない。だが、別にそういうつもりで言ったわけではない。個人の実力だけなら、一之瀬もここにいるメンバーもそう大差はないだろう。俺が言いたいのは影響力の話だ」

「影響力?」

「例えばだ神崎。お前が何かしら試験の方針を固めたとして、Bクラスの人間はそれに従うか? 一人の漏れもなく、全員が賛同してくれると言い切れるか?」

「……無理だな」

 

 そう。なぜならリーダーは一之瀬であって神崎ではないからだ。

 たとえ神崎が右と言っても、一之瀬が左と言えば皆の意見はそちらに流れてしまう。それでは意味がない。

 

「だから俺は一之瀬も交えての話し合いがしたい。だがそれは神崎たちとのやり取りが無意味だと言っているわけではない。俺が求めているのはBクラスとしての意見なんだ」

「……そういうことか」

「……分かってくれたか?」

「ああ。確かにそういう意味では、Bクラスはこのグループにおいて一歩も二歩も出遅れているのかもしれないな」

 

 渋い顔をしながら、神崎は部屋の中を改めて見回した。

 Cクラスの龍園。Dクラスの平田と櫛田。そしてAクラスの俺。

 クラス全体の方針を決定できるだけの影響力を持った人間が、Bクラスを除いてこの竜グループに集まっている。

 それが何を意味するのか分からない神崎たちではない。

 

「あなたの言いたいことは理解したわ」

 

 神崎に続いて堀北も頷く。だが彼女の視線は依然として鋭いままだった。

 

「でも、納得はできないわね。それじゃあグループ分けした意味がなくなるじゃない。試験の意図に反しているわ」

 

 自分の実力に自信がある。だから個人の力でどうにかしようとする。

 その考えは間違いではない。この試験に臨む姿勢としては普通に正しい。王道だ。

 だが受けて立ってやるわけにはいかない。そもそもスタート地点からして違っているのだから正々堂々なんて可能なはずがない。

 だから今回は俺の我儘を通させてもらう。個人戦から団体戦へと戦場を塗り替える。

 グループが12に分けられているからと言って、現場の人間に全てを委ねる必要なんてないのだ。

 

「……言いたいことは色々とあるけれど、それは後にした方が賢明かしら」

「その通りだぜ鈴音。あいつが場を設けるって言ってんだ。だったら、今この場で何を言ったって無意味だろ」

 

 よく分かってんじゃねえか、という龍園の態度を堀北は意図的に無視する。

 席が隣なだけあって仲良さそうだなあの二人。次の時はあの間に座ってみるのもいいかもしれない。

 

 最初に方針を示したDクラス。

 全クラスのリーダーが揃う場での方針説明を申し出たAクラス。

 それに同意したBクラスとCクラス。

 

 それ以上この時間内に何か物事が進むわけもなく、やがて規定の一時間が経過し自由にしていいというアナウンスが室内に流れた。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 解散していい時間になった後も全員がその場に留まり続けている竜グループの面々。

 

 終了のアナウンスからおよそ一分ほど経ったタイミングだろうか。コンコンと部屋の扉がノックされた。

 それに対し了承の返事をする。ガチャリと音を立てながら入ってきたのは目的の人物である一之瀬だった。後ろには綾小路も引っ付いている。

 

「よく来てくれたな一之瀬。……それと綾小路も」

 

 連絡に応えて来てくれた一之瀬。連絡をしていないのに来ちゃった綾小路。

 綾小路の存在がプラスに働くかどうかは何とも言えないところだ。見えない場所で何かされるよりは視界内にいた方が手の打ちようはありそうだけど……はてさてどうなることやら。

 

「話し合いの件は神崎くんからも聞いてるよ。でもその前に一つだけ聞かせてもらってもいいかな?」

 

 俺の姿を認めるや否やそう言ってきた一之瀬に快く頷く。

 

「兎グループにいるAクラスの生徒たちが、自己紹介以降一言も喋らなかったんだよね。あれは葛城くんの指示?」

「ああ。そうすれば、一之瀬は現状を打開しようと俺の元にやって来てくれると思ったからな」

「わざわざそんなことしなくても、言ってくれればちゃんと会いに行くのに」

「そこは疑っていない。だがこれは一之瀬のグループに限った話でもないんだ。他のグループにおいてもAクラスの皆には黙秘をお願いしている」

「それは、話し合いを進めさせないため?」

「その通りだ」

 

 このリーダー会議を前に裏切り者が出てしまう、というのが一番避けなければいけない事態だからな。

 

「二人だけ立ち話というのもなんだろう。的場、矢野」

「……そうですね。では、後は葛城くんに任せます。一之瀬さん……それと、綾小路くんでしたっけ。僕たちはもう戻るので、どうぞ空いた席を使ってください」

「葛城くん、亮子ちゃん、お先に失礼しまーす」

 

 いつまでも拘束させるのはなんなので二人は解散させた。この場には俺と西川さえいればそれで事足りる。

 それに倣うように龍園も配下たちを先に帰らせた。判断するのも決定を下すのも王である龍園の役目。役に立つかも分からない人間は居るだけ無駄ということかもしれない。これがCクラスの参謀を担う椎名や金田なら違ったのだろうか。

 

「それじゃあ、早速話を聞かせてくれるかしら?」

「この俺をわざわざ残らせたんだ。大した内容じゃなかったら承知しないぜ?」

 

 一時間近くも待たされた堀北が急かすような視線を向けてくる。龍園に至っては舞台を見る前の観客のような期待を含んだ笑みを浮かべていた。

 

「そうだな。では、話し合いを始めようか」

 

 みんなの聞く態勢が整ったのを見てからゆっくりと全体を見回し口を開く。

 

「先にも言った通り、まずは俺の意見を聞いてほしい」

 

 俺の全力をもって挑む必要がある試験。

 それは三学年合同で行われる合宿でも、退学者を自分たちの手で決めるクラス内投票でも、Dクラスとの直接対決が待つ学年末試験でもない。

 

「今回の試験、俺は全てのグループを結果1で終わらせたいと思っている」

 

 俺が真に全てを賭けるべき特別試験は、この海の上で行われる船上試験だ。

 

 

 





先手必勝筋肉全開!
説明の拙さは筋肉で補え!
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