あったかもしれない出来事 作:とある地域の勇者
「あぁ、こんな日こんなんでも……変わらないものがあったんだね」
すでに私、赤く染まってない所はない。
遠くからもし私を見たら、全身真っ赤の人が立ってると勘違いされるかもね。
居たらだけどね。
……まぁ、見る人なんて居ないけど。
居たらその人にこう言っちゃう。
ここに居ないで、早く逃げなさい
って。
些細でありえそうであり得ない事を思いつつ、何とか動く顔を上げる。
多分、今ので痛みがさらに増したと思う。
でも、もうそんなものは感じないから。
最後に感じたのはいつだったかな?
あぁ、何とか思い出した。
あの時ね。
何体目かの大きいあいつの不意打ち矢を貰った時ね。
もう薄っすらだけど、3体目ねきっと。
……多分よ?
その前から散々だったけど、その一矢がだめだった。
あれさえ無ければ、もうちょっと戦えていたかな?
今となっては、それはどうでもいいこと。
こんな状況になってても、あいつらを討つことができた。
勇者としての役目を、果たすことができた。
それが、今の私にとって……唯一の幸せかな?
役目をできずに最後、なんてとても悲しいもん。
本当に。
本当に、果たせてよかった。
幸せを感じつつ、もう長くない私はいくつかそっと祈る。
それは。
今まで散っていった人々が、安らかに眠れること。
少しでも長くこの世界が続くこと。
それと……
「生き残り、今この時も戦ってるすべての勇者に……少しでも希望がありますように」
ん?本当の今の気持ちって?
そうね。
……やっぱこんな最後なんて、嫌。
だって、もっと友達と遊びたかったし。
もっと、友達と電話をしたかった。
もっと、好きな映画やアニメを見たかった。
もっと、本でみるような恋を想像してみたかった。
もっと、もっともっともっともっともっともっともっと……
もっと。
もっと、この先を見てみたかった。
たった3年、されど3年。
帰れるなら、戻れるなら、願えるなら、希望できるなら。
あの日の前に帰りたい。
楽しく光が満ちていたあの時に。
叶わない。
もう叶わないけど、ね。
まだ涙があったなら、きっと流れていた。
多分、だけど。
あぁ、気づけば真っ暗な世界が広がってる。
見上げた先に広がっていた、あの透き通った青はもう見えなくなっていた。
さっきまでほんのちょっとでも残っていた暖かさもない。
でも、ぎりぎり音は聞こえてるみたい。
風が吹き過ぎる音、木の葉が揺れる音、もう争いが去ったのを知った動物たちの音。
最後は誰でもいいから、その人または人達に見守られつつって希望してたけど。
この際だし、贅沢は言ってられない。
周りの木々や動物たちでいいや。
今日、この場所で、この瞬間まで戦い生きてきた私が居たことを覚えていてもらおう。
そうだ、忘れていた。
あの子達は元気かな?
この前の勇者通信では元気そうだったし、今でも元気って信じてるよ。
もう勇者通信、できなくなったなー
通信が無くなったから、心配してくれるかな?
大丈夫かふらっとほかの地域を見に行ったついでに、ここにも来てくれるかな?
もしそうだったら。
嬉しいな。
それなら、出る前に手紙とか残しておいたし戦った場所も分りやすい。
あいつらとの戦いに出たことや、勇者通信は楽しかったとか、みんなのこれからを祈ってるとかその他いろいろなことを。
ちょっと綺麗とは言えない字で、書いた手紙だけど。
戦った場所は、いっぱいのあいつらとやりあったから周辺はぼろぼろで分りやすい。
これなら、あの子達にも少しは覚えててもらえるかな?
まぁ、我儘だけどね。
ついに眠くなってきた、そろそろっぽい。
もう意識が溶けていっている、自分というのも一緒に溶けていく。
朧気。
なら、最後に。
「まぁ、こんなん最後だけど……やりきったよね、私って」
だから……もう休んでいいよね?
2018年とある日の大赦。
先の勇者達の調査遠征結果をまとめたものができた。
大阪で見つかった日誌に記されたとある出来事、壊滅した諏訪地域で勇者が残した鍬と手紙を発見し持ち帰った、名古屋で生存者を捜索中に四国が侵攻を受けるという神託を受け、勇者6人は急遽四国へと帰還した。
ざっとこんな感じとなっていた。
でも、これ以外にも記されている。
それは、名古屋の前にとある地域に立ち寄り、勇者が残したと思われる手紙を見つけて持ち帰ったと。
その際、手紙以外にも持って帰っていた。
それは、その勇者の最後の地と思われる場所にて見つけたそうだ。
激しい戦闘の影響でほぼ原形をとどめてない斧槍を……
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
誤字誤変換、感想やつぶやき等いつでもお待ちしています。
(追加:活動報告が使えないためここにて。
誤字報告ありがとうございます。
本文最後の方にある大社は大赦ではないかとありましたが、大赦になるのは西暦の終末戦争後との認識を私はしてます。
そのため本作の世界である終末戦争以前である西暦2018年では、まだ本文にある大社としました。
この認識が間違っているとのことでしたら、申し訳ございませんが誤字報告や感想等にお願いします。
この度は誤字報告及び感想、ありがとうございました。